【反核平和運動・原水爆禁止世界大会】
原水爆禁止2009年世界大会
国際会議
コラソン・ヴァルデス・ファブロス
非核フィリピン連合/外国軍事基地撤去国際ネットワーク
フィリピン
フィリピンとアジア太平洋からの熱いご挨拶を送ります。また外国軍事基地撤去国際ネットワークからの特別の連帯の挨拶を送ります。
はじめに原水爆禁止世界大会参加というまたとない特権を与えてくださった世界大会実行委員会に心から感謝します。この世界大会はこれまでずっと私に力と勇気を与えてくれています。平和と正義をめざす運動で私が得た長年の多くの友人や同志との関係は、この世界大会をつうじて培われたものです。私はそのことを永久に感謝し続けるでしょう。
2010年NPT再検討会議が近づいている今、私たちは核兵器と戦争の廃絶の世論をつくるという課題に直面しています。この課題はこの会議に参加している私たちの大半にとって一生の仕事です。私たちは、引き続き政治的、経済的な危機の問題やそれぞれの地域での統治(ガバナンス)の問題に直面し、これら焦眉の問題に対処するための変化を起こすため懸命に活動していますが、私たちの起こしたい大きな変化は核兵器と戦争の廃絶に向かう変化です。2010年NPT再検討会議までの時期は困難な時期になるでしょうが、今後数年間、平和と正義の運動を大きく左右するような変化を起こす機会を私たちに提供してくれる時期でもあります。私たちには今後、核廃絶と戦争に関する持続的な教育・情宣活動を広く、また持続的に展開するという重要な仕事が待っています。また、それとともに、共同を培い、(私たちの多様性や違いを乗り越えて)効果的にネットワーク作りをして連合体を形成する機会も生まれます。この機会を捉え、最終的な核兵器廃絶に向けた最強のひと押しができるような力を作り出すために、私たちの運動をより先鋭で、可能な限りできだけ強い運動にしなければなりません。また、これは私たちの強靭さと、私たちが必要とし、望んでいる変化への思いを試すことにもなるでしょう。
多くの突破口があり、可能性は数多くあります。これまで私たちは失敗もしましたが、数多くの大きな成功も収めてきました。それが長年私たちを支え、励ましてきたのです。これからの課題は、目の前にある突破口を効果的に利用して、前進することです。世界のヒバクシャの弛みない抵抗と、核兵器・戦争廃絶の絶え間ない訴えは、いまや世界に認められる訴えになりました。私たちと私たちが代表する各組織・分野の人々は、私たちの運動や地域における組織化活動をつうじて、そして私たちの大小の歩みをつうじて、核兵器廃絶の呼びかけに応えてきました。重要なことに、多くが情報も得られず、認められていない若い世代の人々が、ここ日本だけではなく世界各地で、とりわけ帝国の心臓部で、この訴えを受け止めています。この重要な時期に、運動成功のためのリーダーシップ、エネルギー、強靭さ、ダイナミズムなどを与えてくれる若い世代に向けて、私たちは粘り強く一貫した指導と先例を示さなければなりません。
アジア太平洋では、民衆の抗議行動や反乱を押さえ込むために政権がより抑圧的、ファシスト的になる傾向はあるものの、平和と正義をめざす運動は成長しています。不公正で抑圧的な政府や機構を告発する粘り強い努力、取り組み、行動は、地域的あるいは国際的協議会や共同戦線、同盟などへと変化し、真の変化を求める人民の強力な圧力団体となっています。世界社会フォーラム、アジア欧州人民フォーラム、ASEAN人民フォーラム、世界平和フォーラム、その他多くの重要な会議が、社会運動体・活動家が集い、各国の状況の情報を交換し、集団で共同行動の戦略と計画をたてる場を提供しています。このことが世界の平和と正義をめざす運動が団結し、不公正で、反人民的、好戦的な軍事政策および構造の手先を摘発する強い力となる機会を提供しました。これによって私たちは、人民のニーズと願いに答える変化を起こすよう圧力をかけることができるようになるでしょう。
特にフィリピンの私たちは、学校、地域、および可能な場合には地方議会や地方自治体をつうじて核廃絶の広範で持続的な教育・情宣活動を続けています。マルチメディアを効果的に利用して、学生や青年の参加を増やしていくつもりです。またこの機会に、8月1日から15日までの反核キャンペーンをスタートさせ、展示やビデオ上映、フォーラム、セミナー、記念行事などを世界のヒバクシャの訴えに応える連帯行動として行う予定です。また2010年5月ニューヨークで行われるNPT再検討会議の議長の一人となるフィリピンの国連代表に要請行動をおこなうことにしています。9月の国際平和デー、10月の国連デー、宇宙習慣の核兵器反対世界行動、11月から12月まで、毎年行われる女性に対する暴力反対の16日間の祈りと行動、アジア欧州平和安全保障アジア地域フォーラムなど、今後数ヶ月間の私たちの活動に核廃絶要求を取入れることになっています。
私はアジア太平地域で開催されるふたつの重要な女性の集まりに皆さんの参加と支持を呼びかけます。ひとつは「平和、女性、安全保障会議:新しい世界の展望」でアジア太平洋平和女性パートナーズがフィリピン大学の平和・人権教育センターと共催する会議で、世界の女性を集め、アジア太平洋の女性の平和と安全に関わる重要な問題を議論し、戦略をたてることを目的としています。この会議は2009年9月8日から10日までフィリピンのマニラ市で開かれ、その後9月11日、12日は中部ミンダナオでのミンダナオ連帯行動が行われます。私たちの親しい友人であるデビー・キナタの援助を得て、私は「戦争と軍事化の女性に対する影響」というテーマのセッションを組織し、核廃絶、外国軍事基地、国内紛争状況にある女性などに関する問題を取り上げることになっています。
もうひとつの重要な女性の集まりは、9月14日から19日までグアムで開催される軍国主義反対女性国際ネットワーク第7回会議で、今回のテーマは「抵抗、跳ね返す力、人権」です。これは太平洋と環太平洋の国々の女性の大規模な会議で、外国軍事基地や軍事化とそれが女性と子供に及ぼす影響の問題を取り上げます。この会議は、私たちがグアムへの米国軍事基地移転・拡張に反対するチャモロの仲間たちの弛みない勇敢な抵抗を支持する機会となるでしょう。
今日、私はフィリピンに核兵器と基地のないフィリピン憲法を作るチャンスを与えた女性に追悼の意を表したいと思います。コラソン・アキノ元大統領は1年以上、直腸がんとたたかったすえに、土曜日の朝に亡くなりました。76歳でした。かつては内向的な主婦だったアキノは、1986年の「ピープルパワー」革命がマルコス独裁政権を打倒し、フィリピンの民主主義が回復した後、フィリピンの民主主義の象徴として知られました。その年の2月、3日間にわたって、世界は、鮮やかな黄色のドレスを着たこの女性が数百万の人々の平和的蜂起を率いて、20年間圧制を敷いたフェルディナンド・マルコス独裁政権を倒すのを目撃したのです。その後の6年間、敬虔なローマ・カソリック教徒であったアキノは、民主主義の再建の指揮をとり、国の憲法を変えました。彼女は速やかに新憲法起草委員会を設置し、経済を牛耳っていたマルコスの親族・友人のネットワークを解体し、政治囚の多くを釈放しました。フィリピンの平和・正義運動にとって、新憲法は、核兵器からの解放を定めた画期的な憲法規定と、外国の軍隊と軍事基地の禁止によってフィリピンにある米軍基地の撤去と究極的な閉鎖に向かう、大きく重要な前進をもたらすという意義があります。最後の数年に一介の私人となるまで、彼女は強い政治的影響力と道義的な力を持ち、アロヨ現大統領の任期延長や、非核・非軍事基地条項の廃止につながると多くが懸念している憲法見直しの動きに反対して、多くの人々とともにたたかいました。
ここで話を少し変えて、フィリピンとアメリカとの関係を変えるための私たちの動きについてお話します。バラク・オバマ大統領との会談を何度も申し入れ、その度に断られてきたフィリピン大統領のグロリア・マカパガル・アロヨは、先ごろようやく、オバマ大統領と会談することになりました。しかし彼女が訪問した国の世界での地位は、イラク戦争とアフガン戦争の泥沼の後、そしてウォール街崩壊の後、大きく低下しました。新興国の台頭や、統治の新たなモデルの出現、世界経済のメルトダウンによって起きた国際関係の再編も続いています。この状況のなか、多くのフィリピン国民は、当初の変化への希望とうらはらに、アメリカの対フィリピン政策の大きな変化という結果をもたらさないのではないかと疑問を抱いています。これら世界政治の地殻大変動に応えるような新たな外交政策を練る代わりに、アロヨはフィリピンの対外政策がこれまで基礎としてきた「わが国には手に入れられるかぎり多くのドルが必要だ」という不変の前提を継続すると見られています。
至近の例では、「ニコール」のレイプ事件やミンダナオ島で密かにすすんでいる米軍基地の拡大などで、この方針を変形したものが常に援用されています。つまり、わが国は、アメリカがそれらの代償として提供すると言っている道路や橋や水道などの物質的補償を拒否できるような余裕はない、というものです。しかし、贈賄行為の共犯者となることが、一国の外交政策の基本となることはできません。究極的には、このような政策の結果としてフィリピン国民の大多数は、アメリカからの物質的な贈り物よりも多くのものを手放すよう強制されることになるのです。なぜなら、もしアメリカが世界覇権を追求し、その地位とともに保証される罪に問われることなく、特別扱いされる権利を独占することに執着し、自分のイメージどおりに、自分の利益にかなうように世界を変えようと決意しているために世界で侵略、不正義、不平等などが起こるのであれば、フィリピン国民は、平和、正義、平等に基づく世界を構築する機会を奪われていることになるからです。
今日、世界政治の大きな再編によって、これまでとは違う世界を実現する可能性は、第2次世界大戦以後では一度もなかったほど大きいと言えます。しかしそれを逃せば遥か遠くに消えてしまうでしょう。空気は危険とチャンスの両方で満ちています。一方で、今日の情勢はフィリピンのような国にとって、ひとつの超大国に制約を押し付けられることなく、願望を追求する空間を広げてくれるかもしれません。
フィリピンは小さく、弱い国ですが、そうであってもフィリピンの行動は、この歴史的時期の結果に影響を及ぼすことができます。しかし、そのためには、フィリピンは物乞いし、パンくずを投げてもらうのを待つ以上のことをすべきです。
弱者が強者に搾取されない世界を構築するため、フィリピンは片隅に追いやられている国々の味方になることができるでしょう。第3世界主義の限界を克服するために努力し、非同盟運動の失敗から学ぶことで、この弱い国々は、国連を改革し、世界貿易機構(WTO)のルールを書き換え、世界銀行の後継機関を形成し、京都議定書後に先進国に真の排出ガス削減の実施を強制できるような体制を要求し、ラテンアメリカ諸国が現在試行しているような新たな機構を確立するために行動すべきです。
アメリカとの同盟関係を破棄することは、フィリピンがアメリカを敵に回すことを意味しません。それが意味するのは、フィリピンが、フィリピンと友人となることを望んでいる多くの国々の味方になることであり、それにはアメリカも含まれます。そして他の全ての国と同じく、アメリカはフィリピンに追随を要求できないし、アメリカにたいして無条件服従が与えられるべきでもありません。こうして無用になった相互防衛条約は、フィリピンとの友好関係を追求する全ての国に適用される条項からなる友好協力協定に置き換えられるでしょう。相互防衛条約に伴う訪問軍隊協定や相互兵站支援協定も同様に破棄されなければなりません。過去の罪を裁くことを、将来の関係構築の出発点としなければなりません。
アメリカを帝国から国際社会の平等なメンバーに変わらせる一方で、フィリピンは新しい帝国の出現を阻止するために積極的に貢献しなければなりません。一極世界から多極世界への移行は必ずしも望ましいとは限りません。それがひとつの帝国の世界から複数の帝国の世界に変わる、あるいは全く新しい種類の複数の国家からなる帝国に変わるだけかもしれないからです。選択肢は明白です。フィリピンは一つの大国の支配する世界を受け入れるか(その場合、賄賂を貰って大国にコソコソついていくのか)、あるいはその大国を拒否し、平等の支配する世界を構築し、水道管の敷設以上のものを手に入れるかのどちらかです。
私たちは、フィリピンの自主独立の外交政策を追求することをめざしています。それは核兵器と外国軍事基地のないフィリピンを追求する政策です。フィリピン国民と世界の諸国民の平和、自由、正義を追求する政策です。
これからも共同し、団結して核廃絶と平和をめざして活動をすすめましょう。
ノーモア・ヒロシマ、ノーモア・ナガサキ、ノーモア・ヒバクシャ、ノーモア・ウォー!
がんばりましょう!
ジョゼフ・ガーソン
アメリカフレンズ奉仕委員会
アメリカ
オバマ時代:希望の夜明けと核のパラドックス
大変に皮肉めいて聞こえると思いますが、広島・長崎に犯罪的な核のホロコーストをもたらした国アメリカの国民の一人として、とくにブッシュとチェイニーの「無情者のロマンス」の暗く危険極まりない数年が終わり希望の時代になってからこの地を再び訪れることは、喜びであり光栄です。
今回私は、バラク・オバマがどのような任務を担っているかについて触れ、彼の「核兵器のない世界」実現の呼びかけ、および彼がすすめようとしているそれほど野心的でない軍備管理措置について考察し、私たちアメリカの平和活動家がすすめている来年5月のNPT再検討会議準備の概要をお話ししようと思います。
私は最近、被爆者の三宅一生氏がニューヨーク・タイムズに書いた記事を読み、驚かされました。彼はオバマ大統領に広島訪問を要請したのです。この記事は一生さんの新しい希望の表現です。多くの政治的理由から、オバマが近い将来にこの要請に応じることはないでしょうが、アメリカには非核の世界をつくる道義的責任があると言った人間が大統領になったことで、新しいチャンスの上に希望を構築すべき時が来たのです。たとえそのチャンスが私たちが当初考えていたより限定されたものであっても。
オバマの当選と共にやってきた「チェンジ」は喜ぶべきものです。特に「核兵器のない世界」へと世界を主導し、イラクから米軍を撤退させ、軍事ではなく外交に依拠するという彼の誓約は称えるべきです。しかし、私たちはオバマがマハトマ・ガンジーでも、マーティン・ルーサー・キング牧師でもないことを思い出す必要があります。オバマは中道の民主党の政治家で、その価値観や目標のすべてではなく一部分が私たちと共通しているにすぎないのです。
イラク戦争やアフガン戦争での失敗、カジノ資本主義の破綻、依然として増大する双子の赤字(アメリカの国家予算と貿易収支)および特に中国などの「アメリカ以外の国々の台頭」などによって、アメリカ帝国の絶頂期は終わりました。CIAでさえこれを認めています 。これに反応してアメリカのエリートの最強階層は、オバマの選挙キャンペーンを後押しましたが、それは彼らがオバマはアメリカの「リーダーシップ」というよそおいのもとに安定を回復させ、アメリカ経済を合理化し、アメリカに残された覇権を強化できると考えたからでした。
オバマのパラドックスにこれほど死活的な重大性がなければ、私たちはこれを知的に楽しむことができたかもしれません。実際、オバマは「チェンジ」を誓いながらも、クリントン政権のメンバーで自分の政権を固めています。また学生のころ1980年代の軍縮運動に深く感化された彼ですが、今では人類皆殺しの核抑止力と拡大核抑止力ドクトリンを主張しています。さらに核廃絶の道義的責任を口にしながらも、廃絶ではなく核の序列を強化する拡散防止に焦点をあてています。そして、イラクからの米軍撤退を約束しながら、アフガニスタンとパキスタンではアメリカの戦争をエスカレートさせ、アメリカが21世紀に戦うことを計画している「5年から10年続く戦争」のために軍事費を増額しようとしているのです。
ご存知のように、NPT再検討は本質的には権力、支配そして人類生き残りのための闘いがおこなわれている分野です。第1次世界大戦を終わらせたベルサイユ条約と第2次世界大戦後にヨーロッパを分割したヤルタ協定とともに、NPT条約は20世紀の最も重要な取引でした。非核保有国は永久的に核保有国にならないことを誓い、核保有国は非核国に「平和目的での原子力の開発、研究、生産、使用の譲り渡す事のできない権利」を保証し、保有する核兵器の廃絶交渉をおこなうことに合意したのです。それから40年、核保有国の6条履行拒否、国際危機の最中に核戦争を開始するという脅しの繰り返し(アメリカの場合は長崎原爆以降少なくとも40回)、そしてブッシュ政権、インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮によるNPT破壊はこの条約を危険にさらしてきました。
不公正な権力アンバランス―この場合は恐怖のアンバランス―と見える体制を長期にわたって容認する国はひとつもないことから、人類は核兵器を完全に廃絶するか、それとも核兵器の地球的拡散と破滅的な戦争の被害をこうむるかという選択を迫られているのです。もし核大国が来年の再検討会議前に、2000年の再検討会議で合意された13の具体的措置の少なくともいくつかを実行するために大きな一歩を踏み出さなければ、そしてもし、第6条の義務をすみやかに履行するという信頼できる誓約がなされなければ、オバマがともした希望の火は消えてしまうでしょう。
地域活動家がオバマ候補に、NPT条約6条の義務を遵守するよう要請したとき、彼は、ジョージ・シュルツ、ヘンリー・キッシンジャー、サム・ナン、ビル・ペリーらの率いるエリート構想を政治的な隠れ蓑に利用して、核廃絶支持を表明しました。これら元政府の有力者たちは、核の欺瞞はもはやアメリカの国益に役立たないと判断したのです。彼らは、アメリカが大幅な核兵器削減に取り組み、第6条の義務履行を確認しない限り、NPTはその正統性を失って崩壊し、アメリカは核攻撃にたいし、いまよりも遥かに脆弱になってしまうことを理解したのです。
これらをふくめ、オバマが「世界的な不拡散体制を再活性化させる」と繰り返していること、彼が公言した軍備管理政策、彼と彼の軍縮交渉担当官が廃絶は「自分の存命中ではないかもしれない」と述べていること、今年末に発表されるという核態勢見直しが「兵器の使用と拡散の抑止に焦点をあてる」2という報告、ペンタゴンの高官の多くが廃絶政策に反対していることなどを合わせて考慮すると、私たちは大統領の優先課題が廃絶ではなく、不拡散であると考えずにはいられません3。
オバマとメドベージェフの首脳会談で発表された米ロ条約の大まかな概要を見てみましょう。アメリカ科学者連盟は「これは双方に大きな変革を迫るものではない」と評価しています。そして、この合意は「いずれの国にも核の体制を変えることを強制するものではなく、基本的には現行の配備計画に沿ったものである」と述べています。この条約が完全に実施されたあかつきには、配備された戦略核弾頭の数はわずかに削減されるだけで、2つの超大国の貯蔵する戦術核兵器は手付かずのままとなります。「米ロ両国はなお、世界の核兵器の90パーセント以上を保有しているだろうし、保有核兵器数はそれぞれ第3の核大国である中国の20倍以上であろう」4。
オバマは実際何を約束していたのでしょうか?彼はCTBTの批准を米議会上院から取り付け、新型核兵器開発への支出に反対し、核分裂性物質カットオフ条約交渉を開始し、ロシアとSTART―Iの後継条約を交渉することを公約しました。これらはブッシュ政権時代からの大きな変化ですが、2000年のNPT再検討会議で合意された13の具体的措置のほんの一部でしかありません。
私たちは今年5月のNPT再検討会議準備会議へのメッセージでオバマ大統領が廃絶に一言も言及しなかったことを認めねばなりません。プラハでも大統領はアメリカの第一撃政策の変更や依然ヨーロッパに配備されている核兵器の撤去や、ヨーロッパでの「ミサイル防衛」の中止も発表することはありませんでした。唯一の被爆国へ核兵器の持込を認めた日米の密約や「核の傘」を増強する計画についても一言もなく、アメリカが中東にも「拡大抑止を実行する」5かもしれないというヒラリー・クリントン国務長官の警告を予想させるような発言もありませんでした。
真実は、私たちは合理性を超えた信条をもち、オバマに「1000パーセントの支持」6を与えている従来の味方たちと一緒に頑張らなければならないということです。
批判的な支持は結構ですし、オバマの限定的な軍備管理努力を支持することも必要でしょうが、私たちは世界で最も恐るべき核保有国の指導者に白紙の委任状を渡すことはできません。私たちがすべきなのは、廃絶のための緊急のたたかいです。
廃絶とNPT再検討会議に向けて
フランクリン・ルーズベルト元大統領は、大恐慌時代にニューディールを主張した人々にこう言いました。「オーケー。分かった。自分が何をすべきか分かっている。だから君たちは外に出て行って、私にそれをやらせるように仕向けてくれ」。これはバラク・オバマと核兵器廃絶にもあてはまるかもしれません。1980年代の人民の運動に影響されたオバマは、心底から「核兵器のない世界」の実現に役立とうと思っているのかもしれません。彼が何を信じるかは私たちの責任ではありません。私たちの任務は、彼や他の人間が、私たちの生きているうちに非核の世界を実現できるようにすること、そしてそれ以外のことをするのを不可能にすることです。
アメリカの私たちは原水協がニューヨークのNPT再検討会議に1000人の反核活動家を派遣するというニュースに励まされましたが、それ以前から私たちは結集して強大な存在感を示し、核兵器廃絶条約の交渉を開始するという約束を勝ち取るための準備を始めています。
私たちのこの運動の基本的要素は次のようなものです。(1) オバマとメドベージェフに核兵器全廃条約交渉を要求する25,000通の手紙を出す「廃絶の火キャンペーン」。(2) 原水協の署名や他の署名キャンペーンと結んだ、廃絶条約の交渉を求める大規模な署名キャンペーン。(3)再検討会議直前の週末の国際平和会議と、デモと集会もある「非核の世界を目指す国際行動デー」。皆さんも全員参加してください。(4)NPT再検討期間中、世界の青年をニューヨークに結集する。(5)5月中旬の第2派の行動。
世界大会と平行して、「非核の未来のための月間」として、アメリカ各地では広島・長崎記念行事がおこなわれています。バーモント州の活動家たちは、核廃絶をめざす行動を励ます新たなタウンミーティング・キャンペーンを準備しています。マサチューセッツ州では、CTBT批准をもとめる住民投票が準備され、他の州でも抗議行動が定期的に行われています。
友人の皆さん、今は希望とパラドックスの時代です。私たちは、核を廃絶して生き残ることを選択するのか、あるいは沈黙して第2の核時代とそれに続く世界の終わりの戦争を受け入れるのかという選択が決定的になる瞬間に近づいています。これが私たちが直面する生存にかかわる選択です。この課題達成のためにがんばりましょう。
ノーモア・ヒロシマ!ノーモア・ナガサキ!ノーモア・ヒバクシャ!ノーモア・戦争!
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ジョゼフ・ガーソンはアメリカフレンズ奉仕委員会ニューイングランド地域事務所のプログラム部長で平和・経済安全保障プログラム責任者。Email:Jgerson@afsc.org Web: www.afsc.org/pes
陳都明(チェン・ドゥーミン)
中国人民平和軍縮協会
中国
尊敬する主席先生、女史の皆様、先生の皆様、友人の皆様
私は中国人民平和軍縮協会を代表致しまして、原水爆禁止世界大会実行委員会からの心のこもったご招待とおもてなしに対して、感謝の意を表すと同時に、この機会を借りて、当面の国際核軍縮管理、核軍縮の情勢及び私たちの平和組織の任務について、自分のいくつかの見方を発表したいと思います。
1、国際の核軍備管理と核軍縮の情勢には新しい変化が生じて、チャンスに直面していると同時に、厳しい挑戦も存在しています。
近年来、国際社会には核兵器のない世界を求める呼びかけが絶えず高まり、これは世界の平和と発展の歴史の流れとなっています。その中には、各国の平和組織による長期間のご努力の結果も含まれています。したがって、アメリカの新大統領オバマは「核兵器のない世界を」という呼びかけを受け入れました。ロシア、イギリス、フランスも支持の意を表しました。このようなことは、1960年代、中国が最初に世界の非核化を提案して以来、5つの核保有大国がともに核兵器のない世界という目標を実現しようということを表しています。今年の5月に《核兵器不拡散条約》(NPT)第8回再検討会議第3回準備会議で、中国代表はさらに中国が一貫して主張している核兵器の全面禁止と完全廃絶の政策を述べました。また、国連のパン・ギムン事務総長は、今年の世界の平和の日に、「われわれは軍縮しなければならない」という提案を出すと述べ、国際の核軍縮の新しい勢いを支持しています。一部の核軍縮に携わる機構と組織が相次いで、核軍縮を推進する具体的な計画と目標を提出しました。米ロ両国は、次期米ロ戦略兵器削減について、正式に交渉が始まり、ジュネーブ軍縮交渉は行き詰まりを打開しました。国際の核軍備管理、核軍縮の情勢の新しい変化は、2010年のNPT再検討会議に進展を収めるよう、促進を促しています。
しかし、注意すべきことがあります。2005年のNPT再検討会議に失敗をもたらした主な問題が依然として存在しています。当面の国際の不拡散情勢は依然として厳しいです。特に、アジア地域の北東アジア、南アジアと西アジアには核拡散の現実の脅威が存在しており、朝鮮、イランの核問題は再び膠着状態になり、テロリズムはたえず起こって、地域の安全情勢は楽観できません。これらは、核の不拡散問題が多くの要因とかかわって、簡単に処理することができません。
2、核兵器の完全廃絶は私たちの理想の目標ですが、実現するには、障害があります。
中国は1964年に、すでに世界の非核化を呼びかけて、世界各国首脳会議を開催して、核兵器の全面禁止と完全廃絶に関する問題を検討するように、厳かに提案しました。また、最初に核兵器を使用しないこと、無条件で核兵器を持たない国や非核地帯に対して核兵器を使用しないこと、あるいは使用脅迫をしないことを宣言して、一連の世界の非核化を推進する主張をし、国際社会から好評を得ましたが、ほかの核保有国からは全然反応が得られなかったです。45年後の現在、アメリカ政府はやっと正式的に核兵器のない世界を呼びかけました。ほかの核保有国もその後、その呼びかけに応えました。これはかつてないことで、核兵器のない世界を実現できるかどうかについては、アメリカが重要な要因と主導者と言えます。それにしても、核兵器の完全廃絶の問題を実行するのは依然として難しいです。主な問題は国際戦略の力がアンバランスで、アメリカは強大な核兵器を持つだけでなく、通常兵器も世界で最も多い数を持っています。核兵器を廃絶しても、その通常兵器も世界の先頭に立っています。特に、アメリカは抑止戦略を拡大、発展させて、自国と同盟国に絶対の安全を提供しています。この「絶対安全」は必ずほかの国家に絶対の不安全をもたらしています。ある国は核兵器で戦略のアンバランスを制約し、自国の安全を維持すると企んでいます。だから、国際戦略がバランスのとれていない情勢の下で、いかに強い国と弱い国の安全関係を調整したらいいのか、これは核兵器を廃絶し、核兵器のない世界を実現する肝心な問題です。
3、世界各国の平和組織が核兵器の完全廃絶のために、絶えず努力しなければなりません。
核兵器の完全廃絶と核兵器のない世界を実現するために、私たちは長期の目標を持つとともに、現実を直視し、主要な問題をつかんで、各国人民の力をよく動員して、国際社会と関係各国に実際の行動をとるように、促進します。
まず、米ロ2大の核保有国が率先して核軍縮を推し進めることが必要です。米ロ2国は核兵器を持つ最大の2つの国家で、世界の核兵器の90%以上を占めており、全世界の核軍縮にとって、特別で、優先な責任を負っています。この2つの国が引き続き大幅に核兵器を削減することは核軍縮のプロセスを推進し、ひいては最終的に、徹底的な核軍縮を実現するには、欠かすことのできないことです。米ロ2国が新しい2国間の核軍縮交渉をスタートして、早期に関連の条約に合意して、より大幅な実際の行動をとって、国際の核軍縮のプロセスを加速するために、手本となることを、私たちは望んでいます。
第2に、核保有国すべてに責任と義務を負うようにと要求します。核兵器保有国は、明確に核兵器の全面禁止と廃絶を承諾して、早いうちに交渉を通じて、国際の法律文書を締結すべきです。この目標を実現する前に、核保有国は国家の安全戦略における核兵器の役割を減らし、特に、核兵器の先制使用による核の抑止政策を放棄すべきです。同時に、核兵器を持たない国家は法律によって、核保有国が自国に核兵器の使用あるいは使用威嚇をしないという安全保障を獲得する権利があります。これは、核保有国の「道徳」の責任であり、核兵器を持たない国家の「道徳」の権利でもあります。
第3に、2010年NPT再検討会議の成功を促進することです。そのために、2005年のNPT再検討会議の失敗の教訓を汲み取って、関係諸国が核軍縮、核不拡散及び核の平和利用という3つの議題をめぐる交渉を促進し、コンセンサスをつくり、食い違いを減らし、良好な雰囲気を作ります。エネルギー不足などの問題で、多くの国は原子力の民間利用の発展に力を尽くしています。これは客観的に、核技術、核物質の拡散のリスクを増やしました。原子力の平和利用は《核兵器不拡散条約》が各締結国に与えられた剥奪できない権利ですが、原子力の平和利用による核の拡散活動を防ぎます。そのために、国際の核不拡散システムを強化し、核物質、核技術、核施設及び核兵器の拡散リスクを減らし、核のテロリズムを打撃する国際協力を強めることは当面の急務です。国際社会は引き続き努力して、《包括的核実験禁止条約》を早いうちに発効させ、また、できるだけ早く、多国間で核兵器に対する査察ができる《兵器用核分裂性物質生産禁止条約》の交渉を始めるべきです。
友人の皆様、
国際の核軍縮と核兵器のない世界を実現するプロセスの中で、各国人民はあくまでも主力であり、各国の平和組織は人民の願望を積極的に反映すべきです。中国人民平和軍縮協会は中国の最大の平和団体として、一貫して核兵器のない世界の実現と核軍縮の政策に力を入れています。当協会が国連経済社会理事会諮問地位、国連新聞部連絡会員及び国連非政府組織会議(CONGO)メンバーの名で、積極的に国際の核軍縮の活動に参加します。当面の国際の核軍縮の情勢の新しい変化の下で、私たちは各国の平和組織との協力を強化して、共に努力して、核兵器のない世界を実現するプロセスを推し進めたいと思います。
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