日本被団協のノーベル平和賞受賞で思うこと

日本原水協代表理事 高草木 博

10月11日、ノーベル委員会はことしのノーベル平和賞を日本被団協に授与すると発表しました。授賞理由は、核兵器のない世界の達成への努力と被爆体験の証言を通じ核兵器の使用を許さない倫理的規範を強めてきたことです。

この授賞は、被爆者はもちろん、原水爆禁止・平和に関わる内外の多くの人々からもすでに長い間、待望されていました。1977年には、全国の被爆者の被爆実態の調査の上に、日本の原水爆禁止運動と国連NGOが協力し、国連関係者や内外の多くの研究者も参加して国際シンポジウムを開催し、被爆の実相と後遺を世界に伝えました。

被爆40周年の1985年には、ノーベル平和賞を設立したアルフレッド・ノーベルとも関係が深かった国際平和ビューロー(IPB)が日本被団協を授賞候補に指名し、それ以後、ノーベル賞受賞者を含めて、「被団協に平和賞を」の声が広がっていました。IPBはその後も、私が覚えているだけでも1990年、95年、2000年、05年、15年、22年と、併せて7度に渡って指名しています。

核使用の「タブー」が危機に
さらされていることに強い警告も

今回の授賞は日本被団協に対してです、ノーベル委員会は、この授賞によって「みずからの痛ましい体験と苦痛に満ちた記憶」を伝え平和の希望と運動を育んでいるすべてのヒバクシャを称えたいと言っています。この機会に日本被団協の皆さんにあらためて祝意を表明し、朝鮮半島など海外の被爆者の努力を称え、また、これまで被団協・被爆者を推薦してくださった世界のNGOや平和団体の皆さんにも深く感謝を表明したいと思います。

この授賞が、被爆者と運動の功績を評価するだけでなく、核使用の「タブー」が危機にさらされていることに強い警告を発していることも、忘れてならない点です。発表文でも、核保有国による核軍備の刷新、現在の紛争での核兵器使用の威嚇、新たな拡散の動きなどをあげ、「核兵器がもっとも破壊的な兵器であることを思い出さねばならない」と強くよびかけています。

被爆者のメッセージひろげ
核兵器禁止条約に参加する日本実現へ

最後ですが、発表文は、被爆者もやがてはいなくなる日が来ることを想い、だが、「力強い記憶の文化とひき続く行動で、日本の新しい世代が被爆者の経験とメッセージを継承している」と結んでいます。たいへん示唆に富んだ指摘です。

この授賞を新たな力に、被爆80年へ、被爆者のメッセージを広げ、核兵器禁止条約に参加する日本の実現へと前進することが何よりも大きな被爆者への感謝と励ましになるものと確信しています。

(たかくさき・ひろし)