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米国大統領 一般教書演説

合衆国首都 ワシントンD.C.

2002年1月29日 午後9時15分


 ありがとう。下院議長、チェイニー副大統領、議員のみなさん、ご来賓のみなさん、国民のみなさん。今夜われわれがこうして集うなか、わが国は戦争下にあり、経済は不況で、文明社会はかつてない危険に直面している。しかし、国の現状はかつてないほど力強いものである。(拍手)

 前回の演説の際ここに集ったとき、われわれは衝撃と苦しみの渦中にいた。その後4カ月という短いあいだに、わが国は被害者を慰め、ニューヨークと国防総省の再建を開始し、すばらしい同盟関係を築き、数千人ものテロリストを捕まえ、拘束し、世界から追放し、アフガニスタンのテロリスト訓練キャンプを破壊し、(アフガニスタンの)国民を飢えから救い、国を残忍な圧制から解放した。(拍手)

 カブールのアメリカ大使館に、星条旗がふたたびはためいている。アフガニスタンを占領していたテロリストたちはいま、グアンタナモ基地の独房の中にいる。(拍手)部下に命をかけろと命じていたテロリストの指導者たちは、いま、生き延びるため逃亡している。(拍手)

 アメリカとアフガニスタンはいまやともにテロと戦う同盟国である。われわれは、アフガニスタン再建にあたり共同するパートナーである。今夜われわれは、解放されたアフガニスタンの暫定指導者、ハミド・カルザイ議長を歓迎したい。(拍手)

 前回この議場にわれわれが集っていたとき、アフガニスタンの母と娘達は、自らの国にいながら捕らわれの身にあり、仕事をしたり、学校にいくことを禁じられていた。いま、女性達は解放され、アフガニスタン新政府の一部を担っている。ここに、あたらしく女性省大臣に就任したシマ・サマール博士も歓迎したい。(拍手)

 われわれが前進することは、アフガンの人々を元気づけ、われわれの同盟関係の決意をさらに固くし、米軍を力づける。(拍手)米軍部隊に行動を命じたとき、私は部隊の勇気と能力を100パーセント信頼していた。今夜、彼らのおかげで、われわれはテロに対する戦争に勝利しつつある。(拍手)われわれ米軍の男性兵士、女性兵士たちが送ったメッセージは、合衆国のすべての敵にはっきりと届いている。海と大陸を隔て7千マイル離れていようとも、山頂や洞窟に隠れていようとも、アメリカの正義から逃れることはできない?というメッセージである。(拍手)

 多くのアメリカ人にとって、この4カ月は、完全になくなることのない悲しみと痛みの日々であった。ある退職した消防士は毎日毎日あの事故現場にいき、そこで死んだ2人の息子に少しでも近づこうとしていた。ニューヨークでおこなわれたある追悼式では、少年が、自分のフットボールに次のようなメッセージをつけて命を落とした父親に捧げた。「お父さん、これを天国に持っていって。いつか再びお父さんとプレーできる日まで、僕はフットボールをしたくない。」

 先月、マザルシャリフで亡くなったCIA職員で海兵隊員のマイケル・スパン氏の墓前で、妻のシャノンさんは、「私の愛する、常に忠実な〔訳注:米国海兵隊の標語〕人」と別れの言葉を述べた。今晩シャノンさんはこの場に来てくれている。(拍手)

 シャノン、愛する人を失ったあなたたちにたいし、われわれの大義は正しく、アメリカは、自由のために命を捧げたマイケルをはじめとする人たちにたいする恩義を決して忘れないことをお約束する。

 われわれの大義は正しく、これからも続く。アフガニスタンでわれわれが発見したことは、われわれが最も恐れていたことを裏付け、前途に横たわる任務がどれだけ大きいかを物語っていた。ビデオには敵の憎しみの深さが写されていた。彼らは、罪のない命が失われたことを笑っていたのである。この憎しみの深さは、彼らがたくらむ破壊行為の狂気の度合いに匹敵している。われわれが発見した資料は、アメリカの原発や公共水道施設の一覧図から、化学兵器製造の詳細な説明書、アメリカの諸都市の偵察地図、アメリカと世界の歴史的建造物の細かい説明書にまでおよんでいた。

 われわれが発見したこれらのものは、テロに対する戦争が終わるどころか、今はじまったばかりだということを裏付けている。9月11日、飛行機をハイジャックした19人の男たちのほとんどは、他の何万人と同様、アフガニスタンのキャンプで訓練を受けていた。何千もの危険な殺人者たちが、ときには無法の政府から支援を受けて、殺人方法を教えられ、いまや、いつ爆発するかわからない時限爆弾のように、世界中に散らばっているのである。

 アメリカの警察官や同盟パートナー諸国のおかげで、何百人ものテロリストが逮捕されている。しかし、訓練を受けた数万人のテロリストはまだ捕まっていない。これらの敵は、全世界を戦場と考えている。だから、われわれは彼らがどこに潜もうと、追跡しなくてはならない。(拍手)訓練キャンプが続く限り、テロリストをかくまう国がある限り、自由は危険にさらされている。アメリカとわれわれの同盟国は、そんなことを許してはならないし、決して許さない。(拍手)

 アメリカは、二つの大きな目標を追求するうえで、これからも断固たる態度をつらぬき、忍耐と不屈の精神で挑みつづける。目標のひとつは、テロリストの拠点を閉鎖し、テロリストの計画を粉砕し、テロリストを裁きにかけることである。もうひとつは、化学、生物、核兵器を手に入れようとしているテロリストと政権が、合衆国と世界を脅そうとするのを阻止することである。(拍手)

 米軍によりアフガニスタンのテロ訓練キャンプは破壊されたが、キャンプはまだ少なくとも十数カ国に存在している。ハマス、ヒズボラ、イスラム聖戦、ジャイシェ・モハメドなどの地下テロ組織は、人里離れたジャングルや砂漠で活動しており、大都市の中枢にも潜伏している。

 目に見える形で軍事行動がとられているのはアフガニスタンであるが、アメリカは他の地域でも行動している。いまフィリピンに米軍部隊がいる。一人のアメリカ人を処刑し、いまも人質をとっているテロリストの組織を追跡するためにフィリピン軍の訓練を援助しているのだ。米軍兵士たちは、ボスニア政府とも協力し、現地のアメリカ大使館爆破を策謀していたテロリストを捕らえた。アメリカの海軍は、兵器の輸入や、ソマリアでのテロリストキャンプ設置を阻止するためアフリカの沿岸を監視している。

 私は、すべての国がアメリカの呼びかけに耳を傾け、自分達の国とアメリカとを脅かしているテロリストという寄生者たちを消滅させることを願っている。多くの国が積極的に行動している。パキスタンはいまテロにたいし断固たる措置を講じている。ムシャラフ大統領の確固たる指導力を称賛したい。(拍手)

 しかし、中には、テロと対決することに及び腰の政府もある。はっきりと言っておく。彼らが行動しないのなら、アメリカが行動する。(拍手)

 ふたつ目の目標は、テロを後ろ盾する政権が、大量破壊兵器をもってアメリカや友好国、同盟国を脅かすのを阻止することである。こうした政権のいくつかは、9月11日以降、だいぶなりをひそめてきた。しかし、われわれは彼らの本質を知っている。北朝鮮は、国民を飢えさせる一方で、ミサイルと大量破壊兵器で武装を進めている。

 イランは、選挙で選出されていない少数の者たちが、自由を願うイラン国民を抑圧する一方で、こうした兵器を積極的に追い求め、テロを輸出している。

 イラクは、アメリカに対する敵意を誇示し、テロを支援しつづけている。イラクの政権は、炭そ菌、神経ガス、核兵器の開発を10年以上にわたり企ててきた。この政権は、何千もの自国民を殺すため有毒ガスを使った過去がある。死んだ子どもをかばうような姿勢の母親の死体が残されていた。この政権は、国際査察に合意しておきながら、査察員を国から追い出した過去がある。この政権は、文明世界から何かを隠そうとしているのだ。

 このような国家と彼らのテロ同盟者たちは、悪の枢軸を形成しており、世界の平和を脅かすために武装を進めている。大量破壊兵器を入手しようとすることで、これらの政権は、深刻で日々高まる危険をもたらしている。彼らは、こうした兵器をテロリストに提供しかねず、そうなれば、テロリストに、彼らが抱く憎しみに見合う手段を与えることになる。彼らは、われわれの同盟国を攻撃したり、アメリカを脅そうとしかねない。こうした状況のもとで、無関心でいることは破滅的な犠牲をもたらすであろう。

 われわれは、同盟国と結束し、テロリストとテロリスト支援国家には、大量破壊兵器の製造と運搬を可能にする材料、技術、専門知識はけっして渡さないようにする。われわれは、アメリカと同盟国を突然の攻撃から守る効果的なミサイル防衛の開発と配備をおこなう。(拍手)すべての国家は知るべきである。アメリカは、国の安全を確保するために必要なことは何でもする。

 行動にあたっては慎重を期するが、まだ行動の時ではない。私は、事の発生を待ったり、危険が近づくのを座視したりはしない。アメリカ合衆国は、世界のもっとも危険な諸政権が、もっとも破壊的な兵器をもってわれわれを脅かすのを許したりはしない。(拍手)

 テロに対するわれわれの戦いは幸先の良いスタートを切ったが、始まったばかりである。このキャンペーンは、われわれが生きているうちに終わらないかもしれない。しかし、われわれが生きている間に遂行しなければならないし、遂行される。

 途中で止まることはできない。いま足を止めてしまい、テロキャンプを放置したり、テロ国家を抑制せずにいれば、安全だという感覚は偽物で一時的なものとなってしまう。歴史は、アメリカと同盟国に行動せよと命じている。自由の戦いをおこなうことはわれわれの責任であり特権である。(拍手)

 第一の優先課題は、つねにアメリカの安全保障であり、これは、私が議会に送った予算案に反映されている。私が提案した予算案は、アメリカのための3つの偉大な目標を支えるものだ。つまり、この戦争に勝ち、国土を守り、景気を回復させることである。

 9月11日の出来事は、アメリカそしてこの議会の最も優れた能力の結集をもたらした。みなさんとともに、国民の団結力と決意を称賛したい。(拍手)いまアメリカ国民には、国内の問題に対応するときでも、これと同じ気概を持ってほしい。私は、共和党員であることに誇りを持っている。しかし、この戦争に勝ち、国民を守り、雇用を創出するには、共和党員でも民主党員でもなく、なによりもアメリカ人として行動しなくてはならない。(拍手)

 この戦争には膨大な費用がかかる。われわれは、これまで一カ月あたり十億ドル以上を費やしてきた。一日当り3千万ドル以上である。その上、今後の作戦に準備しなくてはならない。アフガニスタンでは、高価な精密兵器が、敵を倒し、罪のない人たちの命を救うことが証明された。だから、このような兵器がもっと必要である。老朽化する飛行機を新しいものに代えて、世界のどこでも迅速に安全に部隊を送り出せるよう、米軍をより機敏にする必要がある。われわれの兵士たちは、最高の兵器と、装備と、訓練を受けるに値する者たちである。給与も引き上げるべきである。(拍手)

 私の提案した予算案は、この20年で最高の軍事費の増額を要求している。自由と安全にかかる費用は高いが、決して高すぎることはない、というのがその理由である。国を守るためにどんな費用がかかろうと、われわれは必ず支払う。(拍手)

 私の予算案の次の優先課題は、国民を守るためにはできることをすべて行うことであり、進行しつつあるさらなる攻撃の脅威にたいし、アメリカを強くすることである。9月11日からいくら月日が経過しても、ここから教訓を引き出さなければ、より安全になることはできない。アメリカはもはや広大な海で守られてはいない。われわれを守るのは、海外での精力的な行動と、国内での警戒を高めることのみである。

 私は予算案で、本土防衛の戦略を維持するための予算の倍化を、4つの分野に焦点をあてて要求している。4つの分野とは、生物テロ、緊急対応策、空港・国境警備、諜報活動の向上である。炭そ菌などの致死的な病気とたたかう資金を増やす。英雄的な警察と消防士を養成し装備するため、州と地域社会を援助する資金を増やす。(拍手)情報の収集と共有を向上させ、国境の警備を強化し、空の旅の安全対策を強め、出入国者をチェックする技術を駆使する。(拍手)

 本土防衛は、アメリカをより強くするだけでなく、多くの意味でより良い国とする。生物テロ研究から得た知識で、国民の健康を向上させることができる。より有能な警察・消防署は、地域社会がより安全になることを意味する。国境警備が強化されれば、不法薬物とのたたかいに役立つであろう。(拍手)政府が本土防衛を強めるなかでも、アメリカは、これからも国民の目と耳による警戒に依存する。

 クリスマスの数日前、ある客室乗務員が乗客がマッチを擦ろうとしているのを見つけた。乗務員と乗客たちはすばやくこの人物を取り押さえた。この男は、アルカイダで訓練を受け爆発物で武装していたのである。この飛行機に乗っていた人たちが警戒心を備えていたおかげで、200人近くの命が救われた可能性があるのだ。今夜、ここに、この客室乗務員、エルミス・モウタディエとクリスティーナ・ジョーンズを招いている。(拍手)

 国家安全保障と本土防衛の資金を確保したのち、最後に残った大きな優先課題として私が予算案で要求したものは、アメリカ国民の経済的安全である。(拍手)こうした大きな国家目標を達成する、つまり、戦争に勝ち、本土を守り、景気を回復させるためには、予算は小額かつ短期間の赤字になる。議会が出費を抑え、財政上責任あるやり方で行動してくれればである。(拍手)われわれには明確な優先課題があり、国内でも、海外で示してきたと同様の目的と決意を持って行動しなくてはならない。つまり、戦争で勝ち、この不況に打ち勝つことである。(拍手)

 失業しているアメリカ国民は、援助を必要としており、私は、失業手当の拡大と、医療費への直接支援をおこないたいと思う。(拍手)しかし、アメリカの労働者は、失業手当よりも、安定した給与の支払いを望んでいる。(拍手)国民が働くことにより、アメリカは繁栄する。よって私の経済政策は、「雇用創出」の一言で言い表すことができる。(拍手)

 良い雇用創出のためには、良い学校教育が必要であり、この分野でわれわれはよいスタートを切っている。(拍手)共和党員も民主党員も一緒になって、歴史的な教育改革を進めており、子どもが落ちこぼれないようにしてきた。私は、両党のメンバーと仕事をともにできることを誇りに感じている。ジョン・ボーナー議長、ジョージ・ミラー議員。(拍手)ジャド・グレッグ上院議員。(拍手)ほんとうにわれわれの仕事を誇りに感じていて、友人であるテッド・ケネディ〔訳注:ケネディ一家の一員。従来から共和党の宿敵と考えられている〕にさえ私は賛辞を送ったほどである。(笑い、拍手)クロフォード〔訳注:ブッシュ大統領の地元〕のコーヒーショップの連中は、私がこんなことを言うなんで信じられないと思うかもしれないが(笑い)この法案にたいしわれわれが行ってきた仕事は、身構えないで、結果に焦点をあてれば、何が可能になるかを示している。(拍手)

 課題はこれだけではない。改善された「ヘッドスタート計画〔訳注:恵まれない就学前の子どもたちに教育・医療などのサービスを提供し、父母や地域にもこうした事業に参加させようとする企画〕」と幼少期からの発展計画をもって、子どもたちに読む力を身に付けさせ、よい成績を上げるようにする必要がある。(拍手)教員と教員養成の質を向上させ、アメリカのために、すべての教室に優秀な教員を配置するという偉大な目標をもって、大規模な教員募集活動を始めなければならない。(拍手)

 良い雇用は、信頼でき、安価なエネルギー供給にも依存している。議会は、省エネを奨励し、技術を促進し、インフラを建設するために行動しなくてはならず、国内でのエネルギー供給を増やすために行動しなくてはならない。そうすれば、外国の石油への依存を減らすことができる。(拍手)

 良い雇用は、貿易の拡大にかかっている。新しい市場拡大は雇用を生む。よって、今度こそ貿易促進権限を承認してくれるよう議会にお願いしたい。(拍手)貿易とエネルギーというふたつの主要な課題について、下院は雇用創出の法案を採択した。上院にたいし、この法案を通すよう強く求めたい。(拍手)

 良い雇用は、健全な税政策にかかっている。(拍手)昨年、議会では、私の減税計画は小さすぎると考えた人もいたし、大規模すぎるとした人たちもいた。(拍手)しかし、税金徴収の知らせを受け取ったとき、ほとんどの国民が、この減税額でちょうど良いと思ったのである。(拍手)議会は国民の声を聞き、減税、子ども援助金の倍化、相続税の廃止をもってこれに応えた。長期的成長のために、また、国民が将来を計画するのを援助するために、こうした減税を永続させよう。(拍手)

 景気後退からの脱出の道、雇用創出への道は、工場と設備への投資を促進すること、減税を加速して国民が使える資金を増加させることによる経済成長である。アメリカの労働者のために、この景気刺激策を成立させようではないか。(拍手)

 良い雇用は、福祉改革の目的となるべきである。こうした重要な改革を再度承認する中でも、われわれは政府への依存を少なくし、国民ひとり一人に働くことの尊厳を提供しなくてはならない。(拍手)

 国民は、医療の保障がなければ、経済状況もあっという間に悪化することを知っている。議会にたいし、今年、患者の権利章典(拍手)の成立に協力するようお願いするが、(拍手)これは保険に入っていない労働者が健康保険に入れるよう信用貸しを行う、(拍手)また、退役軍人の予算をかつてないほど増加させ、(拍手)高齢者に、処方箋薬も保険の範囲にいれる実質的かつ近代的なメディケアシステムを与えるようにするためのものである。(拍手)

 良い雇用は、退職後の生活保障につながるべきである。議会に、401Kと年金計画のための新しいセーフガードを法律化するよう求めたい。(拍手)仕事に励み、苦労をしてきた雇用者が、雇用主が失敗したからすべてを失うような危険は負うべきではない。より厳しい会計基準と、厳重な情報公開を義務づけることで、アメリカの企業は、雇用者と株主にたいする説明責任をより強め、経営の最高水準を保たなければならない。(拍手)

 退職後の生活は、社会保障の約束が守られることにもかかっている。われわれはこの約束を必ず守る。社会保障を財政的に安定させ、定年前の退職を選ぶ労働者のために、個人退職金口座を許可しなければならない。(拍手)

 議員のみなさん、われわれはこれから数カ月、これ以外の問題にも、ともに取り組むことになる。生産的な農業政策(拍手)、よりクリーンな環境(拍手)、とりわけ少数者のあいだでの住宅所有の拡大(拍手)、慈善事業と宗教団体の努力を促進する政策などである。(拍手)私と一緒に、テロに対する戦争に向けたのと同じ協力の精神をもって、これらの重要な国内問題に取り組んで欲しい。(拍手)

 この数カ月のあいだ、私は、試練のときにアメリカの本当の姿をみる機会を得ることができて、身が引き締まる思いをした。われわれの敵は、アメリカは弱く物欲の国であり、恐れと利己心のためばらばらになるだろうと見ていた。しかし、彼らは凶悪であったと同時に、間違っていた。(拍手)

 アメリカ国民は、勇気と愛情、力と決意をもって、目を見張るような対応をした。英雄と会い、家族を抱擁し、レスキュー隊員の疲れ果てた顔を見るなかで、私はアメリカ国民に深い尊敬の念を抱いた。

 ここに、危機のアメリカに、強さと冷静さと優しさをもたらしたファーストレディ、ローラ・ブッシュにたいし、私と一緒に感謝の気持ちを表明して欲しい。(拍手)

 われわれのなかには、9月11日にもたらされた凶悪行為を望んだものはいない。しかし、あの攻撃のあと、われわれが鏡をのぞいて見ると、そこには以前より良くなったアメリカの姿が映し出されていたかのようであった。われわれは、自分たちがお互いに責任を負い、国に責任を負い、歴史に責任を負う国民だということを思い出したのだ。われわれは、財(goods)を蓄積するよりも、善(good)をおこなうことを考えるようになったのである。

 余りにも長い間、われわれの文化は、「良いと思ったらそれをやれ」と教えてきた。いまアメリカは、「前へ進もう〔訳注:9月11日の犠牲者の一人が家族によく使っていた言葉でこの間有名になったフレーズ〕」(拍手)という、新しい倫理観と信念を身につけるようになった。兵士たちの犠牲、消防士たちの強い絆、一般国民の勇気と寛容の中で、われわれは、新しい責任の文化がどんなものになるかを垣間見ている。われわれは、自分達より大きい目標を達成できる国民でありたい。この、またとないチャンスを逃してはならない。(拍手)

 私は今夜、すべてのアメリカ人に少なくとも2年間、つまり、残りの人生のうちの4000時間を、地域社会と国家のために奉仕することをお願いしたい。(拍手)すでに奉仕活動に従事しているたくさんの国民には感謝を申し上げたい。どんなことをしたらいいのか分からない人は、こんなことから始めてみてはどうだろうか。このかん生まれている機会を維持し、広げるために、アメリカ合衆国の「自由の部隊」に参加して欲しい。「自由の部隊」は、必要とされている三つの分野に焦点を当てた活動である。国内で非常事態が起こった際の対応、地域社会の再建、そして、アメリカの思いやりの心を世界中に広げるものである。

 「自由の部隊」の目的のひとつは、本土防衛にある。アメリカは、大規模な緊急事態の際動員できる、退職した医師や看護婦、警察と消防署を支援するボランティア、危険を察知するにあたって訓練を受けた交通・公益事業関係者を必要としている。

 アメリカは、地域社会の再建を担う人たちも必要としている。子どもたち、とりわけ親が刑務所にいる子どもたちに愛情を注ぐ指導者が必要だ。問題をかかえた学校は有能な教師をもっと必要としている。「自由の部隊」は、「アメリカ部隊」や「シニア部隊」のすばらしい働きをさらに広げ向上させて、あらたに20万人のボランティアを募るものである。

 アメリカは、わが国の思いやりを世界の隅々にひろげるため、国民の力を必要としている。そこで、「平和の部隊」が約束してきたことを更新したいと思う。今後5年で「平和の部隊」ボランティアを倍化し(拍手)、彼らに、イスラム世界における発展と教育、機会を広げる新しい仕事に加わって欲しい。

 この逆境のなか、またとない契機が訪れている。この瞬間をつかみ、われわれの文化を変えなくてはならない。このかん、何百万もの国民が奉仕活動や礼儀正しく親切な行為をおこなってきたが、この勢いを集めれば、より大きい善をもって悪を克服することができる。(拍手)この戦時においても、恒久平和をもたらすであろう価値にむけて世界を導くという、すばらしい機会が訪れている。

 どんな社会でも、父親と母親は、自分の子どもたちが学び、貧困や暴力のない社会で自由に生きて欲しいと願っている。抑圧されたり隷属することを切望したり、夜中に秘密警察が家にやってくるのを楽しみに待つような人間は、世界中どこにもいない。

 これに疑問を抱く人は、アフガニスタンを見て欲しい。ここではイスラムの「街」で人々が、歌をうたい歓喜をあげて、専制政治の崩壊を迎えたではないか。懐疑的な者には、イスラム自身の豊かな歴史を見せよう。イスラム社会は、何世紀にも渡り学問と寛容と発展を遂げてきた。アメリカは、自由と正義を守ることにより、指導的役割を果たすであろう。なぜなら、自由と正義は、正しく、真実であり、世界中のあらゆる人々にとって不変のものだからである。(拍手)

 どの国もこうした願いを支配することはできず、このような願いが存在しない国はない。われわれは自分たちの文化を他におしつけるつもりはない。しかし、アメリカは常に、人間の尊厳という譲り渡せない要求を固く支援する。これらの要求とは、法の支配、国家権力の制限、女性の尊重、私的所有、言論の自由、公平な司法、宗教的寛容である。(拍手)

 アメリカは、こうした価値を、イスラム世界をふくめ世界中に広げる勇敢な人たちの側に立つ。なぜなら、われわれには、脅威をなくしたり、恨みを封じ込めたりする以上に大きい目標があるからだ。われわれは、テロに対する戦争を超えた、公正で平和な社会を追求する。

 このチャンスの時、われわれ共通の危険が従来の敵対関係を消し去りつつある。アメリカは、ロシア、中国、インドとともに、かつてないやり方で、平和と繁栄のために行動している。すべての地域で、自由市場、自由貿易、自由社会が、生活を向上させるために、彼らに力をもたらしている。欧州からアジア、アフリカからラテンアメリカにいたるまで、われわれは友好国、同盟国とともに、テロ勢力には自由の流れをおしとどめることはできないことを示すであろう。

 前回ここで演説したとき、私は、生活が正常に戻ることを願っていると述べた。いつかの面で生活は正常化している。しかし、けっして元には戻らないこともある。こうした難題は、この時期を生きてきたわれわれを変えた。われわれは、決してゆるぐことのない真実を学んだ。悪は現実のものであり、これには対抗しなくてはならない、ということだ。(拍手)人種や信条のすべての違いを超え、われわれはひとつの国であり、ともに哀悼し、ともに危険に直面している。アメリカの本質の奥深くには、自尊心があり、それは冷笑的な考えよりも強いものである。多くの国民がふたたび、悲劇のなかでさえも、いや悲劇のなかだからこそ、神が近くにいることに気づいている。(拍手)

 ほんの一瞬のうちに、われわれは、これが自由の歴史のなかで決定的な10年となること、われわれが人類の出来事において唯一無二の役割を求められていることを悟った。世界が、これほど明確で重大な選択に直面することはめったにないことだ。

 われわれの敵は、他人の子どもたちを、自殺と殺人の任務に送り出している。彼らの大義と信条は、専制政治と死である。われわれは、はるか昔のアメリカの建国の日になされた別の選択を支持する。ここでこの選択を再度確認したい。われわれは万人の自由と尊厳を選ぶ。(拍手)

 断固たる目標を掲げ、われわれはいま前進する。われわれは自由の対価を学んだ。自由の力を示してきた。国民のみなさん、この大きな戦いの時、われわれは自由の勝利を成しとげるだろう。

 ありがとう。神の祝福あれ。(拍手)
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