世界大会分科会「核兵器のない世界を‐草の根運動の交流」より 安斎育郎さんのミニ講演

8月8日に開かれた分科会1「核兵器のない世界を‐草の根運動の交流」で世界大会議長団で安斎育郎・立命館大学国際平和ミュージアム名誉館長がミニ講演を行いました。『新婦人しんぶん』8月27日付より紹介します。

★核兵器を持つことは

核兵器は作ったら、発射装置に入れておけばいいというものではなく、使う時に爆発するか絶えずチェックしなければいけない。核実験の目的の1つが、抜き取り検査のためです。テロリストが近付かないように重大な管理体制が必要であり、いつでも発射できるようにしておかなければいけないので大量の人件費と管理費がかかります。

田母上(たもがみ)俊雄前航空幕僚長が、8月6日、広島で「第3の被爆をしないためにも核兵器を持つべきだ」と発言したが、持てばべらぼうな金がかかる。いやというほど原爆の悲惨さを知っている日本は、廃絶や解体技術に役立つべき。世界中の核兵器に使われているプルトニウムは畳2畳に入ってしまう量で安全に管理することは可能。核兵器をなくすことは、意志があればできることです。

★北朝鮮の核実験は?

ミサイルを打ち上げ、核実験をする、北朝鮮のような軍事国家がある以上、日本も憲法9条を変え、軍も核も持って対抗した方がいいと考える人が若者にも多くいます。

北朝鮮はいろいろやっているが、自国の国民もろくに養えない国が何十万も軍隊を派遣したら自滅するだけ。核兵器を腐るほど持つアメリカが、55万もの軍隊を派遣し、何十兆もの軍費をかけベトナムを侵略して敗北した。北朝鮮は、日本と戦争をやるつもりでテポドンを打ち上げているのではない。アメリカにこっちを向いてと言っているだけ。それを勘違いして憲法を変えて軍隊を強めようなんて愚の骨頂。軍事力を強めれば緊張感が高まるだけ。徹底的な平和政策をすすめることが最も強い抑止力です。

憲法9条とともに12条が大事。憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって保持しなければならない。助けてくれるのは水戸黄門でも鉄腕アトムでもない、国民自身です。

★核抑止論は抑止になるか

核抑止論とは、核で脅しつけて相手を黙らせること。そのためには核兵器を持たないといけないし、相手が使ったら使わないといけない。1964年、ソビエトのフルシチョフ首相は、当時のニクソン米大統領にホットラインで「間違って核兵器がアメリカに飛んで行ったが、核戦争をやる気はないので自爆させた」と言った。配備すれば、事故で核戦争まがいのことが起きかねない。

オバマ大統領は、核兵器をなくしたいという大きな方向は示したが、現にある核抑止力により他の国と対抗関係を維持しようとしている。核抑止の立場を捨てることが、より安全な道。核兵器廃絶への道に進むように、われわれがオバマ大統領の尻を叩かないといけない。オバマ大統領に手紙を書きましょう。

★被爆者はいない

原爆投下後64年たっても苦しんでいるような兵器をなぜ使うのかとなるから、広島、長崎であったことを知らせないし、アメリカは早々と被爆者はいないと宣言した。にもかかわらず日本では被爆者が306人も集団訴訟を起こし、政府は19連敗。この辺で決着をつけたいと思って麻生首相は動いたんでしょうが、裁判でますます原爆の被害の大きさが明らかになっている。

★NPT再検討会議とは

1970年にできた不平等条約。1967年1月1日以前の核兵器を持った国-アメリカ、ソ連、イギリス、フランス、中国以外の核兵器の所有を禁止し、核保有国は誠実に核軍縮交渉を行い条約が守られているか5年ごとにチェックすることにした。しかし、核兵器国の核兵器は量も質も増加し、非核兵器国の核兵器は条約の枠外で増えていった。2000年に核兵器廃絶への明確な約束をしたが2005年にブッシュ米大統領(当時)がそれを反故にした。来年5月2日からニューヨークで開かれる会議には世界中から集まり、署名提出行動やさまざまなパフォーマンスが繰り広げられる予定です。「(N)ニコニコ(P)ピース(T)楽しいな」など、本質をわかりやすく合言葉にするなどして楽しく多くの人に知らせましょう。

タイトルとURLをコピーしました