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被爆60年−核兵器廃絶・国際フォーラム

ミゲル・ルイス=カバーニャス・イスキエルド
駐日メキシコ大使


みなさん、
核兵器廃絶を目指す日本のたたかいのトレードマークとなった日本原水協集会の国際フォーラムに参加でき、光栄に思います。
 この集会は、日本全国の核兵器反対運動に重要な契機となった1954年3月1日のビキニ環礁水爆実験被災から51周年を記念するものであるとうかがいました。
 
数十年にわたり核兵器の開発と拡散に対し明確に反対の立場を貫いてきた国の代表として、私は日本原水協に対し、この行事で意見を述べるようご招待をいただいたことに感謝を申し上げます。

メキシコ政府が歴史的・伝統的に核軍縮を目指す立場をとってきたことは広く、よく知られています。いわゆる「核の時代」が始まったその当初から、メキシコは一国として、また集団的にも、倫理的、人道的、そして国際・国内の法的諸原則にもとづいて、核兵器のない世界を実現するための諸努力を促進してきました。

メキシコは1998年以来、新アジェンダ連合を結成した国々とともに、核軍縮についての透明性と検証、不可逆性の原則にもとづいて、幅広い核軍縮の諸措置を促進してきました。

メキシコは常に、核兵器のない世界が絶対に必要であると確信します。それゆえ、近代的安全保障戦略の一貫として核兵器が使用される可能性や結末を仮定するような新しいあるいは修正的なアプローチの出現は、憂慮すべき結果をまねく傾向だと考えています。無差別で破壊的なこの兵器の恐ろしい性質と影響は、広島と長崎で証明されました。核兵器はただ存在するだけで人類への脅威となり、それゆえ、完全に廃絶されねばなりません。

メキシコは核不拡散条約(NPT)を地球規模の核不拡散体制のかなめであり、核軍縮の追求にとって最も重要な法的基盤であると考えています。この条約の権威と完全性を維持することは決定的に重要です。メキシコはNPTの維持と強化のためにあらゆる努力がなされるべきであるという見解に同意し、2005年5月にニューヨークで開催される次回再検討会議の結論が、その努力に向けて重要な貢献となることを望んでいます。

NPTの条項が効果的で効率的にだけでなく、公平に実施されているという信頼を締約国間に築くために、検証とNPTの順守が今ほど重要な時期はありません。これは、条約の信頼性を高めるという問題だけではなく、より一般的に言えば締約国間に政治的信頼を高めるという問題なのです。今日私はメキシコを代表して国の大小や核兵器保有国か非保有国かを問わずすべての国に対し、改めて、NPTに調印し、批准し、順守するようよびかけます。とりわけ、この重要な条約の全条項を完全に順守するようよびかけます。

メキシコは、NPT義務の順守とは、メニューから好きなものを選んで行えばいいというような問題ではない、と主張してきました。同条約のすべての義務の順守と不拡散、核軍縮は死活的に重要です。NPTの各条項は締約国をいついかなる場合も法的に拘束するものであり、全締約国は、この条約のもとでの全ての義務を厳密に順守することにつき完全に責任を負うことが絶対に必要なのです。NPT第6条においてなされた核軍縮の約束は厳然として存在し、その実施もまた不可欠です。

国際社会のメンバーのほとんどが、「核不拡散と核軍縮はどちらも等しく重要であり、相互に強化しあうプロセスであって、その両方の前線において継続的で不可逆的な前進が必要である」という確信を表明してきました。第6条のもと、NPTの各締約国が「核軍備競争の早期の停止および核軍備の縮小に関する効果的な措置につき…誠実に交渉を行うことを約束する」と誓約したのはその確信の明確なあかしであり、これを国際社会自身が、特に全核保有国が適切に考慮すべきです。

私たちが直面している非常に深刻な問題は、重大な懸念を生んでいます。NPT第6条の核軍縮誓約の順守についてただちに何らかの前進が得られないとすると、非核保有諸国の中から、相互性あるいは「至高の利益」の考慮のもと、不拡散誓約の完全順守を確保するための自国義務の範囲を再検討し疑問視する国が増える危険があります。私たちは常に、NPTには本質的な約束が存在する、ということを忘れてはなりません。

それは、新たな核兵器保有国の出現は許されない、しかしそれと引き換えに、現在の核保有国は、自国の核兵器の廃絶をすすめねばならない、ということです。

ですから、ここで再度、核軍縮が緊急に必要だ、というメキシコと新アジェンダ連合諸国の歴史的な立場について述べます。もし核保有国が、核兵器は安全保障の向上に不可欠だとして自らの軍縮義務の順守を拒み続けるなら、他の国々も同じ事をすべきではないかと考え始めるという差し迫った危険があるのです。

現在、NPT義務の順守において相互性が欠けていることは明らかです。相互的順守についての考慮にもとづき、条約についての信頼の欠如がもたらす結果に懸念が高まっているのは、非常に憂慮すべきことです。

端的に言って、不拡散は死活的に重要です。しかし十分ではありません。核不拡散と核軍縮は、一つのコインの両面であって、両方とも精力的に追求せねばならないのです。さもなければまもなく、新型兵器開発や核使用の新しい理由付けを伴った新たな核軍拡競争に突入することになりかねません。現在の傾向が逆転されなければ、私たちはすぐに新たな核の危険に直面せねばならなくなるでしょう。はっきり言えば、核兵器の不拡散と新たな開発(を防ぐために)最も重要なメカニズムであるNPTが崩壊する危険が差し迫っているのです。
核兵器を廃絶するどころか、核兵器の近代化や新型兵器開発の計画を持っていたり、あるいは核兵器の新たな使い道や役割、使用の正当化を考え出そうとしている核保有国があることは、耳新しいことではありません。皮肉なことに、NPT義務の強化や順守の必要性を絶えず公言しているのも、その同じ国々なのです。

2005年NPT締約国再検討会議は、条約の全条項の順守を強めるための具体的な措置や勧告に合意する立場をとるべきです。さらにこの会議は、核軍縮促進と達成に向けた具体的措置に関して2000年NPT再検討会議が合意した13のステップを再確認せねばなりません。

メキシコは、国連軍縮委員会(CD)が、交渉を開始しようという政治的意志の欠如の結果、膠着状態が広がっていることを強く遺憾に思っています。メキシコは、すべての人々のためより安全な世界を達成するために、参加諸国は、自らに期待されていることをなすだけでなく、道徳的・政治的・法的にやらねばならないことをすべきである、というよびかけを繰り返すものです。

新アジェンダ連合諸国が強調しているように、未来は私たちの行動にかかっています。CDへのメキシコ政府代表団は、国際社会に対して行った誓約を断固として果たす意志があります。それは、戦争の惨禍、わけても核の危険から将来の世代を救うことです。政治的無気力により、私たちがなすべきことを行う現在の契機を逃してしまったら、彼らこそがこの核の危険から確実に悲惨な苦しみを受けることになるのです。

とりわけ私たちは、国連専門交渉機関が以下の措置をとることを提案します。
1. 緊急の課題として包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効を追求すること。
2. 核兵器の重要な構成要素の生産を禁止する、分裂性物質生産禁止条約(FMCT)に関する交渉を軍縮会議において直ちに開始すべきである。メキシコは、完全に効力を有するNPTとCTBTは、核兵器の完全廃絶に向け、不可欠な土台を構成するものであると考える。
3. 非核兵器地帯(NWFZ)創設条約締約国・調印国会議。2004年10月4日の国連第59回総会で決議されたように、あと数週間ののち、メキシコは非核兵器地帯(NWFZ)創設条約締約国・調印国会議を4月26日〜28日、メキシコシティにおいて主催する。
非核兵器地帯創設の概念は、核保有国の出現を防止することを目指して考え出されたものです。世界の人口密集地域に核兵器を置かせないようにする努力はもっと成功してきました。現在のところ、人口の多い地域に4つの非核兵器地帯があります。ラテンアメリカとカリブ海地域を対象とした1967年のトラテロルコ条約、1985年にできた南太平洋のラロトンガ条約、東南アジアを覆う1995年のバンコク条約、そして1996年のペリンダバ条約は未だ発効していませんが、アフリカ地域をカバーするものです。中央アジアの非核化が進行中であり、中東と南アジアを核兵器だけでなく大量破壊兵器のない地帯にしようとする素晴らしいイニシアチブも検討されているところです。

さらに、1992年のモンゴルの非核国家宣言イニシアチブは、2000年の国連総会で採択され、国際的に認められています。

非核兵器地帯を設立する条約により地球の南半球がほぼ完全に非核化されたことからして、メキシコは、これら地域内の参加諸国間の協力と協調を強化すべき時が来たと考えます。したがってこの会議の目的は、世界的な核不拡散体制をあまねく適用し拡大することをめざして、まさにこれら非核兵器地帯条約諸国間の協力と協調を促進することです。

メキシコは、非核地帯の強化と普遍化は核軍縮の促進と真の核不拡散体制を達成するための効果的な措置であると考えています。さらに、2005年核不拡散条約(NPT)締約国会議に貢献し政治的な意味を反映させるために、この会議が、非核兵器地帯設立条約の全面的適用を促進し、核不拡散条約を強化し、既存および将来の非核兵器地帯間の政治的協調を強化する方法を促進する内容の宣言を採択することが期待されます。

みなさん、
わが国はより安全な世界に向けた集団的安全保障体制の再定義に積極的なインパクトを与えるための努力を続けます。国際社会には優先課題があります。いかなる形態の核拡散をも防止し、世界的核軍縮を達成することです。同時に、私たちは、原子力エネルギーの平和的利用の保証と、核兵器廃絶を促進するメカニズムがなければならないと考えます。メキシコは、不拡散条約がこれ以上の(核兵器)生産を避け、諸国に軍縮を義務付けるかなめ石だと信じています。この理由から、メキシコはNPTの普遍化と完全な順守を促進するものです。

 

 

 

 

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