第2回NPT準備委員会レポート

日本政府の
核兵器禁止条約参加を求める声大きく

NGOセッションで発言する土田事務局次長

 NPT第3回準備委員会が7月22日から8月2日まで、ジュネーブの国連本部で開かれました。日本原水協から、土田弥生事務局次長と嶋田侑飛担当常任理事が参加しました。日本原水爆被害者団体協議会から児玉三智子事務局次長が参加し、一緒に活動しました。土田さんがリポートします。

孤立する核大国

ウクライナやガザでの戦争や殺戮、核兵器使用の威嚇もロシアとベラルーシの演習など新たな段階に入ったもとで、国連をはじめ多くの非核国が、世界が直面している核危機に懸念を表明し、核保有国や「核の傘」の国への批判を強めていました。

とりわけ、ロシアに対する批判が集中していました。侵略やウクライナの州の占領について、何の反省も示さないロシアに対し、チェコやリトアニアなど東欧諸国が次々と猛反発。ロシアの孤立は深まっていると感じました。

米国は、ロシア、イラン、北朝鮮、中国が悪いと言い、自分たちは「核兵器のない世界の平和と安全の達成」に貢献していると述べましたが、それを聞いて本当にしらけました。ロシアのウクライナ侵略を利用した世界的な軍事ブロック強化・軍拡、イスラエルの擁護など、米国にもきびしい批判が向けられました。

NPTでも核兵器の非人道性

核兵器禁止条約が誕生して、NPTでの議論が変わってきていると感じました。非核国は核保有国に対し、6条の義務や過去の再検討会議の合意の履行、国連憲章や国際法に基づく対応を求めました。そればかりでなく、核兵器の非人道性や核兵器禁止条約がNPTを補完する、特に、第6条の履行を補完するということ、禁止条約への参加をよびかけました。

核兵器の非人道性を全面に出したカザフスタンの発言やキリバスの発言は印象的でした。メキシコは米ロの対話を呼びかけていました。今回、フィリピン政府が、児玉さんをメインのスピーカーに据えて非人道性のサイドイベントをおこなったのも、これまでにないとりくみでした。「核抑止力」論を打ち破り、核廃絶を前進させるうえで、カギは、核兵器の非人道性をもっともっと知らせることだと確信しました。

NATO加盟国も核兵器で安全を守れないと

 今回代表団は、NATO(北大西洋条約機構)加盟国であるドイツとノルウェーの大使と話し合いました。NATO加盟国はこちこちの「核抑止」論者だと思っていた私が驚いたことは、「核兵器では平和と安全は守れないでしょ」とこちらが言ったときに、両大使とも「そうだ」と同意したことでした。児玉さんと握手をして、「あなたがやっている重要な活動を今後ともつづけてください」と述べました。核兵器をどうにかしないといけないと考えているようです。ドイツは、「ロシアが核使用の威嚇をしているもとで、廃絶は困難。現実的にやれることに集中するべき」、「禁止条約も核保有国が入らないもとでは、むずかしい」と述べました。

日本の深刻な核抑止力依存

 その後、日本政府と話し合いをして、同じ「核の傘」の国でも、他国政府との違いが鮮明になりました。日本政府は、ロシアや北朝鮮の脅威を持ち出し、「安全保障環境がきびしい」から、核抑止力維持・防衛力強化だと述べました。私たちは、「すべてをきびしい安全保障環境のせいにしている。北朝鮮や中国、ロシアのやっていることにどう対応するかは、別問題。被爆し、核兵器の非人道性をよくわかっていると言っている政府が、どうして核抑止力なんだ!」と応戦し、被爆国・憲法9条を持つ国としての対応を求めました。「核兵器の非人道性をわかっている」というのは、口先だけだと思いました。

 次に、政府に核兵器禁止条約の流れをどう評価しているのか、聞きました。「私たちはNPTよ」と言って、禁止条約については、何らふれませんでした。人類史上、歴史的にも重要な国際法が誕生したのに、それを検討する姿勢はなく、全く無視している感じでした。日本政府の被爆国にあるまじきひどい態度に、児玉さんも私たちも怒りが沸騰しました。

日本政府の禁止条約参加-運動への期待

 今回、もう一つ、驚いたことがありました。マレーシアから「あなたたちは、日本政府を核軍縮に関与させるためにどのような活動をしているのか」。インドネシアから「日本はどうして、アメリカばかり見ているのか。アジアに対してどうしてもっとオープンになれないのか」と質問が出たことです。

私たちは日本政府を禁止条約に参加させるための「非核日本キャンペーン」にとりくみ、署名、原爆展、自治体決議を進めていることを話すと、「全国の自治体の40%で決議をあげているのはすごい」と言われました。

 東アジアの問題でも、ASEANのイニシアティブへの期待を述べると、マレーシアはASEANの中心原則である対話の推進にとりくむ、東アジアの問題では、朝鮮半島の非核化が一番の優先課題だと述べました。

NPT準備委員会議長との面会

 なかでも、カザフスタンとの面会では、NPT準備委員会の議長と懇談しました。議長は「日本で力を持っている被団協や原水協に日本政府を禁止条約に参加させるために、もっと頑張ってほしい。被爆国である日本政府が禁止条約に入れば、核廃絶に大きなインパクトをもたらす」と述べました。

日本の運動の役割

中満泉国連上級代表と面会する右から、嶋田、土田、児玉各氏

日本政府に対する注文や意見がこれだけオープンに寄せられたことは、初めてです。日本政府を禁止条約に参加させることが、国際的にも求められていることを痛感しました。

日本の運動の果たすべき役割は、内外で核兵器の非人道性=広島・長崎の被爆の実相を広げること、非核日本キャンペーンを飛躍させ、日本政府を禁止条約に参加させることです。被爆80年に向けて、この課題を全国でやり切りましょう。

(つちだ・やよい)