国際会議宣言
(1)世界20カ国260名の代表が、「いまこそ核兵器も戦争もない平和な世界を」をテーマとする原水爆禁止2003年世界大会国際会議につどいました。
この1年、米英両国によるイラク戦争に反対し、人類史上かつてない規模の抗議行動が、多様な経済的・社会的課題にとりくむ新しい運動もくわわって、世界をゆりうごかしました。私たちは、この反戦平和のねがいを、「ヒロシマ・ナガサキをくりかえすな」の声を世界的な核兵器廃絶の流れとしてきた長年にわたる努力とむすびあわせ、反核平和のうねりをさらに大きく発展させようと誓いあいました。いまなお地球上には3万発ともいわれる核兵器が蓄積され、その使用や開発の危険が増大し、重大な脅威をあたえつづけています。私たちは、核兵器の危険を根絶し希望ある未来を実現するためにともに行動することを、世界のすべてのみなさんに心からよびかけます。
(2)罪のない多数の市民を殺傷した米英軍によるイラク戦争は、二度の世界大戦の惨禍から世界諸国民がうちたてた「国際紛争は国連を通じ平和的手段で解決する」という原則をふみにじる暴挙でした。このなかで諸国民の運動でも外交の場でも、戦争反対、国連憲章を守れという声と行動が大きくひろがり、国連でも平和的解決のためにかつてない大きな努力がはらわれました。しかも、米英政府が武力攻撃の口実とした「大量破壊兵器開発」の証拠をねつ造した疑いも強まり、二重三重に「大義」のない戦争だったことが明らかになっています。
重大なことは、米ブッシュ政権が、イラク戦争で核兵器使用を「選択肢から排除しない」との発言をくりかえしたように、「大量破壊兵器の拡散やテロをおさえる」として、自らは先制攻撃と核攻撃の計画をうちだしていることです。しかも、その対象に非核保有国をふくむ7か国を名指しし、「使いやすい」小型核兵器の開発さえすすめています。
第2のヒロシマ、第2のナガサキの脅威が、このアメリカの覇権主義の横暴からうまれています。自らは核兵器をはじめとする膨大な大量破壊兵器をもちつづけ、イスラエルなどの核兵器開発には目をつぶりながら、その他の国の開発や保有の動きにたいしては、平和的解決を放棄し、核攻撃をふくむ先制攻撃をしかけるということほど矛盾と欺瞞にみちた行動はありません。いま、世界中から批判が吹きだし、アメリカの国際的な孤立はかつてなく深まっています。
(3)核兵器のない平和な世界へのねがいと行動がひろがるなかで、2000年に核保有国をふくめて合意された「核兵器廃絶の明確な約束」の実行をもとめる声は、ますます強まっています。この合意をつくりだした世界諸国民の世論と運動を圧倒的に強め、非同盟諸国や新アジェンダ連合など核兵器廃絶をめざす諸国政府との連帯・共同をさらに発展させ、核兵器固執勢力のたくらみをゆるさず、すみやかな核兵器廃絶をせまろうではありませんか。また、新型核兵器開発、核実験の再開、ミサイル防衛計画、宇宙の軍事化など、あらゆる核軍備の増強、核戦争態勢強化の動きを阻止しようではありませんか。核エネルギーの軍事利用に反対し、その完全な透明性を要求します。
世界の平和のためにも、核戦争の危険をとりのぞくためにも、国連憲章にもとづく平和的秩序の破壊をゆるさず、平和の国際ルールを確立することが不可欠です。超大国の横暴をゆるさない多様な行動と連帯し、国連憲章が真にいかされる世界を築こうではありませんか。私たちは、無法なイラク戦争を追認せず、不法な軍事占領をすみやかにやめさせ、イラク国民による復興と国連中心の支援がおこなわれるよう要求します。
北朝鮮の核兵器開発の動きは、アジアと世界にとっても北朝鮮自身にとっても、平和と安全を脅かすものです。北朝鮮が核兵器開発計画をただちに放棄することを強くもとめます。国際社会は、アメリカの軍事的脅迫に反対し、あくまで交渉によって事態を平和的に解決するよう、真剣に努力しなければなりません。
(4)広島・長崎の体験から「非核3原則」を国是とし、過去の侵略戦争の反省から憲法9条で戦争放棄をさだめた日本は、核兵器廃絶と世界平和のために率先して貢献することが期待されています。しかし、日本政府は、日米軍事同盟のもとでアメリカヘの追随を強め、先制攻撃や核使用政策を容認し、イラク戦争でしめされたように強大な在日米軍基地がその出撃基地として強化されています。国民の反対にもかかわらず、有事法制によって日本を「戦争のできる国」にし、憲法改悪をおしすすめる策動が強められています。原水爆禁止運動のいっそうの前進とともに、直面する米軍のイラク占領支援のための自衛隊派兵反対をはじめ、世界の平和の流れに逆行する動きをゆるさないたたかいをさらに大きく発展させることは、日本の国民と運動の国際的な責務です。
(5)広島・長崎の惨禍、また今日までつづく被爆者や世界各地の核被害者の苦しみやねがいを世界のすみずみに伝えることは、核兵器のない世界への決意と行動をひろげる原動力です。被害への補償や施策の改善をもとめるたたかいへの支援ともむすび、また劣化ウラン弾をはじめとする非人道兵器や枯葉剤などの生物・化学兵器の被害をふくむ戦争の惨禍を明らかにするさまざまな行動とも連帯し、とりくみを強めることをうったえます。
(6)核兵器も戦争もない平和な21世紀は、これを共通のねがいとするすべての人びとと各国政府が、人種・国籍・宗教・思想・信条・社会制度などの違いをこえ、国際的な連帯と共同をすすめてこそ実現できます。地球をおおったイラク戦争反対のうねりは、こうした連帯と共同こそ、世界を動かす最大の力であることをはっきりとしめしました。私たちは、軍事費の増大や、飢餓、貧困、大国主導のグローバリゼーションの害悪、環境破壊、女性への差別、社会的不公正などとたたかう多様な運動との連帯をすすめます。
重大な歴史の局面を迎える被爆60周年の2005年を核兵器廃絶への転機とするため、本国際会議で提起された署名「いま核兵器の廃絶を─ヒロシマ・ナガサキをくりかえさないために」をはじめ、さまざまな行動を国際的に連帯して、飛躍的に発展させましょう。
いまこそ核兵器も戦争もない平和な世界を!
ノーモア・ヒロシマ・ナガサキ!ノーモア・ウォー!ノーモア・ヒバクシャ!
2003年8月5日
原水爆禁止2003年世界大会国際会議