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2004年原水爆禁止世界大会広島 開会総会

2004年8月4日

アブデル・モネム

エジプト外務次官 国際法博士

 ご参加の皆さん。

 私は、「今すぐ核兵器廃絶を」、「広島長崎を繰り返すな」をテーマに、偉大なる広島のみなさんの前で話すことができることを誇りに思います。

 広島、長崎への原爆投下から59年を経ても、核兵器のある世界に私たちが生きていることは残念です。この59年間に、核兵器は世界を何回も繰り返し破壊できるほど多くなり、広島、長崎に投下された原爆よりもさらに破壊力を増しています。

 しかし、広島、長崎以降、核兵器は一度も使われていないのだから、私たちは核兵器のおかげで59年も生き延びてこられたのだという人もいるかもしれません。

 しかし、核兵器が地球上の各地に存在する限り、どんな都市でも広島、長崎のようになるかもしれないという危険性はなくならないのです。

 その理由は、核兵器はいくつかのまちがった前提に基づいて保持されているからです。

 第一の前提とは、「核兵器は戦闘行為や戦場では使用されることはなく、また、いわゆる「戦術」核兵器は使いにくくて、むしろ非生産的だ、だから誰もそれを使うリスクを負う勇気はないのだ」という前提です。この前提は破綻しました。

 第二の前提は、核兵器保有国で支配的な核抑止という考え方です。これは世界で最も議論をかもし、最も不安定化をもたらす戦略ドクトリンです。核兵器は核保有国同士が互いに攻撃しあうことを防ぐと信じられてきました。しかしこの考え方は、皮肉にも核軍拡競争を引き起こし、破綻してしまいました。抑止力の核心は人間の合理性、すなわち人間は理性的に行動するという仮定でした。この仮定がまちがっていたことは、広島、長崎への原爆投下からわずか13年後に起こったキューバミサイル危機で証明されています。

 第三は、核兵器は生き残るために必要だという考え方です。一部の人々は長年この考えに固執していましたが、やはり破綻してしまいました。なぜなら、どんなに広大な領土をもち、強い国であっても、またどんなに膨大な数の核兵器を保有していても、いくつかの国に分割され、別々の存在となるかもしれないからです。これによって、重要な仮定が成り立たなくなったわけですが、これを認めようとしない人は、冷戦の教えた最も重要な教訓を学んでいないことになります。

 第四の前提とは、核兵器は核の脅しに対抗する手段であるというものです。つまり核兵器を持つかぎり核兵器保有国はその国になにかをおしつけることはできないという考えです。しかし核兵器だけではこれを達成するには十分とはいえません。力関係は核兵器だけで決まるわけでなく、力の均衡のあらゆる面で大きな変化が必要ですが、そうするうちに板ばさみになって破滅しまう恐れがあります。

こんなたとえ話しがあります。「ある優れた科学者が実験で、ガラス瓶に二匹のサソリを閉じ込めました。二匹のサソリは最初は相手を刺さないようにして、あらそっていますが、最後にはお互いをさし二匹とも死んでしまいました」。核兵器が存在している限り、全世界が広島、長崎のようになる可能性があるのです。

 しかし、希望の光もあります。核兵器は存在していますが、これまでに考えられた核兵器正当化の理論はいずれも破綻しているのです。核兵器は事実上国際法違反と宣言され、その使用に法的根拠はありません。したがって、核兵器の倫理的根拠はもはや何もないのです。

 みなさん方日本人は、エジプト人のように、本質的には倫理観にもとづいて行動する国民であることはよく知られています。私たちは倫理にもとづいて、核兵器廃絶という目標達成まで、たゆまぬ努力をしなければなりません。そうしてこそ、広島、長崎を二度と繰り返さないことができるのです。ノーモア・ヒロシマ、ノーモア・ナガサキ。

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