被爆 80年―いまこそ決断と行動を 国際会議宣言を高らかに採択ー被爆80年原水爆禁止2025年世界大会
原水爆禁止 2025 年世界大会-国際会議宣言
被爆 80年―いまこそ決断と行動を
アメリカ軍が広島(1945 年 8 月 6 日)と長崎(8 月 9 日)に原子爆弾を投下してから 80 年目をむかえる。被爆 80 年のいまこそ、世界は核兵器の廃絶を決断し、行動すべきである―広島に集った私たちは、核兵器がもたらした言語に絶する惨状をあらためて思い起こし、核兵器のない平和で公正な世界への道をひらくために世界の人々に訴える。
広島と長崎で使用された原子爆弾は、その比類のない破壊力と放射線で、二つの都市を瞬時に焼き尽くし、その年の末までに 21 万人の命を奪った。それは「この世の地獄」と呼ばれた。地獄の苦しみは、生き残った者にも及んだ。被爆者は愛する者を奪われた深い悲しみとともに、原爆の後遺症に苦しみ、差別と偏見、経済的な困難を強いられた。
地球のいかなる地にも、この悲劇を決して繰り返してはならない―この決意こそが戦後政治の原点であった。「言語に絶する悲哀を人類に与えた戦争の惨害から将来の世代を救(う)」(国連憲章)ために創設された国際連合は、その総会第一号決議(1946 年 1 月 24 日)で核兵器を「国家の軍備から排除すること」を決定した。
その後の米ソの核軍拡競争の激化や度重なる核戦争の危機にもかかわらず、核使用の手を抑えてきたのは、被爆者の証言と、それに鼓舞された世界の市民の声と行動であった。日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)のノーベル平和賞受賞は、その歴史的貢献を称え、励ますものである。
私たちは今、再び核使用の危険に直面している。とりわけ、国連憲章を踏み破る武力行使や、大幅な軍備拡大を進める国々が公然と、核戦力への依存を表明していることは重大である。ウクライナ侵略をつづけるロシアの核威嚇、イスラエルとアメリカによるイランの核関連施設への先制攻撃、アメリカなど NATO 諸国の「核抑止力」の強化と核兵器の近代化、核衝突の危険をはらんだインド・パキスタンの対立、さらには東アジアでの緊張と核軍拡など、深刻な事態が進行している。核兵器は「安全保障に不可欠」とする主張が、核兵器保有の衝動を誘発していることも見過ごせない。
核使用を阻止し、核兵器廃絶へ前進するうえで、「核抑止」論の克服がいっそう重要となっている。「核抑止」は、核攻撃による破滅的な結末、ヒロシマ・ナガサキの再現を前提にした政策であり、人道的、道義的に決して許されない。同時に、「核抑止」政策の「失敗」「誤作動」は、国境をこえた破滅的結末をもたらす。実際、誤算や誤認などによる核使用寸前の事態が繰り返されてきた。「核抑止」で安全を保障される国はない。この非人道的で、危険きわまりない政策の放棄を、核保有国とその同盟国に強く求める。
しかし、私たちには危機を乗りこえ、前進する確かな展望がある。力による自国の利益追求ではなく、国連憲章にもとづく秩序の再興こそが、世界の平和と安全を実現する道である。「核兵器のない世界」をめざすとりくみは、その重要な一環である。
核兵器を違法化し、その活動を包括的に禁じた核兵器禁止条約は、73 カ国が批准し、94 カ国が署名する国際的な規範となりつつある。この条約を生み出した被爆者を先頭とする市民社会と諸国政府との共同こそが、世界の本流である。「国際連合憲章の目的及び原則の実現に貢献することを決意」(禁止条約前文)してつくられたこの条約は、いまや「激動の時代における希望の光」(第3回締約国会議「政治宣言」)となっている。禁止条約支持への世論をひろげ、参加国を拡大することが急務である。
相つぐ戦争や武力行使など、力による国益追求を許してはならない。国連憲章と国際法に基づく平和を求める市民と多数の国々の声が、世界の大勢となっている。イスラエル政府のガザにおけるジェノサイドの一刻も早い停止と恒久的な停戦、パレスティナ国家の創設を含め、国際法と国連決議に基づくパレスティナ問題の公正で、平和的な解決を求める。「中東非核・非大量破壊兵器地帯」の創設がいっそう重要となっている。ロシアのウクライナ侵略を国連憲章と国際法にもとづいて終結させなければならない。
アジア、アフリカ、ラテンアメリカなど世界における非核と包摂の取り組みがすすめられている。ASEANインド太平洋構想(AOIP)の推進をはじめ、東アジアで緊張と対立を生み出している問題もまた対話と包摂、外交によって解決すべきである。朝鮮半島の非核化と平和構築は、交渉によって一体的に追求されなければならない。
膨大な軍事費の増大をくいとめることは、平和とくらしを守る重要な課題となっている。緊張と対立を深刻化させる差別や分断、排外主義を許してはならない。
日本は唯一の戦争被爆国であるとともに、侵略戦争の反省の上につくられた平和原則を憲法に明記する国である。被爆・戦後 80 年をむかえ、その国際的責務はかつてなく大きい。私たちは、日本政府に核兵器禁止条約への参加と被爆者の国家補償を求める日本の運動に連帯する。「拡大抑止に関するガイドライン」を策定し、米軍の核使用を議論するなど、米核戦略に日本が加担を深めていることは重大である。憲法にもとづく平和外交を求め、軍備拡大と日米軍事同盟の強化に反対する日本の運動は、アジアの平和への重要な貢献である。沖縄をはじめとする、米軍基地の縮小、撤去を求めるたたかいに連帯を表明する。
私たちは、核戦争阻止と核兵器廃絶を求める壮大な行動を展開するよう世界によびかける。
- ヒロシマ・ナガサキの被爆の体験と実相を受け継ぎ、広げることを運動の中心にすえて、核兵器廃絶を共通課題とする行動を世界各地で多様にくりひろげよう。被爆者の招聘もふくめ、ヒロシマ・ナガサキの実相、核実験被害の実態を広げるとりくみを各国ですすめよう。そのために各国政府と国連組織に支援を訴える。あらゆる形態の核実験の停止を求めよう。被爆者と核実験被害者への補償・支援を実現しよう。
- 核兵器禁止条約への参加を求める世論と運動を各国で発展させよう。とりわけ核保有国とその「核の傘」に依存する国における世論と運動が重要である。被爆者と核実験被害者の支援、環境修復のための取組み(禁止条約第6、7条)に参加、協力しよう。
- 核兵器廃絶をめざす諸国政府・国連との共同をさらに発展させよう。2026 年に開かれる核不拡散条約(NPT)再検討会議にあたって国際共同行動をおこなうことをよびかける。今秋の第 80 回国連総会、2026 年の核兵器禁止条約再検討会議を、政府組織との共同の重要な節目としてとりくもう。
- 国連憲章の擁護をかかげ、侵略と戦争、軍拡に反対し、平和と軍縮を求める様々な運動と連帯して、「核兵器のない平和で公正な世界」をめざす世界的な流れを発展させよう。枯葉剤など戦争被害者への補償・支援と被害の根絶を求めよう。対立と分断、軍拡の流れを転換し、人類が直面する諸問題の解決に資源を振り向けよう。ジェンダー平等を平和と核軍縮に不可欠の課題としてとりくもう。環境と気候危機、貧困と格差、差別と排外主義、人権と民主主義などの課題にとりくむ運動との連帯と共同を発展させよう。
2025 年8月4日
原水爆禁止 2025 年世界大会-国際会議