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2003年3・1ビキニデー日本原水協集会
基調報告
事務局長 たかくさき ひろし

二日間の討論、ご苦労様です。昨日の「ビキニデー集会」では、すばらしい「アピール」が出されました。まさにいま、一人ひとりの「一日一日の行動が歴史を動か」しています。2月15日を中心とした一千万を越える世界の人々の行動、圧倒的多数の政府が平和的解決を主張した安保理事会公開審議、平和解決の要求が8割にのぼる世界各国の世論調査、そしてトルコ国会がNATO軍の配備を否決したとの今朝のニュース。まさに、世界は変えることができることを実感させるものです。

しかしブッシュ政権はたじろぎながらも、武力攻撃の態度を崩しておらず、数日前日は、北朝鮮の核開発をめぐっても、ケリー国務次官補が、核兵器の使用も意味する「あらゆるオプションを排除していない」との発言をおこないました。

私は、こうしたなかで日本、アメリカ、韓国の平和運動が連帯を強める意義を強調し、多忙ななかを原水協集会にご出席いただいているジョゼフ・ガーソンさん、イ・フランシスさん、パク・チョンウンさんに心から感謝したいと思います。また、この集会のためにわざわざ長崎からおいでいただいた山口仙二さんと全国の被爆者のみなさんに連帯のあいさつをおくるものです。

国連憲章と世界の平和に挑戦するブッシュ政権

 さて、ブッシュ政権はいまも、必死になってイラク攻撃に道を開こうとしています。しかし、その戦争一本槍の態度が加速度的にブッシュ政権を世界から孤立させているのもまた冷厳な事実です。先日、カナダでおこなわれた世論調査でも、誰が平和の脅威かとの質問では、ブッシュ政権が北朝鮮やイラクをダブルスコアで抑え、オサマ・ビン・ラディンのアルカイダをはるかにしのいでダントツのトップであったとのことです。なぜでしょう?

その第一は、ブッシュ政権が追求する先制攻撃戦略の理不尽さです。そもそもイラクにたいしてであれ、他のどの国であれ、相手の側から侵略も差し迫った攻撃の危険もないのに、先に武力攻撃を加えることはそれ自体、侵略を禁じた国連憲章にたいする最悪のじゅうりん行為です。また、たとえ「脅威」があったとしても、その判断をくだし必要な措置をとるのは国連安保理事会の権限です。もし、軍事的に大きな力を持つ国が、それを勝手に判断し、武力攻撃を加えることが許されるなら、それこそ国連憲章に定められた平和のルールを根底からくつがえされ、世界は無法と恐怖におおいつくされるでしょう。

 さらに、重大なことは、ブッシュ政権が核兵器の使用についてもくりかえし、「あらゆる選択肢を排除しない」と明言していることです。ここで想起すべきことは、核兵器と通常兵器の境界を取り除き、核兵器を使える兵器にすることは、ブッシュ政権の当初からの目標であったことです。このこともまた、法外なことであり、「核兵器の完全廃絶」を誓った2000年5月、核不拡散条約再検討会議での約束も、1995年にアメリカ政府も含めて安保理事会が決議した、非核保有国に核兵器を使わないとの決議もじゅうりんするものです。

 イラクの大量殺りく兵器について言えば、イラクには生物化学兵器を開発し、使用した過去と、クウェートを侵略しそれによって生じた湾岸戦争の結果、国連安保理事会の諸決議を受け入れた経過があります。それに照らしても、無条件に査察に協力すべきことは当然です。同時に、その査察の結果、国連の査察官自身、90%から95%の大量破壊兵器が破壊されたと証言し、国際原子力機関の事務局長が、「もはやイラクの協力がなくても検証はできる」と報告し、国連査察チームの責任者も「イラクの協力はこれまでより積極的」として、査察継続を求めているとき、米英のみが勝手に武力攻撃を強行することは、明らかに不当です。

 ここで、北朝鮮の核開発についても簡潔に触れておきたいと思います。私たちは、被爆国の運動として、どの国によるものであれ、新たな核兵器の開発・保有には絶対に反対です。それはひとつの国の核開発が、別の国の核開発の引き金となり、世界を絶滅の縁に立たせた核軍拡競争の歴史そのものが証明しています。まして世界の圧倒的多数の国が核兵器のない世界を実現するための合意と現実的な努力をおこなっているとき、北朝鮮も当然、核問題を外交の手ごまにするような危険な態度をやめ、核兵器廃絶に努力すべきです。私たちは、全当事国政府に対して問題の理性的平和的解決のために最大限の努力をおこなうよう、強く要求したいと思います。

同時に、核不拡散を防ぐ、唯一の確実な保証は、世界の核兵器の大半を占めるアメリカを含め、核保有国が核兵器全面禁止条約の実現に踏み切ることです。他の国の核兵器は「脅威」だが、自分の国の核兵器は「安全の保障」だとする自分勝手で粗雑なこの議論こそ、核兵器拡散の推進力となっていることを直視すべきです。 このことを強く指摘し、全世界の世論の力で核兵器廃絶の実行を強く迫ろうではありませんか。

日本の恥、対米追随を憲法に優先する小泉政権

 さて、こうして世界中が米英による武力攻撃の独走を止めさせようとしているとき、本当に恥ずかしい態度を取っているのが日本の小泉政権です。この間の国連安保理事会の公開審議でも、米英がまだ決議案そのものも出していないのに、いちはやく支持を表明して見せたのは、63カ国の発言のなかで日本とオーストラリアだけでした。

 小泉首相は、こうした対米追随の理由として、ことあるごとに「日米同盟と国際協調とを両立させること」が日本の国益だ、と言います。日本政府は、核兵器廃絶の問題をめぐっても、これまで「日米同盟が大事だから」というまったく同じ理由で、アメリカの核持ち込みを「密約」まで結んで容認し、核兵器廃絶の国連の決議にはことごとく棄権し、アメリカの核兵器先制使用の政策まで「抑止の一部」だからと、これを認める態度をとってきました。また同じ与党の公明党冬柴幹事長は盛り上がる世界の平和運動を「利敵行為」と非難し、追及されると「アメリカのベーカー大使に言われたことをくりかえしただけ」と居直りました。

 日本国会で決めた「非核三原則」よりアメリカの核戦略を優先する、世界の平和を律する国連憲章より「日米同盟」を優先する、80%に昇る日本の平和解決の世論よりもブッシュ大統領の顔色のほうを大事にする、こうした態度が憲法9条をもつ日本国民の代表と呼びがたいことは明白です。イラク問題をめぐってもすでに人気がた落ちの小泉内閣でありますが、世界平和に対する日本の運動の国際的な責務として、日本の政治を非核と平和の方向に転換するために全力をあげようではありませんか

世界に連帯し、反核平和の願いを汲み尽くした行動を

最後に、私たちの行動の問題です。いま、私たちの前には、戦争の危険とともに、新たな希望と展望が開かれています。ブッシュ大統領が戦争をごり押しすればするほど、平和解決を求める世論が高まりまっています。たとえば先日の朝日新聞の調査では、イラクへの軍事行動反対が78%、国連決議がなくとも軍事行動を支持すべきとする小泉さんと同じ考えの人が14%、小泉政権について内閣のよいところとして「首相の政治姿勢」と答えたのが18%、「とくにない」と答えたのが45%でありました。また、別の調査では、「反戦デモに参加したい」と答えた回答者の7%、これは日本平和委員会の磯部君の計算によれば840万人になるそうです。こうした国民の願いを汲み尽くす行動をただちに開始しましょう。

 その第一は、全世界のたたかいと連帯し、それぞれの地域でさまざまな人々と共同し、また、草の根から独自の創意的なイニシアチブを発揮して、「イラク戦争反対、平和を守れ」のたたかいを、さらに大きくひろげることです。そして、そのなかで誰でも、どこでも、いつでもやれる行動として、ストップ戦争、核使用許すな、廃絶せよ!の署名を、全国のすべての市区町村にひろめることです。

 また、そのなかで海外代表のみなさんも強調したように、日本政府に対して憲法を守れ、戦争協力を止めよの要求を、署名、宣伝、自治体決議、ファックスやメールなど可能なすべての形態で全国から突きつけようではありませんか。

 いま、ブッシュ政権が安保理事会を舞台に戦争を急いでいるとき、まさに一日一日の時間が貴重です。日本原水協は、ビキニデー集会後、最初の6・9行動となる3月6日、日本政府に対する要求行動をおこないます。これにあわせ、全国すべての都道府県と主要都市で「核使用許すな・廃絶を」署名を軸とした創意的な宣伝、署名行動を呼びかけたいと思います。また、それにつづく3月8日国際婦人デーの世界的共同行動、3月15日の国際行動など、激動の情勢を見据えて、大きな平和の波を広げましょう。

 第二に、緊迫した情勢のなかで、核兵器の使用を許さず、廃絶を求めつづける被爆者の核兵器廃絶の願いとたたかいがいよいよ光彩を放っています。原爆症認定の集団申請・訴訟に立ち上がった被爆者をその地域から支援する草の根のネットワークを全国でひろげましょう。また1年後にせまったビキニ被災50年にむけて、被害の実相の究明と被害者への支援、7月には着工を迎えるマーシャル・ロンゲラップ平和ミュージアムの建設の運動をみんなの力で成功させましょう。

 昨日と今日の二日間、私たちは核兵器も戦争もない世界のために、豊かな討論と交流をおこないました。そこで学んだすべてを行動に変え、これらの活動の成果を、北は北海道から南は沖縄まで全国の市区町村を網羅する原水爆禁止国民平和大行進、そして原水爆禁止2003年世界大会の成功へと大きく結び付けようではありませんか。    /end

 

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