原爆症認定集団訴訟を支援するネットワークは10月3日、厚労省が札幌地裁判決に控訴したことを受け、控訴取り下げ、集団訴訟の早期全面解決、新しい審査の方針の再改定を求めて、抗議行動を行いました。
小池晃参院議員は「控訴はどんな理由があっても許されず、厚労省にはひとカケラの道理もない」と糾弾。「国会では全政党が反対し、官房長官まで何とかしなければならないというところまで来ている。あと少し頑張ろう」と激励しました。北海道弁護団の肘井博行事務局長は「国は11連敗もしながらなお司法の判断に従わないのは裁判所、国民の声を無視するもの。一刻も早い解決もとめ全力でたたかう」と決意を述べました。
厚労省で行われた記者会見では、日本被団協、全国原告団、同弁護団連名の抗議声明「札幌地裁判決に対する国・厚生労働省の控訴に強く抗議する」が田中熙巳日本被団協事務局長から読み上げられました。山本英典全国原告団長は「1月と3月に舛添厚労大臣と面会し、何度も期待を持たされたが裏切られた。原告は59人亡くなっており一刻を争うので麻生首相の政治決断を求めたい」と語り、東京原告の西本治子さんは「すごくがっかり。これから何を頼りに生きていけばいいのか。70年間生きてきたことが嘘になる。(被爆した)7歳の時に火の中で死んでいたほうがましだ」と泣き崩れました。田中事務局長は「官僚が決めたことが通ってしまう今の日本はいったい何なのかと思う。もっとも根幹であるはずの国民の声を聞く政治を無視する姿勢は許せない」と怒りを表明しました。
以下、抗議文です。
原爆症認定集団訴訟・札幌地裁判決の控訴に抗議する
2008年10月3日 原水爆禁止日本協議会
本日、9月22日の原爆症認定集団訴訟・札幌地裁判決に関し、国が敗訴した4件を控訴したことに強く抗議します。
大多数の原爆被害者の救済を拒否しつづけたこれまでの原爆症認定行政の誤りが、放射線の被害を軽く見た国の誤った姿勢にあったことは、すでにこれまでのすべての訴訟で確定しています。
すでに306名の原告のうち、59名の方々が亡くなっているように、被爆者にとって解決は時間を争う問題であり、国は無意味に争いをこれ以上続けるべきでありません。
我々は、札幌地裁判決をはじめ、これまでのすべての地裁判決を受け入れ、控訴を撤回し、実情に沿った認定基準の見直しにただちに着手するよう強く要求するものです。
札幌地裁判決に対する国・厚生労働省の控訴に強く抗議する
1.われわれは、国・厚生労働省が札幌地裁判決に対する控訴を断念し、原爆症認定集団訴訟の早期全面解決をすることを求めてきた。しかし国・厚生労働省は、河村建夫官房長官の「裁判を含めて問題を長引かせたくないという被爆者の思いを受け止めないといけない」、「裁判の問題は一挙に解決すべきときに来ているのではないか。私の気持としては。決着をはかっていきたい」との発言にもかかわらず、札幌地裁判決に対して、10月3日の早朝に控訴した。われわれは、このことに強く抗議する。
われわれは、札幌高裁をはじめ15地裁7高裁での原爆症認定集団訴訟の全面勝訴を目指し、総力をあげてたたかうものである。
2.国・厚生労働省は、札幌地裁で敗訴した肝機能障害と甲状腺機能低下症について、「10月から原子爆弾被爆者医療分科会において、専門家に取扱いを議論していただく」としている。
しかし、いまさら「専門家」を隠れ蓑に使うのではなく、肝機能障害については与党プロジェクトによる提言があり、甲状腺機能障害については、すでに大阪高裁の確定判決があり、ただちに「積極認定」に入れるべきである。
3.厚生労働省は原告167人をふくめ、1000人以上を認定したとしているが、医療分科会での総合審査の実態を見ると、審査は遅々として進まず、原告についても14人しか認定されていない。加えて厚生労働省のいうところによっても6000人以上の申請者が滞留しており、被爆者にとって迅速な審査は一刻の猶予も許されない。
4.国・厚生労働省は11連敗を重ねており、仙台高裁、大阪高裁での全面敗訴を見ても、高裁での勝ち目はない。集団訴訟の原告だけでもすでに59人が死亡しており、いたずらに原爆症認定集団訴訟を引き伸ばすのでなく、全ての控訴を取り下げ、高齢で病弱な原告に対して、早期に一括解決のために、麻生総理が決断することを求めるものである。
2008年(平成20年)10月3日
日本原水爆被害者団体協議会
原爆症認定集団訴訟全国原告団
原爆症認定集団訴訟全国弁護団連絡会議
抗 議 声 明
原爆症認定北海道訴訟原告団
原爆症認定北海道訴訟弁護団
北海道原爆訴訟支援連絡会
厚生労働大臣は、9月22日に札幌地方裁判所民事1部が言い渡した判決(原爆症認定申請却下処分取消等請求事件)に対して、本日控訴した。
われわれは、全国約25万人の被爆者とともに厚生労働省に断固抗議する。
札幌地裁判決は、これまでの各地の集団訴訟の判決と同様、旧「審査の方針」に対して厳しい判断を示すものであり、さらに、本年3月にとりまとめた「新しい審査の方針」において積極認定の対象とされなかった肝機能障害、慢性甲状腺及び高血圧症についても原爆症と認定することで、同方針の不十分さを明らかにしたものであり、厚生労働省が行ってきた原爆症認定行政を厳しく断罪するものであった。
全国の原爆症認定集団訴訟原告のうち、すでに59名の被爆者が死亡するなど被爆者に残された時間は少ない。
このような状況下において、厚生労働大臣がなすべきことは、控訴ではなく、現在の認定行政を早期かつ抜本的に改めることである。
我々は、札幌地方裁判所判決後、厚生労働大臣に原告らと会い、その切実な声に耳を傾け、早期の集団訴訟の全面解決を図るよう求めてきた。
それにかかわらず、厚生労働大臣は、原告らと会うことなく、本日、控訴の暴挙に至ったもので、我々は、断じて許すことができない。
今回の控訴は、被爆者の切なる願いを踏みにじったものであり、被爆者に対する新たな加害行為である。
私たちは、厚生労働大臣がすべての原告を原爆症と認定し、被爆の実相に合致した認定制度を抜本的に改善するまで、司法及び国民世論に訴えつつ、断固として闘い続けることを決意する。
以上
内閣総理大臣 麻生 太郎 殿
厚生労働大臣 舛添 要一 殿
原爆症認定集団訴訟・札幌地裁判決の控訴に抗議する
本日、国・厚生労働省が、原爆症認定集団訴訟・札幌地裁判決について控訴したことに対し、強い憤りをもって抗議します。
集団訴訟で国・厚生労働省は11連敗を重ねており、これ以上訴訟を長引かせることは許されません。すでに59人の原告が亡くなっています。
国・厚生労働省は、いたずらに訴訟を引きのばすのではなく、すべての控訴を取り下げ、「新しい審査の方針」を被爆の実態を正しく反映したものに改定し、早期に原爆症認定問題の全面解決をはかるよう強く求めます。
2008年10月3日
原水爆禁止京都協議会