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被爆60年—核兵器廃絶・国際フォーラム

ソフィー・レフィーズ
フランソワ・ガニエール
フランス平和運動全国委員会青年担当


はじめに、ここ静岡で開催されるビキニデーに私たちを招待してくださった日本の友人のみなさんに厚く感謝します。ビキニデーの歴史を考えると、私たちはこの行事の重要性と広がりが良く理解できます。私たちはこれに参加することを光栄に思います。日仏の平和運動は、これまで長い間、一緒に活動してきました。私たちが同じことを考えているだけに、この共同は私たちを励まし、将来の希望を与えてくれます。一緒に非核の世界を築こうとしている私たちにとって、これは大切なことです。

2005年11月にフランス平和運動は全国大会を開催します。2001年から2010年までの10年のちょうど半ばにあたる今年、世界の子供たちのために平和の文化と非暴力をテーマに開催されるこの大会で、私たちは真の文化革命を引き起こし、社会と未来の世界の基本的な問題を集団で解決したいと考えています。真の平和の文化とは、そのようにして実現すると私たちは考えるからです。この平和の文化実現のための一歩は核兵器を廃絶することです。そのために私たちは、市民としてこれにかかわり、国境を越えた連帯を示さなければなりません。

私たちはNPTの現状を心配しています。
国連事務総長の諮問会議である「脅威、チャレンジ、変化にかんするパネル」はその報告で(2004年12月初旬)、次のように述べています。
「既存の約束が十分に守られていないこと、約束をのがれるための核不拡散条約からの離脱や離脱の脅し、変化する国際安全保障環境、技術の普及などによって今、核不拡散は危機にある。核不拡散体制の侵食はいったんこえたら後戻りできない不可逆点に近づきつつあり、そこを超えてしまうと、拡散が滝となって降りかかってくる」。

このような警告を受けて、いくつかの疑問が生じてきます。
NPTは破棄すべきか?改定すべきか?代わりに新しい核軍縮条約をつくるべきか?

NPTは成立34年にして最悪の危機に直面しています。ひとつには、核保有国による垂直拡散(核兵器の近代化)が続いていること、および水平拡散(新たな国が核兵器を手に入れる)による信頼性の危機があります。

この危機の主たる責任がアメリカにあることは明白です。しかし他の正式な核保有国であるフランス、イギリス、中国、ロシアも共犯です。なぜなら、彼らはNPT条約を単なる拡散阻止のための条約と考え、自分たちの責任すなわち核軍縮を実行するのを忘れているからです。

私たちは忘れてはなりません、独立系のアナリストであるレベッカ・ジョンソンが指摘したように、NPT条約には加盟国に核不拡散を実行させ条約にもとづく責任を果すよう迫ることができないこと、そして条約に違反したり、これを無視した場合の効果的な対抗措置がないことを。
このような枠組みの中では、私たちNGOとしては何ができるでしょうか?

I. 平和の文化のための私たちの行動
5月に迫ったNPT再検討会議についての議論の核心に入る前に、私たちの組織の最近の行動のいくつかを簡単に紹介したいと思います。まず、世界女性行進です。

I.1. 世界女性行進
来る3月8日は国際婦人デーです。この日にフランスのマルセイユ市で世界女性行進が行われます。過去数年間、私たちは女性の権利のための行動を強化していますが、フランス平和運動がこの行進の組織に関わっているのもその傾向の表れです。

I.2. イスラエル—パレスチナ紛争
私たちはイスラエル—パレスチナ紛争などをはじめ地域紛争に憂慮しています。これら二つの民族はいずれも危険と大きな恐怖とともに暮しています。国際法の観点からも、1967年の国境内で、共通の首都をエルサレムとして両国を承認し、難民にたいして祖国に帰還する権利を認め、その権利の行使を両当事国の下した決定にしたがって交渉することによってはじめて和平が実現すると私たちは考えます。この枠組みのなかで、私たちは多くのNGOと共に、フランス国内の世論と政府にたいして、「併合の壁」の解体、占領地からの撤退、両民族の権利を尊重した新しい交渉を開始するためのキャンペーンをすすめています。
 先週、フランス平和運動はイスラエルとパレスチナに代表団を派遣し、両国の平和勢力と話し合い、私たちのすすめている行動や立場を説明しました。テレビのニュースでは、ヤセル・アラファト議長の死によって和平の新時代が始まったと言っていますが、最終的な和平合意の達成にはまだまだやるべきことが多く残っています。

I.3. イラク
 イラクについては、フランス平和運動は「イラク戦争ノー、正義、平和、民主主義の世界イエス」という全国アピール署名推進協議会のメンバーです。この協議会は2002年にイラク戦争阻止のためにつくられました。100以上の組織(各種団体、労働組合、政党など)によって構成されています。戦争は起こってしまいましたが、この戦争を終わらせるため協議会は共同行動を組織し続けています。
 3月19日にはベルギーのブリュッセルで、「福祉と平和のヨーロッパ」のためのヨーロッパ・レベルのデモがおこなわれます。この大規模なデモは、イラク戦争ノー、欧州軍事化計画ノーを訴える機会になるでしょう。


I.4. EU
 ところでみなさんの多くは、欧州憲法についての私たちの立場がどのようなものか聞きたいのではないでしょうか。
 私たちはこれについてメンバーの意見を聞き、組織内で議論しました。その結果、平和が脅かされるような憲法であれば、組織としてそれを批判することになりました。私たちの組織は防衛政策や欧州連合(EU)の軍事化を批判していますが、それはこれらが軍縮を求める国際世論に反しているだけでなく、核不拡散にも反しているからです。実際、欧州憲法は「兵器を次第に改良する」ことを求めているのです。
 また、私たちは自由主義ヨーロッパ、不平等の悪化、貧しい人々の切り捨てへと向かう全体的な方向性を認めることはできません。それは平和の文化の重視する社会的正義の考え方に逆行するからです。
 3月5日に、私たちはイギリスの核軍縮運動(CND)と共同して「平和をめざすヨーロッパ」会議を開催します。この会議では私たちがヨーロッパにどのような方向性を求めるのか、恐怖や軍備増強に依拠した安全保障か、それとも紛争の平和的解決を促進するヨーロッパかなどについて話し合われることになっています。

II. 特別の行動:核軍縮
しかし、私たちが今日、ここにいるのは、何よりもある特別の行動、核軍縮をめざす行動について話し合うためです。

II.1 国内キャンペーン
 昨年の9月、私たちは再び核軍縮全国キャンペーンを開始しました。今日では約50のNGOがこれに参加し、私たちの行動を支持しています。
 このキャンペーンはいくつかの要素からなっています。
 まず、私たちは数字や、NPT条約第6条、秋庭広島市長の手紙を掲載したキャンペーン解説リーフをつくりました。このリーフには大統領、国会議員、地方自治体の首長などにたいする要請ハガキが入っています。私たちが会った多くの国会議員はこのハガキを受取ったと言っていました。
 また、私たちは国会で軍事予算が採択される直前に、議員に直接、手紙を出し、採択に反対するように要請し、NPT第6条を引用して、軍事予算が著しいNPT条約違反であることを強調しました。
 私たちはさらに議員に面会を申し入れました。そしてフランス平和運動はこれまでで初めてすべての国会議員団と会談することができました。彼らは私たちの話を聞き、幾人かは軍事予算に反対すると約束してくれました。
 私たちはNPT再検討会議について再び面会を申し入れるつもりです。そしてフランスが国際的な約束を履行するために、彼らとしてどのような役割を果すつもりかを聞くつもりです。
 これと交互して私たちは世論を喚起し、5月にむけて強大な国民の支持をとりつけるための様々な取組みをおこなっています。
 昨年の10月には、核基地の前でデモをおこない、基地が国際法違反であることを告発するために警戒委員会を設置しました。その1カ月後にも同様の行動が別の基地でも行われ、また4月にも予定されています。4月10日にフランスでは3つ目の基地でデモが行われるのです。また私たちはベルギーのパートナーと共同で市民による核査察の準備を開始しました。5月までにフランスで第一回の査察を実現できればと考えています。
 もう1つ重要なのは2回目の基地前デモの際、基地の司令官である大佐と面会できたことです。これは歴史的な出来事でした。大佐は基地の「オープンハウス・デー」に、私たちを招待し基地を見学させてくれると言い、核兵器の貯蔵や取り扱いが原因で生じる可能性のある環境被害を監視する委員会に参加するように提案したのです。私たちがこの提案を受入れたのは言うまでもありません。
 キャンペーンのもう1つの柱は、NPT条約が何であるか、民需用の核と軍事用の核の関連性、核爆発の段階、健康への影響、核兵器をめぐる国際情勢などを解説したカラフルな絵の絵解きボードの展示です。
 さらに私たちはつい最近、機関紙の紙面刷新をおこない、平和問題にあまり馴染みがない人にも読みやすいものにしました。「新聞週間」、これは小学生に新聞などに親しんでもらう週間ですが、この取組みに参加した16,000校のうち6,000校以上が購読を申しこんでくれ、私たちは大いに励まされています。
 もう1つの手段は劇です。私たちの組織は2つの劇団と提携しました。一つはアフリカの子供の兵士についての劇を演じています。もう一つは第一次世界大戦をあつかった劇で、他人の死で利益を得ている人々を描いています。このように劇という媒体を使うことで、人々にメッセージを送り、情報を提供し、これまでとは違う人々にも訴えることができ、学校との関係ができ、共同も生まれています(舞台では1つのクラス全員が俳優たちと歌う)。

II.2.「平和都市市長」キャンペーン
 私たちの核軍縮キャンペーンでは、核軍備やNPTについての意識を高めるため市長にも手紙を送り、そのなかで核軍縮支持の立場を正式に表明し、平和都市市長のネットワークに参加するよう要請しています。

II.3. ニューヨークへの代表団派遣
 以上のような行動は全てニューヨークで開催されるNPT再検討会議へ向けた土台を準備するためのものです。私たちはニューヨークに大規模な代表団を送る予定です。昨年は各国代表団としては最大の約20人の代表団を送りました。今年もまた各国政府代表に会い、その責任を問いただし、約束を果たすように迫り、政治的な圧力をかけるつもりです。昨年は再検討準備会議へのフランス代表団の責任者と会って、カナダのように、正式な代表団に加えて欲しいと要請しました。フランスの核軍縮大使はノーとは言いませんでしたが、私たちはまだイエスという返事を待っているところです。
 私たちは、今度の再検討会議で「段階的軍備削減」戦略を提案するという考えを支持しています。私たちはこれまで数十年間にわたり核軍縮を要求し続けてきましたが、実現しませんでした。したがって、このような戦略がなければ私たちが成功するチャンスは少ないでしょう。
 1961年9月25日に発表されたケネディー計画を再び取上げてはどうでしょうか。この計画は1961年12月20日に国連総会で満場一致で承認されています。その第6条は、国際軍縮機構(IDO)の設置を定め、それによってNPT条約第6条の求めている「厳密で実効力のある国際管理」を達成することをめざしています。このIDO設立の会議を開催することもできるでしょう。

集団安全保障の新しいコンセプト
 もう一つの考慮すべき側面は、依然として緊張が続き、それが不安定化をもたらし、それが刺激となって核軍拡がおきていることです。例えば中東や朝鮮半島の緊張があります。
 各国は安全が保障されていれば、核軍備をめざすことはありません。エルバラダイ博士は2004年に次のように述べています(「NPT条約を守るために」モハメッド・エルバラダイ、軍縮フォーラム、UNIDIR 4, 2004)。
「われわれが集団的安全保障改革に専念するのが早ければ早いほど、われわれはNPT条約の強化についての合意と、検証され、後戻りのできない期限を限った核軍縮のための具体的な計画へと前進することができる。このような行動は現在のNPTの議定書の文脈においても達成することができる。このような新たな枠組み(具体的計画)はいったん発効すれば、国際法の'強制的な規範'と見なされるべきである。つまり、端的に言えば、この枠組みは不滅で恒常的であるべきである」。
 最近では、私たちはロンドンの欧州社会フォーラム(2004年10月)、ポルト・アレグレの世界社会フォーラム(2005年1月)に参加しました。軍事力ではなく人民の権利尊重と相互理解とにもとづく人間の国際安全保障というテーマが強化されつつあります。これはいいことですが十分ではありません。このテーマを各国政府代表のテーマにしていかなければなりません。

II.4. ジュネーブへの代表団派遣
ニューヨーク代表団の前に、私たちはジュネーブに代表団を送り、軍縮会議に参加する各国政府代表に要請行動をおこないます。
 私たちが会談を予定しているのは次のとおりです。
● NPT条約加盟の核保有国:私たちはこれらの国に、再検討会議で何をするつもりかを聞きます;なんらかの戦略があるのか?特別な提案をするのか?先進させるために具体的な行動をおこすのか?また私たちはNPT再検討会議と核保有国の果たすことができる役割についての私たちの要求を提出します。
● NPT条約に加盟していない核保有国:私たちはこれらの国に条約に調印し、条約を普遍化するように求めます。普遍性は国際法におけるNPT条約に巨大な重要性を与え、どのような国もこれに従わなければならなくなることから、核軍縮をかなり進めやすくすものです。
● 新アジェンダ連合や非同盟諸国などの核軍縮を推進する国:これらの国は私たちの味方で、私たちはどのように助け合えるかを話し合うつもりです。

II.5. 広島・長崎への代表団派遣
 最後に、私たちは広島・長崎への代表団派遣に大きな期待を抱いてきます。この計画は、私たち二つの組織の強力なパートナーシップによって実現しました。フランス平和運動の地方委員会は、今、懸命に初めて代表団に参加する会員、とくに若い会員を募集しています。今回の代表団派遣によって、これまで代表団に参加したことのない会員は、日本の爆心地を訪問し、被爆者の証言を聞き、被爆地では60年たった今も戦争は終わっていないこと、被爆者がいまだに原爆で亡くなっていることを知って、 核爆発の被害の恐ろしさを自分の目で確認することができます。
 皆さんに嬉しいお知らせがあります。フランスのテレビ局が私たちの代表団と被爆記念行事についてのドキュメンタリーを制作することになりました。このドキュメンタリーはフランスの全国放送局ばかりでなく、他の多くの局でも放送されるでしょう。

結論
市民としての私たちの義務は、政府代表に私たちが核エネルギーの軍事使用を心配していることを示し、彼らに自分たちの考えを伝えることです。核保有五カ国および正式には核保有国ではないが核を保有している他の3カ国のうちの二つは、民主国家を標榜しています。これらの国家は民主国家として、国民のニーズや要求を満たさなければなりません。そうでなければ代表制もなく、民主主義もありません。そしてこんにちの私たち国民のニーズとは軍備ではなく、医療、教育、社会福祉です。
 東南アジア諸国を襲った劇的な津波の後、フランス平和運動は世界の軍事費の1%をこの地球規模の悲劇の被害者に与えることを求めた声明を発表しました。医薬品や飲み水は基本的なニーズだからです。また私たちは、特にこのような状況では、戦争に使われるお金には全く正当化の理由がないと考えます。
 平和はたんに戦争がない状態ではなく、いかなる形のものであれ、戦争、暴力、強制を阻止し、拒否する価値観、行動、態度総てのうえに集団で築いていくもの、そしてその過程なのです。
 皆さん日本人は、憲法9条によって戦争が禁止されている国に住んでいます。2度も原爆を経験された皆さんは他の誰よりも原爆が何を意味するかご存知です。皆さんの経験と犠牲によって、皆さんは諸国人民の意識を高め、各国政府に非核化を求めるようにすることができます。
 皆さんは今危機にある憲法9条を守らなければなりません。皆さんが核のない世界をめざす私たちのたたかいを支持してくださっているように、私たちも皆さんの9条を守るたたかいを支持します。
 私たちが核兵器を廃絶し、その上で平和を築き促進するまで共通の努力が続けられるかはどうかは私たちNGO自身にかかっています。
 世論もまた政治組織、労働組合、各種団体などをつうじて、この社会全体にかかわる問題に取組まなければなりません。
高潔な国になるためには核兵器は必要ありません。日本にも世界にも核兵器は要りません。 

 

 

 

 

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