セミパラチンスク核実験場が閉鎖されて、今年で10年になります。国際的反核運動「ネバダ・セメイ」は、セミパラチンスク実験場でおこなわれた核実験の影響について調査をおこない、「地球と人間の再生」と題する計画を進めてきました。
こんにち、私たちの運動のおもな目標は、放射性物質で汚染された大地と人々の健康の回復を支援することにあります。
核実験場でおこなわれた500回を超える実験は、セミパラチンスク地方の生態環境に深刻な被害をおよぼしました。これは、第53回国連総会で事務総長がおこなった報告の中でも確認されています。
この課題にとりくむために「放射線、生態環境、健康」委員会が創設され、活発に活動をすすめています。委員会の科学者・専門家たちはセミパラチンスク実験場の生態学的状況の調査に専念しています。
大気中のあらゆる高さでおこなわれた124回におよぶ原水爆の実験により、環境は汚染されました。委員会の報告によれば、このうちわずか24回についてしか放射性雲が観測されませんでした。この原子雲は、地球全体の汚染をひきおこしたのです。
核実験により、約200万へクタールの農業地帯が汚染されました。最大限の汚染の危険がある地帯の総面積は約700万へクタールにおよびます。実験場から15キロから50キロメートル周囲には村落がありました。アメリカの場合、ネバダ核実験場からもっとも近い町でも、150キロ離れていました。
放射性降下物による核汚染は、100万7000人の住民が暮らす、およそ34万平方キロメートル地域に広がりました。
委員会調査では、実験場の約30パーセントがセシウム137とストロンチウム90に汚染されていたことが明らかにされています。この調査には、国立核センターの核安全・生態学研究所が1997年に作成した略図が使われました。
調査の結果、広大な核実験場のなかでも、「実験場」、「バラパン地区」「デゲレン地区」と名づけられた地区が高度に汚染されていることが実証されました。これらの地区以外にも、プルトニウムとアメリシウムという超ウラン元素が異常に濃縮している場所があり、地域の住民に重大な危険をもたらしています。
必要なのは、汚染された地帯と汚染されていない地帯とのあいだの境界線を見つけること、プルトニウム汚染と地下水や地表水を通した放射性物質の移動を調査すること、この地域の水質調査の結果と農産物の質のデータを提供することです。
セミパラチンスク実験場がもたらしている問題の重大さは、カザフスタン大統領の提案をうけて、国連総会でも確認されていることに裏付けられています。国連総会は、国際社会がこの地域に注目を払うようにとの特別の訴えを採択しているのです。
核実験が生態系におよぼす影響は、まだ完全に研究しつくされていません。個々ばらばらの調査では、核汚染の状況が十分に解明されません。
核実験による汚染を一掃するためには、おもに、次のような回復措置が必要です。
1)生産に従事する集落、村落、地域の詳細な調査と核汚染除去を早急におこなうこと。
2)地下水の汚染レベルを詳しく調査し、食物連鎖における放射性物質の蓄積を明確にし、それによって予防措置を講ずること。
2001年8月29日から30日、アルマアタで、「世界平和と核兵器のない21世紀にむけて」と題する国際会議が開かれます。会議には、セミパラチンスク核実験場の閉鎖に力をつくしたもと元首たちが招待されており、核兵器の廃絶にかんする問題が議論されます。