日本AALAの招請で訪日しているベネズエラ代表団のフェリーペ・ネリ・フィゲロアさんとジョニ・ラモン・ニーニョ・ビジャロエルさんが17日午後、日本原水協の事務所を訪れ、出迎えた高草木博事務局長はじめ事務局員と懇談しました。
フェリーペさんは、チャベス政権が広範な国民に支持されていることについて、憲法を改正して参加型民主主義が位置づけられたことが大きい。それまでは一部のエリートの利益を代表していた国家が、国民のための国家に変わり、資源が国民のものになった。4・11クーデターでチャベスが大統領に復帰したのは国民の支持の表れだったと強調しました。
次に、チャベス政権で行われている多面的な社会変革が具体的に挙げられました。
「居住区に入ろう」という名前の医療社会計画は、カラカスや地方の貧しい地域に居住区を設置し、無料で医療を施すという政策で、医師はキューバから派遣されており、現在は第1段階の診療所設置が終わり、第2段階の総合診療所の設置に入っていること、そして、医療支援だけではなく、住民の自治活動面も重視している。
白内障を患った視覚障害者をキューバに送り治療させる「奇跡計画」では、12万人が無料で治療を受け、新たな生産活動に従事できるように政府が支援している。
1859年、エスキエーラ・サモーラ将軍の土地改革で、働く者に土地が与えられたが、チャベス以前の政権によって一部のエリートたちに土地が奪われてしまった。そこで、チャベス政権は将軍の名にちなんだ「サモーラ計画」を出して土地の再分配、農村の民主化、食の安全保障などの改革を行い、10万人が恩恵を受けている。
教育改革では、成人に中学校卒業程度の学力を与える「リバース計画」が行われている。教育費はもちろん無料で、約50%の人が1ヶ月約75ドルの奨学金をもらっている(ベネズエラの最低賃金は月額180ドル)。数十万人の成人のうち、16万2500人が昨年中学校を卒業した。計画にはベネズエラとキューバから5万人の教師が参加している。中学校卒業後「スクル計画」で高校、大学を卒業できるように支援している。大学はボリーバル・ベネズエラ大学で数十万人が学んでおり、政府の支援によって交通費、昼食代、場合によっては夕食代まで無料。
つづいてジョニさんは、「アメリカ帝国主義に対して平和を求めていく活動は非常に重要」と原水協の活動に連帯の意を示してくれました。そして、「ヒロシマ・ナガサキに落とされた原爆はどんなことがあっても許されない。私は地域で毎週火曜日におこなっている学習会で、日本が第2次世界大戦で何をしたかに関係なく、原爆を落とす必要性はまったくなかったと説明している」と話しました。
その後、92年にチャベスが初めてクーデターを起こしてから政権が誕生するまでのベネズエラの歴史を話してくれました。
92年にチャベスがクーデターを起こすまでは社会変革などまったく考えられなかった。それまではアメリカの傀儡ともいえる「民主行動党」が選挙でも90%の得票率で勝っていたし、「キリスト教社会党」との2大政権だった。
1989年2月、民主行動党が一方的に石油の価格を上げたことが原因で、自然発生的な一斉蜂起が起こるが、政府は軍隊を投入して1万人を虐殺するという「カラカス大暴動」が起こる。それまで軍隊は国防に専念して国民に銃を向けてはならないという厳しいきまりがあったが、大鎮圧に利用されたことで、これでいいのかという反省が軍人の中に生まれた。
そして92年、選挙で公約しても一向に実行されないことに耐えられずチャベスがクーデターを起こすが失敗。しかし捕まった彼の「現時点では失敗」という言葉に多くの国民が目を覚まさせられたという。
実際、その後選挙があるたびに2大政党は票を減らし、人々は左翼政党に投票するようになり、政治的力関係が変化して今に至る。
困難なこととして、「政策先行で、それを支える組織が追いついていない」といいます。いかに新機構を作るか、どのように国民の末端まで財産を共有することができるのか、アメリカ帝国主義の傀儡勢力の妨害、破壊工作とのたたかいなど課題は尽きません。
新自由主義とのたたかいでは、「米州自由貿易協定(FTAA)をアメリカが進めようとしていることに対して「ボリーバル的対案」を出し、南米間協力を進めようとしている。南米諸国は同じ問題を抱えているので、支持が集まっている。アメリカ帝国主義はいま、たいへんな敗北を喫しつつあることに注目してほしい」と力強く語りました。
日本原水協からは「核戦争阻止、核兵器廃絶、被爆者援護連帯」の基本3目標を説明しました。ブッシュ大統領が、自分のところの核兵器はいいが、新しい国が持とうとするのはダメだといっていることを紹介すると、ジョニさんからは「頭おかしいですよね。世界の公敵はブッシュです」と返ってきました。日本にいる26万人の被爆者の状況は少しずつ良くなってきているが、日本政府が情け深いのではなく、たたかいによって勝ち取られてきたこと、唯一の被爆国として圧倒的な核兵器廃絶の世論を力に日本政府を動かしていきたいと伝え、夏の原水爆禁止世界大会への招待状を渡しました。
懇談終了後、「すみやかな核兵器の廃絶のために」署名に快くサインしてくれました。
最後に記念写真を撮影。
ベネズエラ代表団は4月14日まで全国17都市を回る予定です。