原告2人に勝利判決 仙台地裁却下処分取り消し

 仙台地裁(潮見直之裁判長)は20日午後、原爆症認定却下処分の取り消しなどを求めた波多野明美さん(68)、新沼弎雄(みつお)さん(83)の2人に勝利判決を言い渡しました。判決は、これまでの集団訴訟での地裁判決同様、国の機械的な認定行政を批判しました。原爆被害は、一時的な身体的被害にとどまらず、家族を巻き込み、世代をもこえて被爆者を苦しめてきました。国は、この被害の全体をとらえて被爆者を救済する責任があります。被爆者をこれ以上苦しめることは絶対に許されません。原爆症認定基準の誤り、国に被爆者支援政策の見直しを迫る司法判断は定着しました。厚労省は判決を受け入れ、ただちに原爆症認定制度を改善すべきです。
 現在、16地裁、3高裁で229人の原告がたたかっています。22日には東京地裁で判決が言い渡されます。原爆症認定制度の改善の突破口を切り開こうと、首都圏を中心に各地から東京判決後の諸行動に代表が駆けつけます。厚労省を控訴するな、直ちに解決せよの声で包囲しましょう。
残留放射線の影響を過小評価
機械的適用を批判  仙台判決

 仙台地裁判決は、「審査の方針には、被曝線量の推定については、残留放射線による外部被曝及び内部被曝の影響を過小評価している疑いを否定できない」と指摘し、「審査の方針に基づいて放射線起因性の判断を行うに際しては、これによる被曝線量の推定値及び原因確率を一つの要素として考慮しつつも、これを機械的に適用することなく、個々の被爆者の具体的な被爆状況、被爆後の行動、被爆直後に現れた身体状況の有無とその態様、被爆後の生活状況、病歴、申請にかかる疾病の症状や発症に至る経緯、治療の内容及び治療後の状況等を総合的に考慮した上で、原爆放射線による被曝の事実が当該疾病の発生を招来した関係を是認できる高度の蓋然性が認められるか否かを検討すべきものと解するのが相当」であると述べ、国の審査基準を批判しています。
原告団・弁護団、支援の会が声明
 集団訴訟仙台原告団・弁護団、宮城県原爆被害者の会、日本被団協、全国弁連などは、「原爆症認定集団訴訟仙台地裁判決についての声明」を発表しました。
原告紹介
 新沼弎雄さんは、22歳の時に爆心地から2キロの比治山の部隊兵舎で被爆、倒れた兵舎の隙間で助かりました。その後広島市内で電線復旧などに従事しました。
 全身倦怠、下痢、嘔吐などの急性症状に襲われました。50代で腎臓がん、60代で膀胱がんを患いました。02年に膀胱がんで申請、却下されました。
 波多野明美さんは、7歳の時に1.8キロの路上で被爆。その後、広島駅付近を歩くなど一週間野宿し、下痢や脱毛などの急性症状がでました。43歳の時に胃がんが見つかり手術、その後遺症が現在もつづき、体重は28.3キロしかありません。
 国は、胃がんは被爆に起因していると認めましたが、その深刻な後遺症について認定を拒んでいます。波多野さんも02年に却下され、提訴しました。
「遠距離」「入市」の被爆者
 国は、「科学的な認定」の根拠として、被曝線量推定システム「DS86」を採用しています。爆発後1分以内に放出された「初期放射線」による、近距離での対外被曝しか影響を認めず、残留放射能や放射性物質を体内に取り込んだことによる内部被曝の影響をいっさい無視しています。
 法廷でも、爆心地から2キロ以遠で被爆した「遠距離被爆者」や救援・捜索などで後で爆心地付近に入った「入市被爆者」が、被爆直後に放射線被害に特有な脱毛、嘔吐、下痢、血便、発熱などの急性症状に苦しみ、今日も腫瘍やがんなどに苦しんでいることを証言しました。
 さらに、被爆直後から診療にあたった医師が、無傷だった「入市被爆者」が、直接被爆した人びとと同様の症状で相次いで亡くなった状況などを証言しています。
 原爆被害が過小評価される仕組みになっている原爆症の認定基準を抜本的に改めるべきです。
厚労省は控訴するな、直ちに解決を!
東京地裁判にあたっての諸行動

■3月22日(木)
10:00~     東京地裁判決言い渡し 地裁前集合
11:00~12:30 厚労省前での宣伝行動
14:00~16:20 判決報告集会 四谷・主婦会館
■23日(金)
10:00~16:00 厚労委員などへの報告行動(衆院第2議員会館第1会議室)
11:00~12:30 厚労省前宣伝行動
■26日(月)から30日(金) 連日行動
8:30~ 9:30 早朝宣伝行動 国会議事堂駅
11:30~13:00 厚労省前行動
14:00~16:00 国会議員要請行動
 集合は26日と30日が衆院第1議員会館、それ以外は衆院第2議員会館です。
■4月2日から4日 連続座り込み
2日(月)
12:00~13:00 厚労省包囲デモ
 日比谷公園霞門集合
13:00~    座り込み  厚労省前
4日(水)16:00まで
原爆症認定制度改善を要求署名
衆参両院議員200名が賛同

 これまでに原爆症認定制度改善を求める署名に賛同している国会議員は、衆議院で130名、参議院で70名、計200名の国会議員が署名しています。

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