原水爆禁止2003年世界大会
広島(8月6日)

特別発言


スウェーデン大使館
カール・レイフランド公使


新アジェンダ連合−核兵器のない世界に向かって

広島市長、会場の皆さん

  まず、私は、我が国のヨーラン・ペーション首相がみなさんの大会へ送った支持メッセージにおいて、核兵器廃絶をめざして活動しているスウェーデンの長年の政策にふれていることに注目していただきたいと思います。

  私は、ここでスウェーデンをはじめいわゆる新アジェンダ連合に参加する国による核兵器のない世界をめざす取り組みについて、簡単にお話ししたいと思います。残虐な核兵器の被害を受けながら、同時に核兵器のない平和な世界への希望を体現している都市でもあるここ広島の地でそれができることは特別な意義をもつものであり、謙虚な気持ちになります。

  新アジェンダ連合は、5年前におこなわれた2000年NPT再検討会議の準備活動から生まれました。新アジェンダ連合の目的は、核軍縮への取り組みに新しい息吹を注入することでした。この連合のメンバーは、ブラジル、エジプト、アイルランド、メキシコ、ニュージーランド、南アフリカ、それにスウェーデンです。私たちの目標は核兵器の完全廃絶です。その出発点は、核兵器廃絶の道義的責務と国際法です。

  国際法として第一に挙げられるのは、核不拡散条約です。この条約は1995年に無期限延長されました。その時に、この条約の再検討の手順も強化され、また条約履行の目的と原則が決められました。

  第二は、1996年に国際司法裁判所の全会一致の勧告で、核保有国には核兵器の削減の義務があることがうたわれました。

  新アジェンダ連合は、核不拡散分野でのいくつかの深刻な後退を背景にして生まれました。これらの後退には次のことが含まれます。

  1. 北朝鮮は、かつてなく重大な問題として浮上している。北朝鮮は今も、これまでもその国際的責務に明らかに違反している。
  2. インドとパキスタンによる核実験
  3. 主要国、特に米国と中国による核実験禁止条約(CTBT)の批准の不履行
  4. 中東での核危機
  残念ながら、これらの問題にも、その他の懸念材料にも本質的に変化はありません。

  新アジェンダ連合が提案したのは、核兵器のない世界を実現するための具体的な対策を盛り込んだ行程表です。これは非核国家とNGOの強い支持を受けました。

  新アジェンダ連合が提起した提案には以下が含まれます。

  1. 核保有国の軍縮と、保有する核兵器の最終的廃棄という責任を果たす明確な約束
  2. インド、イスラエル、パキスタンの核保有国に対して、早急に核実験禁止条約に加盟するように呼び掛ける。
  3. 核保有国に核兵器の警戒態勢を解除し、起動不能にするよう、非戦略核兵器を配備箇所から撤去するよう呼び掛ける。
  4. 核兵器のための、または核爆発装置のための核分裂物質生産を国際的に禁止すること、いわゆるカットオフ条約の要請
  2000年春のNPT再検討会議は積極的な成果を上げ、希望を与えました。新アジェンダ連合のアピールは大幅に会議の結果に反映されました。この成果は、明確で現実的な目標に焦点を合わせた一貫した活動の重要さを示しました。スウェーデンはこの成果に貢献したことを誇りに思います。

  再検討会議の最大の成果は、5つの核保有国がした約束でした。核兵器の完全廃絶を達成するためのこの「明確な約束」が盛り込まれたことは大きな前進でした。

  これらの措置の多くは新アジェンダ連合の提案にそったものです。我が国は、その周辺に多数の戦術核兵器が配備されていることからも、特に核保有国が非戦略核兵器を削減すると約束したことを高く評価しています。

  しかしながら、再検討会議以後、具体的進展はほとんどありません。 安全保障と防衛の基本政策で、核兵器への依存度を減らすという約束はまだ果たされていません。実際、首相が手紙の中で指摘しているように、趨勢はむしろ逆の方向に向かっています。これは、核兵器を完全に廃棄するという明確な約束に違反しています。

  また、包括的核実験禁止条約も、いまだ発効していません。

  ひとつの歓迎すべき進展は、米国とロシアが戦略核弾頭を約6000発から1700ないし2200発に削減することに合意したことです。これは間違いなく望ましい方向への一歩です。しかし、重要なのは、これらの核兵器がただ武器庫にしまい込まれるだけでなく、実際に解体されることです。

  2000年の再検討会議で生まれた希望と期待がかなりの程度裏切られたことは誰しも認めるところです。しかし、長期およぶ結論をだしたり、あるいは将来に確信を失ってしまう時期尚早でしょう。人々は多くの懸念を感じているでしょうが、核軍縮は長くて困難な道になるだろうことを肝に銘じておくことが重要です。たとえNPTに制度的欠点があっても、私たちはこの条約のもつ本来の価値を見失ってはなりません。現在、核兵器を所有している国が一握りにとどまっているのは、おそらくその大きな部分がNPTによるものです。1960年代には、核兵器保有国が2000年ごろには20から30カ国になっているだろうと予想されていたという事実を思い出せば、そのことが納得されるでしょう。幸運にも、こうした予想ははずれました。

  ご存じのように、2005年にはNPT再検討会議が始まります。去年の4月には、ニューヨークの国連本部でその準備作業が始まりました。いままでのところ、作業は順調にすすんでいますが、軍縮の動きにあたらしい弾みをつけるには多くの努力が必要です。焦点は2000年の再検討会議の成果を確固としたものにすることにあるべきです。そこで合意された義務や約束は履行されなければなりません。特に、核保有国は約束を実行する用意があることを示す必要があります。スウェーデンにとっては、2000年の再検討会議の成果を基準として、2005年の再検討会議の成果を判断することになるでしょう。2000年合意された13の措置は、実際は核軍縮達成に必須の青写真です。私たちはこのことを他の人々と協力して誠実に追求していきます。その中にはもちろん新アジェンダ連合のパートナーたちが含まれています。


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