日本政府にNPT再検討会議を前に、
外務省を通じて申し入れ

2025年4月23日、日本原水協は、日本政府に対して2026年NPT再検討会議第3回準備委員会の開催にあたっての申し入れを、外務省を通じておこないました。
安井正和事務局長、石川敏明全労連副議長、日本平和委員会千坂純事務局長をはじめ、東京、埼玉、神奈川、愛知の都道府県事務局長合わせて8人が参加しました。
4月日から始まる核拡散防止条約(NPT)再検討会議の準備委員会開催に先立ち、NPT第6条と核兵器廃絶につながるこれまでの合意を履行し、あわせて核兵器禁止条約の普遍化を促すよう日本政府に対して求めました。
具体的には、唯一の戦争被爆国の政府として、広島・長崎の被爆の実相、核兵器使用の非人道的影響について強調し、核兵器の惨禍を防ぐ唯一の確実な保証として速やかに核兵器を廃絶すべきと主張すること、条約第6条をはじめ、核軍備の全面廃絶を達成する「明確な約束」など核兵器廃絶にかかわる過去の合意を、会議のコンセンサスとして第11回再検討会議への勧告に反映させるよう努力すること。すべての核兵器国にたいし、2010年再検討会議の合意に従い、核兵器による威嚇・使用を行わないこと。新たな核兵器と運搬手段の「近代化」の名による開発、増強、配備の中止、核兵器使用のドクトリンや作戦計画の放棄などを求めること、また、日本を含め、「拡大核抑止」に依存する国々による核共有、「拡大核抑止」の名による核兵器管理の共有・移譲など、NPT第1条、2条の侵犯をただちにやめること。そして、核兵器禁止条約の普遍化の努力を支持し、その促進を呼びかけることです。
参加者からは、科学的根拠もない「核抑止力」に固執する姿勢、核兵器禁止・廃絶へ禁止条約への参加を求める国民の声と乖離する日本政府のあり方をただすよう意見がだされました。「核兵器使用されることが無いようにその履行を求める上で、「拡大核抑止」に頼らざるを得ないと言う立場は障害になっているのではないか」。また「脅威に直面しているからと言って、ロシアによるウクライナへの威嚇、そのロシアの態度を肯定するものだ。国際紛争においては核兵器で対抗するという態度に他ならない。日本も軍事的な緊張の同じ立場になれば使用することを前提に多国と向き合うことに。核兵器を前提とした交渉は被爆国としてダメだ」といった意見を外務省に突きつけました。
申し入れ書を受け取った外務省担当官は、条約第6条および過去の合意が、今回の会議でもそのコンセンサスとして勧告に反映できるよう努力したいと話し、申し入れの一部について同じ思いであるとのべました。しかし、安全保障上の観点、ロシア、中国、北朝鮮との安全保障上の観点から「拡大核抑止」が必要であり、核兵器禁止条約の促進については「立場の違い」を強調しました。核攻撃に対して、「対応」するためにも、「核抑止力」が必要であるとの認識を示し、それは「威嚇ではなく、防衛として」必要だとの見解を示しました。さらに、核兵器禁止条約は、「出口」としてその重要性を口にしながら、核兵器国も参加していないし、包括的に核兵器を禁止することは「核抑止力」を否定することになるとして、核兵器禁止条約締約国会議へオブザーバー参加すらしない日本政府の立場を、改めて繰り返し正当化しています。
安井事務局長は、最後に「「拡大抑止」に頼る立場では核保有国を変えることはできない。日本政府が核兵器国、アメリカに禁止条約に参加するよう説得する、そういった議論と外交努力を」と求めました。
短い時間ではあり、これまでの日本政府の立場を改めて強調する外務省からの回答でしたが、参加者からは「くりかえし、申し入れ、議論を交わすことでプレッシャーをかけ、核兵器の非人道性と国民の声を伝えていくことが大事であるとの声が聞かれました。
2025年4月23日 日本政府への申し入れ
2026年核不拡散条約(NPT)
再検討会議第3回準備委員会にあたって
内閣総理大臣 石破 茂殿
外務大臣 岩屋 毅殿
原水爆禁止日本協議会
2026年核不拡散条約(NPT)再検討会議の第3回準備委員会が、4月28日から5月9日までニューヨークの国連本部で開催されます。
周知のように2010年NPT再検討会議では、米ロ英仏中の核保有5か国を含む189か国のすべての締約国が「核兵器のない世界の平和と安全を達成する」ことで一致し、その「枠組」を創るために「特別の努力」をすることに合意しました。
それ以後、2017年に国連は核兵器禁止のための交渉会議を開催し、賛成122、反対1の圧倒的大差で核兵器禁止条約を採択し、2021年1月22日、条約は発効要件を満たし、国際法として成立しました。現在、核兵器禁止条約の署名国は94か国、批准国は73か国となり、3回の締約国会議を経て、条約はその規範力と実効力を高めています。昨年の第79回国連総会では、核兵器禁止条約を支持し促進する決議が国連加盟国の3分の2、127か国の賛成で採択され、禁止条約への支持はひろがり続けています。
私たちは、第3回準備委員会が来年の再検討会議に対し、NPT第6条と核兵器廃絶につながるこれまでの合意を履行するよう一致して勧告し、あわせて核兵器禁止条約の普遍化を促すよう求めています。
核不拡散条約は、条文冒頭に「核戦争が人類に惨害をもたらす」ものであり、その危険を回避するために「あらゆる努力をはらう」と決意し、そのために核兵器廃絶の方向で有効な措置をとることを宣言しています。
世界で唯一、原爆の惨禍を体験し、80年を経たいまも多くの被爆者が心身の傷に苦しむ日本は、核兵器の破滅的、非人道的影響について訴え、核兵器の全面禁止・廃絶をすべきことを誰に対しても明確に伝えられる立場にあり、政府にはそれを言葉だけでなく具体的提案と行動にして示すことが求められています。私たちは以上の見地から、第11回NPT再検討会議第3回準備委員会にあたり日本政府が次の行動をとられるよう強く申し入れるものです。
1、唯一の戦争被爆国の政府として、広島・長崎の被爆の実相、核兵器使用の非人道的影響について強調し、核兵器の惨禍を防ぐ唯一の確実な保証として速やかに核兵器を廃絶すべきと主張すること、
2、条約第6条をはじめ、「核兵器国による自国の核軍備の全面廃絶を達成」する「明確な約束」(2000年再検討会議)、「核兵器のない世界の平和と安全の達成」(2010年再検討会議)、1995年再検討・延長会議での中東非核・大量破壊兵器地帯の創設など、核兵器廃絶にかかわる過去の合意を、主旨、表現をゆがめることなく確認し、会議のコンセンサスとして第11回再検討会議への勧告に反映させるよう努力すること、
3、すべての核兵器国にたいし、2010年再検討会議の合意に従い、核兵器による威嚇・使用を行わないこと、新たな核兵器と運搬手段の「近代化」の名による開発、増強、配備の中止、核兵器使用のドクトリンや作戦計画の放棄などを求めること、また、日本を含め、「拡大核抑止」に依存する国々による核共有、「拡大核抑止」の名による核兵器管理の共有・移譲など、NPT第1条、2条の侵犯をただちにやめること、
4、核兵器禁止条約の普遍化の努力を支持し、その促進を呼びかけること