「核抑止力」論を放棄し、核兵器禁止条約に参加を
岸田首相の国連演説を前に、日本原水協が申し入れ
申し入れには、石川敏明(全労連副議長)、千坂純(日本平和委員会事務局長)、今井誠(全商連常任理事)、安井正和(日本原水協事務局長)、嶋田侑飛(同担当常任理事)が参加。外務省軍縮不拡散・科学部の林美都子審議官と清水知足軍縮担当統括審議官が応対しました。
内閣総理大臣 岸田文雄殿
日本政府への申し入れ
2023年9月15日
原水爆禁止日本協議会
第78回国連総会が開幕し、岸田首相の出席の予定が報じられています。
いま、人類は、ウクライナでの戦争にもみられるように、戦争と核兵器使用の危険、核大国間の対立と緊張が続き、軍事同盟や軍事ブロックの拡大、「近代化」の名による核兵器の増強、総額300兆円ともいわれる軍事費と大軍拡など、国連憲章の理念とも諸国民の平和の願いとも逆行する重大な危機に直面しています。
同時に世界には、このような歴史の逆流に抗し、国際紛争の平和解決と武力行使・威嚇の禁止、核兵器の全面禁止・廃絶を求める圧倒的な世論と、その世論を背景に、国連や核不拡散条約(NPT)の会議などがくり返し合意してきた「核兵器のない世界」を現実に推し進める強大な国際政治の発展があります。
世界の五大陸に広がった非核兵器地帯や中東など紛争が続く地域で非核化を実現しようとする粘り強い努力、そして、2021年1月には国連を母体に成立した核兵器禁止条約が発効し、その署名国は92、批准国は68に達し、すでに実体を持つ国際法として機能し、今年11月27日からはニューヨークの国連本部で第2回締約国会議が開かれようとしています。
日本政府は、核兵器禁止条約の交渉をボイコットし、岸田首相の「核兵器禁止条約は出口だ」という言明にもかかわらず、国連総会では同条約に反対票を投じ続けています。日本が自国の安全をアメリカの「核の傘」に依存していることが理由とされています。
しかし、「核抑止力」の名による大国の核戦略は、それ自体、国際紛争における武力の行使や威嚇を禁じた国連憲章をじゅうりんするばかりか、必然的に「仮想敵国」を前提とし、国民に「外からの脅威」を煽り、本来可能な平和的外交的な問題解決の努力さえ破壊するものです。
昨年6月開かれた核兵器禁止条約第1回締約会議には、締約国だけでなく、非締約国からも34か国の代表がオブザーバーとして出席しました。そこにはドイツやノルウェー、オーストラリアなどアメリカの同盟国の政府も含まれています。第2回締約国会議でもこの流れは続くばかりか、核保有国でさえ核兵器禁止は国民的世論となっていることが様々な形で示されるでしょう。
こうした流れに立って、国連総会では、岸田首相は核の惨禍を国民が体験した唯一の国であり、その戦争の反省から紛争問題の平和解決を原則とし、憲法で戦争を放棄した国の代表として、核大国をはじめ、すべての加盟国に対し、国際紛争の平和解決と武力の不行使など国連憲章の平和のルールの順守、核兵器のない世界を達成する国際合意の実行をよびかけ、日本がその努力に加わる決意を表明すべきです。
そのために、私たちは具体的に以下、要請するものです。
1. 国際紛争の解決手段としての武力の行使・威嚇を排し、平和的手段による解決を求めた国連憲章の原則、とりわけ核兵器の使用と威嚇の放棄をよびかけること
2. 各国の軍備から核兵器の一掃を誓った国連総会第一号決議、核軍備撤廃に通じる核保有国の核軍備廃絶、「核兵器のない世界」を確立する「枠組」の確立など、核兵器廃絶のためのこれまでの国際的合意を確認し、ただちにその実行努力を開始すること
3. 核兵器禁止条約を支持し、日本が条約に参加するとともに、世界の国々にも参加を呼びかけること、「核抑止力」論など、核兵器の使用・威嚇政策への依存を放棄すること
4. 当面、核兵器禁止条約第2回締約国会議に、オブザーバーとして参加すること
以上