原水爆禁止1999年世界大会国際会議

  広島宣言—核兵器のない21世紀にむけて





 「核兵器のない平和な二十一世紀を」—この声が、いま世界にひろがっている。世界平和を脅かす新たな動きも強まっているなかで、核兵器廃絶を実現することは、いまを生きる者の、明日の時代に向けたもっとも重要な責務である。核戦争阻止、核兵器廃絶、被爆者援護・連帯をかかげて、世界の平和のために奮闘してきたわれわれは、二十一世紀に向かってさらに前進することを世界のすべての人びとによびかける。

 一九九〇年代初め、ソ連が崩壊し、米ソの軍事対決が終わったとき、人びとは「核兵器廃絶実現の好機が到来した」との期待を高めた。しかし、それから約十年、いまだに世界には三万発をこえる核兵器が残されている。

 唯一の超大国となったアメリカは、軍事力の圧倒的優位を確保しながら、核兵器を絶対に手放さないと繰り返し宣言し、核兵器廃絶に反対するばかりか、今日なお核兵器先制使用政策を取りつづけている。現にアメリカはこの数年、イラク、リビアなどに核攻撃を加える可能性を公然と示唆し、核兵器使用の危険を高めた。また、新型戦略爆撃機や貫通型核弾頭など、新たな核兵器の開発と実戦配備をすすめ、包括的核実験禁止条約の精神に反して、未臨界核実験を繰り返している。

 一方、昨年のインド、パキスタンの相次ぐ核実験とそれにつづく両国の軍事衝突が衝撃的に示したように、核兵器の拡散と地域核戦争の危険さえ生まれている。こうした核保有の企てを誘発する根源には、特定の国が「核抑止力」に固執して、巨大な核兵器システムを保持し、それを正当化している今日の核兵器独占体制の重大な矛盾がある。とくに、アメリカをはじめ核保有国の一部が核兵器先制不使用や非核保有国への不使用の誓約を拒否しつづけるなら、核拡散がさらにひろがる危険さえある。

 世界の非核化にむけてイニシャチブを発揮すべき責務を負っている被爆国・日本の政府は、アメリカの「核抑止力」に依存し、核兵器廃絶に背を向けつづけている。

 われわれは、このような事態を二十一世紀に引き継ぐわけにはいかない。世界諸国民が核兵器の脅威から解放される道は、すみやかな核兵器廃絶以外にはない。それを実現することは、世界平和と人類の未来がかかっている緊急の課題である。

 また、ユーゴに対するNATO軍による国連無視の武力攻撃は、多くの人命を奪い、国際社会の厳しい批判をあびた。それは、主権尊重、内政不干渉、紛争の平和的解決など、国連憲章に定められた世界平和のルールを踏みにじるものであった。

 その背景には、「地域危機への対応」という名目で、同盟国も動員して他国への内政干渉、先制攻撃をおこなうという、アメリカの新たな世界戦略がある。アメリカは、この体制を世界的規模でつくるため、アジア・太平洋地域では日本にガイドライン関連法=戦争法を押しつけ、ヨーロッパ・大西洋地域では他のNATO諸国とともに「新戦略概念」を策定した。それは「同盟国の防衛」というこれまでの建て前をふみこえた軍事同盟の危険な変質と言わなければならない。

 こうした動きは、唯一他国に核基地を展開しているアメリカの「核の傘」のもとで進められており、NATOではひきつづき加盟国にアメリカの核兵器が配備され、日米ガイドラインと核密約による日本への核持ち込みの危険と「非核三原則」の空洞化も重大な問題となっている。軍事同盟が、核戦争阻止、核兵器廃絶という世界諸国民の要求をさまたげていることは明らかである。

核兵器と軍事同盟をふりかざした覇権主義の政治は、もう一方で、膨大な軍事費による国民生活の圧迫、大国主導の「グローバリゼーション」の害悪をひろげ、世界的に貧困、失業、飢餓、環境破壊をさらに深刻なものとしている。

 われわれは、国連無視の武力行使や干渉などの横暴を許さず、民族自決の原則、紛争の平和的解決など、国連憲章に定められた平和の秩序をまもり確立するために奮闘しなければならない。それは、核兵器廃絶とともに、二十一世紀にむけた世界平和の焦点となっている。

 二十世紀の激動のなかで、核兵器のない世界を求める運動と世論がかつてなくひろがっている。これまで核兵器の「必要性」を説いてきた人びとのあいだにも核兵器廃絶の声がひろがりはじめ、核兵器全面禁止・廃絶を実現するために力関係を根本的に転換させる新しい条件と可能性がひろがっている。

 百を超える諸国による非同盟運動は、ひきつづき期限を区切った核兵器廃絶交渉を要求している。核保有国に核兵器廃絶の決断をもとめた「新アジェンダ連合」ヘの参加もひろがっている。核保有国のなかでも、中国は核兵器禁止条約締結を提唱している。NATO加盟国のなかからも、核先制使用政策の見直しをもとめる声がでている。

 非核地帯の設置・拡大、自治体や港湾の非核化を求める運動も世界各地にひろがりつつある。国際的な被爆者遊説、世界の街角での原爆展、ヒロシマ・ナガサキデーの行動、核保有国に核兵器廃絶の決断をもとめるNGOの様々な共同のイニシャチブなどが発展している。世界の広範な平和運動が参加したハーグ平和市民会議でも、「公正な世界秩序をもとめる基本十原則」のなかに核兵器廃絶の要求が一致してかかげられた。アメリカなど核保有国や、インド・パキスタンでも核兵器に反対する運動が発展しつつある。

 核兵器のない二十一世紀を築くため、世界諸国民の世論と運動を飛躍的に前進させることが、決定的に重要である。いまこそ、世界各国のあらゆる地域、職場、学園から「核兵器のない平和な二十一世紀を」の声をいっせいにあげ、各国政府と国連を動かし、核兵器廃絶の早期決断とその促進を国際政治の具体的日程にあげるようはたらきかけよう。

ユーゴ空爆に参戦したNATO諸国では、軍事作戦にともなって基地被害、演習事故、環境破壊が続発したことへの批判がわきあがり、軍事同盟の強化反対、基地撤去、核兵器先制使用反対などの世論と運動がひろがっている。アメリカや同盟国のなかからも、「自衛」の範囲をこえたNATOの攻撃的戦略に異論がだされている。

 アメリカによる干渉戦争への日本参戦に道をひらき、アジア諸国から強く批判されている日米ガイドラインと「戦争法」に反対する世論と運動がかつてない大きなひろがりをみせている。沖縄などの米軍基地や軍事演習の拡大・強化に反対する住民や地方自治体のたたかいも、ねばり強くつづいている。アジア・太平洋諸国への侵略戦争の反省のうえに戦争放棄を定めた日本国憲法の平和原則を擁護するたたかいは、国連憲章による平和の秩序をまもる世界の大きな流れと合致するものである。

 アメリカが国際法も国連憲章も無視した武力行使によって世界を支配しようとするやり方にたいし、世界のさまざまな立場の人びとからも懸念と批判が強まっている。ヒロシマ、ナガサキをふくむ世界大戦の惨禍を二度とくりかえさず、国連憲章でさだめた平和の秩序を確固としてまもるためにも、国際世論と運動の力でアメリカの横暴を押さえていくことが、平和な二十一世紀を実現する上で不可欠である。

 われわれは、核兵器のない平和な二十一世紀にむけて、以下の課題をかかげ、ともに奮闘することをよびかける。

 〇全核保有国による核兵器廃絶の誓約。核兵器全面禁止・廃絶条約の早期締結。核兵器廃絶を中心議題とする第四回国連軍縮特別総会のすみやかな開催。

 〇すべての核保有国の核兵器先制使用政策の放棄。核兵器の即応発射態勢の解除。未臨界実験を含むあらゆる核実験の禁止、あらゆる核兵器の研究・開発の中止。非核地帯の設置・拡大・強化。国や自治体・港湾の非核化。他国への核兵器持ち込み禁止と撤去。

 〇広島・長崎の被爆の実相と核兵器被害の実態調査・解明・普及、被爆者・核兵器被害者への国家補償。核エネルギーの軍事利用禁止、核燃料サイクルにともなう被害根絶。

 〇干渉・先制攻撃戦略反対。戦争協力の拒否。外国軍事基地・軍隊による被害の根絶・補償、外国軍事基地撤去。軍事同盟の侵略的な強化・拡大反対、軍事同盟解消。

 〇軍事費の削減と、福祉・生活の向上。経済、社会の自主的・民主的発展。

 世界各国、各地で運動を強め、二〇〇〇年末までの「核兵器のない二十一世紀を—国際共同行動期間」のとりくみをさらに豊かに発展させよう。一九九九年と二〇〇〇年の国連総会を焦点に、核兵器廃絶の国際的な共同行動の波をおこそう。ことしの国連軍縮週間(十月二十四日?三十日)の行動を第一波のとりくみとして、それぞれの国で自国の政府と各国政府、国連にたいし核兵器全面禁止・廃絶のための行動を要請しよう。二〇〇〇年のNPT再検討会議などの機会に、国際政治を揺り動かす共同の行動を発展させよう。

 「ヒロシマ・ナガサキからのアピール」署名など多様な行動を職場、地域、学園ですすめよう。これまでの運動の枠をこえ、さまざまな団体や個人の間の対話、交流、共同を各国の草の根から促進しよう。これらを土台に、さまざまな国際的イニシャチブやキャンペーンと広く連帯し、思想、政治信条、信仰、人種、国籍の違いをこえた反核・平和の国際的な共同に発展させていこう。

 原水爆禁止二〇〇〇年世界大会を、これらの世界の運動の総結集の場としよう。

 われわれは、人類史上はじめて核兵器の惨禍をうけた広島の地から、世界の反核・平和の運動の広大な共同と連帯を重ねてよびかける。 

 ノーモア・ヒロシマ、ノーモア・ナガサキ、ノーモア・ヒバクシャ、ノーモア・ウォー!

    一九九九年八月五日
原水爆禁止一九九九年世界大会国際会議
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  渦巻くきいろい煙がうすれると                 両手を胸に
   ビルディングは裂け、橋は崩れ                 くずれた脳漿を踏み
   満員電車はそのまま焦げ                       焼け焦げた布を腰にまとって
   涯しない瓦礫と燃えさしの堆積であった広島     泣きながら群れ歩いた裸体の行列
   やがてボロ切れのような皮膚を垂れた                  (峠三吉「原爆詩集」より)

 あれから五十四年、いま・・・・

広島はよびかける

 人類史上はじめて核兵器の地獄を体験した被爆者たちは、自ら「こころ」「からだ」「くらし」の苦しみにさいなまれながら、二度とふたたびこのような苦しみをくりかえさせてはならないと、思い出すのさえつらい地獄の体験の語り部となって、人類に警告を発しつづけてきました。この被爆者たちの姿は、核兵器にたちむかう勇気の源泉となり、絶滅の淵にたたされた人類を「生」の世界につなぎとめる一条の糸となっています。しかし、人類はなお「核地獄への門」を閉ざすにはいたっていません。

 アメリカ政府は「原爆が戦争を終わらせ、多くの兵士の命を救った」と原爆投下を正当化し、国立原子博物館では原子爆弾をかたどったイヤリングの販売までしていることが明るみに出されました。被爆者の叫びに耳をかたむけず、広島・長崎の教訓をまなぶことなく、原爆投下を正当化して核兵器という未曾有の暴力に未来をゆだねつづけるようなことを、私たちは決して許すわけにはいきません。「ボロ切れのような皮膚を垂れて、泣きながら群れ歩いた」あの地獄の体験を拒否し、核兵器の脅威のない平和な世界に通じる道を歩みつづけます。

 核戦争の生き証人である被爆者たちの声を世界にひろげ、アメリカの「核の傘」のもとで暮らすことを拒否して「非核の世界」の実現のためにイニシャチブを発揮することは、人類の未来にたいして被爆国・日本の私たちが負っている責務といわなければなりません。

 しかし、日本政府は、「核兵器は平和のために必要だ」という被爆国にあるまじき態度をとりつづけ、地獄を出現させたあの広島・長崎の原爆投下さえも「国際法違反とはいいきれない」と言い放ち、被爆者の心、国民の意思をふみにじっています。そればかりか、核兵器をふりかざし、核地獄の再現さえ辞さない政策をかかげている核超大国アメリカの下僕となって、ガイドライン関連法を強行し、国民を危険な戦争への道に導こうとしています。沖縄をはじめとする日本全土の米軍基地を足場に、自治体や民間の施設を自在に動員してアメリカの干渉戦争に加担する体制づくりが、いま急ピッチですすめられています。これにたいして、労働者・女性・青年・宗教者・科学者など各界各層の人々は、「君が代・日の丸法」や「盗聴法」などの反憲法的法案をやつぎばやに強行する政府の姿勢に抗議し、反対する共同の輪をひろげ大きく前進させています。
 
「非核・平和の未来」への道こそが、私たちが歩むべき唯一の道です。

 原水爆禁止一九九九年世界大会・国際会議の決議「広島宣言—核兵器のない二十一世紀にむけて」は、こんにちの核兵器をめぐる世界の情勢を正確に分析し、世界の人々が共同してすすむべき道を示しています。私たちはこれをふまえ、二〇〇〇年末までを期限とする「核兵器のない二十一世紀を—国際共同行動」をいっそう発展させ、核兵器にしがみつく勢力を圧倒する世論をつくりあげましょう。そのために「これまでの運動の枠をこえ、さまざまな団体や個人の間の対話・交流・共同を草の根から促進」し、創意に満ちた諸行動にたちあがることをよびかけます。

◇全核保有国が核兵器廃絶を誓約し、すべての政府が「核兵器全面禁止・廃絶条約」締結のための協議を始めることを要求しましょう。核兵器の先制使用に反対し、日本をふくむアジア地域の非核地帯化を要求しましょう。非核三原則の立法化、自治体・港湾の非核化を求める運動をすすめ、すべての「核密約」を廃棄させましょう。

◇被爆者の高齢化がすすむなか、被爆者への援護・連帯をつよめ、若い世代が被爆者の証言をうけつぐ活動をつよめましょう。原爆展の開催、原爆写真やビデオを世界に贈る運動をすすめ、被爆の実相を総合的に解明し、普及しましょう。被爆の実相を今につたえる原爆遺跡が大切に保存されるヒロシマの街づくり運動に協力しましょう。

◇一九九九年、二〇〇〇年の国連総会を焦点とする「核兵器廃絶の国際共同行動の波」第一波として、今年の国連軍縮週間のとりくみを成功させましょう。全国の職場・地域・学園で「ヒロシマ・ナガサキからのアピール」署名や日本政府に核兵器政策の変更をせまる署名など、多彩な行動に取り組みましょう。

 人類最初の核兵器の被爆地となったここ広島から、「被爆者とともに、そしてもはや帰らぬ死者たちにかわって訴えます。第二のヒロシマを第二のナガサキを、地球上のいずれの地にも出現させてはなりません」。(「ヒロシマ・ナガサキからのアピール」より)

 ノーモア・ヒロシマ! ノーモア・ナガサキ! ノーモア・ヒバクシャ!

一九九九年八月六日
原水爆禁止一九九九年世界大会・広島大会
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   核兵器のない平和な二一世紀にむけて
                  草の根から行動をつよめよう

 いま、二一世紀を目前にして核兵器のない平和な世界の実現が切実にもとめられています。米ソの軍事対決がおわり、核兵器廃絶への期待がたかまりましたが、核保有国はなお三万発をこえる核兵器をもっています。

 アメリカは、核兵器の圧倒的な優位を確保するために未臨界核実験をくりかえし、核兵器先制使用をさえ公言しています。これにたいし、非同盟諸国は期限を切った核兵器廃絶交渉を要求し、「新アジェンダ連合」は核兵器廃絶の決断を核保有国にせまっています。アメリカをはじめとする核保有国でも、核政策の転換をもとめる世論がおこっています。被爆国でありながらアメリカの核戦略に追随して核兵器廃絶に背をむけている日本政府は、日本国民はもとより、世界諸国民からも大きな批判をあびています。内外に核兵器廃絶の緊急性をうったえつづけてきた日本の運動は、いまこそ、これまでにもまして奮闘することがもとめられています。

 また、世界の平和的秩序を守るうえでも、重大な事態がおきています。アメリカは、NATOと日米軍事同盟を侵略的に強化し、他国への軍事干渉・介入に同盟国を総動員しています。国連無視・アメリカ主導のユーゴ空爆や日本での戦争法の成立はその端的なあらわれであり、核もちこみの危険をもたかめるものです。くわえて、日本政府は、憲法をふみにじり、アメリカの干渉戦争への日本参戦の道をひらき、「盗聴法」や「君が代・日の丸」の法制化をすすめようとしています。こうしたうごきのなかに戦争の足音を感じとった広範な人々は、一連の反憲法的な策動に反対する共同の輪をひろげ、大きく前進しています。

 いまこそ、世界の人々と連帯し、日本の好核政策、戦争政策への批判をひろげ、反核・平和の国民的な大運動をきずくときです。

 原水爆禁止一九九九年世界大会・国際会議の決議「広島宣言?核兵器のない二一世紀にむけて」は、二〇〇〇年末までの「核兵器のない二一世紀を?国際共同行動期間」のとりくみや、一九九九年と二〇〇〇年の国連総会を焦点とした国際共同行動をよびかけ、その前進のために、これまでの運動の枠をこえ、さまざまな団体・個人の間の対話・交流・共同を各国の草の根から促進することをよびかけています。

 諸国民の運動の前進こそ、核兵器廃絶と平和な二一世紀を実現する最大の力です。長崎の決意を全国にひろげ、草の根から行動をくりひろげましょう。

一、すべての核保有国が核兵器廃絶を誓約し、すべての政府が核兵器廃絶条約締結のための協議を開始することを、また、すべての国の政府がそのためにイニシャチブを発揮することを要求しましょう。

一、日本政府に核兵器廃絶のための明確な決断をもとめましょう。その一環として、一九九九年の第五四回国連総会で核兵器廃絶のための諸決議に賛成し、被爆国としての責任ある行動をとるようもとめる対政府署名運動にとりくむのをはじめ、さまざまな形態の行動で日本政府に迫る運動をすすめましょう。ことしの軍縮週間(一〇月二四日?三〇日)を「核兵器廃絶の国際共同行動の波」第一波の活動とし、「ヒロシマ・ナガサキからのアピール」署名ともむすび、全国の地域・職場・学園から全力でとりくみましよう。

一、未臨界核実験をふくむあらゆる核実験と核兵器の開発を中止させ、核兵器先制使用政策を放棄させましょう。

一、日米の「核密約」を廃棄させ、「非核三原則」の法制化をもとめましょう。地方自治体や港湾の非核化をもとめる運動を推進しましょう。

一、戦争法の具体化を監視・告発する運動を全国の草の根でまきおこすとともに、その発動を阻止し、有事立法の制定をやめさせましょう。憲法第九条に象徴される平和原則をまもる運動を大きく発展させましよう。

一、佐世保、沖縄をはじめ米軍基地の再編強化に反対し、基地を縮小・撤去させましょう。安保条約廃棄の世論を大きくひろげ、すべての軍事同盟の解消をもとめる運動をつよめましょう。

一、原爆被害および核兵器被害の実相を解明し、世界にひろめましょう。原爆展の開催、被爆者の証言活動、原爆遺跡の保存運動など、被爆の実相を広める運動を若い世代の参加を重視してつよめましよう。被爆者の遊説活動、原爆写真やビデオを世界に贈る活動を被爆者とともにすすめましょう。

一、原爆被爆者・核兵器被害者への援護・連帯をつよめ、国家補償の実現をせまりましょう。長崎原爆松谷訴訟の最高裁での勝利をかちとりましょう。

 長崎原爆訴訟の原告・松谷英子さんはうったえます。
 「みなさん。わたしのからだを見てください。
 原爆さえ無かったら、こんな苦しみを味わうことは無かったのです。
 そのことを国に認めさせてほしいのです。
 核兵器はなくさなければなりません。
 みなさん。わたしといっしょにたたかってください」

 この地を「地球最後の被爆地」に!

 一九九九年八月九日
  原水爆禁止一九九九年世界大会・長崎
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原水爆禁止一九九八年世界大会・広島

                  広 島 か ら の よ び か け

 あの日から五三年目の夏がおとずれ、今年もまた、かえらぬ人の名をしるした灯籠が流れていきます。声もなく数知れない命が流された水面を−。
 私たちは、今日「広島原爆の日」を新たな決意でむかえています。広島の体験は、核兵器の存在を認めるなら人類に未来はないことを警告しています。核兵器をふりかざして対抗することは絶滅への道にほかならないことを、自国の安全保障を理由に核兵器にしがみつくことが大きな誤りであることを−。
 いまインドとパキスタンの核実験によって、新たな核軍備競争と核戦争の危機がつくりだされ、しかもその根源には、特定の国に核兵器保有を認めた核兵器独占体制があることがいっそう浮きぼりになっています。すみやかな核兵器廃絶以外に、人類のとるべき道はありません。
 あれから半世紀あまりのたたかいの歴史は、核兵器をふりかざす者がどんなに横暴であろうと、世界中の人びとの世論によって、核兵器使用を抑えうることをしめしています。自らの体験を世界中のどこにもくりかえさせないために、さまざまな障害をのりこえて語りつづける被爆者の姿は、人びとに感動と勇気をあたえてきました。「人類と核兵器は共存できない」−苦悩の底から立ちあがった広島のさけびは、いま世界に大きくひろがり、その発展によって核兵器のない世界をきずくことができると、私たちに確信させます。

 原水爆禁止一九九八年世界大会は、私たちが新しい世紀にむかって前進する方向と展望をあきらかにしました。この世界大会で、インドとパキスタンの代表が手をたずさえ、被爆者と連帯して核兵器の廃絶をめざす共同声明を発表し、私たちに大きな感動をあたえました。世界大会国際会議は、現在の世界情勢を的確に分析し、核兵器廃絶という人類史的な課題をすみやかに達成するために、「核兵器のない二一世紀を−国際共同行動」を提起しました。私たちは、この提起にこたえ、今年の「国連軍縮週間」をステップに、広範な人びとが参加する壮大な共同行動を展開するよう心からよびかけます。

−「核兵器のない二一世紀」を実現するためには、核兵器固執勢力とりわけ最大の障害となっているアメリカの核抑止政策をあらためさせなければなりません。また、核兵器の保有や使用さえ憲法に違反しないという、日本政府の被爆国にあるまじき態度を変えさせなければなりません。

・核不拡散条約による核兵器独占体制をゆるさず、核保有国をはじめ、すべての政府が期限をきって核兵器廃絶条 約締結のための協議を開始するよう要求しましょう。
・すべての核実験・核兵器開発を中止させ、核兵器の不使用を誓約させましょう。
・非核自治体宣言運動をつよめ、核兵器廃絶条約の締結をもとめる自治体決議をひろげましょう。
・「ヒロシマ・ナガサキからのアピール」署名をはじめ、八月六日・九日の国際共同行動、核保有国の新聞への 意見広告など、多彩な行動を全国の草の根から展開しましょう。

−核兵器使用も辞さないアメリカの軍事行動に日本を直接動員する体制づくりである「新ガイドライン」とその立法化を阻止しなければなりません。

・「新ガイドライン」とその立法化の危険性をひろく知らせ、これらに反対する運動を大きく発展させましょう。
・港湾・空港の軍事利用に反対し、「非核神戸方式」を全国にひろげましょう。「核密約」を廃棄させ、非核三 原則の法制化を実現しましょう。
・「核も基地もない沖縄」をもとめる沖縄県民のたたかいと連帯しましょう。日米軍事同盟を解消させましょう。

−広島・長崎の被爆の実相、世界各地での核実験被害の実態を全世界の人びとに知らせることは、核兵器廃絶の運動にとって欠くことのできない課題です。

・広島・長崎の被爆の実相を内外に知らせ、原爆展の開催、被爆者の証言活動をひろげましょう。原爆写真・ビ デオなどを世界に贈る運動にとりくみましょう。原爆遺跡の保存運動をすすめましょう。
・長崎原爆松谷訴訟の最高裁での勝利をかちとりましょう。高齢化し、不安な生活を強いられている被爆者への 援護・連帯活動をつよめ、被爆者への国家補償を実現しましょう。
・核実験・核兵器開発の被害者との連帯を深め、その実態をさらに調査・解明し、被害者への補償をもとめる運 動を発展させましょう。

 核兵器廃絶は、いまを生きるすべての人びとが負うべき緊急の課題です。新しい世紀への希望を胸に、ともに前進しましょう!

    一九九八年八月六日
                                                               原水爆禁止一九九八年世界大会・広島
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原水爆禁止1998年世界大会へのパキスタン・インド代表の声明
広島・長崎

 私たち、パキスタン、インドの代表は、広島、長崎へのアメリカの原爆投下による被害者のみなさんに敬意をはらうとともに、世界からの核兵器廃絶をめざし、被爆者との連帯を表明したいと思います。

 核兵器の使用と使用威嚇が、世界のいかなる地においても二度とくり返されることがないことを、切に願うものです。この深い憂慮の念をもって、私たちはそれぞれ自国政府にこの地域の緊張を和らげ、すべての未解決の紛争問題を対話で解決することを要求します。また、私たちは、自国政府に国民レベルの対話を進めようとする努力を全面的に支持するよう求めます。それは、二カ国間のよりよい理解と協力にむけて重要な信頼醸成の一歩となるでしょう。

 私たちはさらに、わが国の乏しい財源が軍事支出に使われてしまうのではなく、飢えや劣悪な健康状態、文盲、基本的なインフラの欠如など、わが国が直面している重大な問題を根絶するために使われることを要求します。

 私たちは、核兵器廃絶と、両国をはじめ核能力をもつすべての国による大量破壊兵器開発のためのこれ以上の実験の禁止を要求します。両国政府が、世界の差別的核体制をなくし、地球的規模の核軍縮にむけて行動を起こすことを要求します。実際に、パキスタン、インド両国政府は、核兵器廃絶のための国際会議を開催するために、共に、イニシアティブを発揮することができます。

 私たちは、憂慮する国民として、自国政府に圧力をかけるだけでなく、これらの目標を達成するために世界の世論を動員する方向に、私たちの努力をむけようと思います。

ノーモア・ヒロシマ!ノーモア・ナガサキ!ノーモア・ヒバクシャ!

ノーモア・ポカラン!ノーモア・チャガイ!
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原水爆禁止一九九八年世界大会長崎大会決議

      長崎から「核兵器のない二一世紀を−国際共同行動期間」のとりくみの飛躍的発展を呼びかける

 
 全身黒こげになり、わずかに皮膚が残った手のひらを差し出して、この世で一番おいしいものをのむように、 ぬれた泥んこのタオルをしゃぶりながら娘は死んでいきました−   (日本被団協編『あの日・・・』より)

 五三年前の今日、ここ長崎の人びとをめがけてアメリカが投下した原子爆弾は、数千度の熱線、鉄骨もなぎ倒す爆風、生きるものを骨の髄まで破壊する放射線で、人も街も自然も奪いつくしました。鎖国の時代に、ただ一つ海外に門戸を開いていた歴史の町・長崎、人びとが石畳の坂道に軒をつらねて生きてきた町・長崎は、その瞬間、地獄に変わりました。長崎の悲劇は、核兵器と人間が共存できないことをおしえています。生き残った被爆者たちは、核兵器廃絶をもとめる人びととともに、「長崎を最後の被爆地に」と叫びつづけています。

 今年の五月、インドとパキスタンで強行された核実験は、私たちに強い怒りと、新たな核戦争の恐怖を呼びさまし、核兵器廃絶以外に解決の道はないことを実感させました。いま、その決意は急速に世界中にひろがっています。八月六日のカルカッタ(インド)の三〇万人デモ行進やカラチ(パキスタン)のデモ行進と署名行動をはじめ、世界各地でとりくまれたヒロシマ・デーの諸行動でも、広範な人びとが核兵器廃絶の声をあげています。
 広島・長崎両市の平和宣言も核抑止論に同調してきた日本政府を批判し、核兵器廃絶にむけて責任ある行動をとることをもとめています。しかし小渕首相は、広島でも長崎でも、破綻した核不拡散体制の堅持・強化という主張をくりかえし、核兵器廃絶へ足を踏み出そうとはしません。この背景には、日米軍事同盟のもとでアメリカの核戦略にくみこまれている日本の現実があります。日本政府の核政策を転換させ、世界の非核化にむけて被爆国にふさわしい役割を果たさせることは、私たちの大きな責務です。

 核保有五カ国の特権を認める核不拡散条約体制の矛盾と破綻が明らかとなり、あらたな核軍備競争と核戦争の危険に直面しているいま、世界はただちに核兵器廃絶をこそ選択すべきときです。とりわけ、新たな核兵器開発をすすめ、核脅迫政策をつよめるアメリカは最大の障害となっており、その責任は重大です。思想・信条をこえた幅ひろい共同で核兵器に固執する勢力を包囲していかなければなりません。
  私たちは、今日、ここ長崎の地で、原水爆禁止一九九八年世界大会・国際会議が提唱した二〇〇〇年末日までの「核兵器のない二一世紀を−国際共同行動期間」のとりくみを飛躍的に発展させることをかたく決意しました。私たちは、今年の「国連軍縮週間」のとりくみをステップに、世界各国の活動を交流し、相互の連帯をつよめながら、つぎのような行動を草の根から展開するよう心からよびかけます。

 ○ 核保有国政府がすみやかに核兵器廃絶を決断し、期限をきって核兵器をなくすための国際協議をただちに開 始するよう強く要求しましょう。いっさいの核実験と核兵器開発計画を中止し、先制核不使用、非核保有国へ の核兵器不使用を宣言するようもとめましょう。
 ○ すべての非核保有国政府が自ら核兵器を保有したり、他国の核政策に協力することなく、核兵器廃絶のため のイニシャチブを発揮するようもとめましょう。
 ○ すべての地方自治体での非核宣言の実現、核兵器廃絶条約締結を要求する決議の採択をもとめましょう。国 民過半数めざしてとりくまれている「ヒロシマ・ナガサキからのアピール」署名をさらに大きくひろげましょう。
 ○ 広島・長崎の被爆の実相を知らせる原爆展、被爆者の証言活動、原爆遺跡の保存運動などにとりくみましょ  う。原爆写真やビデオを世界各国に贈り、原爆展や核実験被害展の開催をよびかけましょう。
 ○ 核実験・核開発の被害者との連帯をつよめ、その実態をさらに調査・解明してひろく知らせるとともに、被  害者への補償をもとめる運動を発展させましょう。
 ○ 正念場をむかえている長崎原爆松谷訴訟の最高裁での勝利をかちとりましょう。被爆者への国家補償を要求 し、被爆者援護・連帯の活動をつよめましょう。
 ○ 核兵器の使用も辞さないアメリカの戦争に日本を動員する「新ガイドライン」とその立法化の危険性をひろ く知らせ、反対運動をすすめましょう。
 ○ 港湾・空港の軍事利用に反対し、「非核神戸方式」を全国にひろげましょう。「核密約」を破棄させ、非核 三原則を法制化させましょう。米軍の演習、基地増強に反対し、米軍基地の縮小・撤去を要求しましょう。
 
 世界を変え、核兵器廃絶を実現する力は、世界諸国民の共同のなかでこそ発展します。半世紀にわたって核兵器使用の手をしばってきた運動の力を確信し、新しい世紀にむけて共同の力をさらに大きくひろげましょう。

 ノーモア・ナガサキ!  ノーモア・ヒロシマ!  ノーモア・ヒバクシャ!

  一九九八年八月九日
     原水爆禁止一九九八年世界大会長崎大会



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