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反核平和運動・原水爆禁止世界大会

 

原水爆禁止2000年世界大会
国際会議
 

オーストラリア平和委員会
フィリップ・ホワイト
 
 

エミューの夢と聖なる火

 いま中央オーストラリアのエアズロック(Ayers Rock)からシドニーにむけて運ばれているオリンピック聖火について聞いたことがあると思います。今日は、オーストラリアを横断するもう一つの火について話します。これから私が言うほとんどの事は、私が直接この数ヵ月間に受け取ったEメールからに基づくもので、みなさんの励ましとなることを願っています。

 55年前の広島と長崎の原爆を祈念し、私達がここに集まっているこの時、聖なる平和の火が歴史的な旅をしてオーストラリアを横断しています。エア湖(Lake Eyre)からシドニーのオリンピックまで運ばれています。オーストラリアの先住民アボリジニーの長老達とオーストラリア人と外国からの行進者は、土地とその土地の人々の平和と癒しのメッセージとしてその火を2500キロメートルにわたって運びます。この行進の先頭には、アラバナ族の長老ケビン・バザコットさんがいます。行進はアラバナの国からシドニーまで行く途中、たくさんの先住民族が暮らす主権国家を通ります。

 6月10日、いくつかの先住民族代表と、100人を超える非先住民の支援者がアラバナ長老ケビン・バザコットさんを見送るために集まりました。聖なるたいまつを持つケビンさんと共に、50人のオーストラリア人と外国からの行進者が出発しました。出発点のエア湖は、南オーストラリアの北方の乾燥地帯にある巨大な塩の湖です。

 何千年も前、エア湖は海と繋がっていました。今は、洪水が来たときだけ満たされる、広くて浅い湖です。中央オーストラリアのほとんどは砂漠なので、大陸行進のほとんどは乾いた土地を通ります。行進者にとっては大変きつい旅です。

 行進参加者の数は、40人前後ですが、人は毎日入れ替わります。一日平均30キロを歩いており、この調子でいけば、オリンピックが開始するまでに、平和の火をシドニーまで運ぶことができるでしょう。

 7月7日のアボリジニーの日、行進者たちは、南オーストラリア州とニューサウスウエールズ州の境界にある、ブロークンヒルという町に着きました。そこで町の人たちに行進について話をしました。町では、集会がひらかれ、パフォーマンスなども披露されました。行進を続け、途中で出会う人々にメッセージを伝えていくなかで、古代から伝わるこの聖なる火の儀式はその威力を増します。また、先住民つまり土地の世話をする人たちの主権に対する人々の支持が強まります。

 この行進の大きな動機のひとつは、採鉱、とくにウラン採掘が土地とその土地の伝統的な所有者である先住民に与えた被害を癒すことにあります。オーストラリアのウラン鉱山から採掘されたウランは、日本の原発で使われています。かつては、核兵器を作るために使われていました。6月26日、アンジャマットナ族の伝統を継承する人が、聖なる平和の火をベバリーウラン鉱山の入り口まで運びました。目的は、被害を受けた「エミューの夢」の場所に平和と癒しを与えることでした。

 「夢を見る」という言葉は、アボリジニーの文化において特別な意味をもちます。私はこの意味を説明する立場にはありませんが、ご存知ない方々のために申し上げますと、アボリジニーは、「夢の時代」〔訳注:豪州原住民の神話の「夢の時代」。人類の祖先が創造された至福の時代のこと〕について話しをします。「夢の時代」というのは彼らの神話の時代です。「エミューの夢」というのは、ベバリーウラン鉱山近くに住むアボリジニーの話のひとつです。行進者には、先住民と土地の繋がりをもっと理解できるよう、「夢の時代」の話を聞く機会があります。行進者の行く先ざきで、アボリジニーの伝統を継承する人が、彼らの国の話を伝えてくれます。そうして、土地とその土地の人々の平和と癒しのメッセージを広げる連帯の気持ちを強めていくのです。

 聖なる火の行進は、人々へ直接平和の火を運ぶひとつの方法です。人が考え方を変え、聖なる土地を汚染する行為を阻止する方へ歩みだし、汚染された土地を回復し癒す機会を与えるものです。今、平和の火はいっそう明るく強く燃えています。行進参加者は、土地の力と美しさに打たれながら、毎日、自分と共に土地の精霊も動いているという気持ちを強くします。夜には、土地の聖霊が彼らの夢に影響を与えるのです。

 行進者は、平和と癒しのメッセージを、まずダボーやモーリーといった郊外の町、さらに首都キャンベラ、ブルー山脈からシドニーへ、そしてそこから世界へと伝えるつもりです。

 このメッセージはもう広島に到着しました。この土地と人びとの平和と癒しのメッセージが全世界に届くことを願います。
 


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オーストラリア平和委員会
フィリップ・ホワイト

(参考資料)
 
 

オーストラリアの核問題



 オーストラリア反核活動家にとって今年は多忙な年でした。主に、核軍縮、ウラン採掘と輸出、オーストラリアの砂漠に計画されている核廃棄物投棄所、マラリンガ核実験場の汚染除去、シドニー郊外の研究用原子炉、米軍基地といった問題に取り組みました。

1. 核軍縮
 おおくのグループがこの問題に取り組んでいますが、とくに、オーストラリア平和委員会と「地球の友」が活発に活動をしています。昨年来、これらのグループは核拡散防止条約再検討会議における前向きな成果にむけて、また、2000年になる前に核兵器を警戒態勢から解除させることをめざし精力的な運動をすすめました。
 国会でみられた前向きな進展としては、5年毎におこなわれる核不拡散条約再検討会議における真の前進を求めるオーストラリア上院の要請がありました。最大野党の労働党が提案したこの動議には、政府側与党が反対しました。オーストラリア平和委員会はまた、世界の教会指導者にたいし、今年の8月6日の日曜日を「国際的な祈りの日」と宣言するようにとの運動もすすめています。この運動の基本は、国際平和文化年の概念を、8月6日日曜日がヒロシマの日であるという事実に結びつける点にあります。この祈りの日は、核兵器の開発、実験、使用の過程で命を失った人、負傷した人すべてを追悼するものとなるでしょう。これはまた、核保有国指導者にたいし、核廃絶へ向けただちに話し合いを始める決意を固めるよう迫る訴えともなるでしょう。

2. ウラン採掘
労働党が政権を握っていたときでしがた、オーストラリア政府は、南オーストラリア、アデレード北部の砂漠にあるロキシビー・ダウンズ鉱山と、北部準州にあり、世界遺産に登録されているカカドウ国立公園内のレインジャー鉱山という、最大限二つのウラン鉱山をもつ方針をたてました。自由・国民党保守連合政府の下で、この方針はくつがえされました。いくつかの新しいウラン鉱山が、全面的な承認を求めて建設を準備しています。その中には、カカドウ国立公園内にある別のウラン鉱や汚染度の高い「原位置抽出(in situ leach)鉱も含まれています。ここで用いられる「原位置抽出」(ISL)処理(とは、坑内水の中に硫酸をポンプで流し入れウランを溶解する方法です。硫酸を基本とするISL処理法は、西側諸国では用いられていませんし、東欧では、過去にこの処理法による汚染がおこっています。オーストラリア連邦政府は、地下水をもとに戻すという条件も付けずに、該当企業に汚染承認を与えたのです。
 ウラン採掘は、オーストラリア先住民の土地から、おおくの場合これら先住民の意志に反しておこなわれています。原鉱の放射性物質の大半は、ウラン鉱現場近くの巨大な蒸発池に残ります。これらの溜め池からは漏水が起こり、放射性物質が周辺の環境、とくに地下水へと流れ込みます。90年代初期、ロキシビーで発覚した放射性物質漏れの例では、約50億リットルの排水が漏れていますが、1999年9月現在も、適切な密閉措置は講じられていません。この採鉱プロセス自体においても、使われる水が大量であることから、環境は大きな被害を受けます。ロキシビー・ダウンズ鉱山は、南オーストラリアで最も大量の水と電力を消費する事業です。水は、大アーテジアン地下水脈(クイーンズランドから南オーストラリアにまで延びる巨大地下水脈)から無料で採られ、その結果、この地域の(家畜用)掘り抜き井戸や泉が干あがる原因となっています。日本は、オーストラリアからウランを輸入しています。他にも、アメリカ、イギリス、フランス、といった核保有国がウランを輸入しています。おそらく、やがてはインドやパキスタンも、ウラン鉱の顧客となるでしょう。

3. 砂漠地帯に計画された核廃棄物投棄場
 連邦政府は、いま核廃棄物集中投棄場を準備中です。投棄場は、オーストラリア国内から生ずる核廃棄物のためのものですが、やがては世界中から核廃棄物を受け入れることになるかもしれません。計画に反対する人たちは、これ以上廃棄物は出ないという時がくるまでは、廃棄物が出た場所自体である地上に、長期間貯蔵施設をつくるべきだと主張しています。輸送や放射線漏れなどの危険とは別に、遠隔地に集中廃棄場をつくれば、廃棄物を出した当事者から責任感を失わせることになります。南オーストラリアにおける集中核廃棄物投棄場にたいする全面的な反対意志をはっきりと表すため、今年3月アデレードで住民大会が開かれました。
現在オーストラリアでは、核廃棄物投棄場について、次のような提案が出されています。1)ウーメラやロキシビー・ダウンズ鉱山(南オーストラリア)近くに、低レベル核廃棄物用の「浅い埋め立て」方式投棄場と、(30年間危険で300年間放射性をもつ)寿命の短い中レベル放射性廃棄物の国立投棄場をつくる。2)地上の囲い込み貯蔵庫式で、(1万年間危険で25万年間放射性をもつ)寿命の長い核廃棄物用の国立投棄場、おそらく1)の低レベル廃棄物投棄場と同様のもの。3)パンギア・インターナシヨナル社が計画している、(核兵器や原子炉物質から再処理された高い放射性をもつ)高レベル核廃棄物核廃棄物の投棄場で、深い地下貯蔵庫形式のもの。南オーストラリアと西オーストラリアに計画されている。
昨年西オーストラリア州政府は、高レベル廃棄物投棄場に反対する法案を採択しましたが、投棄場を計画中の企業(パンギア・インターナショナル)は、この立法に手を縛られる筋合いはないと主張しています。南オーストラリア州政府は、今年、寿命の長い中レベル放射性廃棄物の投棄を禁止する法案を議会に提出しました。それでも、連邦政府による低レベル廃棄物の投棄をくい止めることはできないでしょう。南オーストラリア州政府の動きは、連邦政府の激しい反対にあっているのです。

4.マラリンガ核実験場跡の汚染除去
1950年代から60年代にかけ、イギリスはマラリンガを核実験場としました。マラリンガやチャルチャのほとんどの住民は、核実験のために、住み慣れた土地から追い立てられましたが、遊牧民の中にはこの地に留まったものもいました。核実験中被曝した軍人もいます。この地域は長いあいだ汚染されたまま放置され、数十年後ようやくイギリス政府と汚染除去の合意が成立しました。1億800万ポンドの汚染除去費は、決して十分となるものではありませんでしたが、最近漏れた文書では、この汚染除去作業は、発表された事実と違って効果の低いものだったことが示唆されています。連邦政府によるマラリンガ核実験場跡地安全宣言が出されてからちょうど2週間後、汚染除去作業の主要な部分が失敗したことが、漏れた文書から明らかになりました。マラリンガ廃棄物処理にたずさわるある専門家からの手紙によると、一年前おこった地下爆発により、放射性廃棄物を埋め立てる前におこなわれるはずであった容器詰め作業が放棄されたというのです。かわりに政府は、わずか地下5メートル地点に、放射性廃棄物を容器にも入れずにそのまま埋めることにしたのです。「オーストラリア放射線保護・核安全局」によれば、当初の計画通り放射性廃棄物を掘り出して溶解するより、容器に入れないまま埋める方が安全であったというのです。この方針変更により、その土地の水がプルトニウムで汚染される恐れがあります。最近の研究からは、プルトニウムはこれまで考えられていたより水に溶けやすいことがわかっています。約450平方キロメートルの土地が、およそ2万4千年にわたり人の住めない土地となるのです。マラリンガ・チュールッチャの古老、アーチー・バートンは、この地域に関する情報を伝承する最良の方法は口承であると信じています。どんな法律であっても、2万4千年もの長期にわたり守らせるなどとうてい不可能なことですから。

5.シドニー郊外の研究用原子炉
 オ?ストラリアは、原子力発電をおこなっていませんが、シドニー郊外のルーカス・ハイツという場所に研究用原子炉があります。現在の原子炉に代わり新しい原子炉の導入が計画されており、優先権を与えられた入札者としてアルゼンチンの会社が選定されています。導入が予定されている新しい原子炉には、地域住民や平和・環境保護運動が強く反対しています。進行中の運動は、原子炉建設に反対し続けています。

6.米軍基地
 オーストラリアは、数十年にわたりいくつもの米軍基地を受け入れてきました。いま残っている最大の基地はパイン・ギャップ基地です。この基地は、中部オーストラリアのアリス・スプリングの南西約15マイルに位置し、太平洋上空の監視衛星の信号を受けたり、監視衛星をコントロールするCIA(米国中央情報部)の情報根拠地として機能しています。この基地の賃貸期間が切れる2008年には、賃貸期間を再度延長するかどうかアメリカとオーストラリア両政府が検討することになるでしょう。アデレードの北数百マイル、ウーメラに近くにヌランガー基地がありましたが、ハイテク技術の進歩によって不要な存在となったという理由から1999年に閉鎖されました。ヌランガー基地がその一翼を担っていた、アメリカの「国防支援計画(DSP)」の衛星は、弾道ミサイルの排気ガスから出るエネルギーを感知します。これは、中国またはロシアから大陸間弾道ミサイルが発射された際、到着25?30分前に警報を出すと言われています。ミサイル攻撃の警報を独自に確認し、誤報を本当のミサイル攻撃と取り違える危険を少なくすることになっています。しかしこの情報は、核兵器の照準設定や、アメリカが配備するかも知れない弾道ミサイル迎撃ミサイル(ABM)の照準設定のために利用することもできるのです。国防支援計画(DSP)衛星にはまた、大気中の核爆発を探知できる核爆発感知装置も装備されています。大気中核爆発実験は、1963年の部分的核実験停止条約により禁止されました。ですから、ヌランガー基地は、部分核停条約が順守されているか検証する上での役割を果たしているのだ、と言われました。これら二つの基地は、これまで主な平和運動の抗議の焦点となってきましたが、現在の大きな運動がおこなわれているかどうかは分かりません。
 アメリカのコーエン国防総省長官は、今年の7月シドニーを訪問した際、パイン・ギャップ基地は、全米ミサイル防衛(NMD)システムの不可欠な一部になるであろうと明言しました。オーストラリアは、パイン・ギャップ施設の将来について決定する権利をいまだ有していないことは明らかです。

7.コメント
 日本の国民一般の目からすると、オーストラリアの砂漠に世界の核廃棄物を捨てるというのは名案と思えるかもしれません。地震や火山爆発の起こりやすい日本と比べれば、オーストラリアの方が地質上はるかに安定しているからです。しかし、この種の考え方には多くの問題があります。明白な問題のひとつは、核廃棄物の輸送に伴う危険です。再処理用の使用済み核燃料を、日本が欧州へ船舶輸送する際にもこの危険が生じます。しかし、もっと根本的な問題は、そもそもこうした廃棄物を生み出す倫理に関わるものです。核兵器の製造過程からであれ、核エネルギーの産出過程からであれ、生みだされた核廃棄物は、現在と未来の世代の上に、地球全体の上に、受け入れ難い重荷となってのしかかるのです。廃棄物が存在する年月にわたり、その安全を保証できる方法は存在しないのです。東海村での事故、英国核燃料会社による燃料記録の偽造、たび重なるウラン鉱からの放射性物質漏れなどを見れば、たとえ短期的でも原子力産業が安全ではないことが明らかです。オーストラリアの反核活動家たちは、原子力産業全体に常に反対してきました。核兵器問題により力を入れて取り組む者もあれば、核エネルギー問題の方に力を入れる者、とさまざまですが、どちらも有害であり阻止すべきものであるという点では、平和運動と環境保護運動のなかには圧倒的な合意があります。

参考資料:「地球の友」、「核情報センター」、「オーストラリア平和委員会」から筆者宛に送られてきた資料、ならびに「オーストラリア放送協会ホームページ」。


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