原水爆禁止2001年世界大会
国際会議

核兵器ノー・事務局長(ノルウェー)
ウーレ・コプレイタン


代表のみなさん、友人、同僚のみなさん、

  私は、1990年以来原水爆禁止世界大会に参加してきました。まず、核兵器ノーとノルウェーの平和運動全体に代わり、みなさんに心からの連帯のあいさつを申し上げるものです。世界大会でおこなわれてきた議論と、そこでの経験は、ノルウェーでの私たちの運動にとっても大きな価値を発揮してきました。それは、オスロに輝かしい平和の碑を建てるという成果に結びついています。

  昨年の世界大会以来、核軍縮をめぐる情勢には、大変重要な変化がみられています。昨年の国連総会では、核軍縮の問題で、核軍縮を即時かつ実質的におこなうよう求める新アジェンダ連合(NAC)の決議案が圧倒的多数で採択されました。国際社会からの圧力があまりにも根強かったので、フランスを除くNATO加盟国すべてが、この「核兵器にノー」決議に賛成票を投じたのです。もちろん、アメリカは、この決議に歯止めをかけようとしましたが、多少の譲歩がおこなわれたのを受けて提案を受け入れました。

  しかし、これは、アメリカの大統領がビル・クリントンだったときに起こったことです。現在の情勢は、周知のとおり、ずっと難しくなっています。アメリカは新しい大統領にジョージ・W・ブッシュを選びましたが、彼が、これまでの核軍縮合意を挑発し帳消しにするつもりなのは明らかです。アメリカ新政権の政策でもっとも恐ろしい点は、全米ミサイル防衛(NMD)計画です。この計画は、レーガン元大統領が進め、1980年半ばには中止されたスターウォーズ(宇宙戦争)計画のいわば後追いです。NMDをつくるには、いろいろあるなか最低でも、アラスカ、グリーンランド(チューレ基地)、イギリスにレーダー施設を設置することが条件となります。ノルウェーでは、ノルウェー北部のロシアとの国境付近にあるグローバス2という新しいレーダー施設をめぐりかなりの議論がおこなわれています。どうやらアメリカは、このレーダーを自分たちの対ミサイルシステムの一部に組み込もうとしているようなのです。

  ブッシュ大統領とブッシュ政権は、NMDが1972年のABM条約と大きく矛盾することを認めています。ABM条約は、広範な対ミサイルシステムの建設を禁止しているのです。ブッシュ政権はすでに、ロシアとこの条約の再交渉をおこなうよう努力すると宣言しています。再交渉が成立しなくても、ABM条約を反故にし、NMD開発を進めるつもりです。周知のことですが、ロシアはこの再交渉には反対しており、ロシアと中国は、アメリカの核支配に抵抗するために合意を結んだと発表しています。

  ロシアと中国からの抵抗に加え、多くのNATO諸国もNMDを非常な懐疑心をもって見ていますから、うまくいけば、NATO諸国の反対により、アメリカはこの危険な計画を再考することになるかもしれません。しかし、最悪のシナリオの場合、アメリカは、この攻撃的計画を進めるでしょう。ロシアはすでに、現存するミサイルにもっと核弾頭を装着することで核武装を開始するつもりだと宣言しています。中国が核兵器の製造を加速させ、アメリカの対ミサイル体制を打ち破ろうとすることは明らかです。とどのつまりは、NMD計画は、核兵器の拡散をともなう、新しい核軍拡を引きこす、ということです。またこれは、核兵器にかんする諸条約からなる体制全体も崩しかねないものです。

  ノルウェーでは、政府と国会の中心的な政治家に焦点をあてたロビー活動が全国規模で進んでいます。オランダの例に学び、私たちは、国会のすべての党派の議員と連絡をつけ情報グループを作ろうと努力しています。この活動はすでに始まっており、この秋にはグループ作りを完成させたいと思っています。またこの活動の一貫として、国会議員が、ほかのNATO諸国の国会からも代表を招いて、実際的な核軍縮問題にかんするセミナーを組織するよう働きかけています。

  今年5月、ノルウェーの中央労働組合(LO)が、7日間にわたる大会を開きました。この大会では、LOはノルウェーにおける反核活動に学びそれを支持するという固い決意が確認されました。大会では、軍縮の議論もおこなわれ、結論として、核兵器反対運動に10万クローネを寄付することが決定されました。

  今年9月、ノルウェーでは国政選挙がおこなわれます。ノルウェーでは国民の9割以上が核兵器の使用と使用による威嚇に強く反対しています。ですから、私たちの組織には、政治家に核軍縮の問題を突きつける責任があります。実践は簡単ではありません。なぜなら、多くの政治家はこの問題を議論したがらないからです。しかし、政治的に明快にしておく必要のある問題から政治家を逃れさせるつもりはありません。

  ここ数年間、核兵器ノーは、核軍縮に賛成する立場に方向転換したアメリカの元高官たちを招いての企画を続けて開いてきました。昨年は、アメリカ政府の軍縮交渉担当者であったトマス・グレアム氏を招きました。グレアム氏は、ノーベル協会でノルウェーの政府高官を対象に講演し、核軍縮をできるだけ早くおこなう決意をしてほしいと奨励しました。今年はアメリカの元国防長官ロバート・マクナマラ氏を招いており、国連の日の10月24日、ノーベル協会で講演してもらうことになっています。テーマは、包括的および迅速な核軍縮の必要性です。対象は、ノルウェー政府高官と国会の主要議員のほとんどとなります。もちろん、この高等教育プログラムがどれだけの効果をもたらすかは分かりません。しかし、これは、ノルウェーの政治家に反核の立場をとらせるよう、私たちが彼らに対してかけ続けている圧力の一部だと考えています。いずれにせよ、こうした企画をすれば私たちの主張をマスコミで報道させやすくなります。

  最後に、イスラエルで核の囚人となっている人物のことをお話します。モルデカイ・バヌヌという人で、すでに14年牢獄につながれており、うち11年は独房に入れられていました。彼が犯した唯一の「罪」は、イギリスの「サンデー」紙を通して、イスラエルがノルウェーで生産された重水素をもとに、不法に相当数の核兵器を製造していることを世界に知らせたことです。ノルウェーでもほかの多くの国でも、バヌヌの釈放を求める運動が進められています。今年5月、バヌヌは、ノルウェーのトロムセー大学から名誉学位を授与されました。もちろん、トロムセーに彼が来ることはできませんでしたが、代わりに弟のメイル・バヌヌが式典に出席しました。私たちは、バヌヌのような核の告発者たちは、道徳的な規範を示すことで、世論に大きな影響を与えていると思っています。ノルウェーで私たちは、ノルウェー政府にバヌヌの即時釈放を支持させるようにするという成果もあげています。とくに、学校を訪問するなどして若い人たちにバヌヌ釈放運動を知らせる活動は、非常に人を動かす活動となっています。


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