4.原発と核兵器
地球温暖化など深刻な環境問題解決の切り札として、原子力エネルギーが改めて強調されてきました。
産業用原子炉は、原爆開発に始まる核兵器開発の延長上で開発、普及されてきました。
現在の核不拡散条約は、もともとは核兵器の開発・保有を既存の核保有国だけの特権とし、後続を断つこと目的としたもので、原子力の「平和利用」は、この「不拡散体制」を受け入れた国にだけ、「原子力開発の不可譲の権利」という報償として与えられる仕組みです。
原子力開発の基本となるウランの濃縮や燃料ウランの供給、原子炉建設の技術や材料はほとんど核保有国あるいは核保有国と同盟した国が握っています。まさに、おなじ先進国が引き起こした環境汚染と地球温暖化も、原子力を売り込めば次の「ビジネスチャンス」というわけです。しかし、原子炉の売り込みは、そのまま原発事故の世界的拡散につながります。こんどの福島原発の事故によって、アメリカ、ロシア、日本の「原子力先進国」のすべてメルトダウンという最悪の事故を引き起こしたことになります。こうした破滅的な事態を防ぐためには、原発先進国自身が、自然エネルギーへの転換を図り、その技術や資源を後続の国に援助していく以外にありません。もともと技術力を誇るはずの日本は、この分野でこそ手本となるべきでしょう。
原子力利用の最悪の形態は、核兵器です。広島ではわずか700グラム前後のウランの爆発が14万人の命を、長崎では1キログラムのプルトニウムが爆発したことで7万人の命をその年のうちに奪いました。その後遺はいまも、20万人を超える生存被爆者の心と体を苦しめ続けています。
原爆の被害の上に、最悪の原発事故を経験した日本は、自らの体験の上に、核兵器の全面禁止を求め、核兵器も戦争もない世界のために先頭に立たなければなりません。また、その上に人類生存の環境を守る平和で公正で豊かな社会を実現する先頭に立つことが求められています。