【反核平和運動・原水協の声明と決議】
談話
福島第一原発事故のこれ以上の悪化を防ぎ、
地震、津波、原発事故の被災者、避難者の救援に全力を
原水爆禁止日本協議会事務局長
安井正和
3月11日の東日本大地震と津波の被害に続き、福島第一原発の事故が重大な事態を迎えている。6つの原子炉のうち1号炉、2号炉、3号炉で核燃料の一部が炉心溶融に至り、あるいは至っている可能性が高く、3号炉、4号炉では使用済み燃料貯蔵プールの水温が上昇・蒸発し、燃料棒が露出するなど、予断を許さない事態が続いている。5号炉、6号炉でも使用済み燃料プールの温度上昇が伝えられている。
広島、長崎、世界各地の核実験被害とも共通する、現在の放射線被ばくの危機に、日本原水協にも内外から被災地のみなさんへのお見舞いとともに、被害の現状への懸念と不安とが寄せられている。
日本原水協は、広島・長崎の被爆を原点に、核の惨禍を防ぎ、核兵器全面禁止を求めてきた団体として現在の事態を深く憂慮しており、日本政府に対して、日本国民を放射能の惨禍にさらす現在の危機を回避するために全力を尽くすこと、あわせて地震、津波、原発被害の被災者の救援に、国民的な英知と力を結集することを強く求めるものである。
1、いま、何よりも緊急に求められていることは、福島第一原発のすべての原子炉で炉心溶融を防ぎ、燃料棒の冷却を確かなものとし、放射能の飛散を食い止めるために全力を尽くすことである。もし現在の事態がさらに進み、燃料棒からウランやプルトニウムが溶け出すようなことになれば、放射性物質の大量放出という最悪の事態になりかねない。政府が、現在の危機の対応に、原発推進を目的に設けた経済産業省の原子力安全・保安院をあてていることが事態を悪化させていることが強く指摘されている。政府は、事故を起こしている原子炉の温存など、電力業界や財界の打算に流されるのでなく、国民の安全を最優先して事態に当たるべきであり、原子力安全行政の「要」として設けている原子力安全委員会を対応の中心にすえるべきである。
2、同時に、地震、津波、そして現在の原発事故による被災者を救援することは、もうひとつの急務である。死者数が5千数百人、安否不明者が1万7千人、避難者が40数万人にのぼり、病院からの緊急避難者が相次いで死亡するという悲惨な事態も起こっている。現在の大規模な惨事に立ち向かうためには、政府などの公的機関とともに国民的な支援が不可欠である。我々は、政府が国民に事実を早く、正しく伝えるとともに、国民の支援が被災者に届くよう、通信、交通、輸送手段の確保、被災自治体への援助など、道を開くことを強く求める。
3、福島原発で起こっている惨事は、とりわけ日本のような世界有数の地震国で原子力依存政策を取り続けることの危険性をあらためて浮き彫りにしている。日本原水協はこれまでも、原発へのプルトニウム燃料使用、高速増殖炉の運転再開、六ヶ所村の再処理施設の運転など、世界でも類のない危険な政策を注視することとともに、新たな原発建設を中止し、全国の原発の総点検をただちにおこなうよう強く主張してきた。いま、大規模な余震も懸念される中で、我々は、あらためてすべての原発の点検にただちに着手するよう強く要求する。また、代替エネルギーの開発と促進を強く求めるものである。
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