【資料保管庫・軍縮と核政策】
2005年核軍縮キャンペーン(CND)大会決議
訂正を含む以下の決議は、2005年CND大会により採択された。
1.トライデントとその交代
CNDはトライデントとその交代に反対する。
大会は以下の点を指摘する。
1.トライデント核兵器システムを交代させれば核兵器が戦争で使用される危険が増す。
2.トライデントの交代は、2000年の核兵器不拡散条約(NPT)再検討会議で合意された、英国政府自身の「自国核兵器の完全廃絶を達成する明確な約束」と相容れず、NPT第6条違反となりうる。
3.政府のこのような動きは、非核保有国が核能力を取得しようと考えるのを助長することにしかならない。
4.さらに、推定数百億ボンドとされるトライデントの交代費用は、発展途上国援助や公共サービス向上など、平和と正義の目標達成のためより有益に使うことができる。
5.新聞報道によれば、トライデント交代に向け、すでに一部措置が講じられており、政府はオルダーマストン核兵器研究所で「低爆発」核弾頭の開発を準備している。
大会は以下決議する。
1.国会議員、労働組合運動、NGO、宗教団体、学生、青年など社会の広範な人びと協力し、トライデント交代の危険についての啓蒙、交代させないための政府の説得キャンペーンをすすめる。
2.ファスレーン、オルダーマストン、デヴォンポートや他の関連施設での抗議と直接行動の支援を含め、国民と国会への働きかけを通じて、現存のトライデント・システムとその再装備プロセスへの反対を続ける。
3.CND全国評議会に、トライデントとその交代提案への反対運動の模範となる資材を地域グループに提供するよう委任する。
2.核軍縮とNPT
大会は以下指摘する。
1.核軍縮の国際的枠組みを示す1970年核不拡散条約の重要性。
2.2000年に合意された「自国核兵器の完全廃絶を達成する明確な約束」に向けた措置を、核保有五カ国がとっていないこと。
3.2005年NPT会議において、2000年義務への約束を会議の議題からはずすという米国代表の試みにより、核軍縮が進展しなかったこと。
4.「政府が、自分たちに不都合と認めた約束をあっさりと無視したり放棄したりするなら、我々は、安全保障の領域で国際の協力と信頼の体系を創ることは決してできない」というカナダのNPT代表団団長ポール・メイヤー大使の最終発言。
大会は以下決議する。
1.英国政府に、自国の核軍縮義務を果たすよう求める。
2.NPTの中心的役割から核軍縮をはずす核保有国による試みに反対する。
3.NATO
CNDは、NATOの核政策に全面的に反対である。この政策は1999年の「戦略概念」以来変わっておらず、核兵器は「平和を守る」もので、「最低限の核抑止」は必要だと主張している。NATOは現在も、核兵器の「先制攻撃」と非核保有国との「核の共有」政策を維持している。核を搭載したトライデント潜水艦はNATOに「統合」されており、米国のNATO核弾頭がレーケンヒースに貯蔵されている。英国政府はこの春、自国の「NATO義務」を理由に、核兵器の「先制攻撃」政策を維持すると宣言した。
したがって大会は、核のない平和な欧州を目指すキャンペーンの一環として、以下決議する。
1.政府に対し、NATO核兵器政策の順守をやめ、NATOを脱退するよう要求する。
2.NATOとNATO核兵器政策に反対する欧州の他団体と連携する。
3.来年、多様な運動を通し、国民にNATOの危険な政策を知らせる活動をおこなう。
4.EUの外交および安全保障をNATO政策に関連付ける欧州連合憲章第41条に反対する運動を続ける。
5.正義、国際法の支配、国連の原則を支持する世界的な運動の支援によりもたらされる安全保障を目指す運動をおこなう。
4.レーケンヒース
大会は、レーケンヒース米空軍基地に配備されているB61爆弾、ならびにベルギー、オランダ、ドイツ、イタリア、トルコの7つの基地にNATOの保護下配備されている合計480発の核兵器撤退運動のために新しく創設された「アメリカの核兵器撤退を求める欧州ネットワーク」(US Nukesoutof-Europe Network)に留意する。大会は、核の共有を伴うこの配備が、NPT第1条と第2条違反であること、配備には確かな軍事目的はいっさいないことを指摘する。その反対に、この核配備は、欧州における非常に危険な戦術核兵器削減(とその結果の廃絶)に関する米ロ協議の障害となっている。
大会は、CND評議会とすべての地方、地域、地元グループに対し、英国とりわけレーケンヒースの(上記の新設)ネットワークの活動を支援するよう要請する。
5.新世代原発建設の動きと原子力産業と核兵器のつながりについての運動
大会は以下指摘する。
1.CNDは、新世代の核兵器と原発の両方に反対する運動を続ける。
2.燃料の供給と処理に関する特有の危険性と長期的貯蔵の問題。
3.原子炉設計は進歩しているが、放射性物質により環境が壊滅的汚染にさらされる危険は残っている。
4.こうした問題や危険性のない原発に替わる物が利用可能である。
5.核および放射性兵器は、原子力産業に技術的に密接に依存している。(例えば、核弾頭における濃縮ウランの中心的役割、産業用濃縮の副産物である「劣化ウラン」を先端に装着した爆弾や弾丸。)
6.原子力関連会社と核兵器製造・事業会社には顕著な重なりが見られる。(例えば、カーライル、サブコ、ハリバートン、ロールスロイスの役割。)
大会は以下決議する。
1.こうした関連をさらに調査する。
2.核兵器と原子力推進運動の裏にある経済的目的に国民の注意を喚起する。
3.主要な企業の分野横断的な役割ならびにそれに伴う利権を特定し、こうした企業名を公表する。
6.イラクの不法占領と今後の戦争の危険
大会は以下指摘する。
1.イラクの不法な侵略と占領は、殆どおそらく、10万を超える民間人の死亡と人道的惨害をもたらしている。5月に発表された国連開発計画の調査は、5歳以下の子どもの23%が慢性的栄養不良に苦しみ、イラク人の39%が危険な飲み水を利用し、4分の3の家庭で電気供給が不安定状態にある。
2.24人の医療専門家による、米英政府がイラク死傷者数の監視を怠っていることへの非難。
3.4月に明るみに出た法務長官概要は、ニつ目の国連決議がないため、イラク侵略を支持する明確な法的助言を与えることができなかった。これは、1441号決議は戦争の法的根拠でないというCNDの主張をさらに強めるものである。
4.劣化ウラン、クラスター爆弾の使用、イラク民間人の拷問と拘束を含む、占領軍による戦争犯罪。
5.とりわけロイド調査など、劣化ウランと「湾岸症候群」を関連付ける証拠が増えている。
6.イラクの戦争と占領に対する米国民の支持は、侵略以来少しずつ低下し続け、7月には過半数が侵略をもはや支持しないところまで達した。
7.米国政権は、イランのような石油の豊富な国に対し、核能力を取得しようとしているとの立証証されていない言いがかりつけ、攻撃している。
大会は以下決議する。
1.イラクの不法占領への反対を再確認する。
2.CADU(劣化ウラン反対運動)と共に劣化ウランの使用に反対する運動を続ける。
3.さらなる先制戦争に反対する運動を続ける。
7.戦争、核兵器、世界規模の貧困
大会は以下指摘する。
1.国連の調査では、富める西側諸国が、対外援助の25倍を防衛費に費やしていることが分かっている。
2.英国は毎年トライデントに15億ポンドを使い、オルダーマストンでの開発に22億ポンドを投資している。トライデント一隻が交代されれば100億ポンド以上が費やされる。
3.イラク戦争と占領に数十億ポンドが使われてきた結果、約10万人が死亡し、予防可能な疾病による死亡は増加し、子どもの23%が慢性的栄養不良に苦しんでいる。
4.戦争と核兵器の脅威が、地球規模の不平等を維持するため利用されている。戦争を終わらせ核兵器をなくすことは、世界規模の貧困をなくす上で主要な課題である。
5.「貧困を終わらせよう」(Make Poverty History)キャンペーンは、不公平な貿易障害、債務、不十分な人道的支援を通じて地球的規模の不平等を維持する上での西側諸国の役割について世論を喚起する重要な運動である。
6.このキャンペーンで、戦争と核兵器についての意識を高め、それらに反対するうえでのCNDとその他の反戦平和組織の役割。
大会は以下決議する。
1.「貧困を終わらせよう」連合への参加、この運動の一環として私たちが取り組む課題を提起することを続ける。
8.第二次世界大戦終結60周年
2005年は第二次世界大戦終結、日本への原爆投下、その後の画期的な戦後合意から60年目の年である。米国と英国の指導者たちは偽善的にも、こうした「記念」行事を先頭にたって行っている。今年公表された2003年3月18日法律顧問補佐官が外務省に宛てた辞表において、同補佐官は、イラク戦争は国連の二つの創始国が、第三国を侵略し占領した「侵略戦争」であると述べた。1945—46年のニュルンベルグ戦争犯罪法廷は、このような戦争を「究極的国際犯罪」であると糾弾した。「対テロ戦争」を口実にした「全面的支配Full Spectrum Dominance」の実行には、60年前に創られた国際法の基盤に対する全面攻撃が必然的に必要なのである。
大会は、すべての国により合意された国際関係の原則を擁護し広めることで、60周年行事を記念することを決議する。CNDは独自に、また他団体と協力して、英国を従属的パートナーとした米国による戦争を打破する活動をおこなう。
9.戦争阻止連合(Stop the War Coalition)
この大会は、CNDが独自の運動と政策目標を持つ一方で、こうした目標の一部が戦争阻止連合(StWC)の目標と重なることを指摘する。このため、CNDはこの3年間、一致できる点での協力に基づきStWCと建設的な関係づくりを進めてきたと、大会は指摘する。
大会はまた、両組織が英イスラム教協会と協力関係にあり、この協力関係により、三組織共同でイギリス史上最大のデモの組織が可能となったことを指摘する。
大会は、共通の問題での三組織の共同関係を発展させることを再確認し、この建設的な関係を続けることを決議する。地域のCND組織は、適切と判断する他団体との協力活動を続ける。
10.CNDの再建
CNDがトライデントの機能向上や交代に関する一大運動を進める可能性に留意し、CND会員が少しずつであるが増えていることを歓迎し、志を同じくする組織と強いつながりがあることを認識する。しかし、一方で、地方のCND組織の勢力が相当低下していることも認識し、大会はCND評議会と役員に対し、個人会員以外にCNDの組織がない地域に、組織をつくったり再建するための基盤づくりを奨励するよう要請する。
緊急決議
1.グアンタナモでのハンスト
大会は、グアンタナモの200人以上の拘留者によるハンストが摂食と鎮痛剤の強制により長期化し8週間目に入っていることを懸念を持って指摘する。
大会は、グアンタナモには、18年間ブライトンに住んできた難民であるオマール・デガエスを含め最低でも9名の英国住民がいることを指摘する。
大会は英国政府に対し、裁判なしで拘束され、非人道的扱いを受けているこれら英国住民を英国の司法管轄に戻すよう米政権に要請する代表を緊急に送るよう要求する。
さらに大会は、グアンタナモはじめ拷問と人権侵害行為をおこなっている施設を閉鎖するよう要求する。
2.市民権および抗議する権利の擁護
大会は以下指摘する。
1.国会付近に、そこで抗議する権利を大幅に制限する「閉鎖地帯」が導入されている。
2.バルカン半島とイラクでの英国政府政策は「ばかげている」と発言して、外相を非難したことを理由にCND副会長のウォルター・ウォルフガングを拘束するにあたり「対テロ法」が適用された。
3.「テロリスト違法行為」の定義を拡大し、核施設・敷地への不法侵入とそこでの活動をも「違法行為」とするテロリズム法案が出された。法案が通れば、反核運動の活動は大幅に制限される。
4.この法案は言論の自由にも深刻な影響をおよぼし、イギリスにおけるさらなるテロ攻撃の阻止にあたりその協力が不可欠な団体を有罪とする危険性を持つ。
5.1998年人権法が規定しているように表現の自由と平和的抗議の権利は人権である。
大会はさらに以下指摘する。
ランカスター大学の大学生・大学院生・関連大学の学生の6人グループが、自分たちの大学構内で平和的抗議をおこなった後、「悪質な不法侵入」を理由に有罪とされた。この抗議行動は、構内の(クエーカー教創始者のひとりにちなんで命名された)ジョージ・フォーックス・ビルでおこなわれた、ブリティッシュ・アエロスペース・システムズを含む世界最大の軍事産業が関与する会議に反対するものであった。6人は各自が300ポンドの支払いと、2年間の条件付釈放を言い渡されており、うち二人は3ヶ月の禁固刑になりうる反社会的行為取締り法の刑を下されている。6人は世界中の学識者、学生自治体、平和活動家、クウェーカー教徒、大学講師組合AUTから支援を受けている。
大会は以下決議する。
1.リバティーなどの組織と共に、市民権、言論の自由、抗議の権利を守る運動を進める。
2.ジョージ・フォックスの6人を控訴審で支援する。
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