核態勢見直し(NPR)

アメリカ国防総省が議会に提出したアメリカの核戦略に関する報告書。1994,2002,2010年の三回にわたって発表されています。

 2002年のNPRは、アメリカが核兵器で対処すべき非常事態を、即時、潜在的、不意の3つに分類し、ブッシュ大統領が一般教書演説で「ならず者国家」とした北朝鮮、イラク、イラン、シリア、リビアとともに、中国やロシアの核保有国も含む7カ国を名指しし、核攻撃対象に挙げました。また、核兵器と通常兵器を一体化して使用するとし、“使いやすい核兵器”の開発や地下核実験再開を掲げています。さらに、核兵器とミサイル防衛(MD)を結合して使用する計画も示していました。
 2010年に発表された最新のNPRは、イラク戦争を行うなど覇権主義的なブッシュ政権からの「チェンジ」や「核兵器のない世界」を掲げて政権をとったオバマ大統領の下で出されたものでした。たしかに、非核保有国へ核攻撃をおこなわない「消極的安全保障」や、国防戦略における核兵器の役割を低減するなど、ブッシュ政権からの方向転換をはかろうとしています。しかし、イラン、北朝鮮、シリアなどへの核攻撃は排除されず、核抑止や同盟国への拡大抑止を維持するとしています。重大なのは、オバマ大統領がかかげた「核兵器のない世界」に向けた具体的な手立てや方向性がないことです。
 核兵器廃絶のためには、核保有国の政治的な意思が必要不可欠です。そのための草の根の運動が必要であることが示されています。