フランス在住の伊原聡子さんのレポートを紹介します。
国連の核兵器禁止条約への調印を政府に求めるため、2018年9月22日の平和行進に続き、10月14日、「フランス平和運動」の地方集会がフランス全土9か所にて行われました。
「この平和集会の目的は、国民に、集団安全保障のために、戦争文化の愚かなる野蛮か、平和文化の平穏な力か、を選択する意志を高揚させるため」と、キャンペーン担当のミッシェル・ドロ氏は言います。
フランス政府は、2017年7月7日の核兵器禁止条約の国連採決に対し、署名、批准、加入を拒否するどころか、他の核保有国にもこの立場を共にするように促しました。国際安全保障の現実無視、核抑止政策に反する、との理由からです。
各地の集会は、いまや「核戦争犯罪」計画を象徴する場所が選ばれました。
フランス南西地方ジロンド県では、秋の雨雲が迫りくる中、ボルドーの南30キロメートルにある田舎町ル・バープにある「ル・ラゼール・メガジュール研究センター」の前に、フランス平和運動をはじめとする反核、軍縮、反原発、環境グループら、約50人が集まりました。ヨーロッパ最大の松林が拡がる「ランドの森」の、「ランド・ド・ガスゴーニュ地方自然公園」内にある、このレーザー核融合研究センターは、2014年に設立され、8束のレーザービームが30機備わっています。これは、フランス原子力庁の軍事応用局が管轄とする世界最大のレーザーエネルギー計画で、フランス軍事計画「シミュレーション」の主力の一部をなし、現実での核実験禁止以降、フランスの核抑止力を持続させるためのものです。この計画には、予算の6倍もの70億ユーロ(約9000億円)が費やされています。
これに反対する平和運動グループ「ネガジュール」は2012年、施設の前にピンク色の鳥居を建て、「平和」の文字をフランス語、英語、日本語、地元のガスゴーニュ語で刻みました。以後、二度の公権による撤去や破壊行為にも負けず、新たなものが建てられました。その両脇に「ヒロシマ」「ナガサキ」と書かれたミニ鳥居が飾られ、ヒロシマ・ナガサキの放射能の中で生き残った生命の象徴として、銀杏の木が植えられています。
その平和の象徴を前に、フランス平和運動ジロンド支部のニコラ・ラバㇾ会長が訴えます。
「フランス国民の67パーセントが核兵器禁止条約への署名、批准に賛成しています。また、76パーセントはフランスが核兵器の国際的完全撤廃に向かうことに賛成しているんです。この力を集めて、核兵器禁止条約への調印を政府代表に求めましょう」。
続いて、フランス領ポリネシアから、ムルロア環礁での核実験のヒバクシャの家族が、「フランスの核実験は人道に対する罪です」と声を上げました。ポリネシアの野党指導者は、10月2日、フランスが1990年代までに南太平洋で繰り返し行った核実験は人道に対する罪として、国際刑事裁判所に提訴しています。
集会は、場所を移して、アペリティフ(食前酒)持ち寄りのランチで和んだ後、元フランス空軍の退役将校で士官学校の教官でもあったフランシス・レンヌ将軍の「核抑止力からの脱出を」の講話で締めくくられました。
「核抑止力は妄想にすぎません。この集団的強迫観念から抜け出すには、病原をつきとめてそれを絶たなくてはなりません。それには、理性をもって核開発の歴史を今一度見直し、真実を探り、理解することです」と、レンヌ将軍は強調します。
「ヒロシマ、ナガサキの哀悼の思い。それは、ヒロシマ・ナガサキという過去のものではありません。核兵器がこの世に存在する限り、現在を生きるあなたたち自身の哀悼であり、20年後、50年後、その後にも生きる私たちの子孫、人類への哀悼なのです」との言葉が印象的でした。「大統領、爆弾を頭から追い払ってください! この地球を愛するなら、核兵器禁止条約に調印を」