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【2014年3・1ビキニデー日本原水協全国集会/基調報告】
安井正和(日本原水協事務局長)

みなさん、こんにちは。事務局長の安井正和です。基調報告をおこないます。
 はじめに、集会参加のご来賓のみなさん、海外代表のみなさん、そして地元静岡と全国の代表のみなさんに心から敬意を表します。
 ことしのビキニデー集会は、アメリカ政府がビキニ環礁でおこなった水爆実験による被災から60年という大きな節目、そして被爆70年と2015年NPT再検討会議を翌年に控えた重要な年に開かれています。
 日本原水協はビキニ被災60年にあたり、ロンゲラップ島民支援代表団をマーシャルに派遣しました。第五福竜丸元乗組員の大石又七さんも参加されています。私は、ロンゲラップ島民をはじめ、マーシャルのビキニ水爆被災者に心から連帯の意を表するものです。

みなさん、
 「原水爆の被害者は私を最後にしてほしい」-ビキニ水爆実験による「死の灰」を浴びた第五福竜丸無線長の久保山愛吉さんが、病床から訴えたこの言葉は、60年を経たいまも、私たちの心に響いています。
 ビキニ水爆は、久保山さんの犠牲にとどまらず、当時の日本国民の主要なタンパク源であった魚を汚染し、農作物や雨水を汚染し、8000万人もの国民のいのちと生活を脅しました。無数の人びとが「原水爆による被害を二度とくりかえしてはならない」と、核実験禁止、原水爆禁止の声をあげ、署名運動に立ち上がり、3000万人を超える署名となって、日本の政治を動かす歴史的な原水爆禁止運動へと進んでいきました。
 それ以後、半世紀をこえる原水爆禁止運動は、核兵器全面禁止を求める大きな世論と運動をつくりあげ、「核兵器のない世界」の実現を目標とする国際政治の合意を実現させてきました。いま、被爆70年、2015年NPT再検討会議に向けて、多くの政府が2010年の「核兵器のない世界の達成」の合意の実行、核兵器禁止条約の交渉開始を求めて行動を起こしています。それを実際に実らせるカギを握っているのは、市民社会の世論と運動です。
 2月9日に開催した日本原水協第86回全国理事会は、唯一の被爆国の運動として、日本原水協がその役割を担い、内外で共同を大きく広げていく決意を固めました。私はこの全国理事会の方針をふまえつつ、このビキニデー集会から8月の原水爆禁止世界大会へ、さらに2015年春の次回NPT再検討会議へと、運動を発展させるために、行動提起をおこないます。

 その第一は、核兵器全面禁止条約の交渉の開始を求め、国際政治への働きかけを強めること、そのために「核兵器全面禁止のアピール」署名の飛躍をつくりだすことです。
昨年の国連総会の決議採択にも示されているように、今日、国連加盟国の7割を超える国ぐにが核兵器禁止条約の交渉開始を支持しています。ほんの一握りの国がその気になれば、核兵器禁止条約の交渉開始は可能です。
 最大の障害は、核保有国や同盟国が「核兵器のない世界」の実現に合意しながら、「ステップ・バイ・ステップ」(段階的)が「現実的アプローチ」なとどと主張し、「核抑止力」論や「拡大抑止」論などに固執して、核兵器禁止条約の交渉に反対し、あるいは棄権の態度をとり続けていることにあります。
重要なことは、核兵器禁止条約の交渉開始を求める流れを大きく発展させ、「核抑止力」にしがみつく核保有国を追い詰めていくことです。そのために、日本原水協は来春の2015年NPT再検討会議の開催に当たり、被爆国民の意思を伝えるためにニューヨークに代表団を派遣します。それに向けて、核兵器全面禁止条約の交渉開始を求める国際的な共同行動を発展させることをよびかけます。

みなさん、
 国際政治でも、2015年に向けて、何としても「核兵器のない世界」への前進をきりくらくという勢いが生まれています。2月13日、14日に第2回「核兵器の人道的影響に関する国際会議」がメキシコで開かれ、146か国の政府代表が参加しました。日本原水協からも土田次長が参加し、日本被団協の田中煕巳事務局長、藤森俊希次長、カナダ在住のセツコ・サーローさんなど被爆者が訴えをおこない、ジョゼフ・ガーソンさんもNGOの代表として出席され、重要な役割を果たしました。
 会議の「議長まとめ」は、「核爆発が起こった場合の広範な被害と悪影響は、核兵器の存在そのものが不条理であることを示し、最終的には人間の尊厳に反する」と指摘し、「過去において、兵器は法的に禁止された後に廃絶されてきたという事実を考慮する必要がある。これこそが核兵器のない世界をつくる道筋」であり、「法的拘束力ある手段を通じて新たな国際的基準と規範を達成する」よう、諸国政府と市民社会によびかけました。

 4月27日からニューヨークの国連本部で次回NPT再検討会議に向けた第3回準備委員会が開催されます。日本原水協としてふさわしい代表団を派遣し、昨年10月の国連要請を大きく上回る署名を提出し、被爆国日本の運動の勢いを示しましょう。
 いま、地域ぐるみ、自治体ぐるみ署名へ新たな勢いをつくりだすチャンスです。
 ナショナルセンターの全労連は、300万筆の目標を決め、数十万枚の署名用紙と署名推進グッズとしてクリアファイルを5万枚作成し、この春から一人100筆の署名チャレンジャーを組織して署名運動を全国で展開します。
 新日本婦人の会は、2月18日、19日に都道府県の平和部長と若い世代の交流会議を開催し、「世界を動かす」体験など、「NPTプレ企画」を楽しく計画し、200万署名目標の達成へダイナミックな行動を提起しました。
 また、全国各地で署名推進実行委員会や2015年NPT再検討会議にむけた実行委員会がつくられ、署名運動への勢いが作られつつあります。
本日の集会を起点に「原爆展」、被爆者証言活動など、ヒロシマ・ナガサキの実相をひろげながら、「核兵器全面禁止のアピール」署名の飛躍をつくり出しましょう。3月の6・9行動を、集会後の全国的な行動として、全国の草の根で、原爆写真パネルを使い、楽しく、創意的にとりくもうではありませんか。

参加者のみなさん、
 提起の二つ目は、アメリカの「核の傘」に依存して、核兵器禁止の流れに逆行する日本政府への国民的批判を発展させ、憲法9条と「非核三原則」を持つ被爆国として、核兵器全面禁止の先頭に立つ日本を実現することです。
 日本政府は、昨年秋の国連審議では、内外の強い批判と世論の圧力を前に、「核兵器の人道的影響に関する」共同声明の125か国に名を連ねました。しかし、他方では、マレーシア決議、ハイレベル会合のフォローアップ、核兵器使用禁止、など、核兵器の禁止に連なる決議すべてに、棄権の態度を取り続けています。
 1月20日、岸田外相は、長崎大学において、「国家安全保障戦略」にもとづく核軍縮・不拡散政策を語り、その中で核保有国に対して「万一の場合にも、少なくとも、核兵器の使用を個別的・集団的自衛権に基づく極限状況に限定するよう宣言すべき」と述べました。
 この主張は、日米が集団的自衛権を行使するような戦闘において、米国が「極限の状況」と判断すれば、核兵器の使用は許されるというものです。公然と核兵器の使用を認めることは、安倍首相が強行しようとしている憲法解釈変更による「集団的自衛権」行使と連動する危険極まりないものです。
 日本政府がいまなすべきことは、憲法9条と非核三原則をもつ被爆国として、核兵器全面禁止を積極的に提唱し、「核の傘」に依存する態度を改め、核持ち込みの「密約」を破棄し、非核三原則を誠実に実行することです。日本政府に対して「核兵器全面禁止の決断と行動を求める」自治体意見書を3月議会、6月議会を通じて全自治体にひろげましょう。
 いま、立憲主義の否定など、憲法をじゅうりんし、「戦争する国づくり」に暴走する安倍政権に対して、立場の違いをこえて大きな批判が広がっています。原発問題でも3月9日には原発ゼロの大統一行動として国会大包囲行動が行われます。こうした大きな流れに確信をもって、国民的な非核の世論をつくろうではありませんか。

参加者のみなさん、
 三つ目は、8月の原水爆禁止世界大会の成功にむけたとりくみです。ことしの世界大会は、核兵器全面禁止・廃絶をめざす2014年度の活動の最大結集の場、2015年NPT再検討会議と被爆70周年に向けて内外で核兵器廃絶の圧倒的高まりを創りだす歴史的な大会として成功させなければなりません。
代表派遣のとりくみをただちに開始しましょう。
 5月6日には、国民平和大行進がスタートします。安倍政権による「戦争する国づくり」の暴走が、平和、民主主義、暮らしを根底から脅かす中で、住民の安全といのちを守る自治体の役割はますます重要となっています。このビキニデー直後から、全自治体を対象に平和行進への賛同と参加、署名推進と原爆展開催の事前の働きかけをおこない、従来の枠を超えて幅広い住民参加を実現しましょう。

 行動提起の最後に、原水協の強化を訴えます。国際政治の中で核兵器廃絶の発言力をもち、全国的にも非核平和の国民の共同をすすめ、草の根から国民の世論を担う日本原水協の役割はますます大きくなっています。
 本日の集会を契機に、原水協の強化に足を踏み出しましょう。「原水協通信」は、日本全国のすべての地域原水協・個人会員と日本原水協を結ぶ絆です。まだ購読されていない方は、このビキニデーへの参加の機会に是非、購読していだたき、原水協活動への一歩をはじめられることを心からお願いし、報告とします。