第1回 ミクロの世界への誘い(1)
1954年3月1日、ビキニ事件が起った時、私は物理学科の学生でした。「自分の専門にしようと学んでいる物理学が、水爆をつくり出し、人類を絶滅する可能性を現実のものにしてしまった」と大きなショックを受けました。そして、物理学 […]
1954年3月1日、ビキニ事件が起った時、私は物理学科の学生でした。「自分の専門にしようと学んでいる物理学が、水爆をつくり出し、人類を絶滅する可能性を現実のものにしてしまった」と大きなショックを受けました。そして、物理学 […]
人工原子核の狙いが核分裂に 第1回は、ミクロの物質の階層構造を見てきましたが、原爆の水爆も原子核のレベルの問題なので、しばらく原子核に焦点を当てます。 原子核をつくる陽子の記号はプロトンのpで、中性子の記号はニュートロン […]
ウランの核分裂の発見 1930年代の後半には世界の各地で、人工元素を創り出す実験が行われていました。原子番号92番のウランの原子核に中性子を衝突させ吸収させると、自然界にない、原子番号が93番の元素がつくられるだろうと予 […]
核分裂の連鎖反応と臨界量 核分裂が発見された1938年は、ナチス・ドイツがオーストリアを併合し、いつドイツが侵略戦争を開始するかという緊迫した世界情勢でした。実際に翌年の9月、ドイツはポーランド侵攻を開始し、第2次世界戦 […]
「アインシュタインが原爆を作るようにルーズベルト大統領に手紙を出したことが、核兵器製造の発端だった」とよく言われます。しかし、この手紙が大統領に届けられてから実際の原爆開発・製造のマンハッタン計画につながる経緯は、それほ […]
アインシュタインの手紙を受けて発足した「ウラン諮問委員会」の報告書がルーズベルト大統領のファイルに眠っていた1939年の秋からの2年の間に、ウランの核分裂に関する理解は急速に発展しました。 天然ウランの大部分を占めるウラ […]
1942年の6月、原爆開発の工場建設は陸軍工兵隊にゆだねられ「マンハッタン工兵管区」という名称で偽装されました。9月にレスリー・グローブス准将が総括責任者に任命されて、原爆開発は本格的に始まりました。 ウラン原爆開発にお […]
マンハッタン計画が始まる前に、ウラン235の原子核 の他にも、偶数の原子番号で奇数個の中性子をもつ原子核は、どんな小さなエネルギーの中性子を吸収しても、核分裂を起こすことが、ニールス・ボーアの原子核の模型から理論的に予想 […]
シカゴ・パイル1号で天然ウランの連鎖反応に成功しましたが、エネルギーの出力は最大200ワットにおさえられました。100ワットの電球わずか2個分です。この実験は原子炉を臨界状態にしてみることが目的で、これ以上出力をあげると […]
自発的核分裂の苦悩 プルトニウム239を生産する原子炉の運転をはじめると、大量の中性子が原子炉内に充満します。前回話したように、ウラン238の原子核が、中性子1個を吸収すればプルトニウム239がつくられます。さらに、中性 […]