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米国防総省戦略文書
大西洋両岸社会の安全保障の強化: 21世紀に向けたアメリカの戦略(抄訳)

2000年12月 



目次

前文
 国防長官のメッセージ

第一章:欧州におけるアメリカの死活的利益
 民主主義と人権/経済的繁栄/安全保障

第二章:関与戦略
 NATO/多国間および二カ国間関与

第三章:NATO?大西洋両岸社会の安全保障の錨
 防衛能力の向上/欧州の柱の強化/拡大

第四章:NATOを超えた大西洋両岸社会安全保障ブロックの構築
 平和のためのパートナーシップ/東南ヨーロッパ/ロシア連邦を関与させるために/ウクライナとの関与/バルト諸国/OSCE(欧州安全保障協力機構)などの安全保障への貢献機構/軍備管理

第五章:欧州における米軍の役割
 安全保障環境の形成/危機対応とより小規模な不測事態作戦/抑止と集団的防衛

第六章:世界的な挑戦に立ち向かう大西洋両岸社会協力の向上
 核・細菌・化学兵器がもたらす安全保障への脅威/弾道ミサイル防衛/戦域ミサイル防衛/全米ミサイル防衛/「従来とは異なる」国境を越えた脅威/欧州を超えた地域における安全保障の構築/ペルシャ湾/中東/地中海沿岸/サハラ以南アフリカ/アジア

結び:21世紀に向けたリーダーシップ

(本号では、本文のうち核兵器戦略に関連する部分のみを抜粋・訳出。)
 

前文:国防長官のメッセージ

 … このグローバル化の時代において、アメリカと欧州は、われわれ大西洋両岸社会内の民主主義と繁栄に重要な影響を与えうる、欧州大陸周辺およびそれを超える地域における安全保障上の大きな問題に対処するにあたって、共通の利害を有している。グローバル化と情報革命は、われわれの安全保障上の構造もふくむ大西洋両岸社会に巨大な利益をもたらすが、同時に、われわれが危険にさらされる可能性も高める。グローバル化と情報革命は、潜在的な敵?敵対的国家および精巧度を増すテロリストの両方?が、核・生物・化学(NBC)兵器とそれらの運搬手段を開発したり獲得する試みを助長する。欧州を超えた地域で起こる人道上の災害は、大西洋両岸社会の利害に重要な影響を及ぼしうるのであって、米欧共同の対応を必要とする。〔2〜3頁〕
 

第一章:欧州におけるアメリカの死活的利益

……
安全保障
アメリカは、欧州全体に永続的平和をもたらす安定した安全保障環境の形成に努力する。このような環境のためには、民主主義の促進と経済の繁栄が欠かせない。北米の防衛は、ひき続き欧州の防衛と一体である。アメリカは20世紀、今日の基準から見れば著しく原始的な兵器で戦われた、欧州での破壊的な戦争から自国を隔離させようとしたが失敗した。アメリカは、21世紀に欧州が攻撃されれば、とりわけそれが大量殺りく兵器の使用をともなうなら、その影響から自国を切り離すことはできない。…
…アメリカの国家的安全を守るためには、それぞれの国境を超える問題について欧州と協力しなくてはならない。アメリカは、NBC兵器およびそれらの運搬手段拡散の阻止に努めるが、それは、このようなことが起これば、アメリカ自身そして同盟国の安全が直接脅かされるからである。拡散の脅威にたいするとりくみは、同盟国および(軍民)両用使用が可能な原料・技術を生産・売却するその他の欧州諸国の積極的な協力なしには成功しない。こうした原料・技術は、不正な者たちの手に落ちれば、敵対的目的に使用されうる。
さらに、アメリカの領土、国民、経済的繁栄の防衛は、自由貿易、戦略的天然資源へのアクセス、国際水域・航空路に依存している。米軍の欧州駐留は、アメリカの経済的利益を守る上でも、危機と危機以外の任務の両方において、同盟国と近隣地域の友好国を支援するために米軍を展開する上でも、不可欠な役割を果たしている。欧州における防衛協定を通した、米軍が使える基地の設置や受入国支援という構造がなければ、欧州内外におけるアメリカの死活的利益を守ることは、計り知れないほど複雑になり、過酷な要求を課され、費用がかかることとなろう。〔7?8頁〕
 

第三章:NATO―大西洋両岸社会の安全保障の錨

防衛能力の向上
 …この10年間、NATO領土を直接侵略しうる脅威が大きく減った一方で、(NATO周辺地域での地域紛争、NBC兵器の拡散、テロ攻撃など)ほかの種類の脅威は大きく増大した。ことをさらに複雑にしているのは、こうした台頭する脅威が、多岐にわたる源泉から生じ、組み合わされたり単独であったり、いつ何時にも起こりうるという事実である。対抗手段として、NATOの軍隊と機構は重要な変革に着手しはじめ、NATO同盟国は、同盟には(NATO憲章)5条危機および5条以外の危機の両方に適応しうる新しい能力が必要となる、ということに同意している。
…コーエン国防長官はまた、NATO通常軍の優位性を前に、敵対的諸国家が、この優位性を相殺すべく、NBC兵器および飛距離と命中力を向上させている弾道・巡航ミサイルに目を向けていることに繰り返し言及した。よって、NATOは、こうした高まる脅威に効果的に対応できる能力・外交政策・計画を開発し配備する必要がある。…〔14頁〕
 …自国の防衛能力を高めるよう同盟国を励ますと同時に、われわれは、アメリカ自身の能力も向上させ、技術の共有を促進するため国家政策の改革に向けた重要な措置を講じている。たとえば、…
 われわれは、司令官と参謀に、政策・戦略・ドクトリン上の指針を与え、NBC環境のなかで計画および共同・多国籍軍作戦がおこなえるようにしている。この指針は、医療体制といった受身の防衛能力だけでなく、米軍がNBC汚染環境のなかで生存し、戦い、勝利することを可能にするような積極的な防衛・対抗能力をもたらすものである。…〔16頁〕
 …同盟は、アメリカのみの努力では健全な体制を保てないであろう。現時点で、欧州のやる気は、全体として、合意されたすべてのDCI(防衛能力構想・ワシントンでのNATO首脳会議で提唱)を続行するには、「陪審員はまだ評決に至っていない」という状態にある。いくつかの同盟国が、DCIとNATO戦略概念の両方に自国軍を対応させるための再構築作業を含め有用な手段を講じている。加えて、イギリス、カナダといった国が、今後数年かけて、防衛費を実質上増額すると発表している。このような増額がおこなわれるのは、冷戦終結以来はじめてである。それでも、多くの同盟国が、自国の現在の計画はひどく小さい「兵力目標」を完全に実行することにある、と示唆している。さらに、なかには、防衛費の実質上の削減を真剣に検討するかまたは実行するという、間違った方向へ向かっている同盟国がある。
この傾向は、今後転換されねばならない。
DCI(防衛能力構想)目標が達成できるかどうかは、最終的には十分な資金の準備にかかっている。同盟国は、21世紀型戦力の配置に向け、必要な投資をおこなう必要があるだろう。防衛費はたいてい国家的優先事項に属するものだが、同時に、現実問題として、国際的に重要な課題に対応し、また同盟国としてこうした課題にとりくむのに必要な能力をつけるものでなくてはならない。いくつかの分野では、同盟国の軍事力を、革新的、より効率的、よりよく調整された資源の利用により増強することができる。必要な能力のための財源は、場合によっては、軍事要員の再構成と削減によって確保できる。多くの機動力、兵站業務能力は、民間資産と既製技術の利用により満たすことができる。たとえば、民間の輸送体制を、緊急の場合の軍事的空輸や海上輸送に利用するなどである。…
しかし、多くの同盟国にとって、より賢明な支出だけでは不十分となろう。合意されたDCI目標を満たすには、しかるべき支出が可能な国は、防衛費を上積みする必要があるだろう。効果的なDCIと戦力計画プロセスを組み合わせることにより、われわれは、各国の立法機関と国民にたいし、追加財源が健全に確保され、賢明に支出されることを確約する手助けができるであろう。〔16〜18頁〕
 

第四章:NATO地域を超えた大西洋両岸社会安全保障ブロックの構築

……
ロシアを関与させるために
アメリカ、同盟国、パートナー諸国は、ロシア連邦が、安定した、市場経済をとる法治民主主義国家となり、国内に紛争がなく、欧州の安全と繁栄に寄与し全面参加できる意志と能力をもった国となることに、共通の死活的利害をもっている。大西洋両岸社会は、豊富な人的・天然資源を有する膨大な核兵器で武装した隣国が、敵対的で全体主義的統治の新しいカーテンの後ろに隠れたり、経済的に崩壊するようなら、真に安全を確保することはできない。…
安全保障問題の領域におけるアメリカの対ロシア戦略は、3つの主要部分から成り、これらは二カ国間および多国間の経路を通じて追求されるべきである。
・第一に、アメリカとNATOをロシアの国家安全保障にたいする潜在的脅威と見なすロシアの認識を最小限にするために努力する。こうした認識に基づいておこなわれる軍事ドクトリンに関するロシア政府の公式見解の表明は、特にロシアの近隣諸国にとって脅威と映ることが多い。こうした認識はまた、国内的にも悪影響をもたらす可能性がある。
・第二に、安全保障関連の諸問題で、ロシア連邦との実質的協力計画の拡大に努める。さまざまなレベルでの定期的な連絡を通じて、アメリカ、同盟国、パートナー諸国との協力が、ロシア軍と軍事関係者にとって正常で高く尊重される活動となるような関係を発展させることを願う。
・第三に、ロシアの行動や政策が、大西洋両岸社会およびより広範な国際社会にとって重要な価値にたいするロシア自身の誓約に深刻な懸念を感じさせるときには、アメリカは黙ってはいないだろう。われわれは、否定的な行動は否定的な結果をもたらすということを、ロシアに認識させることを望む。
二カ国間の分野において、米ロそれぞれの戦略核戦力を安定的に削減するというアメリカの誓約は、冷戦時代の危険な核競争に舞い戻らないというわれわれの願いを裏付けている。こうした削減に伴って、ありうる誤解を避けるためロシアと共同するというわれわれの願いを実例で示す(弾道ミサイル発射に関する情報交換を目的とする米ロ共同センターのモスクワへの設置合意など)、核関連での信頼構築措置がとられるであろう。米ロの国防・軍部高官によるハイレベルでの協議も、互いの軍事ドクトリンと政策にたいする理解を深める主要な方法である。
 …ロシアと共通の理解に達するために努力する一方で、アメリカ、NATO、パートナー諸国と安全保障関連上の協力を広げることが、ロシア自身の国家利益であることも強調しなくてはならない。この点でも、われわれはすばらしい基盤を持っており、その上に協力を構築することができる。たとえば、「脅威削減拡充イニシアチブ」のもと、アメリカは現行計画の強化・拡大をおこない、この8年間に次のような分野でロシアを援助してきた。何千もの核弾頭の不活性化。何百ものミサイル・爆撃機・弾道ミサイル潜水艦の解体。数十カ所での核兵器とミサイルの安全性の向上。細菌兵器と関連技術能力の拡散防止。世界最大貯蔵量を持つ化学兵器の安全な解体の開始。旧ソ連時代の何千人もの兵器科学者が、平和的な商業・研究活動へ参加する機会と動機の提供。いくつかのNATO諸国、EU諸国は、関連する二カ国間・多国間の取組みに参加し、旧ソ連時代の大量破壊兵器関連の遺産に対処する上でロシアを援助している。
今後、ロシアが大西洋両岸社会の安全保障に積極的に貢献できる国となれる分野での新しい協力を追求していく。この点で重要な前例は、バルカンで培われた関係で、ロシア軍が、NATOとパートナー諸国とともに、SFOR(NATO安定化部隊)およびKFOR(コソボ国際治安部隊)において協力したことである。戦略の一部として、われわれは、米ロ共同演習の計画および戦域ミサイル防衛技術開発でのロシアとの協力を通して、危機対応作戦のさいロシアと共同するためのアメリカの能力向上に努める。…
つまるところ、冷戦時代の貯蔵核兵器の削減、大量破壊兵器の拡散防止、ロシア政治・経済・社会制度のさらなる民主化と自由市場慣行への移行を容易にするにあたり、アメリカがどれほどロシアと協力できるかは、ロシアがおこなう決定に大きく依存するであろう。こうした分野それぞれでの進展は、時おり後退する可能性があるため、われわれの長期的成功は保証されてはいない。こうした点をふまえ、ロシアにたいし「静観する」という態度は、同盟国もパートナー諸国も、アメリカもとるべきではない。…〔33〜38頁〕
 

第五章:欧州における米軍の役割

……
抑止と集団的防衛
米国欧州司令部(USEUCOM)の即応態勢と能力が整っていれば、アメリカに拠点を置く通常軍より、この地域にたいする、または地域内でのいかなる脅威へも、より迅速に対応できるようになる。こうすることで、NATOの領土を一切失わずに、敵を抑止し、必要な場合は破ることにたいするアメリカの誓約を示すことになる。米国欧州司令部はまた、同盟諸国軍との平時からの提携と定期的な演習を継続することを通して、どの潜在的な侵略者にたいしても、アメリカだけでなく、大規模かつ効果的な連合軍の恐るべき能力に直面する見込みがあることを警告することにより、抑止力を強化することになろう。…
NATOにたいするあらゆる侵略行為に対応するための強力な通常戦力に加え、アメリカは、いくつかのNATO諸国内の貯蔵場所において、高度に安全な状況のもと、非戦略核兵器を維持する。冷戦が終結して以来、アメリカは、同盟国との協議のもと、欧州における自国の非戦略核兵器の数と種類を劇的に削減してきた。たとえば、核大砲と地上発射短距離核ミサイルはすべて廃絶された。同盟国とともに、核兵器の役割をになう部隊の即応態勢規準に変更を加え、平時の常時緊急核計画もなくした。
欧州に配備されたアメリカ核戦力の基本目的は、平和の維持と威圧の阻止であり、今後もそうありつづける。これらの核戦力は、欧州と北米の同盟国の間に、不可欠な政治的・軍事的結びつきを与え、アメリカの戦略核システム同士もつなぐ。これらの戦力は、通常戦力のみではなしえない形で、NATOにたいする侵略のリスクを予想不可能かつ容認しえないものとする。NATOの核態勢に非核の同盟国が参加することは、集団防衛のリスクと責任を共有するという、同盟の連帯、決意、意志を示すものである。NATOが核兵器の使用を検討せざるを得ない状況は、とても起こりそうもないが、賢明な安全保障計画をたてようとするならば、われわれは、予想しうる将来、通常戦力と核戦力の適切な組み合わせを維持する必要がある。〔47〜48頁〕
 

第六章:世界的な挑戦に立ち向かう大西洋両岸社会協力の向上

核・細菌・化学兵器がもたらす安全保障への脅威
 …NBC兵器の脅威に対応するため、アメリカは、次のような多次元戦略を追求する。戦略を構成するそれぞれの部分が、程度の差はあるが、積極的な二カ国および多国間外交努力に裏打ちされた同盟国とパートナー諸国との密接な協力に依存している。…
 ・抑止: アメリカは、NBC兵器保有国によるものも含め、国家の安全保障にたいする脅威と潜在的脅威を、強力な核および通常戦力を維持することで抑止する。アメリカ、欧州その他の地域のアメリカの同盟国をNBC兵器をもって威嚇する者は、われわれにたいするどのような攻撃も、圧倒的かつ破壊的対応を受けることを明確に認識すべきである。国防総省はまた、敵がわれわれの国民や領土、軍隊にNBC兵器の使用を威嚇したり実際に使用した場合、それに打ち勝つため、米軍を装備し、訓練し、態勢を整える包括的計画に着手している。攻撃と防衛の二つの能力を組み合わせることで、抑止を強化し、抑止が機能しなくなった場合にもわれわれは確実に打ち勝つことができる。
前述したように、同盟国は、たとえば基地と基幹施設の提供、領空飛行と通過の権利を通して、アメリカが戦力を必要なら欧州を超えた地域に投入するために貢献する。さらに、イギリスとフランスそれぞれ独自の核戦力は、それぞれの死活的国家利益にたいするあらゆる攻撃を抑止する上で、重要な役割を果たす。われわれの同盟国と潜在的な連合パートナー諸国もまた、NBCの脅威に対抗する準備をし、危機の際には、われわれが一貫した政治的・軍事的戦線を維持できるようにしなくてはならない。…〔50〜51頁〕
……
戦域ミサイル防衛(TMD)
弾道ミサイル攻撃にたいする米軍、同盟軍、連合軍の安全を強化し、われわれの拡散対抗戦略を補完するより広範な取組みの一環として、アメリカは、NATOパートナー諸国とTMDで協力する機会を追求している。共同的とりくみでのアメリカの目標は、第5条および第5条以外の危機の両方の作戦において、中距離ミサイルにたいする効果的な連合軍ミサイル防衛を備えることにある。「戦略概念」において、NATOは、NBC兵器および弾道ミサイル拡散がもたらす危険性を再確認し、同盟は、こうした脅威への対応の枠組みについて全般的合意に達した。NATOの防衛能力構想(DCI)の一環として、同盟国は、NBC攻撃にたいし能動的かつ受動的防衛をもって対応できる同盟軍を発展させることに合意した。同盟国はさらに、TMDが、NATO展開軍にとって必要であることにも合意した。
いくつかの同盟国は、下層TMDシステムを、現在配備中であるか、まもなく取得することになる。たとえば、ドイツとオランダ両国は、PAC-2ミサイルを配備しており、いくつかの同盟国の海軍は、海上ミサイル防衛の配備に向けアメリカとの協力を検討中である。実戦上のTMD分野における進展でもっとも重要なのは、1999年12月の、アメリカ、ドイツ、オランダの三国間による「米独蘭拡大航空防衛特別部隊」の創設であった。
同盟は、重層的な防衛体系の実行可能性を分析中である。欧州にたいする弾道ミサイルの脅威が、長距離ミサイルによるものへと向かうにしたがい、同盟は今後さらに、上層TMDおよび/もしくは対長距離ミサイル防衛を組み込んだ防衛措置を検討する必要がでてくるであろう。…〔53頁〕

全米ミサイル防衛(NMD)
隣国を威嚇するためであれば、イラン、イラク、リビア、北朝鮮は長距離ミサイルを必要としない。そのためにこれらの国はすでに短距離ミサイルを有しているのであって、長距離ミサイルを獲得したいのは、より離れた北米と欧州の国々を威圧・威嚇するためである。推定するにこれらの国々は、危機の際、NATO同盟国や同盟パートナー諸国を援護するアメリカの作戦を抑えるには、われわれが防衛手段を持たない、少数のミサイルで十分可能と考えている。
このような傾向の重要性を検討した結果、アメリカは次のような結論に達した。つまり、こうした国の一カ国がでも、欧州およびそれ以外の地域のアメリカの同盟国にたいするわれわれの誓約を含め、自国の利益を擁護しようとするアメリカを脅そうと試みる前に、われわれはこの威嚇に対抗しなくてはならない。よって、アメリカは、限定された数発から数十発の弾頭にいたるまでの攻撃から、50州すべてを守るNMDシステムを開発している。
NATOの戦略概念では、「(核、生物、化学)兵器およびそれらの運搬手段拡散の危険性と潜在的脅威にたいする同盟の防衛態勢は、ミサイル防衛の開発を含め、継続的に向上させなくてはならない」ことが認識されている。NMD開発をすすめるなかで、われわれは、関連政策および技術問題について、同盟国と密接な協議をつづける必要がある。
ロシア政府はそうではないと主張しているが、アメリカが開発中の限定的なNMDシステムは、かりにロシア戦略軍の戦力が現行の米ロ間の戦略兵器削減合意で見込まれている水準を大幅に下回っても、アメリカの防衛力を圧倒しうるロシアの戦略的抑止力にたいする脅威とはならないはずである。さらに、アメリカが提案している1972年弾道弾迎撃ミサイル制限(ABM)条約の改正には、NMDシステムがその限定的規模を超えないことをロシアに確約する共同措置と透明性の措置が含まれている。
中国の核戦力はロシアより控えめだが、NMDに先立って開始された多面的核近代化計画を有している。アメリカのNMDシステムは、中国の戦略能力を無力化することを目的としていない。
NMDは、われわれの抑止・防止政策を補完するものであり、それに代わるものではない。われわれは、懸念国家に彼らの隣国やその他の国の攻撃や威圧を思いとどまらせるため、外交と軍備管理に、そして、圧倒的かつ破壊的な対応があることを確実に威嚇することのできる従来の抑止力に依存しつづけるであろう。しかし今日、ある懸念国家がアメリカやその同盟国を威圧しようとするかもしれないとき、圧倒的な対応能力による抑止のみに依存することは、とりわけわれわれが限定的ではあるが有効な防衛という選択肢をもっているときには、賢明ではない。
われわれが構想するNMDは、アメリカの安全保障にたいする誓約の信頼性とNATOの信頼性を全体として強化することになる。懸念国家からのミサイル攻撃にたいするアメリカの安全性が低くなれば、欧州もより安全でなくなるだろう。アメリカが弾道ミサイル攻撃にたいしてより強力であれば、攻撃にたいして脆弱である場合よりも、欧州を守り、西側諸国の安全保障上の利益を守る可能性は高まる。
NMDについて同盟国との協議が進むにつれ、同盟国が、それぞれの国家安全保障戦略におけるミサイル防衛の適切な役割について検討しつづけていくことを、われわれは十分理解している。同盟国の安全は不可分であるという同盟の基本原則と一致して、アメリカは、TMD分野でもすすめてきた議論と協力と同様に、長距離弾道ミサイル防衛に関する協力の可能性についても、同盟国との話し合いを直ちに受け入れるものである。クリントン大統領が2000年5月に述べたように、「責任ある国際的な軍備管理・不拡散体制の一員である国はすべて、この防衛態勢の恩恵を受けるべきである。」
2000年9月の発表においてクリントン大統領は、NMDには十分将来性があり経済的にも十分負担可能であり、開発・実験の継続は正当であるとしながら、配備へと進むにあたって必要な、NMDシステム全体の技術や運用上の有効性に関しては情報が十分ではないと述べた。決定をおこなうにあたり、大統領は、NMD開発にともなう脅威、費用、技術的実行可能性、国家安全保障への影響を検討した。この大統領決定は、新政権が柔軟な対応をおこなうことを可能にし、2006〜2007年の時間枠で国家ミサイル防衛システムを配備する選択肢を維持することになろう。〔54〜55頁〕
(以下略)

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