核兵器禁止条約
第3回締約国会議への
原水爆禁止日本協議会の声明

最初に、核兵器禁止条約(TPNW)の履行と普遍化の努力を続けるみなさんに深い敬意を表明し、この会議の成功を心から希望する。

いま、国連憲章の平和のルールが破られ、無法な殺りくと破壊、武力や核による威嚇が続く中で、この条約は、非核兵器地帯や非核政策を追求する国々と協力して、地球的規模で核兵器の禁止を生きた現実へと変えている。それは世界の人々に大きな希望を与え、まだ条約に加わっていない核保有国や「核の傘」に依存した国でも、市民社会のなかに広範な支持と連帯を生み出している。

核兵器の廃絶は、国連総会も第一号決議で目標に据え、その後も幾度にもわたって確認した緊急の目標であり、さらに広く、かつスピード感をもって前進させるべきだと思う。そのために以下の二点を提起し、強調したい。

第一は、被爆者や核実験の被害者と協力した核兵器の非人道性についての共通の認識をさらに広げ、強める努力だ。

昨年12月、ノルウェーのノーベル委員会は、みずからの苦難を証言し、核兵器のない世界の実現に貢献したとして日本被団協に2024年度の平和賞を授与した。私たちは心からその受賞を喜ぶとともに、原水爆がもたらす破滅的帰結をより広く世界の人々、とりわけ次の時代を担う人々に伝えるべきことを強調したい。

不幸なことに、原爆の被害は、その直後の占領下での「最高司令」によっていっさいの報道が禁じられ、集められた資料は没収され、事実は何年も隠蔽され、被爆者への支援や謝罪、補償はいっさい行われなかった。その後の、太平洋を舞台に続けられた核実験でも、同じことが起こった。1954年、アメリカがマーシャル諸島で行った水爆実験では、日本のマグロ漁船約一千隻が放射能で汚染され、マグロの投棄を余儀なくされた。 

日米政府は、汚染したマグロのための「見舞金」には合意したが、汚染の調査は早々に打ち切り、最初の一隻を除く他のすべての漁船員の被害を隠蔽し、いまに至るも謝罪も補償も援助も拒否している。

被爆者のメッセージの核心にあるものは、「人類は核兵器と共存できない」という警告だ。そこには、国連総会に「一掃する」ことを決意させた「原子兵器」の人類の生存と相容れない非人道性が、生きた体験として記憶に残されている。私は、核兵器禁止の大義に関わる問題として、政府と市民社会が被爆者や核実験被害者を励まし、その認識を世界的に共有するよう努力を提起したい。

第二は、いわゆる「核抑止力」論に対する対応についてだ。我々は、「核抑止力」論とは、それ自体違法な最悪の大量破壊兵器による威嚇の別名に他ならないと考えている。それは、侵略も戦争も抑止しないばかりか、核軍備競争の悪循環を助長し、平和と安全をいっそう危うくする。この謬論を打ち破るためにも、政策的理論的解明とともに、核兵器と共存できないとする被害の実相の全面的な解明と普及が重要だと思う。

私たちは、それを世界諸国民の行動とするために、広島・長崎の被爆から80年の今年8月、6日と9日に、そして来年4月の第11回NPT再検討会議を目標に、核兵器のない世界のためのグローバルな市民の行動を呼びかけたいと考えている。それは:

  • すべての国で、自国の核兵器禁止条約への参加を求め、世論喚起のために多様で創意的な行動を起こすこと、
  • 核保有国、とりわけ五つの「核兵器国」政府に対し、「自国の核軍備の完全廃絶を達成」をはじめ、「核兵器のない世界の平和と安全を実現する」行動を求めること、
  • 広島、長崎の被爆の実相を伝え、人類の生存と相容れない核兵器の非人道性を伝えること、だ。

私たちは、日本の運動として、その成功のために新たに被爆写真を世界に送る運動を発足させる用意をしている。

以上

2025年2月26日 原水爆禁止日本協議会