原水爆禁止2003年世界大会
国際会議

スウェーデン
副議長 スウェーデン平和評議会
アグネッタ・ノルベルグ



  まず、この会議に招待いただきありがとうございます。本会議の開催、また私の参加にあたり、高草木さんを始め事務局の皆さんのご尽力いただき大変感動し、光栄に思うとともに、感謝申し上げます。

  この暗い時代、広島・長崎への原爆投下の口実を思い起こすことは重要です。私は、広島と長崎の人々は、アメリカの地政学的な野望の犠牲になったのだということがわかるようになりました。ソ連を脅かし、有利な条件で戦争を終わらせようとしたアメリカの野望のために、罪のない人々がひどい苦痛や死に耐えることを余儀なくさせられました。

  以来、世界中の人々が核による破滅の恐れの下に生きてきました。広島への爆撃以来、アメリカ政府が20回以上も核兵器を使うと脅してきたことを忘れてはなりません。第3世界の国々が、過去に、そして今も、その脅しの主な標的となっています。2002年1月、長く続いた冷戦が終わっているにも関わらず、アメリカ政府は、7カ国もが核攻撃の標的として挙げられた核態勢見直し計画を発表しました。

  私は非核保有国の出身であることを嬉しく思います。1950年代にはスウェーデンにも、核開発のための広範な計画がありましたが、おもに女性の強力な抵抗運動のおかげでスウェーデンは核保有国になりませんでした。核兵器を欲しがるタカ派に、献身的な女性たちが懸命に反対し、ついにスウェーデンは核不拡散条約に署名したのです。

  嬉しいことに国連では、アルバ・ミュルダル、インガ・ソーソン、マイ・ブリット・セオリンといった多くのスウェーデン女性が、軍縮委員会におけるスウェーデン代表として軍縮のための膨大な仕事をこなしてきました。

  しかし時代は変わりつつあります。スウェーデンは今ではヨーロッパ連合(EU)の一員です。ジュネーブで行われた今年のNPT準備委員会では、EUのスウェーデンに代わってギリシャが発言をしてくれました。ただ、スウェーデンがNPTに従うよう核保有国に圧力をかける7カ国から成る新アジェンダ連合の積極的なメンバーであることについては嬉しく思っています。しかし残念なことに、国際問題におけるスウェーデン独自の声は弱まっています。例えば、首相のゴラン・パーソンは、アメリカのイラク戦争に向けた準備を非難しませんでした。首相のお気に入りの遊び仲間の一人は、残念ながらあのトニー・ブレアです。しかし、スウェーデンではこれまでに見たことのない規模のイラク攻撃に反対する集会があった2月15日の、世界的な平和デモの結果、ヨーラン・ペーション首相の発言には大きな変化が見られました。

  冷静が終わったとき、私たち平和運動をする者は核の悪夢も終わると信じたかったし、平和運動はいわば行き着くところへ着いたのでした。しかし今、新たな波が来ています。この新しい波の中では、帝国主義の本質を理解しなければなりません。世界的規模の不正義と、持つ者と持たざる者の広がり続ける格差を保つためには、莫大な兵器庫と核兵器が必要なのです。これを目的にアメリカは、世界110カ国に軍隊を駐留させ、ユーゴスラヴィア、アフガニスタン、イラクの攻撃後には、新しい軍事基地を建設しました。アメリカとEUは、「人道的干渉」や「対テロリズム戦争」、大量破壊兵器の偽造された証拠により、小国の主権を侵害する権利があると主張しています。ユーゴスラヴィア、アフガニスタン、イラクの次には、イランや北朝鮮といった国々が対象国リストに載っているのです。

  国土に大量破壊兵器が配備されていないとしても、スウェーデンはEUの一員として、ある意味で核クラブに関わっています。ヨーロッパの二国、イギリスとフランスは、発射されたら北半球を根絶し得る膨大な量の核兵器を保有しています。スウェーデン人の一人として、私にはこの大量殺人の道具の廃止を見守っていく責任があります。

  スウェーデンはノルディック諸国の一つですので、北の諸国にある基地が宇宙の軍事化に使用されることにも抵抗しなければなりません。アメリカはレーダーシステムと通信システムを使用するためには、他国との共同を必要としています。隣国のデンマークはアメリカの宇宙計画に参加しています。グリーンランドの重要な基地、スール基地のことなのですが、この基地は、ブッシュのスターウォーズ計画に不可欠な結びつきを持つものです。そうです、グリーランドはデンマークから遠く離れているのですが、デンマークは元宗主国として、いまだグリーンランドの外交と安全保障政策をコントロールしているのです。スール基地の使用については、デンマークが決定権を持っています。

  宇宙計画とのもう一つのつながりは、北ノルウェー、ヴァードにあるレーダーです。このレーダーは、カリフォルニアのバンデンバーグ空軍基地から秘密裏に運ばれて来たもので、アメリカのミサイル防衛計画のための実験プログラムで使用されていたものでした。ロシアとの国境から数マイルの距離にある北ノルウェーのヴァードに設置されています。

  スウェーデン人として、またヨーロッパの一部として、私はアメリカの核爆弾のヨーロッパ配備に反対します。NATO拡大とスターウォーズ計画で利益を得るのは、名前をいくつか挙げるならば、ベクテル, ジェネラルダイナミックス、ロッキードマーチン, レイセオン, シーメンス, ボーイング, TRW, 三菱, IBMなどの企業です。こういった企業は、NATOの東方拡大のために猛然とロビー活動を行っています。ベクテルは近頃、特に興味深い会社です。世界有数の建設会社です。

  1996年の4月、私はCIAと親密なつながりを持つことで知られているベクテルが運営するネバダ実験場へ行ってきました。ベクテルとCIAは、1953年にイランのモサデク、その10年後にはインドネシアのスカルノを倒すために協力し合い、西寄り、ビジネス寄りの残虐なリーダーを代わりに政権に就かせました。ベクテルはそこで、水道システム、石油や化学工場のパイプラインを開発、建設しています。イラク攻撃後の今は、ベクテルは、アメリカに占領された国でまさしくそのビジネスをやっているのです。

  戦争と平和との関連ではあまり触れられませんが、もう一つ重要な現象があります。地球規模の諜報ステムです。2002年12月13日、私は逮捕、拘留されました。他の女性たちと一緒に、ヨークシャーのメンウィスヒルにある世界最大の電子スパイ基地の入口を封鎖していたからです。メンウィスヒルは、宇宙にある情報収集衛星からのデータを操作・加工している4つの主要な施設の一つです。

  メンウィスヒルはアメリカ国家安全保障局(NSA)によって運営されており、同様の施設はドイツのバッドエイブリング、アメリカンのデンバー、オーストラリアのパインギャップにあります。メンウィスヒルは、第一次、第二次のイラク戦争で活躍しました。

  アメリカが自国の政策を遂行するためには、大企業の同意が必要です。アメリカと世界中の意見は、アメリカの政策を受け入れるように作られなければならないのです。マスメディアの80%は、ヨーロッパや世界の他の地域のメディアをもコントロールしている23の多国籍企業が所有しています。新聞記事の40%は広告記事です。最大の広告会社は、ヒル&ノールトンですが、この会社は、1991年のイラク攻撃の前やベトナム戦争中の世論形成に重要な役割を果たしました。

  ヒル&ノールトンは、CIAにはぴったりの覆いで、CIAは世界中で活動しています。ストックホルムにも、北京にも事務所をおいているのです。

  今日では以前ほど、自分の考えを決めることはそれほど簡単ではありませんが、私たちは、インターネットから情報を得、互いに情報交換をし、素早く抵抗運動を組織することが出来ます。これが1999年のシアトルや、今年の2月15日に起きたことです。その日以降私たちは、二番目、あるいは一番のスーパーパワーなのです。

  私は、約20の団体が加盟するスウェーデン平和評議会の代表です。私たちは、2002年にジュネーブで世界市民社会フォーラムの国内準備会議を開きました。その会議の最終決議から一部分を引用して、私の訴えを終わらせていただきます。

  世界はもはや、スーパーパワーの傲慢さと専制による支配を許すことができません。替わって国際協力により、全ての国の国民と国家の利益が守られるようにしなければなりません。国際システムの民主化に向けての運動は、差し迫った挑戦です。そのためには、全ての国家や民族と同時に、活発な組織の参加が必要です。

  国連憲章の武力の使用禁止規定は、あらゆる世界平和活動の基礎を成しています。この禁止規定を骨抜きにしてはいけません。安全保障理事会は、国連憲章の条項に沿ってその役割を主張し、行動しなければなりません。我々は、核兵器、化学兵器、小兵器、地雷などについて国際的な軍縮の合意をあらゆる段階で守るために、力強く行動しなければなりません。

  核不拡散条約の遂行義務を果たすこと、核兵器を外国の領土から撤退させること、全ての核兵器の警戒態勢を解除すること、全ての核兵器研究所を閉鎖すること、あらゆる新型核兵器の開発を止めること、そして、核の危険を緊急に取り除くという国連事務局長の提案にしたがって国際会議を召集することを要求します。

  ご清聴ありがとうございました。


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