セルジオ・ドゥアルテ国連軍縮問題担当上級代表が第1委員会冒頭の声明で「日本原水協」と明言して署名提出を評価

セルジオ・ドゥアルテ国連軍縮問題担当上級代表は10月3日、軍縮と安全保障問題を扱う第1委員会の開会にあたり、声明を読み上げました。声明は「日本原水協」と明言して署名提出を評価し、続いてこの間の二つの特徴として民主主義革命と法の支配をあげ、軍縮分野の民主主義として、上記の活動を評価、さらに、安全保障などを核軍縮の条件にする議論を批判し軍縮によって平和を開くようよびかけました。声明(仮訳)を紹介します。

 

国連総会第一委員会・セルジオ・ドゥアルテ軍縮担当上級代表の声明(仮訳)

2011年10月3日

各国大使、政府代表団各位、ご列席のみなさん、

私は、本委員会で演説するこの機会を喜び、とりわけ、今回初めて私たちの中に加わった代表団のみなさんを歓迎することができることを喜びとするものです。また、議長、あなたが私たちの活動を導くよう指名されたことに祝意を述べることを栄誉とするものです。また、ビューローメンバーのみなさんにも敬意を表し、委員会の活動全体を通じ、国連軍縮課としての全面的な協力をお約束します。

本委員会はどの点からも、国際平和と安全にとってもっとも困難な課題のいくつかを議題としています。委員会審議は、とりわけ最も無差別兵器である核兵器をふくめ、世界でもっとも破壊的な大量破壊兵器を扱います。委員会は通常兵器の規制や制限に関わる問題を扱います。そして私たちの共通の未来に深い意味をもつ宇宙兵器、軍縮と開発の関係、軍縮教育、地域協力など、その他の諸問題、さらには国連の軍縮機構の諸制度に関わる問題を取り上げます。

私たちはみな、軍縮の進展の度合いがより広義の政治的気運にどれほど依存しているかをよく知っています。ある人たちはこの政治的気運のみが進展の度合いと今後の展望を決定づけると議論してきました。ここには一定の真理があります。しかしどの流れがどの結果を生んでいるのかと言えば様々な意見があり、多くの人たちは、「環境が軍縮の結果を決定づけるのであって、その逆ではない」という議論に対して納得していません。

たとえばある人たちは、もし平和あるいは安定が存在しなければ、もし武力紛争が続くなら、もし地域紛争が解決されないままなら、また、もし兵器の拡散の危険やテロが続くなら、そうした環境の下では軍縮はありえないと主張します。

もしこの議論が本当だとすれば、本委員会は今日をもって散会したほうがいいということになるでしょう。なぜなら私たちすべての活動はこの会議室の壁の外で起こっている情勢の発展次第ということになるわけですから。私たちの役割はそれらの流れを反映することに過ぎなくなってしまうわけです。

しかし、本委員会の役割については別の見解もあり、わたしは、それがこの65年間より広く受け入れられてきたものだと信じています。この見解は、本委員会が軍縮における多国間的規範の前進に独立した貢献をおこなう能力、したがって国際の平和と安全を強化する能力をもっている、と主張します。本委員会はもっとも暗い冷戦のあいだ、核軍備が増え続け、核戦争の危機さえ稀なことではなく、またそういうものと広く認識され、それが人気小説や映画の主題になるほどであった当時でさえ、自らの活動をやめることはありませんでした。

現在存在する多国間条約のほとんどが、軍備競争、地域戦争、世界の二大超大国間の激しい多面的対立に特徴づけられた地政学的時代に交渉されたものであることを思い出しましょう。もし軍縮の進展が、まずは世界平和や安定という前提条件を満たさなければならないものであったとしたなら、どうしてこのようなことが起こり得たでしょう?

幸いなことに今日、私たちは、大きく改善された政治的気運のなかで審議を行なっています。冷戦が終わってからすでに一世代が過ぎました。なお2万発を超える核兵器が残っており、その作戦上の地位は明確でない一方、それらの軍備の規模は、1986年頃のピーク時に7万発以上と見積もられて以降、かなり縮小しました。より目覚しいのは、そうした兵器に対する人々の態度がこの数十年のあいだに大きく変わり続けていることです。とりわけこれらの兵器の使用がもたらす人道的影響が、1996年の国際司法裁判所の勧告的意見や国際赤十字委員会の声明や活動のなかで、最近では2010年NPT再検討会議においてコンセンサスで採択された言葉に反映されているように、大きく認識されるようになりました。

同じように印象的なことは、グローバルな核軍縮のためにますます多様な人たちが世界中で活動していることであり、そこには、昨年、国連事務総長として最初に広島と長崎を訪問した(潘基文)事務総長の積極的役割も含まれています。さる3月、私は、事務総長とともに喜びを持って、対になった核兵器(禁止)条約を求める署名の山を陳列した「国連軍縮展」の新たな展示のオープニングに出席しました。そこには151カ国5000都市以上を代表する組織、「平和市長会議」が集めた100万を超える署名が含まれています。もう一つの国際署名もまたそうした条約を支持するもので、日本の団体である原水協がNPT再検討会議に提出したものです。それは700万筆にのぼるものでした。

市長や草の根の団体に加え、各国の議員もまた核軍縮の進展を促進することに関心を強めています。2009年4月、100ヵ国600人以上の議員を代表する列国議会同盟は、核兵器条約の交渉を支持する決議を、2008年10月24日、潘基文事務総長が提案したとおりの形で採択しました。

2009年9月には、何十年もこの問題に取り組まなかった国連安保理が首脳会合を開き、決議1887を採択しました。それはNPTの締約国だけでなくすべての国に、核軍縮につき誠実な交渉に入るよう求めています。

これらの事実を考えるとき、一方で将来が不確実であることを認めつつも、本委員会の作業に今年もその先も積極的影響を及ぼしうる、二つの増大しつつある流れを見出すことができます。第一は、いまや中東だけでなく世界を席巻する民主主義革命に関わる流れです。軍縮にも民主主義が訪れていることの証拠は、いま私が例に挙げた世界中の市長や議員や市民社会のグループの行動をみれば議論の余地がありません。それは国連総会での根強く、かつ強まりつつある新たな軍縮の進展に高まる期待の声からも明らかです。そして、国連総会は世界最大の民主的機関として、大小を問わずすべての国が多国間軍縮規範を発展させるプロセスに参加するフォーラムを提供しています。

そして、民主主義が軍縮に訪れているように、法の支配も訪れています。これは、生物兵器条約、化学兵器条約、NPTなど大量破壊兵器を扱う主要な多国間条約への普遍的な参加を得るためのねばり強い努力を見ても明らかです。また、核兵器条約の交渉、あるいは少なくとも核兵器のない世界を達成するにはどのようなタイプの法的義務が必要かについて、強い関心があること、あるいは関心が高まっていることからも明らかです。そして最近、核兵器国が自国の核兵器と分裂性物質備蓄の透明性を向上させる方途について協議するために会議を開催したことにも、それは示されています。これは国際社会が長い間努力してきた目標です。また、全世界が軍縮と不拡散の約束の完全順守を重要視していることからも明らかです。来年、武器貿易条約の締結のために会議を開催する努力が行われていること、あるいはそのほかにも、宇宙空間での軍拡競争を防止し、ミサイルとミサイル防衛を管理する規範に合意し、不拡散と大量破壊兵器を使ったテロを防止する分野における国際的な法的義務を強化するために行われている様々な努力を見ても、それは明らかです。そしてまた、2010年核不拡散条約再検討会議以来、中東に大量破壊兵器のない地帯を設立することを目指して続けられている努力によってもそれは明らかであり、それらの努力にはまもなく前進があると期待されています。

民主主義と法の支配という二つの力は、もう一つの長い間掲げられてきた目標を達成する可能性を持っています。それはつまり、軍事支出の削減であり、国連憲章第26条の言葉を借りると、「世界の人的及び経済的資源を軍備のために転用することを最も少なく」することです。現在、世界は年間1兆6千億ドルを軍事費に費やしていると言われていますが、その一方で、あの重要なミレニアム開発目標の達成は、資源の不足により、多くの分野で予想を下回っています。

ですから、この第一委員会の活動に関して言えば、私たちが店じまいをして、軍縮、不拡散、軍備管理が成功する前提条件となる世界平和の幕開けを待つ、というわけにはいかないということは明白です。それどころか、その各々の分野において私たちが努力することこそが、国際の平和と安全の強化にとって、極めて重要で独立した独自の貢献となるのです。そして、軍縮が前進すれば、世界は前進するのです。

私たちの努力は、世界から不信を低減する展望を開きます。軍備削減は、地域的緊張を低減するだけでなく、大規模な武力紛争の可能性を取り除くことにも役立ちます。一国的あるいは集団的自衛のための核兵器の適法性や有用性を決して肯定することなく、核軍縮の努力を進めることは、法の実現と人々の意志の両方をかなえることができます。同時に、危険な核の恐怖のバランスよりも、はるかに確実に安全を高めることができるでしょう。

これらすべての理由から、軍縮は今もなお、すべての国連加盟国が共有する目標となっています。今最も必要なのは、これらの目標を行動へと移すための政治的意志です。この責務を世界的規模で果たすためには、多国間協力の場としての国連軍縮機構に代わるものは存在しません。これは今もなお、世界最大の地球的軍縮規範の構築と維持のための「組立てライン」なのです。民主主義の勢力が増大し続けると同様に、この分野での国際的ルールの正統性もまた大きくなっていくでしょう。そして軍縮に法の支配がもたらされるにつれて、世界は、その結果生じる安定性、予測可能性、基本的公正さの増大を歓迎することでしょう。

つまり、民主主義と法の支配は地球的環境における二つの強力な力であり、その二つが合わされば、軍縮の課題を前進させるのに必要な政治的意志を強化するのに役立つでしょう。

これらすべてのことから、私は各国代表団すべてのみなさんに、このセッションの成功に向けての奮闘をお祈りします。国連軍縮機構は、新たな成功物語を必要としています。そしてこの第一委員会はその手始めの場となるでしょう。

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