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原水爆禁止2000年世界大会
国際会議

アメリカ
サンフランシスコ・オークランド地域平和リンク
ハンフォード風下地区住民
ジューン・ケーシー

1949年ワシントン州のハンフォード核施設での秘密放射線人体実験の犠牲者として密かにおこなわれた放射線人体実験の犠牲者として、この世界大会に招待されました。ハンフォードで製造されたプルトニウム爆弾が、長崎の上空で炸裂した言語を絶する被害と恐るべきほど多くの犠牲者をうみました。私は個人として謝罪する機会をいただいたことに感謝を申し上げるものです。55年たった今でも、日本では、潜伏していた放射線の影響で、毎年5000もの人が通常の寿命をまっとうせずして亡くなると聞いています。

米国国民は、このほど解禁された文書から、遅ればせながら日本政府が米国によって8つの挑発行為の対象とされていたことを知りました。「醜行の日」と呼ばれていますが現実には「欺きの日」である真珠湾攻撃をおこなうよう仕向けられたのです。「欺きの日(Day of Deceit)」は、フランクリン・デラノ・ルーズベルト大統領と真珠湾についての真実を明らかにした、ロバート・B・スティネット氏による新著のタイトルで、もうすぐ日本語訳が発行されます。また、原爆投下は、当時私たち国民が知らされていたように、第二次世界大戦を終わらせるために必要だったのではない、ということも知りました。太平洋の両側で私たち世界大会参加者は、それがいかに苦痛であっても真実を語らなくてはなりません。

1999年11月、『エコロジスト』誌(原子力の狂気の特集号)において、カナダの疫学者ロザリー・バーテル博士は、核産業ではその開始以来、13億人が死亡したか不具になったか病気になったとの推定を発表しました。核産業側による数値は、世界で自分達が生み出した被害者を覆い隠そうと、被害の規模を実際より大幅に低く見積もっています。

最近お目にかかる機会を得た物理学者のアーネスト・スターングラス博士は、「秘密主義は、開かれた社会を統制しうる手段のひとつである」と述べています。時として、最大の犯罪は、秘密主義を行使することにより、政府と企業により自国の国民にたいし犯されます。そういった犯罪の一例について私の経験をお話ししましょう。

1940年代と50年代、ハンフォード核施設で操業していたジェネラル・エレクトリック社は、1,100億キューリーの放射性ヨウ素131を継続的に、秘密裏に放出しました。1986年の母の日、私は、自分が、その際被ばくしたワシントン州「風下地区住民」27万人のひとりであることを知りました。ヨウ素131には発ガン性が認められており、牛により消化されると、牛乳に高濃度で蓄積されます。

1945年には、ハンフォードから55万キューリーの放射性ヨウ素が放出され、1億5千万のアメリカ国民が、一人当り40億ピコキューリーを超えるこの致死的放射物質にさらされました。これは、その結果、地域の甲状腺がん発生率を200倍に押し上げたチェルノブイリ原発の事故で放出された放射線に匹敵する量です。その後、20年にわたり大気圏実験がおこなわれましたが、米国の天然資源保護協議会(the Natural Resources Defense Council)が最近おこなった推定によれば、これは、広島型原爆4万発分に相当するといいます。

連邦政府と州政府当局は、ハンフォード近くのコロンビア川を世界で最も放射線に汚染された川と宣言しています。原子炉の操業がピークだったころは、コロンビア川の岸に立っているだけで相当量の放射線を浴びることが可能でした。米国の核兵器製造から生ずる高濃度放射性廃棄物の3分の2が、ハンフォードに貯蔵されています。ハンフォードには、核戦争が起こったとして、そこから生ずる放射線を超える量の放射性物質があるのです。現在、ハンフォードの汚染除去作業には、1千億ドルの費用と30年の月日が必要だとされています。それでも何千年にもわたり放射能が消えることのない地域が残ります。

今年6月ハンフォード施設とその周辺で火災が起こり、19万エーカーが焼けましたが、これは、重大な警告となりました。今年5月には、農務省林野部による野焼きが暴走し、ロスアラモス国立研究所周辺の200家屋と4万8千エーカーが焼けました。そのうち9,000エーカーが研究所の土地で、ベータ線量は通常の4倍、アルファ線量は20倍に増加しました。

最近、ハンフォード付近の住民にたいし、そのすべてが医療記録により証明されている広範な疾病にかんする健康調査がおこなわれました。その結果、乳ガンと肺ガンの発生率が3倍、甲状腺と白血病が10倍に増加していることが判りました。「ハンフォード死の一マイル(the Hanford Death Mile)」と呼ばれる地域では、ここに暮らす世帯の100%で、ガン、心臓疾患、先天性異常のいずれかが見られました。私が450人のハンフォード風下地区住民におこなった健康調査では、回答したうちの40%の人に、遺伝上の障害をもつ子どもがいました。全国的には、1945年から1965年のあいだ、低体重児の出生率が40%増加しています。

私の浴びた放射線の中でもっとも深刻な影響をおよぼしたのは、「グリーン・ラン」として知られる計画的な秘密実験によるものです。この実験は、1949年12月2日にジェネラル・エレクトリック社の原子核工学部がおこなったもので、放射性ヨウ素1万1千キューリーとキセノン2万キューリーが意図的に大気中に放出されました。これは、当時の放射線許容量の1万1千倍でした。しかも当時の許容量は今日の20倍という高さでした。当時私は、ハンフォード核施設から50マイル風下にあるホイットマン大学の学生でした。

ハンフォード放射線医療顧問のハーバート・パーカー博士とカール・ガマーツフェルダー博士は(私は博士に電話インタビューをしたことがありますが)、この実験はおこなうべきではないと警告していました。パーカー博士は、実験は「10年、15年のうちに心身に有害な影響をもたらす」と述べていました。しかし、この医療上の助言は、完全に無視されました。バーテル博士は、「正義の問題で、人間の健康侵害に帰着しないものはない」と述べています。

疾病対策センターの調査では、1940年代から50年代のあいだ、ワシントン州風下地区に暮らす3万の子どもたちは、チェルノブイリから3マイルの地点に住んでいたソ連の人びとの20倍の放射性ヨウ素を浴びていたことが明らかになっています。これは、風が吹いた方向と、ソ連で地域住民にたいしてとられた保護措置の違いによるものです。

ワシントン州保健局の放射線専門家であるアレン・W・コンクリン氏によると、世界でも知られている中で、ワシントン、オレゴン、アイダホに住んでいた私たちほど、長期にわたりそれほど大量の放射線に被ばくした民間人集団はいない、ということです。なかには、3万6千回のエックス線写真に相当する、3千ラドもの放射線を浴びた子どももいました(1990年7月13日付フロリダ州『セントピーターズバーグタイムズ』)。

政府文書によれば、ハンフォードで放射性同位体が放出されたのは、放射線戦争の潜在的影響力を評定するためであり、なかには、地元住民にたいする破壊力と影響を見るためだったと考える人もいます。カーティス・ルメイ将軍が率いた放射線戦争実験秘密計画は、供給用の水と牛乳を汚染する目的で、放射性分裂物質を放出できるもので、ハンフォードにおいて1954年までおこなわれました。ワシントンの住民の多くは、1949年の実験が、この放射線戦争計画の一環であったと考えています。ぞっとするのは、現在の環境法のもとでは、おなじ秘密実験がいまでも可能なことです。

被ばくした結果、私は、重度の甲状腺機能低下、流産、死産、乳腺腫瘤摘出、皮膚ガン、慢性変性脊椎、ガン性になりうる甲状腺結節、永久脱毛という影響を受けています。食道にも問題があります。食べ物が飲み込みづらく、腫瘍摘出のため内視鏡手術を2度受けました。脊椎は絶え間なく痛み、まるで、電気のこぎりで拷問にかけられているようにさえ感じます。肩は、バーベキューの熱い炭につかまれているように感じます。

1997年の8月、もとの場所に延性ガン腫ができました。これは、非常に攻撃的になりうる種類の乳がんで、2度手術が必要でした。2回目のとき一部乳房を切除しました。毎年、17万5千人の女性が、転移性質の乳がんの診断を受けています。最近受けた乳房レントゲン写真により、ガンが再発しているかもしれず、生体組織検査が必要なことが判りました。モルモン教徒の作家であり自然主義者のテリー・テンペスト・ウィリアムは、胸がつぶれるような詩のなかで、こう書きました。「私たちは、乳房をひとつしかもたない女性の一族を形成するまでになった」。

『サンフランシスコ・エグザミナー』紙(1997年8月13日付)の記事はショックでした。「こんにち最良の乳がん診断方法(乳がんレントゲン撮影法)は、40年も昔の技術で、誤診をまねきやすい。女性健康診療所(the Office on Women’s Health)によると、この方法でとられた映像は、ガンの15%から20%を見逃してしまう。乳がん診断を改善するのに必要な技術はある。しかし、それは適切でない者の手にあるのだ。莫大な予算をもち、国家の安全保障を任務とする国防・諜報分野は、医療分野の発展とハイテク映像の使用において、10年先をいっていると推定されている。」
 爆弾の標的を探し出したり、殺すことが、ガンの検出より優先されているとは、なんたる不条理でしょう。女性は、防止できる乳がん手術により、痛みを伴い、体を切り落とし、傷つけ、ゆがめる残忍な仕打ちを受けているのです。アメリカ人は、第三世界でおこなわれる生殖器一部切除を非難します。ならば、いわゆる第一世界がこれより進んでいるとでも言うのでしょうか。

この驚くべき政府による欺まん行為は、ハイマン・G・リコーバー提督が、息子の妻であるジェーン・リコーバーにおこなった(公証人により認証された)告白により明らかになりました。リコーバー提督は、ケメニー大統領委員会が1979年のスリーマイル島事故について事実を報告すれば核産業は壊滅的打撃をうける、と述べました。よって、リコーバーは部分的炉心溶解の苛烈さについてウソをつくようジミー・カーター大統領を説得したというのです。リコーバーは後に、この重大なる国民にたいする欺きを後悔したと述べました。

政府関係者や国防省と契約を結ぶ人間のなかには、核兵器は必要悪だという人がいます。いいかげんにこんな精神構造から脱して、悪などというものは決して必要でないとする考える時ではないでしょうか。

ホイットマン大学時代の友人には、手のない子どもが生れました。いったいあと何人このような子どもが生れなくてはならないのでしょう。ハンフォード付近で育ったという、スポーカンからきた母親の11歳になる目が細長く切れていた娘のような子があと何人生れなくてはならないのでしょう。忌まわしいハンフォード死の一マイルで生れた目、頭、おしり、指のない子どもがあと何人生れなくてならないのでしょう。父の秘書を務めた女性の5歳の娘は、白血病により脚を切断しなくてはなりませんでした。あと何人の小さい子どもたちがこのような苦しみを受けなくてはならないのでしょう。

核兵器廃絶の運動にたいする献身をあらたにするにあたり、こうした放射線犠牲者を想い起こそうではありませんか。大きすぎる頭をもって生れた赤ん坊、生まれつき脚の先にひざがくっついている女性、額のまん中に丸い目をひとつ持つ巨人キュクプロスのような赤ん坊、腕がない若い絵描き。彼に出会ったとき、彼は口を使って絵を描いていました。

冷戦が終わった後ですら、世界は3万近くの核兵器の存在に苦しんでいます。(潜水艦を基地とする米国のトライデント核兵器システム(史上もっとも金がかかり、破壊的である)は、あわせて広島型原爆の8万5240発相当の破壊力をもつ弾頭を装着したミサイルを積んでいます。「トライデント反対ネットワーク」のマイケル・スプロングは、「核兵器は、その犠牲者に打撃を食らわそうと待ち構えている移動式『死の収容所』である」と述べています。

第二世代の核兵器と、その設計と実験に費やされる何十億ドルもの費用が、生殖不能と32種類の放射性ガンが愛する家族と友人を不具にし殺しつづける地球を、永遠に放射線に汚染された地としているのです。この大会が、命のはかなさと母なる地球を守る必要性を認識する場所となることを願っています。私たちの住みかは地球のほかないのです。私たちハンフォードのヒバクシャは、私たちの傷跡から思いやりと英知が生れることを願います。核の蛮行は、ナチスによる死の収容所と同じ凶悪行為で、「音を立てないホロコースト」なのです。

スター・ウォーズ(宇宙戦争)のセンサーを実験するため原子炉と原子力衛星を使った、宇宙の軍事化は、核の狂気のもっとも最近の例です。先の7月7日、米国は、弾頭を爆破する「殺人ロケット」を積んだミサイル迎撃機の実験に失敗しました。この三段階「殺人ロケット」は、その先端に装着した模擬弾頭により、改造されたミニットマン大陸弾道ミサイルを破壊することを目的とするものです。この実験失敗をもって、米国議会は、全米ミサイル防衛システムが機能しないという警告を受け取るべきです。私たちは、この国際会議において、米国の誤り導かれた科学者と技術者たちによる宇宙の核武装化を阻止するために奮闘せねばなりません。

この国際的集まりが、あふれる喜びと、限りない情熱と、衰えることのない楽観主義をもって、私たちが直面する道徳的課題に取り組むため、反核運動にあたらしい力を吹きこんでくれることを願います。地球という名のこの奇跡が、私たちそれぞれがもつ神の力を呼び起こし、ひとつの大きな家族である私たち全員を守る力をあたえてくれることを祈ります。ボスニアの兄弟、ソウェトの姉妹、長崎のめい、ニカラグアと広島のおい、アフガニスタンとアンゴラのおば、ウクライナとウガンダのおじ、キューバとチェルノブイリのいとこが暮らす大家族を守る力を。

この集会が、つまらぬ口論やけんかにたいする応えが、暴力の悪循環ではなく、愛のこもった抱擁と紛争の平和的解決である地球に暮らす家族の再会の場となることを願います。
思いやりにあふれ親身ある支援、祈りに満ちた希望、深く根ざした信念によって、この会議が考え方の転換の突破口を開く一助となることを願います。あたらしい倫理的価値観とすべてを包む道徳が、政治的、経済的、社会的平等をすべての者にもたらす、平和で核のない世界にむかって。
あたらしい千年期をむかえるにあたり、破壊の技術を使って富や権力を得るために魂を売り渡すような信仰を捨て去ろうではありませんか。神の愛と、人間の愛と、地球の愛のために、相生橋の下をゆく静かな元安川を流れる灯ろうが、新しい考え方への道を照らしてくれることを願います。決意をあらたにし、全身全霊をかけ、ともにこの巨大な挑戦に取り組もうではありませんか。夢は実現できるのです。

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