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反核平和運動・原水爆禁止世界大会

原水爆禁止2009年世界大会
国際会議

ベン・ソファ
核軍縮キャンペーン(CND)
イギリス

 友人のみなさん、英国の核軍縮キャンペーン(CND)より心からのあいさつを送ります。今日この場にみなさんとともに出席でき、とても光栄です。被爆者の方々に対して敬意を表し、平和のための模範となり続けてこられたことに感謝します。とりわけ、被爆者の方々が、日本と世界の若者にメッセージを送り続けていることを本当にありがたく思っています。今日、私たちは世界のあらゆる場所から集まっていますが、私たちの運動がこれだけ強力なのは、私たちのメッセージがシンプルで、結束したものだからです。すなわち、世界から核兵器はなくさなければならない、広島と長崎は繰り返されてはならないというメッセージです。

 友人のみなさん、わたしたち英国民は、この目標の実現に向けて来年は大きく前進するとの希望ある展望を抱いています。オバマ大統領の核軍縮への動きは、現在の経済危機とあいまって、英国のトライデント核兵器システムを主要な政治的論議の対象に引き戻しました。この世代で初めてのことですが、現在も大西洋の海中を24時間365日巡回し続けている核戦力を維持すべきかどうかをめぐって、英国の全主要政党の指導者が真剣に論議をしているのです。

 国民はますます旧来の考えから距離を置きつつあります。いわゆる核抑止が唯一安全を保障するとの考えを拒否しています。世論調査は一貫して、完全かつ一方的な核軍縮を過半数が支持していることを示しています。核兵器に最も反対しているのは、18から24歳の青年たちであり、彼らが明るい未来を望んでいることは明白です。英国政府の現在の計画は、トライデントシステムを同種のものに置き換えようというものです。この経済危機のため、より規模が小さく、費用のかからない兵器システムの方が適切だとの提案もあります。しかし、政治家は国民の意志についていかねばならないものです。数百万の市民を死の危険にさらすようなシステムが現在の世界で「適切」とみなされるはずはないのです。

 ようやく先月になって、世界の変化の状況に対応しなければならないと政府が分かっていることを示す、かつてなく明瞭な兆候があらわれました。政府は核廃絶を求める国民の要求を無視できないことに気がついたのです。これは核兵器反対運動の偉大な勝利なのですが、政府は〔核兵器を搭載する〕新型潜水艦の具体的設計作業開始の決定を延期しました。この決定は来月行われる予定でしたが、核不拡散条約(NPT)再検討会議後まで延期されることになりました。おそらく、その後すぐ行われる英国総選挙後までさらに延期されるでしょう。

 これは、新しい潜水艦が建造される前に英国が一方的核軍縮を行う機会を延長するものです。また、NPTが成功するチャンスを広げる積極的な貢献でもあります。以前、英国がこの時点で〔設計作業〕開始を決定するとしていたのは、再検討会議が失敗すると想定してのことでした。いま、〔再検討会議で〕大幅な前進があれば、トライデントは「検討対象」になるだろうとメディアには伝えられています。CNDは、英国とその他のすべての国がNPTで大幅な削減に合意するチャンスを増大させるため、あらゆる機会をとらえて力を尽くしています。また、この最も恐ろしい兵器を全面的に禁止する「核兵器禁止条約」の締結に速やかに導くための手続きで合意するよう要求しています。

 人々は、政府が長年にわたって続けてきたお粗末な言い訳をますます受け入れなくなっています。その言い訳とは、英国が核軍縮を行うには、他のすべての国がそうするのを待たなければならないというものです。先月、英国のガーディアン紙の社説が述べていますが、「気候変動とまったく同じで、多国間の努力を支えるための最善の道は、一国が主導すること」です。NPT再検討会議が迫っている今、言い訳を続けている時ではありません。核兵器のない世界を実現するための行動の時なのです。

 この変化する情勢が示しているのは、1980年代以来初めて核兵器が英国の選挙で重要な争点となる展望があるということです。英国が、160発もの都市壊滅兵器を維持しているという狂気に多くの人が気付けば気付くほど、いっそう多数の人がトラインデントを拒否するであろうことを私たちは知っています。核兵器を支持する人たちでさえ、政府の大規模な歳出削減が行われようとしているさなかに核兵器システムへの1250億ドルという支出を正当化するために苦闘しています。

 英国の核兵器への反対は今や伝統的な支持者の範囲を大きく超えて広がっています。今年初めには、英国3軍の元トップを含む3人の退役将軍が、核兵器は「われわれが現在直面しているか、これから直面することになる脅威や暴力の規模に対する抑止力としては、全く役に立たない」と宣言しました。これが真実であることを私たちは知っていますし、一般大衆も、そして軍でさえも知っています。私たちが今必要としているのは、このことを認め、トライデントを捨て去る政治的リーダーシップです。

 国際的な分野で、私たちの運動は、世界的な核軍縮への障害を取り除くためできることをすべて行わねばなりません。現在と将来の世代から核兵器のない世界を実現する機会を奪おうという少数者の無責任な行動を許してはなりません。中央ヨーロッパでみられるように、大衆的な反対闘争は、敵対心をあおり、不安定をもたらす愚かな軍事的計画を防止する上で、決定的に重要な役割を果たすことができるのです。いわゆる「ミサイル防衛」システムの一部をチェコ共和国に設置するというブッシュ時代の計画は停止されました。これは、大衆的反対闘争と、デモと平和的直接行動を議会内の抵抗と結び付ける運動とを組み合わせることで実現されました。この効果的なアプローチが大きく貢献して、オバマ氏がこの計画の追求を渋ることにつながりました。もしも、ミサイル防衛計画が予定通り開始されていれば、米ロ間にはいかなる2国間合意も不可能だったでしょう。そしてNPTでの前進にとっても大きな脅威となったでしょう。

 友人のみなさん、NPT再検討会議に向かうなか、私たちは世界からの核兵器廃絶で前進する大きな機会を迎えています。真の変化が起こる見通しは、これまでのどの時代よりもおそらく大きいでしょう。そして、私たち、世界的平和運動には大きな責任があります。この可能性を現実に変えなければなりません。大衆的な支持も、人々の希望も存在しています。私たちはそれを今、政府の政治的意思に転化する必要があるのです。CNDの私たちは、世界の多数派を代表してともに力を合わせれば、勝利することができると確信しています。

 

モハメド・エゼルディン・アブデル=モネイム
アラブ連盟 軍縮・戦略問題特別顧問

 昨年の世界大会はジャコモ・プッチーニ生誕150周年とNPT条約締結40周年にあたっていました。今年の世界大会は、2つの大きな出来事の後に開催されました。第1の出来事は、有名な英国の博学者であり種の起源の著者であるチャールズ・ダーウィンの生誕200周年で、2月に行われました。第2の出来事は、NPT再検討会議の第3回準備委員会で、5月に行われました。この2つの出来事に共通していることがあります。それは、第1の出来事は誤った解釈と不正確な理解に、第2の出来事は行動の欠如と優柔不断さに苦しめられたことです。しかし、チャールズ・ダーウィンと、我々が行っていることにはどんな関係があるのでしょう。

 周知の通り、チャールズ・ダーウィンは、彼が自然淘汰と名付けた進化の過程を経て、すべての生物の種が長い時間をかけて共通の先祖から進化したことを証明しました。これは、しばしば私たちの祖先は類人猿や猿だったという進化論として、一般に知られるようになりました。残念ながら、ダーウィンの自然淘汰による進化論は、攻撃的な資本主義や貪欲な帝国主義や血みどろの戦争を正当化するためにしばしば悪用されてきました。この理論は平和運動にとっても危険です。戦争と核兵器のない平和で公正な世界をめざす運動を破壊するために利用されるかもしれないからです。このダーウィンの理論の誤った解釈は一般人の関心を集めやすく、それによって多くの人を平和をめざす運動やたたかいから逸脱させ、草の根の運動は大きな被害をこうむることになりかねません。さらに、ダーウィンの自然淘汰のような偉大な理論のまちがった解釈は、平和運動と人間の偉大な思想の流れとのあいだに、核兵器についてではないまでも知的な断絶を作り出す危険性があります。したがって平和運動自体も、どんな意見の違いがあっても、自らの思想的ルーツや考え方の起源がどこにあるかを特定する必要があります。

 実際、チャールズ・ダーウィンの誤った解釈はどれも、もはや通用しません。幾人かのダーウィン研究者や伝記作家は、ダーウィンは奴隷制の強固な反対者であり、人道の原則に反する政策を支持したことは一度もなく、同じ種類の動物の中での協力の重要性を強調し、社会政策は自然界における競争と淘汰の考えに導かれるべきではないと考えていたと述べています。

 チャールズ・ダーウィンは、英国帝国主義の全盛期に生きた人ですが、人種差別、搾取、大量殺戮に賛成したことは一度もありません。少なくとも、彼は、彼の死後100年余りのうちに、ここから数百メートルの広島平和祈念館に展示されている手紙を書いたアルバート・アインシュタインよりは尊敬に値する人物でした。このアインシュタインの手紙は、一国の元首に地上で最悪の兵器を他国の市民に対して使用するよう勧めるものでした。アインシュタインはその後、後悔するのですが、ご存知のように、時すでに遅く、何の役にもたちませんでした。広島と長崎で起きたことは地球上の全ての生物種に、その起源や自然淘汰に関係なく、破壊をもたらしました。

 さて、今年の世界大会を特徴づけるもう1つの出来事を見てみましょう。それは、次回NPT条約再検討会議の第3回準備会議です。この会議はチャールズ・ダーウィン記念日から、10週間足らずの後にニューヨークで開催されました。NPT加盟国の代表と、原水爆禁止日本協議会を含め数名の平和運動の代表が参加しました。この会議に参加した各国代表の念頭にあったのがダーウィンのどの解釈であったか、あるいは彼らが少しでもダーウィンのことを思い出したかは明らかではありません。しかし、約3週間続いた会議は、積極的な報告で始まったにもかかわらず、当初計画されていたNPT再検討会議にたいする勧告は何も出されずに終わりました。これは、NPT再検討会議が核軍縮の歴史的転換点となるよう昔も今も期待してきた平和運動にとって、警戒すべき兆候です。

 この状況の説明としてよく強調されるのは、実際の核軍縮の誓約については一歩も譲らない核兵器国の立場です。しかし、チャールズ・ダーウィンを念頭に置くと、少年時代に聞いた童話を思い出します。それはこんな話です。2羽のお腹をすかせたアヒルが、ようやく1切れのチーズを見つけましたが、それをどう分けるかで言い争いになりました。そこへ、1匹の猿が割って入って、君たちのためにチーズを分けてあげようと言いながら、それを全部食べてしまい、2羽のアヒルはお腹が空いたまま取り残されてしまいました。

 この2羽のアヒルの話を、核兵器国と非核兵器国の関係になぞらえて考えると、不拡散の世界、あるいは不拡散動物園には180羽以上のアヒルとひと握りの猿がいます。お断りしておきますが、「猿」という言葉は特定の人にたいする軽蔑的な意味はありません。チャールズ・ダーウィンによれば、彼らこそ私たちの先祖なのですから。

 さて、問題は、何羽のアヒルが本当にアヒルのままでいたいのか、です。これは、NPT再検討会議とその準備委員会における、複数の非核兵器国の決断力不足の根底にある潜在的な不一致の主要な原因です。それが、NPT再検討会議および再検討会議準備委員会における成果の欠如をもたらしたにちがいありません。率直さとこれ見よがしにならない透明性をもって対応すべき課題です。

 この問題は、非核兵器国だけで解決することはできません。ここで平和運動は、核兵器国が非核兵器国になるよう励まし、非核兵器国が核兵器国になるのをあきらめさせるために、他と共同して、もっと動機付けの材料を見つけなければなりません。もちろん、すべてのアヒルと猿が、例外なくここに参加すべきです。チャールズ・ダーウィンが、ある種は別の種に変わりうることをすでに観察しているのですから、猿だってアヒルになれないはずがありません。核兵器国に、核兵器は自然淘汰によって生まれたのではないと説得しなければなりません。それどころか核兵器は、あらゆる選択の中でもっとも不自然な選択の産物です。核兵器は、拡散であれ不拡散であれ、選択の終着点であり、あらゆる種の進化を停止させ、根絶するものです。チャールズ・ダーウィンも、世界は猿の世界より、アヒルの世界のほうがずっと安全だということに賛成してくれることでしょう。

 

ライナー・ブラウン
ドイツ反核法律家協会 事務局長
地球的責任のための技術者・科学者国際ネットワーク プログラムコーディネーター
ドイツ

平和を愛するみなさん、

 ヒロシマ・ナガサキの出来事が残酷にもはっきりと示していること、つまり、必要なことは、私たちの平和を求める行動です。私たちは平和を求める多数派を勝ち取り、自立した平和活動を推進しなければなりません。言いかえれば、グラムシ的ヘゲモニーを実現せねばならないということです。米オバマ大統領によるプラハでの画期的な演説やこのところの全面的な核軍縮に関する議論などを見ると、今日においてグラムシ的ヘゲモニーを求めることは、かつてなく必要なこととなっています。

 1945年以来、平和運動は核兵器のない世界を展望してきました。その最も説得力のあるものとして、1955年のラッセル・アインシュタイン宣言があげられます。ゴルバチョフ氏や他の指導者たちによる試みが失敗に終わったあと、果たしてこのビジョンは現実のものになるのでしょうか?

 チャンスはあります。しかし、1987年に締結された中距離核戦力条約(INF)以後に、解体された核ミサイルはひとつもありません。今までのところ、全ての核兵器保有国は、自分たちの核軍拡政策を無制限に取り続けています。

 しかし、米オバマ大統領のおかげだけではありませんが、私たちは今、歴史的で絶好のチャンスを目の当たりにしているといえます。今や、世界の多数は原子爆弾に反対です。多くの国々で核兵器反対運動は多彩にくり広げられています。その広がりは保守層にも到達しています。キッシンジャー氏やヘルムート・シュミット氏などかつての戦争犯罪者や軍拡推進者までもが、今や、核軍縮を主張するようになりました。このように、この新しい絶好のチャンスを形成する主要な要素は、国際世論なのです。

 同じことが、NATO内部での新しい戦略的配慮にも見られます。主な加盟国は、どちらにせよ米国主導により通常兵器と技術面で、特に宇宙において軍事的優位性が保証されているのだから、核兵器は不必要になっているのではないか、と言います。非対称戦争という現在のパターンや増大する核兵器拡散の危険性は、この主張を裏付けています。既存の政治グループでさえ、政策を再考し始めました。

 私たちは、核兵器のない世界を求めています。なぜなら、最も恐ろしい大量破壊兵器の廃絶は、全面的な軍縮への新しいうねりへとつながるかも知れず、私たちを戦争のない世界へ導くであろうからです。しかしみなさん、核兵器のない世界は、言葉だけで築けるものではありません。私たちは、そのために戦わなければならないのです。必ずしも「保守」という様相を呈していなくても、軍事複合体やその賛同者による根強い抵抗を克服せねばならないのです。抵抗行動はすでに始まっており、オバマ米大統領もそれを実感しているでしょう。彼が演説で、核兵器のない世界は自分の生きている間にすぐには達成できないだろう、と言ったのは理由がないわけではないのです。新NATO戦略そして核兵器の別の作戦オプション(たとえば予防手段の兵器として)についての議論は、「石器時代」のような核思考が未だ多くの場所で根強く存在していることを示しています。60年におよぶ軍事同盟を解消するどころか、その加盟国は戦略地政学上の拡大と核の性能向上を計画しています。

 オバマ米大統領が核兵器のない世界を真に望むのであれば、彼には、地球規模の平和運動が必要です。すべての核兵器を廃絶するには、数百万の市民によるデモや行動が必要となるでしょう。今日の世界において、平和運動に意味があるのか、また必要なのかという疑問には、簡単に答えることができます。未だかつてないほど今がそのときなのです。したがって、オバマ米大統領は批評家や平和運動との対話を模索しなければなりません。

 核兵器のない世界に向かう旅は、具体的な措置で成り立っており、今すぐ始めるべきです。

 まずは、ヨーロッパとドイツからすべての核兵器を除去することを強く訴えます。さらに、チェコ共和国とポーランドへのすべての核配備計画をただちに放棄するよう呼びかけます。どんな軍備・再軍備計画もやめさせなければなりません。

 核兵器廃絶というビジョンは、定期的に具体化されるべきものです。2010年にニューヨークで予定されているNPT再検討会議の前夜に、私たちは、世界の指導者たちに、核兵器(禁止)条約に向けた協議を始めるよう呼びかけます。この条約は、美しい言葉がどの程度まで現実のものとなるかを示す基準となります。その第一歩は簡単です。NPT会議で、核兵器条約の必要性を公式に認識し、それについての協議を始めるのです。2カ国間交渉や取り決めは、暫定的な解決を導きだすかもしれませんが、これらは決して、全ての核兵器廃絶に関する包括的合意に取って変わるものではありません。

 軍縮に向けた行動は緊急を要するものです。私たちは、2009年から2010年の予算において、アメリカが軍事費をさらに200億ドル費やそうとしていることについては懐疑的です。効率を高めるために軍事力を再構築することは、平和の政策は言うまでもなく軍縮努力とも相容れません。

 アフガンでの米戦略の評価と、NATOとドイツ連邦政府それぞれのアフガン政策の評価は、言葉より行動に焦点を当てるべきです。いかなる増派も作戦の拡大も、アフガンだけでなくパキスタンでの人々の苦しみの増大と戦闘の激化を意味します。この地域での戦争は、高度な軍事化と核の広がりをみれば、火薬樽の中で火遊びをするようなものです。

 「軍民」という用語の中の「民(civilian)」という言葉は、ドイツのアンゲラ・メルケル首相が、あたかもドイツのブランド名であるかのようによく使う言葉ですが、まったくの嘘なのです。事実、「軍民」行動とは、軍事行動以外の何ものでもありません。民間の能力と平和に関連した語彙を巧みに使ったごまかしなのです。戦争は戦争でしかありません。だからこそ、アフガニスタンから全ての占領軍を撤退させることを最優先にすべきです。

 アフガニスタンで私たちがすべきことは、市民の手による紛争の解決です。過去30年にわたって戦争に翻弄されてきたこの国で、それは簡単なことではありません。しかし、これが人権や女性の権利が真に尊重され、保護され、推進され、実現される未来へと続く唯一の道なのです。険しい道ではありますが、他に選択肢はありません。平和は、「民間」というトッピングをのせた兵士や武器によって勝ち取れるものだと信じてやまない人々に、このことを特に強調したいと思います。このような意見が、時に労働組合や教会においてさえ出されることも承知しています。

 占領軍が近い将来に撤退しなければ、アフガニスタンは、オバマ氏にとってのベトナムになってしまうでしょう。私たち平和活動家がすべきことは撤退に向けた奮闘です。

 一体今まで何度、平和運動は無用ですたれたと宣告されてきたでしょうか?しかしドイツには「死を宣告された者は長生きする」ということわざがあります。私たちは、この地球上から核兵器を禁止するために必要とされているのです。戦争のない世界を実現するために必要とされているのです。それゆえに、私たちの多くが何度も何度も街頭に立ち、広場に立ち、国民に訴えているのです。現在の資本主義の危機は、私たちの訴えとアピールが必要であることのもうひとつの理由となっています。資本主義が、一大危機に直面する中で、いろんな方法の中からとりわけ戦争という手段に訴えるというのは、歴史的にみても初めてのことではありません。

 世界の平和運動は、一貫性があり頼りになる、政治的で超党派の市民と議会外の勢力であり、社会に深く根付いています。私たちのキャンペーンは、常に何百万と言う活動家にささえられているわけではありませんが、平和が危険にさらされたときはいつも、今日であれ明日であれ、すぐ行動する準備ができています。私たちの運動は、より若い人を巻き込み、より国際的に、よりジェンダーのバランスのとれた、そしてより機敏なものとなるよう奮闘します。この目的を果たすためには、国際的なネットワークが絶対不可欠です。

 「平和はすべてではないが、平和なしではすべては無になる」とノーベル平和賞を受賞したウィリー・ブラントは言っています。

 何度も何度もこれを思い出し、認識しなければなりません。とりわけ、このヒロシマ・ナガサキの地において。

 

 

ワリード・マームド・アブデルナーセル 
駐日エジプト大使
エジプト

来賓ならびに参加者の皆さん、

 平和を求め皆さんが毎年開いているこの重要な会議で発言できることは光栄です。始めに、「核兵器のない平和で公正な世界」という非常に時宜にかなったテーマで、原水爆禁止世界大会のメインスピーカーのひとりとして発言させてくださったことに感謝します。また世界大会の組織のため、周到にたゆまぬ努力をしてこられた世界大会実行委員会のみなさんに感謝します。エジプト・アラブ共和国政府は、大量破壊兵器のない世界を実現し、広島と長崎の市民が体験した惨禍が二度と繰り返されないようにとの、核兵器の悪の生き証人でありつづけるためのあらゆる努力を確固として支持する立場から、毎年この大会に参加しつづけています。

 またエジプトは、1990年にムバラク大統領が大量破壊兵器のない地帯を中東に創設する構想を打ち出したように、大量破壊兵器のない世界実現をめざすあらゆる努力を支持しています。

 皆さん、今日の世界には新しい協力の精神が生まれています。私たちはみな、それが世界の核兵器削減の具体的結果を生むことを熱望しています。私たちは単なる善意の美辞麗句だけで核兵器が完全に廃棄できるなどという幻想は抱いていません。しかし最近世界の指導者やキーパーソンがおこなった新たな発言は、漸次、核兵器廃絶に向かう共同の努力の良いスタートとなるものです。

 4月に合衆国大統領がプラハでおこなった演説は、核兵器のない世界実現をめざす努力に新しい弾みをつけました。世界で核兵器を実際に使用した唯一の国である合衆国が、保有する核兵器を削減するために具体的措置を講じると明確に約束したことは、新しい希望を与え、世界の指導者の多くはこれに積極的に応えるよう励まされました。

 ロシアのドミトリー・メドベージェフ大統領は、アメリカ大統領と協力し、両国の核兵器を4分の1から3分の1のあいだぐらいに削減すると約束しました。日本の中曽根弘文外務大臣はアメリカの声明に応えて、4月27日に11の指標をしめした演説で核軍縮へ向かう行動計画を発表しています。

皆さん、

 私はここでエジプト・アラブ共和国の当面する問題についての立場、特に中東地域における問題についての立場を少し説明しようと思います。

1.エジプトは軍縮と核兵器の不拡散の重要性を確信し、したがってこの目的達成をめざすあらゆる努力を支持しています。

2.中東に非核兵器地帯を創設するというエジプトの誓約は明快です。1974年に国連総会の議題に「中東非核兵器地帯設置」という項目が書き込まれたのは、エジプトとイランの共同の要請によるものです。1980年以降、国連総会は毎年、中東非核兵器地帯設置を求める決議を採択しています。エジプトは長年にわたって中東から核兵器の脅威をなくすという目標促進で一貫して指導的な役割を果たしてきています。

3.エジプトは、中東地域での非核兵器地帯創設に関する国連決議の実施の方法を見出すために協力することを期待しています。エジプトはこの提案が35年以上前に採択されながら、未だに実行されていないことを遺憾に思っていますが、この提案を実施する具体的な手段と方法を見つけることが決定的に重要だと考えています。

4.核不拡散条約の締約国として、またアフリカ非核兵器地帯にかんするペリンダバ条約の調印国として、エジプトは核軍事力行使を中東の平和、安全にとって大きな脅威になると選択肢として明快に、あいまいさなく排除していることを強調してきました。今日、エジプトは中東の全ての国々がNPTの締約国となった一方で、イスラエルは繰り返される条約加盟と、核施設を全て国際原子力機関IAEAの保障措置の下に置く呼びかけを執拗に無視し続け、それによって危険な不均衡を永久化しています。これはこの地域において核軍拡競争を引き起こし、平和と安全を脅かすものであり、適切に対処することが必要です。

5.エジプトは不拡散問題を扱うにあたって、二重基準と不平等を排除することの重要性を強調しています。したがってエジプトはNPT条約を起草した際に国際社会が合意し、条約の基礎となった諸原則に違反しても、核保有国をさらに有利にすることを狙った条項の新しい解釈はいかなるものも拒否します。

6.エジプトは悲痛な核攻撃を経験した国として、核兵器の不拡散を主張する国として、日本が努力してNPTに未加盟の国々に加盟を説得することを期待しています。また、エジプトと日本は定期協議を行って、お互いの立場のすり合わせをおこなっています。核兵器不拡散、軍縮、IAEA、原子力の平和利用、その他の関連問題についての最近のエジプトと日本の協議は6月にカイロで開催され、両国の共通の立場を強化するうえで大きな成果をもたらしました。エジプトは願わくば2010年に開催されるNPT再検討会議以前に日本で開催される次回の両国の協議に期待しています。

7.エジプトが追加議定書モデルを含めた保障措置問題を検討するうえで、NPT条約の3本柱のひとつである核軍縮義務の履行の怠慢を、保障措置制度を含めた条約の他の2本の柱の義務を追加することで罰することが論理的か、あるいはそれが可能かどうかを慎重に検討することが不可欠です。そうすることで、そして追加議定書を採択することで、現在すでに存在している3本柱のあいだの不均衡を増大させることになるとエジプトは考えます。そしてそれは翻って、条約の普遍化という目標を損なうことになるでしょう。一部のNPT加盟国と非加盟国とのあいだの協力を大目に見続ける一方で、加盟国が平和目的で原子力を利用する権利にさらなる制約を加えることになるからです。

 皆さん、

 2010年のNPT再検討会議は間近に迫っています。この再検討サイクルのもつ意義は極めて重要です。特に2005年の再検討会議が、主に何人かの中心的な人々の硬直した立場が原因で実質的な合意に達することができなかっただけになおさらです。NPTは核不拡散と核軍縮の要石となる体制です。NPTは私たち全員をめちゃめちゃにする潜在的戦争の甚大な被害から世界を守っています。私たちはたゆまずにこの体制の普遍化と全加盟国による条約への完全な支持と遵守を追及しなければなりません。同時に、軍縮、不拡散、合法的な原子力源追求という条約の3本柱をそれぞれ同じように重視しなければなりません。エジプト・アラブ共和国は、エジプトとして、また非同盟運動の議長国として積極的かつ集団的に核兵器のない世界の実現に向かって努力するでしょう。

 皆さん、
 エジプト・アラブ共和国政府は私たちが核兵器のない世界の実現という目標達成のために全力をあげるとともに、共同してこの目標達成をめざすあらゆる取り組みを支援することを誓います。

皆さん全員のご成功を祈ります。
ご清聴ありがとうございました。

 

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