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資料保管庫軍縮と核政策

核兵器廃絶と核拡散問題

イラン問題をめぐる各国の態度

イラン核問題についての非同盟運動調整ビューロー閣僚会議の声明
2006年5月30日
於マレーシア・プトラジャヤ

1. 閣僚会議は、核軍縮と不拡散について、マレーシアのプトラジャヤで2006年5月27日から30日まで開かれた非同盟運動調整ビューロー閣僚会議の最終文書に示された原則的立場を改めて表明した。閣僚会議は、イラン・イスラム共和国におけるNPT保障措置協定の実行に関する進展状況を検討した。

2. 閣僚会議は、すべての国がいかなる差別もなく、各国の法的義務に合致した平和目的の核エネルギーを研究開発、生産、利用するという、基本的で譲渡できない権利を有することを再確認した。それゆえ、何事も、平和目的の核エネルギー開発という諸国家のこの権利を抑制または制約するようなやりかたで解釈されてはならない。閣僚会議はさらに、核技術の平和利用と核燃料サイクル政策の分野における諸国家の選択と決定は尊重されなければならないことを再確認した。 

3. 閣僚会議は、国際原子力機関(IAEA)が、加盟国それぞれの保障措置義務を検証する権限を有する唯一の管轄当局であると認め、IAEAの諸活動、とくに検証過程で不当な圧力や干渉があってはならず、それらがIAEAの効率的な活動と信頼性を危険にさらしかねないことを強調した。

4. 閣僚会議は、残された問題を解決するためにとられた自発的な信頼醸成措置を含むイラン・イスラム共和国のIAEAに対する協力を歓迎した。閣僚会議は、イランによって申告されたすべての核物質が確認されたというIAEA事務局長の評価に注目した。
 閣僚会議は同時に、イランにおいて未申告の物質と活動が存在しないことに関して結論を出そうとする過程は現在進行中であり、それには多大な時間を必要とすることに注目した。この点で、閣僚会議は、信頼を強め問題の平和解決を促進するために未解決の問題を解決するIAEAの任務の枠内で、イランが緊急に、IAEAに積極的・全面的に協力し続けるよう促した。

5. 閣僚会議は、各国がそれぞれ負っている保障措置への法的義務と、困難な問題解決のために自発的にとられた信頼醸成措置は、根本的に異なることを強調し、そのような自発的措置は法的な保障措置義務ではないと確信した。

6. 閣僚会議は、非核兵器地帯の確立が、地球的核軍縮という目的達成に向けた積極的措置であると考え、関連する国連総会と安全保障理事会の諸決議に従って中東非核兵器地帯の確立を支持することを改めて表明した。閣僚会議は、そのような地帯が確立されるまでのあいだ、イスラエルに対し、遅滞なくNPTに加盟し、すべての核施設を包括的なIAEA保障措置のもとに直ちに置くよう要求した。

7. 閣僚会議は、平和的核活動の不可侵性を再確認し、稼動中または建設中の平和的核施設に対するいかなる攻撃または攻撃の威嚇も人類と環境に重大な危険をもたらし、国際法、国連憲章の原則と目的そしてIAEAの諸規則への重大な違反となることを再確認した。閣僚会議は、核エネルギーの平和利用専門の核施設への攻撃または攻撃の威嚇を禁じる、包括的で多国間交渉による法的文書の必要性を認識した。

8. 閣僚会議は、イランのものを含む保障措置と検証に関するすべての問題がIAEAの枠内で、技術的法的根拠に基づいて解決されるべきであると強く確信した。閣僚会議はさらに、IAEAが、IAEA憲章のもとでの任務の枠内でイランの核問題を解決するためにその作業を継続すべきであることを強調した。

9. 閣僚会議はまた、イラン核問題への長期的解決策を見出すために、平和的手段を通じた外交と対話が継続されなければならないと強く確信した。閣僚会議は、問題を解決する唯一の方法は、前提条件なしで交渉を再開し、継続中の諸問題を解決するIAEAの作業を前進させるために国際的信頼を高め、すべての必要な当事国が関与した協力を強化することであるとの確信を表明した。

 


欧州連合(EU)評議会
イラン問題に関する評議会の決定

第2728回評議会外相会議 
2006年5月15日 
於ブリュッセル

評議会は以下の決定を採択した。

1. 評議会は4月28日のIAEA(国際原子力機関)事務局長報告に注目した。イラン当局はIAEA理事会と国連安全保障理事会の要請に応じず、また、軍事的側面を含む未解決の諸問題を明らかにするためにIAEAに積極的に協力することもしなかった。

2. 評議会は、イラン当局がIAEAおよび国連安保理が不可欠と考える諸措置をとらなかったこと、そしてイラン当局によるこの不履行を将来にも維持するとの脅迫を、深く遺憾とする。評議会は、イラン当局が、交渉再開が可能となるような条件を作り出すために、IAEAに完全に協力して、研究開発を含むすべての濃縮関連および再処理の活動を停止し、重水減速炉の建設を停止するよう求める。EUは、安保理がこれを義務付けたことを全面的に支持する。

3. 評議会は、イランが、NPTの義務に合致する平和的目的のために核エネルギーを利用する権利を有することを再確認する。評議会が2006年2月の決定で確認した2005年8月の提案をもとに、EUは、国際的懸念に十分な対処がなされ、イランの意図への信頼が確立されれば、安全で、持続可能で、拡散防止されたイランの民生用核計画の開発を支援する用意がある。EUはイランがこのような申し出を逃さずに受け入れるよう望む。

4. 同時に、EUは、多国間不拡散体制の有効性を維持することを決意している。評議会は、既存の機微な物質の輸出管理システムの適用にあたり、最高度の監視を実施することの重要性を強調する。それは、物資、技術および物質が、直接・間接に分裂性物質プロ恨むおよびミサイルプログラムに利用されるのを防止するためである。
 5. 評議会は引き続き、普遍的諸原則やイランの特別な義務と相違しているイラン国内の人権状況について深く懸念している。評議会は、処刑、恣意的拘束の件数の増加、情報アクセスへの規制の強化、特にスーフィーおよびバハイ社会の状況に関して言論・宗教の自由の侵害が増えていること、ならびに人権擁護家、法律家、少数民族集団に対する脅迫やハラスメントが行われていることに懸念を表明する。評議会は、イランの哲学者ラミン・ジャハンベグロー博士が拘束されたことを深刻に懸念する。評議会は、イラン当局が、大使館、大学、文化団体を含むヨーロッパ人と接触したイラン市民を処罰することのないよう求める。

6. 評議会は、引き続き外交的解決の道を追求するために努力する。EUは、信頼と協力に基づいたイランとの関係を発展させることを望んでいる。その道を選ばなければイランはさらに孤立を深めることになる。よって評議会は、イラン当局に対し、そのような関係を欧州連合および国際社会との間に発展させるのに必要な諸決定を緊急におこなうよう求める。評議会はまたイランが地域の安定に寄与するよう期待する。


IAEA理事会へのアメリカ合衆国の声明

2006年3月8日

議題項目5(b)
イラン・イスラム共和国における核保障措置協定履行に関する事務局長報告
アメリカ グレゴリー・L・シュルテ大使


議長、

わが国政府は、事務局長の2月27日報告を歓迎し、IAEAがイランにおいて行なっている厳格な努力を引き続き支援する。

先月、われわれは国連安全保障理事会にイランについて報告し、イランが自らの国際公約を破り国際社会の信頼を失っているという私たちの調査結果を想起させた。安保理は正式に行動を起こす前に、エルバラダイ博士の報告を待っている。

事務局長報告は、イランが――あらゆる点からみて――理事会の2月4日の決定が求める要請にこたえることができていないことを、はっきりと示している。私は同僚のみなさんに、これらの要請が2005年9月の理事会と、過去の多くの決議においても行われてきたことを思い出していただきたい。理事会が決定を行なって以後5カ月間、イランの指導者たちは国際的信頼を増すために何もしてこなかった。それどころか、彼らの態度は、イランが核兵器を追求していることについての国際的な懸念を増大させる一方である。

前回の理事会以後、イランはIAEAへの自発的な協力をやめて、追加議定書の履行を停止し、ナタンツでのウラン濃縮を再開した。イランの核開発計画に関する重大な懸案事項はひとつとして、解決していない。なぜならイランが引き続き情報提供とアクセスを拒んでいるからである。イランの反抗的態度により、IAEAはイランに未申告の核物質や活動はないことを保証できずにいる。われわれは、IAEAが3年間にわたる徹底調査をした後もなお、IAEAがイランの核開発計画の範囲や性質に関する重大な不確定要素について解明できずにいることは「憂慮すべき事態」であるという、エルバラダイ博士の報告の結論を共有するものである。

IAEAは、イランの遅ればせで強制されての説明について、その多くに不満足であり信じがたいものと見ているが、いまだに裏付けができずにいる。そして、イランの申告のなかの矛盾やつじつまのあわない部分は増え続けている。一方、イランは濃縮計画を急速に進めている。イランはIAEAに、今年の秋ナタンツに最初のP-1型遠心分離機3000基を設置する予定であることを、報告している。すでに85トンのUF6(六フッ化ウラン)を備蓄しているが、もし濃縮されれば約10個の核兵器を生産するのに十分な量である。イランは引き続き、その濃縮活動を純粋な研究開発であると述べているが、イランが大規模な濃縮能力を、しかもできるだけ早期に獲得しようと決意していることは、きわめて明白である。イランは、研究や開発を含むすべての濃縮関連活動を中止するよう求める広範な国際社会のよびかけにもかかわらず、これらの措置をとっているのである。

われわれは、イランの目標が核燃料サイクルの全工程を習得することにとどまらず、その燃料サイクルの産物を兵器に作りあげるところまで及んでいることを示す徴候についても、同様に不安を抱いている。1月にIAEAは、イランが濃縮および劣化ウラン金属を半球体状に鋳造する方法に関する15ページにわたる文書を所持していると報告した。先週の技術会合で、ヘイノネン事務次長は、説明書は明らかに高濃度ウランのためのものであり、「半殻(hemishells)」に言及していると指摘した。IAEA査察官は、この情報が明確に核兵器の部品の製造を目的にしたものであることを確信しているようである。イランはこの文書をIAEAに引き渡すことを拒否しており、いつそれを入手したかを明らかにしようとしない。IAEAはまた、「グリーン・ソルト」計画、高性能爆薬実験と、ミサイル弾頭の設計の関連について調査を続けている。エルバラダイ博士の最新報告は、「グリーン・ソルト」計画に関連していると思われ、イランがエスファハンとグチンウラン鉱山に関係があることを認めている、ある特定の企業にIAEAが注目していることを示唆している。イランはまだ本当のことを全部語っていない。

確かにIAEAは、イランの核開発計画の過去と現在の方向について問題点を解明するために、イランの保障措置協定および追加議定書上の所定の要求事項を超えて、完全な透明性と積極的な協力が必要であると繰り返し強調している。イランがそのような透明性や協力を提供することを拒否し続けていることを踏まえて、われわれは、イランのIAEAとの保障措置協定において与えられている法的権限を、IAEAが全面的に行使することを検討するよう促す。たとえば、情報や場所へのアクセスを得るために、IAEAは特別査察の手続の発動を検討することが可能である。もし理事会が、核物質の非転用を確実にするためにはIAEAの特別協力要請が「不可欠かつ緊急」であると決定するならば、理事会はイランに対し、直ちに要請される措置をとるよう求めることができる。

イランに特別査察の要請への即時協力を求めることは、事務局長がイランの透明性が「不可欠かつ期限を過ぎて」おり、そのような透明性なしには、IAEAがイランの説明の正しさや完全性を検証する能力は「制限されるだろう」と繰り返し表明していることを考慮するならば、明らかに正当なことである。

議長、この会合の準備段階において、イランに核兵器保有への道を断念する機会をふたたび与えるために、多大な努力がおこなわれた。ロシアはロシアでウラン濃縮にかかわる合弁事業を設置するという提案を利用するようにイランを説得するために、多角的な外交活動を行なった。フランス、ドイツ、イギリスの外務大臣は最近、イランとの閣僚級会議を開いた。つい昨日、ライス国務長官と(ロシアの)ラブロフ外務大臣が一致して、外交解決を追求すること、2月4日決議を支持することを表明したばかりである。われわれは、イランが研究・開発をはじめとするすべての濃縮関連活動を完全に中止せよとのわれわれの度重なる要請を含め、国際社会の懸念にこたえる用意がないことに失望している。

われわれはみな、イランの前核交渉担当者だったハッサン・フハニ氏が、イランはイスファハンの施設を完成させるための時間稼ぎに交渉を巧みに利用したと自慢する報道記事を読んだ。彼らはナタンツについても同じことをしているように見える。イランの交渉者たちが遠心分離技術を習得するための努力を続けると主張する理由が、ほかにあるだろうか?これは、「面目を保つ」ための研究や開発ではない。これは、ウラン濃縮開発の有意義な抑制ではない。それどころか、交渉を隠れみのにして、イランは試験用遠心分離機カスケードの推進をめざしている。これによりイランは、核兵器のための高濃縮ウランを生産するのに必要な技術、物質、専門知識を完成することができるようになる。

前回の理事会で、われわれは、イランを安保理の議題に付託する決議を採択した。われわれはまた、事務局長報告、われわれが現在検討しているものだが、以後それをただちに安保理に手渡すことにも合意した。いまや、安保理が行動するときがきた。合衆国は安保理の関与が、IAEAの役割と調査を強化すると信じる。第1段階として、われわれは、イランに対しIAEAと協力して理事会が特定した措置をとり、信頼を回復するよう求めることを構想している。安保理はまた、IAEAがイランのきわめて深刻な核活動を調査するために必要とする、より広い権限を与えることもできる。われわれは、安保理のアプローチがすべての安保理理事国との全面的な協議と協力のもとに進められるように検討され、漸進的なものでなければならないと信じる。安保理はイランがその義務を果たさなければ、その結末の責任をとることになることを強調しなければならない。もちろん、イランの行動は、安保理がこの問題についてどのように対処するかに影響をおよぼすだろう。イランの指導者が、イラン国民に対し世界へ開かれた道および当然享受できる経済的機会を拒否する道をこのまままっしぐらに進むのではなく、イラン国民の利益のために行動することを選択するのは、今からでも遅くはない。

議長、われわれは外交解決への希望を捨ててはいない。この外交の新たな段階は、イランを核兵器保有の野望を思いとどまるようより強く説得することをめざすものである。国際社会の決意は明らかである。われわれは、理事会の他のメンバーとともに、イランに対し、IAEAと同僚である加盟国に協力し、脅迫や対立ではなく平和的な外交を通じてわれわれの集団的な懸念に対処するよう強く求める。


(在ウイーン国際機関アメリカ代表部HP http://www.usun-vienna.rpo.at/より)


国連安全保障理事会 議長声明

2006年3月29日

2006年3月29日に開催された安全保障理事会第5403回会合において、議題「不拡散」についての審議に関連して、議長は安全保障理事会を代表して以下の声明を発表した。

安全保障理事会は、理事会として核兵器不拡散条約に貢献することを再確認するとともに、同条約第I条および第II条にしたがって、条約加盟国が差別なく、平和目的で核エネルギーを開発、研究、生産および利用する権利をもつことを想起する。

安全保障理事会は、国際原子力機関(IAEA)事務局長によって安全保障理事会に報告されたイランの核計画にかんするIAEAの多くの報告や決議を深刻な憂慮をもって注目する。

また安全保障理事会は、2006年2月27日のIAEA事務局長報告(GOV/2006/15)が、軍需核におよぶ可能性のある問題を含め、未解決となっているいくつかの問題や懸念を列挙していること、およびIAEAとしては、イランには未申告の核物質や核活動がないと断定することができないことを深い憂慮をもって注目する。

安全保障理事会は、研究・開発を含めた濃縮に関連する活動を再開し、追加議定書の定めているIAEAとの協力を停止するというイランの決定に深い憂慮をもって注目する。

安全保障理事会は、IAEA理事会の求めている段階的措置、特に理事会決議GOV/2006/14のなかにある主文の第一項を実行するようにイランに求める。これらの措置は、イランの核計画が平和目的に限定されるという信頼を醸成し、未解決の問題を解決するうえで不可欠である。これに関して、安全保障理事会は、イランが研究開発を含む濃縮関連活動および再処理活動の完全かつ持続的な停止体制を再度確立し、IAEAの検証を受入れることの特別な重要性を強調する。

安全保障理事会は、イランがそのような活動を停止し、IAEA理事会の定めた要件を完全に遵守し、検証を受けることこそが、イランの核計画が平和目的に限定されたものであることを保障する外交と交渉による問題解決に寄与するという確信を表明するとともに、イラン以外での核不拡散にも利することになるそのような問題解決にむけて積極的に活動するという国際社会の意志を強調する。

安全保障理事会は、IAEA理事会の果たしている役割を強く支持するとともに、イランの抱える未解決の問題解決のためにIAEA事務局長と事務局が続けている専門家としての偏りのない努力に敬意を表し、またそれを激励するものである。またIAEAがイランの核計画に関連する未解決問題を全て解明するまで活動を続けることの重要性を強調する。

安全保障理事会は、IAEA事務局長にたいし、イランのIAEA理事会の定めた要件実行の進捗状況にかんする報告書をIAEA理事会に30日以内に提出すると同時に、その報告書を安全保障理事会の審議のために提出するように要請する。


国際原子力機関(IAEA)エルバラダイ事務局長の国連安全保障理事会への報告(抜粋)

2006年4月28日

国際原子力機関事務局長(エルバラダイ)は2006年4月27日に、同日付の書簡をイランから受け取った。書簡は以下のように述べている。「…イラン・イスラム共和国は、イランの事案が、完全なままIAEAの枠内で保障措置のもとにとどめられることを条件に、包括的保障措置協定に基づくIAEAの査察を受入れる用意がある…

イラン・イスラム共和国は、2006年2月27日の(事務局長)報告が指摘している未解決問題を解決する用意がある。

これにかんして、イランは3週間以内にその日程表を提出することになっている。

2006年2月27日の事務局長報告が指摘しているように、IAEAはイランにたいし濃縮計画にかんするいくつかの問題についての追加情報の提供を繰り返し求めてきた。

イランは2006年2月12日〜14日のテヘラン会議で、これらの問題を議論することを拒否したが…その理由として、イランとしては、これらの問題は(核不拡散条約の)保障措置協定の範疇に入らないものと考えていることを指摘している。

以前のいくつかの報告でも指摘されているように、イランは2005年1月に、ある外国の仲介者が1987年にイランにおこなったと言われている提案を反映した1ページの手書き文書のコピーをIAEAに示した。

 この文書の性格や出所を確認するためには、IAEAがその文書のコピーを入手することが必要である。しかしイランは、その文書のコピーを提出するようにというIAEAの要請を拒否し続けている。

 2006年2月、イランはPFEP(試験的燃料濃縮プラント)において濃縮実験に着手した。この実験はUF6(六フッ化ウラン)ガスを最初に1台のP1型遠心分離機に送り、その後、10台および20台の遠心分離機を縦につないだカスケードとよばれる設備に送って濃縮するというものである。

 2006年3月中には、164台の遠心分離機のカスケードが完成し、UF6を使用した濃縮実験が開始された。
 2006年4月13日、イランはIAEAに濃縮レベル3.6%を達成したと報告した。2006年4月18日、IAEAはPFEFにおいてサンプルを採取し、その結果は当時イランが報告していた濃縮レベルを裏付けるものであった。

 イランがIAEAに申告した核物質は全て確認された。(IAEA)理事会に以前に報告されている少量の核物質を除けば、IAEAはイランに未申告の核物質を発見しなかった。

 しかし、イランの遠心分離計画の規模と内容に関しては、IAEAのもっている情報には空白部分が残っている。
 

 そのために、およびイランの核計画で軍がはたす役割などを含めて他にも情報に欠落部分があることもあって、イランには未申告の核物質や核活動がないという確証を得ようとするIAEAの努力は進展をみていない。

 イランの核計画の全容を明らかにしようとするIAEAの努力は3年以上も続けられているが、情報の欠落部分は依然として懸念材料となっている。

 このような事態が少しでも改善し、IAEAがイランの過去20年間にわたる未申告の核活動を完全に把握できるようになるには、イラン側の完全な透明性――保障措置協定や追加議定書の定める措置の範囲を超える透明性――と積極的な協力が必要である。

 イランは保障措置協定の実施を促進し続けており、また2006年2月までは、自らすすんで追加議定書が発効しているのと同じように行動してきた。

 2006年2月までは、イランはまた、IAEAが求めた、一定の軍事施設へのアクセスをも含む、いくつかの透明性措置にも同意していた。

 しかし、IAEAが、イランの濃縮計画の規模と性格、PHRC(物理学研究センター)が購入した軍民両用装置・物質の目的と用途、軍需核に関連する可能性があると言われている研究などを検証するためには、資料、両用装置および関係する個人などへのアクセスを含む、追加的な透明性措置が必要である。

 残念ながら、このような透明性措置はいまだに講じられようとしていない。

 追加議定書規定の履行を停止し、IAEAの検証を保障措置協定の実行だけに限定するというイランの決定によって、IAEAがこれらの問題解明で前進し、未申告の核物質や核活動はないと確認する能力はさらに制限されることになろう。

 IAEAの保障措置活動の結果は、IAEA理事会がイランに求めている信頼醸成措置の性格と範囲に影響をおよぼす可能性はあるものの、保障措置の義務は、信頼醸成措置とははっきりと異なるものであり、相互に交換可能ではないことに留意することが重要である。

 信頼醸成措置の実施は、保障措置義務の完全実施に代わるものではない。

 これについて、イランのケースについてのIAEAの保障措置についての判断と結論は、他のすべてのケースと同様に、IAEAが入手できる検証可能な情報にもとづいており、したがって、必然的に過去および現在の核活動に限定されることに留意することが重要である。

 IAEAは将来の協定遵守や意図について判断を下す、あるいはなんらかの結論に達することはできない。

(BBCニュース 2006年4月29日付け 電子版より)


アフマディネジャド・イラン大統領のブッシュ米大統領への書簡

2006年5月8日

慈悲と憐れみ深くあまねき神の御名において、
アメリカ合州国大統領ジョージ・ブッシュ殿

 しばらく前から私は、どうして人は、国際社会に存在し、つねに討議され、とりわけ政治の場および大学の学生達の間ではさかんに討議されている否定し得ない矛盾を正当化できるのだろうということを考えてまいりました。多くの疑問が答えられないままになっています。このような状況に迫られて私は、その矛盾と問いのいくつかをここで取り上げてみることにいたしました。これが、その是正につながることを希望しております。
 人は、偉大なる預言者イエス・キリスト(彼の上に平安あれ)に従う者でありながら、
 人権の尊重を義務と感じておりながら、
 自由主義を文明の模範として提示しながら、
 核兵器と大量破壊兵器の拡散に対し反対の意を表明しておりながら、「テロとの戦争」をスローガンとしながら、そしてまた、
 統一された国際社会、すなわちキリストと地上の有徳の人々の統治する社会をいつの日か確立するために尽力しながら、
 しかも同時に、
 もろもろの国を攻撃されるがままにすることができるでしょうか。
 人々の生命も名声も財産も破壊され、例えば村や都市、あるいは車両集団に数人の犯罪者がいる万一の可能性があれば、村、都市、車両集団全体が炎上させられてしまうのです。
 あるいは、ある国に大量破壊兵器の存在する可能性があれば、その国が占領され、約10万の人々が命を落とし、水源、農業、工業は破壊され、18万人もの外国兵がその国土に配備され、個人の住居の不可侵性は蹂躙され、その国はおそらく50年前の段階に逆戻りさせられてしまうのです。
 そのための対価はいかばかりでしょうか。
 ある国の国庫、そしてまちがいなく他のいくつもの国の国庫からの何千億ドルもの金が費やされ、何万人もの年若い男女(占領軍として)が危険な状態に置かれ、家族や愛する人から奪われて、彼らの手を他の人々の血で汚し、毎日のあまりの心理的重圧のために中には自殺を図る者も出て、抑鬱に苦しみつつ帰国する兵士たちは病みがちとなり、ありとあらゆる病と戦わなければなりません。帰国できず殺されて家族にその遺体が渡される人々もいます。
 大量破壊兵器を口実に、かくも巨大な悲劇が、占領される国、する国双方の人々を飲み込んだのでした。のちに大量破壊兵器はそもそも存在しなかったことが明らかになりました。
 言うまでもなくサダムは残虐な独裁者でした。しかしこの戦争は彼の政権を覆すために行われたのではありません。公に伝えられた戦争の目的は大量破壊兵器を発見し破壊することでした。しかし彼は他の目的を目指した過程において転覆されたのです。それでもこの地域の人々はそれを喜びました。私が指摘したいのは、長年イランに対して強いられた戦争のあいだサダムは西洋諸国により支援されていたということです。

大統領殿、
 私が教師であることをご存じかもしれません。私は教え子に、これらの行為がどうしたらこの手紙の冒頭に述べたような価値、そして平和と宥しの伝え手であるイエス・キリスト(彼の上に平安あれ)の伝統に対する義務と両立しうるのかと聞かれます。
 グァンタナモ・ベイには、裁判も受けたことがなく、弁護士も立てられない捕虜がおり、その家族は彼らに面会すらできぬまま、彼らは自国をはるか離れた異郷に留め置かれているのです。彼らの状況と今後の運命には国際社会の監視が届きません。彼らが囚人なのか戦時捕虜なのか、被告なのか犯罪者なのか、誰にもわかりません。
 欧州諸国の調査では、欧州にも秘密の監獄があることが確認されています。人が拉致され、秘密の牢獄に幽閉されるということを、私はいかなる司法制度にも関連づけることができません。また、かかる行為がどのように、この手紙の冒頭に述べたような価値、すなわちイエス・キリスト(彼の上に平安あれ)の教えと人権と自由主義的価値に対応するのかも理解できません。
 若者たち、大学生、そして一般の人々が、イスラエルという現象に多くの疑問を持っています。あなたはこの問題に、いくつかの点でお詳しいことと思います。
 歴史を通じて占領を受けた国は数多くにのぼりますが、新しい国民を住まわせて新しい国を作ったというのは、以前の時代には見られなかった新現象であると思います。
 学生たちは、60年前にはそのような国はなかったと言っています。彼らは昔の資料と地球儀を見せて、我々がやったように探してみてほしい、イスラエルなどという名前の国は我々には見つからなかったと言います。
 私は彼らに、第一次、第二次世界大戦の歴史を調べさせます。学生の一人は私に、数千万もの人々が命を落とした第二次大戦の時には戦争についてのニュースは戦争当事国によって速やかに広められたと言いました。めいめいが自国の勝利と最近の戦線での相手国の敗北を宣伝したのです。戦争のあと、ユダヤ人が600万人殺されたのだと主張されました。600万と言えば少なくとも200万世帯です。
 ここでもこれらの出来事が真実だと仮定しましょう。ではそれが、中東にイスラエルを建国することや、そのような国を支援することにつながるという論理的必然がありましょうか?
 イスラエルという現象はどのようにすれば合理化あるいは説明できるのでしょう。

大統領殿、
 イスラエルがどのようにして、またどんな対価を払って建国されたかは、ご存じのことと思います。
 ―その過程で何万人もの人々が殺されました。
 ―何百万もの先住民が難民となりました。
 ―何十万ヘクタールもの農地、オリーヴ農園、町や村が破壊されました。
 この悲劇はイスラエル建国の時だけには限りません。それは不幸にも60年間も続いています。
 子どもにすら憐れみを示さない一つの体制が樹立され、それが家々を中に住人のいるまま取り壊し、パレスチナの要人の暗殺リストと殺害方法を公表して暗殺し、何千人ものパレスチナ人を牢獄につないでいるのです。このような現象は唯一無二です。どう控え目に考えても近来の歴史には極度にまれです。
 人々のもうひとつの大きな問いは「なぜこんな体制が支持されているのか」ということです。
 この体制を支持することが、イエス・キリスト(彼の上に平安あれ)やモーゼ(彼の上に平安あれ)の教えや自由主義の価値観に沿ったことでしょうか。
 それとも私たちは、これらパレスチナ内外の土地に元々住んできた人々がキリスト教徒であろうとイスラム教徒であろうとユダヤ教徒であろうと、彼らに自分の運命を決定させることが、民主主義の、人権の、そして預言者たちの教えに反するのだと理解すべきなのでしょうか。もしそうではないとするなら、彼らの国民投票に対してかくも多くの反対があるのはなぜでしょう。
 パレスチナではこのほど新たに選出された政府が発足しました。独立の消息通はそろってこの政府は選挙民を代表する者であることを確認しました。信じがたいことですが、選挙で選ばれた政府に圧力がかけられ、イスラエル体制を承認して闘争を放棄し、以前の政府の政策を踏襲することが勧告されたのです。
 現パレスチナ政府がそのような綱領にもとづいて運営されていたなら、パレスチナ民衆は彼らに投票したでしょうか?
 ここでもお尋ねしたいのですが、パレスチナ政府に対して取られたこのような措置が、前記のような諸価値と両立するのでしょうか?
 民衆も「なぜ国連安全保障理事会でのイスラエル非難決議案はすべて拒否されるのか」と問うています。

大統領殿、
 よくご承知のとおり、私は民衆の間に暮らし、たえず人々との接触を保っています。中東の諸国からも人々が私に連絡を取ってきます。彼らも、かかる怪しげな政策を信用していません。
 この地域の人々がかかる政策に対しますます怒りを募らせていることは明らかになっています。
 あまりに多くのご質問をさしあげることは私の意図するところではありませんが、ほかにも触れておく必要のある論点があります。
 なぜ、中東でなにか科学技術上の成果が達成されると、それはシオニスト国家の脅威と解釈され、そのように描き出されてしまうのでしょうか。科学的な研究開発は国の基本的権利ではないでしょうか?
 あなたは歴史に通じておられます。中世を除いてほかに、歴史のどんな時代に、科学技術の進歩が犯罪とされたことがあったでしょうか。科学の成果が軍事に利用される可能性があるということは、科学技術をまるごと否定する十分な理由となるでしょうか。もしそうだとすると、科学のあらゆる分野、物理、化学、数学、医学、工学その他を含めた一切を否定しなければならなくなります。
 イラク問題で語られたことは虚偽でした。その結果はどうだったでしょう。嘘をつくということは、いかなる文化においても非難されることであり、あなたも嘘をつかれたくないと私は信じます。

大統領殿、
 ラテンアメリカの人々には、なぜ自分たちの選んだ政府が外国から否定され、クーデタの指導者は支援されるのか、いったいどうして自分たちはいつも脅かされ恐怖のうちに暮らさなければならないのかと問う権利がないでしょうか。
 アフリカの人々は、勤勉で、創造的で、才能のある人々です。彼らは人類の必要とするものを提供するうえで大事な、貴重な役割をはたし、人類の物質的、精神的進歩に貢献することができます。アフリカの大半の地域に見られる貧困と苦境が、それを妨げているのです。なぜ自分たちの莫大な富(鉱物を含め)は、自分たちこそが他の誰よりもそれを必要としているというのに、略奪されてしまうのかと問う権利が彼らにはないでしょうか?
 かかる行為がキリストの教えと人権の教義にかなうことでしょうか。
 勇敢にして信仰厚きイランの民衆も、多くの疑問と不満をもっています。1953年のクーデタとその後の合法的政府の転覆、イスラム革命への妨害、アメリカ大使館をイスラム共和国反対活動家を支援する拠点にしたこと(これは無数の資料により裏づけられています)、サダムの対イラン戦争を支持したこと、イラン旅客機の撃墜、イラン国家資産の凍結、イランでの科学および核の進歩に対するますます強まる脅迫、怒り、不快な対応(時もあろうにイラン国民が自国の進歩を喜び讃えているときに)など。そのほか数多くの不満についてはこの手紙では申し上げませんが。

大統領殿、
 9・11事件はまことに恐るべき出来事でした。無辜の人々の殺害は、世界のどこで起っても嘆かわしく恐ろしいことです。わが国の政府は即座に犯人に対する非難の声明を発表し、遺族の方々への哀悼の意と同情を表明いたしました。
 すべての国の政府には、国民の生命と財産と福祉を守る義務があります。伝えられるところによれば、貴国政府は広範な安全保障、防御、諜報のシステムを用いており、反対する者は外国でも追跡しているとのことです。9・11事件は単純な作戦ではありません。諜報機関や安全保障機関との連携、あるいはそれらが広範囲に浸透することもなく、あんなことを計画、実行できたでしょうか?もちろん、これは経験にもとづく推測にすぎません。しかしなぜ、あの攻撃のさまざまな側面が秘密にされてきたのでしょう。なぜ、私たちは責任をはたさなかったのが誰なのかを知らせられないのでしょうか。そして、なぜ、あの事件に責任のある者と犯罪を行った連中が特定されて裁判を受けないのでしょうか。
 すべての政府には、国民に安全と心の平和を与える義務があります。これまで数年間、貴国と世界の問題多発地域諸国の国民は心に平和など持ちえませんでした。9・11事件の後、欧米の一部のメディアは、あの攻撃によって測り知れぬ心的外傷を被った生存者と米国民を癒しいたわるどころか、ただ恐怖と不安の雰囲気をいっそう強めただけでした。新たなテロ攻撃の可能性を語って、人々の恐怖をことさらに長引かせたメディアもありました。これが米国民への奉仕ですか。恐怖と混乱から生じた損害は計算が可能でしょうか。
 米国市民は、いつでも、どこでも新たな攻撃を受けるかもしれないという、たえざる恐怖のうちに生きたのです。街路でも職場でも家でも安心できなかったのです。誰がこのような状況で幸福に生きられるでしょうか。なぜメディアは安心感を伝え心の平和をもたらす代わりに不安感を煽り立てたのでしょうか。
 この誇大宣伝がアフガニスタン攻撃の地ならしをし、またそれを正当化したと、一部の人は信じています。ここでも私はマスメディアの役割にふれる必要があります。
 メディア企業は公式には、情報の正しい伝播とニュースのいつわりない報道を確立した方針としています。しかし、いくつかの欧米メディアがこの原則を軽視しているのは、私の深く遺憾とするところです。イラクに対する攻撃の主な口実は大量破壊兵器の存在でした。これは公衆が最後には信じ込むようにと、間断なく繰り返され、こうしてイラク攻撃のための準備が整えられたのです。
 たくらまれた欺瞞的な風土においては真実は失われるのではありませんか。
 もし真実が失われるということが容認されるなら、それは前記の諸価値とどのように両立するのでしょうか。
 全能の主に知られた真実も失われるのでしょうか。

大統領殿、
 世界中の国で市民が政府の出費をまかなうのは、政府が自分たちに奉仕することができるようにするためです。
 ここでの問いは「毎年イラク戦争のために支払われる何千億ドルもの金は市民のために何を生み出したのだろう」ということです。
 閣下がご承知の通り、貴国の一部の州には貧困のうちに暮らす人々がいます。数多くのホームレスの人々がおり、失業は大きな問題です。もとよりこうした問題は、程度の差はあれ、世界のどこの国にも存在します。しかし、これらの諸条件を考慮しても、今イラク戦争のために(国庫から支払われて)費やされている巨万の額は、先にあげた諸原則にどう一致し、それらによって説明がつくのでしょうか。
 貧困や失業の問題は、世界中の人々が、私たちの地域でも貴国でも持っている不満の一部です。しかし、私が主張したいのは(またその一部にはあなたにもご賛成いただけることを希望しますが)、権力の座にある者は、特定の時期その役職にあるのであり、無制限に支配するわけではないが、しかし彼らの名前は歴史に記録され、直後の未来にも、遠い先の時代にもつねに審判を受ける、ということです。
 民衆は私たちの大統領としての治世を子細に検討するでしょう。
 私たちが人々にもたらし得たものは、平和と安全と繁栄であったか、不安と失業であったか。
 私たちの意図したのは正義の確立だったか、それとも特殊権益集団を支え、多くの人々を貧困と苦しみに追いやることによって少数の人々を裕福で強大にしただけだったのか。こうして、人々と全能の神の承認の代わりに裕福で権勢のある人々の承認を得ただけだったのか。
 私たちは、恵まれない人々の権利を守ったのか、無視したのか。
 私たちは、世界中の人々の権利を守ったのか、それとも彼らに戦争を押しつけ、彼らの問題に違法に介入し、地獄のような牢獄を建てて彼らの一部をそこに勾留したのか。
 私たちは世界に平和と安全をもたらしたのか、それとも脅迫と威嚇の脅威を高めたのか。
 私たちは自国の国民と世界の人々に真実を語ったのか、その逆を提示したのか。
 私たちは民衆の側に立ったのか、占領者と抑圧者の側に立ったのか。
 私たちの政府は、合理的行動、論理、倫理、平和、義務の遂行、正義、民衆への奉仕、繁栄、進歩、人間の尊厳の尊重を推進することに取り組んだのか、それとも、
 銃と威嚇と不安と民衆軽視と、進歩を遅れさせ、他国の優秀さを認めず、民衆の権利を蹂躙することに取り組んだのか。
 そして最後に人々は、私たちが就任のとき宣誓した民衆への奉仕という主たる任務と預言者の伝統に対して忠実であったかどうかによって、私たちを裁くことでしょう。

大統領殿、
 今後世界はさらにどれだけの間このような状況を許容しえましょうか。
 この趨勢は世界をいずこに導いていくのでしょう。
 どれくらい長いあいだ世界の人々は一部の支配者の誤った決定の代償を支払わなければならないのでしょう。
これからなおどれほどのあいだ不安の影(大量破壊兵器の蓄積がひきおこす)が世界の人々を追いかけることでしょう。
 罪のない男女、子どもの血が街路に流され、人々の住む家が破壊されて彼らの頭上に崩れ落ちてくるという事態が、今後どれほど続くのでしょうか。
 あなたはこの世界の現状にご満足でしょうか。
 現在の政策が続けられるとお考えでしょうか。
 もし、いま国防や軍事作戦や部隊の移動に費やされている何十億ドルもの予算が、そうでなく、貧困国への投資や援助に、医療の推進とさまざまの疾病との闘いに、心身の教育と改善に、自然災害被災者の援助に、雇用機会の創出に、生産および開発プロジェクトと貧困の軽減に、平和の確立に、紛争当事国間の仲裁に、人種紛争や民族紛争その他の紛争の火を鎮めるために投入されていたならば、世界は今どのようになっているでしょうか。それは貴国の政府と国民にとって当然に誇るべきものとなっているのではありませんか。 あなたの政権の政治的、経済的立場は今より強いのではありませんか。
 これを申し上げるのは何より残念なことですが、もしそのようであったなら、アメリカ政府に対して世界中で増大する一方の憎しみは存在したでしょうか。

 大統領殿、私は誰をも苦しめようとの意図を持っておりません。
 しかし、もし預言者アブラハム、イサーク、ヤコブ、イシュマエル、ヨセフ、あるいはイエス・キリスト(彼の上に平安あれ)が今日私たちとともにあったならば、かかる行いをどう裁くことでしょうか。私たちははたして、正義があまねく行き渡りイエス・キリスト(彼の上に平安あれ)のまします約束された世界ではたすべき役割を与えられるでしょうか。そもそも私たちはそこに入ることを認められるでしょうか。
 私の基本的な問いは、他の諸国と関わり合う、今よりよい道はないのかということです。
 こんにち世界には何億ものキリスト教徒がおり、何億ものモスリムがおり、モーゼ(彼の上に平安あれ)の教えに従う何百万もの人々(訳注:ユダヤ教徒)がおります。すべての神聖なる宗教は、ひとつの言葉を共有し尊んでいます。それが「一神教」であり、唯一なる神を信じ、他の神を世界に認めないということです。
 聖コーランは、この共通の言葉を強調し、全ての神聖なる宗教の信奉者に呼びかけています。[3.64]
 言ってやるがいい。おお、かの啓典の信奉者たちよ、我々とお前たちの間の公正な提案のもとに来たれ。我々はアッラーのほかの何ものにも仕えず、彼よりほかにいかなるものにも与することなく、我々のうちのいかなる者もアッラーをおいてほかの者を主と見做さないと。だが、もし彼らが背き去るなら言ってやるがいい、我々がモスリムであることを証しせよと。(イムランの章)

大統領殿、
 神聖なる詩句によれば、私たちはみな、唯一の神を崇め神の遣わされた預言者の教えに従えと呼びかけられてきました。
 「世界のあらゆる強き者の上にあり、御心にかなう全てのことをなしあたう唯一の神を崇めよ」「隠れたるものも表れたるものもともに、過去も未来もともに知りたまう主、そのしもべの心に起るすべてのことを知りたまい、彼らの行いを書き記したまう主」「主は天国と地上の持ち主にして、全ての宇宙は彼のさばきの庭なり」「宇宙のための計画は主の御手によりなされ、主はそのしもべに慈悲と罪の許しのこの上なき知らせを与えたまう」「主は虐げられたる者の友にして、虐げる者の敵なり」「主は憐れみ深く、慈悲あまねし」「主は信仰厚き者の頼りとするところにして、彼らを闇より光へと導きたまう」「主はそのしもべの行いの証人なり」「主はしもべらに、信仰厚く、よき行いをなせと呼びかけたまい、高潔有徳の道にとどまり、堅忍不抜たれと求めたまう」「預言者に従うことをしもべに求めたまい、しもべらの行いの証人なり」「世の終わりに厳しき裁きを受くべきは、この世の生を選びて主に従わず、主のしもべを虐げし者のみなり」「世の終わりに良き裁きを受け永遠の天国に入るは、主を恐れ、みだらなる己に従わざりし者なり」
 私たちは、神に遣わされた預言者の教えに立ち戻ることが、救いに至る唯一の道であると信じます。閣下はイエス(彼の上に平安あれ)の教えに従う方であり、地上を有徳の人々が治めるという神の約束を信じておられるとお聞きしています。
 私たちはまたイエス・キリスト(彼の上に平安あれ)が全能の方のつかわされた偉大なる預言者の一人であると信じています。彼はコーランにおいても繰り返し讃えられております。イエス(彼の上に平安あれ)はコーランにも引用されています[19.36]。だから、確かにアッラーは私の主であるとともに、あなたがたの主なのだから、ゆえに彼に仕えよ、これが正しい道である(マリアムの章)。
 全能なる方への奉仕と服従は神の言葉を伝えるすべての者の信条です。
 ヨーロッパ、アジア、アフリカ、アメリカ、太平洋その他の世界の全ての人々の神はひとつです。彼が、そのしもべを導き、尊厳を与える全能なる方なのです。彼は人類に偉大さをお与えになりました。
 また聖なる書物を読んでみましょう。「全能なる神は彼の預言者を奇跡と明らかなる徴とともに遣わして人々を導き、神の徴を見せて彼らを罪と穢れから清められた。そして、この書物と秤(balance)を送り、人々が正義を示し、反逆の徒を避けるようになされた」
 上記のような詩句はみな、なんらかの形で、聖書にも見出されるものです。
 神の預言者はこう約束しました。 「すべての人類が全能の方の裁きの庭に集い、彼らの行いを調べられる日が来る。善人は天国に、悪をなした者は神の罰に定められる」
 私たちはともに、このような日があると信じていると私は信じますが、支配者の行為の善悪を量るのはたやすいことではありません。我々はそれぞれの国民と、私たちの行為に直接であれ間接であれ影響を被る全ての人々に対して責任を負わなければならないからです。
 すべての預言者は、人間のために平和と穏やかな暮らしについて語っています。一神教と正義と人間の尊厳への尊重とにもとづいて。
 私たちがみな、これらの原則、すなわち一神教、神への崇拝、人間の尊厳の尊重、終わりの日を信ずることという原則を信じ、それを守るようになるなら、現在の世界の諸問題は克服することができ(それら諸問題は、全能の方と預言者の教えとに対する不服従の結果なのですから)、私たちの実績を改善することができるとお思いになりませんか。
 これらの原則を信ずることが、平和と友好と正義を推進し保証するのだとはお考えになりませんか。
 上記私の述べ来たった諸原則は、文字になったものも、ならなかったものもともに、普遍的に尊ばれているとはお考えになりませんか。
 大統領はこの招待をお受けにはなりませんか。すなわち、預言者の教えと一神教と正義へと真に回帰すること、人間の尊厳、全能なる方およびその預言者への服従を大切にすることです。

大統領殿、
 歴史は、抑圧的で残酷な政府は長続きしないことを我々に教えています。神は、人間たちの運命を彼らの手に託してきました。全能なる方は宇宙と人類をそれらの恣意に委ねるのではありません。諸国政府の願望と計画に反して発生した物事はたくさんあります。それは、より高い力が働いていること、すべてのできごとは神によって決定されているのであることを示しています。
 こんにち世界に見られる変化の兆候を否定することができるでしょうか。
 こんにちの世界の状況は、10年前と似たようなものでしょうか。変化が速やかに起っており、それは凄まじい速度で出現するのです。 
 世界の人々は現状に満足しておらず、世界の多数の強大な指導者の公約や意見などほとんど気にもとめていません。世界の多くの人々が安全を脅かされていることを感じ、不穏な情勢と戦争の広まることに反対しており、いかがわしい政策は認めず受け入れません。
 人々は、持てる者と持たざる者の、豊かな国と貧しき国の間の乖離がますます拡大することに抗議しています。
 人々は増大しつつある腐敗にすっかり嫌気がさしています。
 多くの国の人々が、自分たちの文化の基盤に攻撃が加えられ家族が解体してゆくことに怒りをもっています。また、温かな心遣いと親身な同情が薄れつつある風潮を嘆かわしく思っています。世界の人々は国際機関に信頼を置いていませんが、これは人々の権利がそれら機関によって擁護されていないからです。
自由主義と西洋民主主義は、人類の理想を実現するのには役立ってきませんでした。今日、これら二つの価値観は破産しています。洞察力のある人々にはすでに自由民主主義制度のイデオロギーと思想が崩壊する音が聞こえるのです。
 私たちはますます世界中の人々が一つの焦点に結集しつつあるのを目にしています。それは全能なる神です。疑いなく神と預言者の教えへの信仰を通じてこそ、人々は自分たちの問題を克服するのです。私のあなたへの問いは「この人々のうちに加わることをお望みになりませんか」ということです。

大統領殿、
 私たちの好むと好まざるとに拘わらず、世界は全能なる方への信仰と正義へと引きつけられていくのであり、神の意思がすべての存在を凌駕することになるのです。
ヴァサラーム・アラマン・アタバ=アル ホダ (平和よまことの道を歩む者にのみあれ)

イラン・イスラム共和国大統領
  マフムード・アフマディネジャド 

【訳注「彼の上に平安あれ」:イスラム教徒はイエスをムハンマドの直前に現れた預言者として敬意を払う。預言者の名を唱えるときは、彼の上に平安あれ、と唱えるならわしである。】
(TUP速報607号〔5月24日付〕、612号〔6月6日付〕より転載。翻訳:萩谷良)

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