核兵器をめぐる今日の情勢は、この廃絶を求める国際的な世論とたたかいが新たな重要な到達点を築く一方で、これに公然と対立して核兵器に固執する勢力の側からの逆流が強まっている点に最大の特徴があります。
そうしたなかで、今年一月に成立したアメリカのブッシュ政権は、ユニラテラリズム(一国主義)をかかげて、圧倒的な核優位確立を追及する動きを顕著にしています。これは、国際の平和や地球環境の課題でも人類に重大な脅威をもたらすと同時に、NATO同盟国との間にも矛盾をもたらし、核兵器廃絶を求める勢力、平和勢力のたたかいをいっそう重要なものにしています。
昨年五月の核不拡散条約再検討会議で、米政権も含め自ら満場一致で合意した「核保有国が核兵器の完全廃絶を達成する明確な約束」は、非同盟諸国や「新アジェンダ連合」、ASEAN諸国など政府の運動とNGOの運動との重要な到達点であり、とりわけ、国連など国際政治のレベルでも、いまや核兵器の速やかな廃絶を求める声が多数派となっていることを雄弁に示したものでした。また、昨年来の国連総会では、「期限を切った」核兵器廃絶の実現を求める決議が採択されたころも、国際政治と世論の前進をを示しました。
ところが、ブッシュ政権は、この核兵器廃絶の流れを妨害し、巻き返しをはかろうとしています。ブッシュ大統領は「核兵器はいまなお、われわれや同盟諸国の安全に取って死活的な役割を果たしている」(5月1日、国防大学での演説)とのべ、「ミサイル防衛」構想をうちだしています。
これは、他国の弾道ミサイルを無力化することで、核攻撃をおこなう自由を手にしようとするものであり、先制核攻撃能力を独占的に強化するものです。まさに、比類のない、絶対的に優位な核態勢によって、世界を威嚇、支配する覇権主義的な野望に他なりません。
このブッシュ世紀炎の横暴には、NATO諸国からも「核軍拡競争の再燃の危険がある」との批判が寄せられ、アメリカ国内でもかつてない批判の声が上がるなど、世界の広範な人々が反対を表明しており、孤立と矛盾を深めざるを得ない運命にあります。
昨年の国連総会でも、多数の国の代表が国連憲章の原則と目的を守れと表明したように、アメリカの狭い国益優先の政策には強い批判があがっています。また、地球温暖化防止のための「京都議定書」からの離脱表明、されには、アメリカ主導の「グローバリゼーション」についても、アメリカの横暴勝手な行動に世界中から批判の目がむけられています。
長い歴史と伝統を持つこの世界大会は、参加している政府代表もNGOも代表性が高く、政府とNGOの運動がともに手を取り合って、核兵器廃絶をはじめ、平和の課題を前進させる方向を世界にアピールする最良・最大の場となっています。この自覚と気概をもって、アメリカ政権をはじめとする核兵器に固執する勢力を国際的に包囲するたたかいを広げようではありませんか。
こうしたとき被爆国である日本の政府が、核兵器廃絶に背を向けていることは重大です。私はさる6月、原水協代表の方とともに外務省の軍縮課長と一時間議論しましたが、「核抑止」こそ平和の保障という立場に固執したままでした。小泉内閣は、その立場からアメリカの「ミサイル防衛」構想を理解するとしています。「京都議定書」問題でも、アメリカの立場を擁護し、マスコミでも「親米一筋」といわれています。
さらに、小泉内閣は、かつて日本軍部がすすめた侵略戦争が「正しかった」とする検定教科書の合格を再確認し、戦争犯罪人をまつる靖国神社への参拝を公言しています。二千万のアジアの人々を犠牲にしたあの侵略戦争を正しかったとする日本政府の今日の立場は、侵略・占領の犠牲国であり、平和、非核、非同盟の流れを広げつつあるアジア諸国との矛盾を深めざるを得ないことは明らかです。
二一世紀最初の世界大会で、私たちは、広島、長崎の悲劇を繰り返させず、人類の悲願、核兵器廃絶を一日も早く実現するためにたたかうとともに、日本軍国主義の戦争責任を厳しく追及してきたアジアと世界の政府と諸国民の運動と連帯し、非核、平和の流れをさらに大きく広げるために全力をつくすことを誓うものです。