原水爆禁止運動のあゆみ
草の根の署名からうまれた原水爆禁止運動
日本の原水爆禁止運動の出発点となったのはビキニ事件です。1954年3月1日未明、アメリカが太平洋ビキニ環礁で水爆実験「ブラボー」を行いました。広島に落とされた原爆の1000倍の威力により出た「死の灰」はマーシャル諸島島民や周辺海域で操業していた日本などのマグロ漁船に降り注ぎました。
焼津港を母港とする第五福竜丸をはじめ、実験での被害が広く知られると、それへの抗議の運動は、その月のうちに全国に広がり、東京築地での「魚屋大会」(4月2日)、被災船第五福竜丸の母港焼津をはじめ全国的な自治体決議、各地の平和集会や市民大会など多彩な形をとって発展しました。なかでも大きな役割を果たしたのは、全国各地で自発的に沸き起こった署名運動です。
その広がりの中で、8月8日には、各地の署名を「集計する」こと、「署名に表れた日本国民の創意を内外に伝え、原水爆禁止に関する世界の世論を確立する」ことを目的に原水爆禁止署名運動全国協議会がつくられました(引用は、結成宣言から)。
署名の総数は翌1955年8月6日、広島で開かれた「原水爆禁止世界大会」の初日に、8月3日までの集約3158万3123筆と発表されています。これは当時の有権者数の半数に迫る数でした。
署名に表された国民の願いは、9月19日、世界大会の準備会と署名運動全国協議会が統合した日本原水協の結成、翌年1956年8月9日の日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)結成へとつながっていきます。
この運動の広がりの中で、最初から「核兵器全面禁止」を掲げた日本の運動の原則性、草の根から行動する広範な国民性、そして最初から世界によびかけた運動の国際性が生まれました。
原水爆禁止の声を広げ続けて
アメリカとソ連(当時)をそれぞれの中心とする二つの軍事ブロックが対立し、核軍備競争を続ける中で、原水爆禁止運動は、核戦争阻止、核兵器全面禁止、被爆者援護連帯の三つの基本目標を掲げて、署名、平和行進、ビキニデーや世界大会の開催などに取り組み、世論を広げました。
とりわけ、1960年代にはじまったアメリカのベトナム侵略戦争が段階的に拡大され、核兵器が使われる危険が高まる中で、日本原水協は、「ベトナムを第二の広島、長崎にするな」をスローガンに、全国、全世界の反戦平和運動と連帯して活動しました。
この時期には、アメリカとソ連が協調して既存の核保有の特権を守り、後続に道を閉ざそうとする複雑な動きも起こりました。1963年に結ばれた部分的核実験停止条約、1970年発効の核不拡散条約(NPT)などがそれです。また、1960年代には、ソ連の「平和運動」が日本の運動に「部分核停条約」の支持を押し付け、この問題をめぐって世界大会が分裂するという不幸なできごとも起こりました。
このことは今日まで、それぞれの国の運動が自主性を守り、一致点で協力することの大切さを教えています。
核兵器全面禁止・廃絶を世界の大勢に
1985年2月、日本原水協を含む11カ国の反核団体がよびかけた「核兵器全面禁止・廃絶のために――ヒロシマ・ナガサキからのアピール」署名運動は、世界世論と運動の中で核兵器廃絶のコンセンサスを創り出す重要な運動となりました。署名数はその年の世界大会までに1千万筆、1988年の第3回国連軍縮特別総会までに3000万筆を超え、世界の非政府組織(NGO)が一致して国連に、「核兵器廃絶を人類生存にかかわる第一義的課題として審議」するよう勧告する原動力となりました。また、2000年5月、NPT再検討会議で「核兵器廃絶」の「明確な約束」が合意されたことを受けて、10月、国連総会には日本国民6000万人の意思として報告され、核兵器廃絶の決議を再現する力となりました。
2005年のNPT再検討会議を前に、世界の反核平和運動の共同の行動として取り組まれた「いま、核兵器の廃絶を」の署名、2010年のNPT再検討会議に向けて取り組まれた「すみやかな核兵器の廃絶のために」の署名は、そしていま取り組まれている「核兵器全面禁止のアピール」署名は、いずれも「ヒロシマ・ナガサキからのアピール」署名の成果を引き継ぎ、発展させている運動です。
原水爆禁止運動は、いま、世界の草の根の連帯、政府・NGOの垣根を越えた新しい共同、被爆体験の継承を軸とした若い世代の国境を越えた連帯をはじめ、創意に富んだ、活力ある運動として広がり続けています。
『ドキュメント 核兵器のない世界へー被爆60年と原水爆禁止運動1945~2005』
| 編集・発行 原水爆禁止日本協議会(日本原水協)
日本原水協は創立50周年を記念し、「ドキュメント核兵器のない世界へー被爆60年と原水爆禁止運動1945~2005」を刊行しました。広島・長崎の原爆被爆以来の記録写真集をはじめ、1945年以後の反核平和年表(通史)、豊富な資料集等、時々の核兵器をめぐる情勢と原水爆禁止運動がよくわかる待望の書。主な内容は、・フォト編、・年表編、・資料編から構成されています。 フォト編は2部からなり第1部は、「1945年広島・長崎」「ビキニ被災と原水爆禁止運動」「軍事ブロック対立と原水爆禁止運動」の3つのテーマごとに写真と資料を収録。第2部は1985年から2005年までの20年間を、「『ヒロシマ・ナガサキアピール』と『平和の波』」「核兵器の独占か廃絶か」「世界の被ばく者とともに」「核兵器廃絶の『明確な約束』へ」「核兵器も戦争もない世界を」の5つのテーマで括り、核兵器をめぐる世界の動きと原水爆禁止運動の発展を焦点に収録しています。年表、資料も豊富、各年代ごとの「反核平和コラム」も好評です。核兵器廃絶・平和を願うすべての人々に活用してほしい1冊です。この「ドキュメント」は、日本図書館協会選定図書にも推奨されています。
A4版・172頁。頒価2800円。
|
このページの最初へもどる あるいは GensuikyoのTop Pageへもどる