長崎「被爆体験者」訴訟判決 長崎原水協 声明

2 次長崎「被爆体験者」訴訟の長崎地裁判決について
― 勝訴した原告15人に対し、
一刻も早く被爆者健康手帳を交付せよ ―

9月9日の長崎地裁判決は、原告 44 人中 15 人だけを被爆者と認定する一部勝訴の判決となった。
爆心地から東の東長崎地区内の旧矢上村、旧戸石村、旧古賀村で被爆した15人の被爆体験者を、「黒い雨」が降った証言があり、長崎原爆由来の放射性降下物が降下した相当程度の蓋然性が認められるとして被爆者として認め、その他の地域で被爆した29人の訴えを退けた。
今回の第2次訴訟で、原告側は広島高裁「黒い雨」訴訟と同じように、原告らそれぞれについて放射性降下物による被曝を主張立証し、各人の事情にもとづいて被爆者援護法1条3号該当性を求めた。しかし、長崎地裁判決は、被爆者援護法1条3号に該当する事実立証において、相当程度の蓋然性があることを原告に求め、広島高裁「黒い雨」判決の立場から後退させた。また、米軍マンハッタン調査団の残留放射線のデータを事実認定せず、灰などの飛散物の証言を無視し、「黒い雨」に関する一部の証言だけを採用したことは問題である。
今回の判決は、これまで厚生労働省が「住民の健康悪化は認められるが、それは放射能による影響
ではなく、もっぱら被爆体験による精神的影響によるもと」(2001年8月厚労省検討会の最終報告書)として開始した被爆体験者事業そのものが、制度として問題があることを明らかにしている。原爆被害を過少評価せず、被爆者の立場に立ち、原爆被害の実情に合った援護施策を国がとることが強く求められる。
原水爆禁止長崎県協議会は、勝訴した原告15人に対し、一刻も早く被爆者健康手帳を交付すること、被爆者援護行政を担っている長崎県、長崎市は自治体の法定受託事務の意味を理解し控訴しない姿勢を示すこと、さらに、すべての被爆体験者に速やかに被爆者健康手帳を交付すること、米軍マンハッタン調査団や理化学研究所仁科研グループによる残留放射線の測定結果および長崎原爆による雨や灰などの飛散物の被爆体験証言にもとづいて、すべての原爆被害者を援護することを強く求める。

2024年9月 13 日
原水爆禁止長崎県協議会