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原水協通信

毎月発行している日本原水協の機関誌です。国内外の反核平和運動についての情報が満載です。 日本原水協のウェブサイト→ http://www.antiatom.org/

「核兵器の全面禁止を!」

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声明 原爆症認定集団訴訟東京地裁判決について

国は、判決を受け入れ、被爆者の救済に力を尽くせ
                              2007年3月22日
                              原水爆禁止日本協議会
 原爆症認定却下処分の取り消しを求める裁判で、本日、東京地裁は、原告の被爆者30名のうち、21名について原告勝訴の判決を言い渡しました。
 原告団、弁護団、被団協や東友会、原水協も参加する「支援ネット」などは、すでに連名で「声明」(★)を発表し、国に対して、①判断を尊重し、控訴を断念すること、②現在の審査のあり方を根本的に改め、被爆者を救済すること、③被爆者の意見を聞く協議の場を設けることを要求しました。日本原水協は、原告全員と弁護団、支援者の皆さんに敬意を表するとともに、この立場を全面的に支持するものです。
 この判決をもって、政府の認定行政のあり方は昨年5月の大阪地裁判決以来、広島、名古屋、仙台、東京と、五つの判決で連続的に断罪されたことになります。これらの裁判を通じて最大の焦点となったのは、原爆症の認定にあたって、原爆の初期放射線のみを対象にして作成した「基準」に固執し、現実に被爆者におこった被害に目を塞ぎ、訴えを退けていく、機械的で冷酷な被爆者援護行政のあり方そのものでした。実際、裁判でなされた国側の主張とは、「原告の多くは被曝をほとんどしていない」、急性症状は「赤痢、感染症、栄養不良のせい」などと言い張るほど乱暴なものでした。
 こうした主張の非科学性は、この間の裁判だけでなく、それ以前の長崎松谷原爆裁判、京都小西原爆裁判、東京での東訴訟のそれぞれでもすでに断じられています。政府が、それを覆すなんの根拠もないまま、相次いで控訴していることはそれ自体、62年の被爆者の苦しみに追い討ちをかける非人道的態度としか言いようがありません。核の被害をことさらに小さく見せるこうした態度には、国内外から、アメリカの核戦略にたいする無条件の受け入れと結びついたものとの強い批判も湧き起こっています。
 日本原水協は、日本政府に対しあらためて、仙台と東京判決を控訴しないこと、大阪、広島、名古屋での控訴を取り下げることを要求し、さらに、被害の実態に即した原爆症認定へと審査・決定のあり方を抜本的に改めることを強く要求するものです。また、そのためにも日本政府の現行の認定基準・認定行政の理不尽さを広く国民に知らせ、国民的批判をさらに広げるために力を尽くすものです。
★原爆症認定集団訴訟東京地裁判決についての声明
                        2007(平成19)年3月22日
                        原爆症認定集団訴訟東京原告団
                        原爆症認定集団訴訟東京弁護団
                        原爆症認定集団訴訟全国弁護団連絡会
                        東京都原爆被害者団体協議会(東友会)
                        日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)
                        原爆裁判の勝利をめざす東京の会(東京おりづるネット)
                        原爆症認定集団訴訟を支援する全国ネットワーク
1 東京地方裁判所民事第3部(鶴岡稔彦裁判長)は、本日、原告ら30名中入市・遠距離被爆者を含む21名について、厚生労働大臣の原爆症認定申請却下処分を取り消す、原告勝訴の判決を言い渡した。
2 判決は、厚生労働省が「科学的」と称して、2001年以降用いてきたDS86や原因確率論を柱とする「審査の方針」について、
   ① 線量推定方式であるDS86、DS02は、「評価結果に限界があり計算値を超える被爆が生じている可能性がないと断定してしまうことはできない」、「急性症状等が生じていると認められる事例が存在するのであれば、その事実を直視すべきであって、それがDS86による線量評価の結果と矛盾するからといってDS86の評価こそが正しいと断定することはできない」、
   ② 残留放射能、放射性降下物、誘導放射能については、「広島原爆、長崎原爆とも、誘導放射能及び放射性降下物について十分な実測値が得られていない。」、内部被曝について、「ガンマ線及び中性子線以外に、アルファ線及びベータ線が影響すること、外部被爆と比べ至近距離からの被曝となり人体への影響が大きいことを理論的に否定し去ることができない」、
   ③ 原因確率論の合理性については、「原因確率に基づく判断にも一定の限界があることは否定できないのであるから、特に、原因確率が低いとされた事例に関しては、これを機械的に当てはめて放射線起因性を否定してしまうことは相当ではなく、個々の被爆者の個別的事情を踏まえた判断をする必要がある」、
   ④ 放射線起因性の判断手法について、「科学的知見にも一定の限界が存するのであるから、科学的根拠の存在を余りに厳密に求めることは、被爆者の救済を目的とする法の趣旨に沿わない」、
との判断を示し、これまでの厚生労働省の認定行政が、原爆被害の実態を正しく反映せず、法の趣旨に反するものであることを明確に認めた。
3 一方、判決は9名の原告について、その請求を棄却した。裁判所の認定は、被爆地点、入市の日時や、急性症状の存否等の原告側主張を、事実認定においてこれを斥けたものであり、その点はきわめて不当であり到底納得できない。
4 国の原爆症認定行政の誤りは、これまでも、最高裁、大阪高裁、東京高裁をはじめ、全国11の裁判所で厳しく指摘されてきた。ところが、国は司法判断を無視し、不毛の「科学論争」を蒸し返すだけで、自らの認定基準を改めようとしなかった。そして、この間、認定すべき多数の被爆者を切り捨ててきた。
5 私たちは、今こそ次のことを直ちに実現するよう強く求める。
   (1)国は裁判所の判断を尊重し、控訴を断念せよ。
   (2)現在の審査の方針を根本的に改め、被爆者を早期に救済せよ。
   (3)厚生労働大臣は、被爆者の意見を聞くための協議の場を設定せよ。
                                                       以 上

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