広島被爆者でカナダ在住のセツコ・サーローさんが核兵器禁止条約を交渉する国連会議2日目の3月28日、市民社会の意見表明セッションでの発言を日本原水協国際部が仮訳しました。全文を紹介します。
セツコさんが発言する姿はこちらで見られます(2:35:20 ぐらいから始まります)。
<仮訳>
核兵器禁止条約交渉会議での発言
セツコ・サーロー
2017年3月28日
政府代表のみなさん、
広島の被爆者として、この歴史的な会議で発言の機会を与えられたことを光栄に思います。私の愛する故郷が一発の原爆で壊滅させられてから、すでに72年が経とうとしています。
生き延びた私たちは、核兵器の非人道と筆舌に尽くしがたい苦しみを、ふたたび誰にも経験させてはならないと心に誓いました。そのため私たち被爆者は、数十年にわたって、大量殺りくと世代を超えた放射性暴力を引き起こす核兵器の全廃を目ざしてたゆみなく努力してきました。
私たちは、犠牲となった家族や愛する者たちに対して、「あなたたちの死を決して無駄にはしない」と誓いました。広島だけですでに25万人が犠牲となりました。そのうちの多くは、自分たちの生あるうちに核兵器の廃絶を夢見てきた人々です。広島を思い出すたびに私のまぶたにうかぶのは、4歳だった甥の姿です。見分けもつかぬほど黒焦げになって膨れ上がり、体中が焼けただれてもなお、か細い声で水を求め続けていたあの子は、死ぬことでようやく苦しみから解放されたのでした。この幼い男の子の姿は、私の心の中で、今この瞬間にも核兵器で命を脅かされている世界中の罪のない子どもたち全員を代表するイメージとなっているのです。
この1週間の、そして6月から7月にかけての3週間の会議期間でのみなさんの任務は、いかなる曖昧さもなしに、はっきりと、核兵器は違法で不道徳で非合法であると宣言する、明確で、新しい、国際的な基準を作り上げることです。
私はナイーブな人間ではないので、この条約をはねつけようとする国々が出てくると予想しています。彼らは、自分たちにはなぜかこの命を破壊する兵器を保有する権利があるのだという勘違いにしがみついて、私たち全員を脅かすでしょう。
私は特に、この交渉会議に全面的に参加することができない日本政府を強く非難します。昨日の朝の日本政府代表の発言を聞いて、被爆者は、自分の祖国にずっと裏切られ、棄てられてきたという気持ちをさらに強くしています。彼らは、核の惨禍の現実から学ぶことを期待するとして、広島に外国要人を招くことで核軍縮に重要な役割を果たしていると称しています。しかし、アメリカの「核の傘」に留まり続けている日本のこのような行動は、まったく空虚なごまかしに過ぎません。日本政府は、日本国民の意志に応えて独立した立場をとるべきです。
真剣に軍縮のために努力しておられる政府代表のみなさんには、核兵器禁止のためのみなさんの交渉から恩恵を受ける将来の世代がいることを感じるだけでなく、広島・長崎で亡くなった人々の魂の声を感じとっていただきたいと思います。原爆で亡くなった人々の記憶と姿はつねに私を支え、導いてくれました。多くの被爆者もこのようにして生き続けてきたのだと思います。愛する人々の死を決して無駄にしないために。
みなさんが今週この会議を進める中で、彼らの支えと存在も感じていただきたいのです。そして立派に任務を果たしてください!! そして被爆者が、この条約は世界を変えることができ、必ず変えると確信していることを知ってください。
ありがとうございました。
PDFはこちら