3.3つの提案
事故が起こったあと、日本原水協は3つの提案をして、日本政府にも送付しました。
第1は、炉心の溶融を食い止め、放射能をこれ以上飛散させないこと、あわせて住民の安全確保と補償を直ちにきちんと開始することです。放射性物質は同心円状に広がるわけではなく風に乗って運ばれます。周辺の自治体や地域ごとに大気中や地表の放射線量をきちんと測定し、公表し、安全対策を図ることをはじめ、多くのことが求められます。
第2は、現在稼働しているすべての原発を総点検することです。電力会社、政府の安全神話にもかかわらず、全国の原発でマグニチュード9.0の地震や10メートルを超える津波を想定してつくられた原発は1つもありません。しかし、マグニチュード9.0の地震や10メートルを超える津波は決してまれなわけではありません。かつてのチリ地震や2004年のスマトラ沖地震などがいい例です。問題は、決して地震や津波だけではありません。ずさんな管理や操作ミス、対応の誤りなどの人為的なミスでもこれまで1999年、石川県の志賀原発でおこった臨界事故、同じ年に茨城県の東海村でおこったJCOの臨界事故、さらにはいま危機にある福島第1原発の3号炉そのものも実は1978年に日本で最初の臨界事故をおこしているのです。
いまも余震が毎日のようにおこっているさなか、対策が急がれていることは明らかです。また、世界中が技術的に断念している危険なプルトニウム方式、高速増殖炉「もんじゅ」の運転再開、使用済み核燃料からプルトニウムを取り出す青森県六ヶ所村の再処理工場の稼働、全国10カ所の炉で稼働ないし計画しているウランとプルトニウムを混ぜたMOX燃料などをただちにやめること。いま建設中あるいは計画中の14基の原発建設をやめること、寿命に達しているのに稼働しているすべての炉を廃炉にすることなど、どれも急がなければなりません。
そして、第3は、原子力依存から脱却して自然エネルギーの開発を推進することです。現在、日本の発電量の合計は9565万キロワットで、そのうち29%が原子力、残りは天然ガスが29%、石炭25%、水力8%、石油など7%、残りの1%がソーラーなどのいわゆる新エネルギーです(註)。
原子力エネルギーの今後をどうしていくか、専門家の中でも国民の中でも意見は分かれています。しかし現状での原発依存が第2,第3の福島原発と背中合わせであることは明らかです。既存のエネルギーのより効率的な活用、ソーラーやバイオマスなど新エネルギーの推進、低エネルギー社会への移行など、どれも積極的に研究、推進すべき分野です。
註:資源エネルギー庁が発表した電力調査統計によると、2011年12月の発電実績では、水力6.08%、火力86.26%、原子力7.32%、風力0.03%、太陽光0.01%、地熱0.30%、となっている。