原水爆禁止2007年への各国元首・政府代表からのメッセージ

ブラジル連邦共和国大統領 ルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルバ
原水爆禁止2007年世界大会へのメッセージ
 ブラジルは、核軍縮の追求を、平和と安全保障のアジェンダにおける最優先の課題として堅持すべきであるという信念を長きにわたって保持してきました。数カ国による大量破壊兵器の保有、とくに核兵器の保有は、全人類にとって、今日まで重大な懸念となり続けています。
 ブラジルは、核不拡散条約(NPT)に加盟するはるか以前に、わが国の国家安全保障を、核兵器の取得に基づくものとしてはならないと決定しました。ブラジルは1960年代、ラテンアメリカ・カリブ海地域を非核兵器地帯にするという、後にトラテロルコ条約として実を結んだ理念の先駆者でした。この問題におけるわが国の立場は、1988年憲法に具現化されました。そこには、すべての核活動は平和目的でのみ許されると記されています。ブラジルは1990年代初頭、アルゼンチン、ブラジル・アルゼンチン核物質計量管理機関(ABACC)および国際原子力機関(IAEA)とのあいだに四者協定を結び、自国のすべての核施設を、包括的保障措置のもとに置きました。ブラジルは1996年、NPTに加盟することを決定しました。これは、核軍縮に役立つ行動をより効果的におこない、この条約のアンバランスを是正する他の締約国の努力に加わるためでした。私たちは1998年、志を同じくする他の5カ国とともに、新アジェンダ連合を創設しました。以来、新アジェンダ連合は、関連する主要な議論の場において、核軍縮の促進に重要な役割を果たしています。
 この数年間、国際社会は軍縮および核不拡散問題に関して、顕著なそして懸念すべき事態を見てきました。核不拡散が新たに強調されるいっぽうで、核軍縮への注目度がますます低下しています。ブラジルは、軍縮プロセスと核不拡散プロセスは、必然的に相関関係があり、相互に強め合うものであると理解しています。私たちの観点からすれば、核不拡散の分野における持続可能かつ長期的な戦略の遂行は、核軍縮に関する不可逆的で検証可能な措置と、核物質に関する具体的措置を同時に採用することにかかっています。
 核軍縮の議論を行わずに核不拡散の問題だけを議論することは、国際安全保障のアジェンダにおけるこのふたつの課題をめぐる議論の進展をさまたげる決定的な要因となってきました。そして、この議論のなかではびこっている失望的な雰囲気をつくりだすことにもつながります。この課題のバランスをとることは、とくに新たなNPT再検討サイクルを開始するにあたって、この上なく重要となっています。
 軍縮と不拡散の分野で目立った進展がないもとで、関連する諸体制の再活性化と強化に関する緊急の行動が求められています。2000年のNPT再検討会議で合意された、核軍縮にむけた13項目の措置の実行は、核兵器保有国のさまざまな留保や選択的な解釈による挑戦とともに、作為と不作為の挑戦を受けてきました。
NPT条約第6条の規定を無視することは、究極的に、条約の正当性がかかっている基本的約束そのものに影響を与えかねません。
 核軍縮と不拡散の全体構造は、新たな核兵器の開発と、そのような核兵器を非核兵器保有国に対してさえも先制的に使用する可能性に基礎を置く新戦略軍事ドクトリンによって、掘り崩されてきました。こうした戦略軍事ドクトリンは、予見できる遥か将来にわたって核兵器を存続させる実際的な効果を発揮するものです。これは、NPT条約の文言と精神に著しく反するものだとブラジルは考えます。さらに、核兵器がいまだに果たしている主導的役割は、自国が紛争シナリオの只中にあると感知した国々が、自らの核計画の軍事化を追求する理論的枠組みとなる可能性があります。
 広島・長崎への原爆投下記念日は、大量破壊兵器、とりわけ核兵器の壊滅的影響と、国際社会が核軍縮問題に断固として取り組む絶対的必要性を思い起こす重要な機会です。私たちはこの日を、日本国民に連帯を表明する機会とするだけでなく、核兵器が再び使われる危険を根絶する唯一の方法は、核兵器の完全廃絶であるという紛れもない事実に、国際社会の注目を集めさせる機会としなければなりません。

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