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国連ミレニアム・フォーラム(2000年5月)
ミレニアム・フォーラム宣言と行動課題

開会総会の発言
コフィ・アナン国連事務総長
マイブリット・テオリーン(国際平和ビューロー)
マーティン・コー(第三世界ネットワーク)


国連ミレニアム・フォーラム

(2000年5月22日〜26日、ニューヨーク)

最終宣言

われわれ諸国民のミレニアム・フォーラム宣言と行動課題:21世紀に向けた国連の強化



A. 社会発展と債務帳消しを含む貧困の根絶
B. 平和、安全保障、軍縮
C. グローバル化の挑戦に直面して:公平、正義、多様性
D. 人権
E.持続可能な開発と環境
F. 国連および国際機関の強化と民主化

 私たち100カ国以上の1,000を超える非政府組織(NGO)と市民社会組織の代表1,350名は、1990年代に市民社会の会議と国連のさまざまな世界会議で着手された共通の展望と活動を発展させ、誓約を実行することの緊急性に政府の注目を向けさせ、グローバル化を、人民による、人民のためのものにつくりなおすことにより、私たち集団の行動力に道を開くため、2000年5月22日から26日、ニューヨークの国際連合本部に集まった。

私たちの未来像
 私たちの未来像は、人間中心の、真に民主的な世界である。そこでは、すべての人が完全な参加者であり自分たちの運命を決める。それは、私たちがそれぞれが違いをもつ人類というひとつの家族であり、ひとつの共通の祖国に暮らし、思想信条、障害のあるなし、性的志向、民族、国籍の違いを超えて、老若男女すべての人が、民主、平等、包括、自主、差別を受けない、参加、という普遍的な原則に導かれた、公正で、持続可能で、平和な世界を共有するという未来像である。これは、国連憲章の原則が描いているように、平和と人間の安全が、武器や武装紛争や戦争にとって代わる世界である。地球資源が公正に分配され、万人が汚染のない環境に暮らす世界である。私たちの未来像では、青年の活力と年配者の経験がそれぞれが固有の役割を含み、市民的権利、政治的権利、経済的権利、社会的権利、文化的権利のすべての人権の普遍性、不可分性、相互依存性を再確認している。

課題
 私たちは、危機をはらみ、互いに結びつきをもつ重大な課題に直面しながら、新しい千年紀を迎えている。平和と正義、貧困の根絶をめざすたたかいの当事者として、NGOは、暴力と武装紛争の発生が人間にあたえる影響、広範にわたる人権侵害、また、最低限の生存手段を奪われた容認できぬほど膨大な数の人たちの存在という問題に遭遇している。同時に、HIV/AIDSなどの新しい病気が、社会全体を荒廃させる危険をもたらしている。

 グローバル化と科学技術の発展は、人々が結びつきをもち、分かち合い、お互いに学びあうための重要な機会をもたらす。同時に、大企業中心のグローバル化は、国と国の格差、国内の不平等を悪化させ、地域の伝統と文化をむしばみ、貧富の差を広げ、それによって都市でも農村でも多くの人たちを疎外する。女性、先住民、青年、少年少女、障害者は、グローバル化の影響から一方的な被害を受ける。最貧国がもっとも豊かな国に膨大な債務の返済をつづけ、基本的医療や教育や子どもたちの生活が犠牲になっている。女性の売買、性的搾取、麻薬取引、マネーロンダリング(資金洗浄)、腐敗、小火器の氾濫は、不安定を促進している。国家の力は弱まる一方で、その代わりに、責任を問われることのない多国籍企業が力を増している。規則外の自由市場を通した経済成長一辺倒の考え方が、富める債権国が支配する国際金融機関の調整押しつけ・安定策とあいまって、多くの国の経済力を麻ひさせ、貧困を悪化させ、人間の価値をむしばみ、自然環境を破壊している。
 グローバル化を、万人に恩恵をもたらすように機能させなくてはならない。つまり、世界から貧困と飢えをなくし、世界のすべてに平和を確立し、世界のすべてで人権を擁護し向上させ、私たち地球の環境を守り、全世界で職場の社会規準を守らせなくてはならない。これは、世界的企業、国際金融・貿易機関、政府が、人民による実効性のある民主規制のもとに置かれてはじめて実現できる課題である。私たちは、こうした課題への応えを保証するのは、強化・民主化された国連と、活気ある市民社会だと考えている。私たちは、警告も発したい。グローバル化を考え出した者たちの責任が問われないならば、それは単に不公正という問題にとどまらず、組織全体が万人に悲惨な結果をもたらしながら崩れ落ちることになろう。ついには、不寛容、病気、環境破壊、戦争、社会の崩壊、政治的不安定がはびこり、富める者たちも逃げ場を失ってしまうであろう。
私たちは、この未来像を現実にするため、国際レベル、国内、地域、地元で活動するすべての人たちの協力を強めるための具体的な一連の措置を提案する。私たちの「行動課題」には、市民社会、各国政府、国連がそれぞれおこなうべき措置が含まれている。

A. 社会発展と債務帳消しを含む貧困の根絶

 貧困は人権の侵害である。13億もの人が極貧状態にあるいま、これは、世界でもっとも蔓延している人権侵害である。貧困は、発展途上国だけでなく、工業国にも劇的かつ隠れた形で貧困が現実に存在している。いちじるしい影響を受けているのは、先住民、障害者、女性、子ども、青年、老人といった、不利な立場に置かれ、政治の場で十分に代表されていない人たちである。飢えとHIV/AIDSの世界的広がりも貧困と深く結びついている。グローバル化された経済体制につきものである貧困化がすすむ結果、不平等、社会的不正義、暴力が世界中に増大している。

 貧困の根絶は、いまや緊急の課題である。貧困は、経済が成長すれば自然になくなるというものではない。そのためには、富と土地を再分配し、安全策をたて、万人が無償教育を受けられるようにするための目的意識的な行動が必要である。私たちは、政府と国連に対し、貧困の根絶を政治の最優先課題とするよう呼びかける。

フォーラムが求めるもの:
国連に対して
 1. 債権国と債務国の利害を考量し、債務帳消し資金の用途を検討する独立仲裁人として行動する。

 2. 多国籍企業に対し、拘束力ある行動基準と、国際金融市場に対する効果的な税規制を導入し、この税を貧困根絶の計画に使う。

 3. 国連内に、各国政府、企業、世界銀行をはじめとする資金源から寄付金を受けた「世界貧困根絶基金」を即時設置し、貧しい人たちによる信用貸しの利用に道を開く。

 4. 文化的発展を、「国際貧困根絶10年(1996年〜2007年)」のうち残る期間のひとつの焦点として採択する。

各国政府に対して
 1. 1995年の「世界社会開発サミット」でなされた誓約を、統合的・全体的枠組みのなかで、市民社会の全関係者との協力のもと、全面的に実行すること。政府は、貧困の根源の問題へのとりくみ、また、万人の基本的に必要とされるものを提供するための努力と政策に焦点を合わせることで、恵まれず、政治の場に十分代表がいない人たちの必要とするものと権利を、特別の優先課題とすべきである。さらに私たちは、政府に対し、コペンハーゲン会議の目標を、各国での法規化により確固たるものとし、安全策および基本的な生計配分を権利として提供する貧困撲滅戦略をとり入れるよう求める。

 2. 女性、先住民、非公式の生産分野にたずさわる人たちが自営業をおこなえるよう、彼らに信用の利用を保証し、彼らの企業家としての能力を強化すること。これは、万人の雇用と、貧困根絶の継続的な方法をつくりだす確かな方法である。

 3. 先住民、障害者、女性、子ども、青年、老人など、恵まれない人たちや政治の場に代表されていない集団に特別の注意を向け、家族の結束を保つための貧しい人たちの努力を支援すること。移住の影響を受けている人たちにとって、効果的な活動と資金は欠かせない要素である。

 4. HIV/AIDSの発生・影響・ひき続く人的犠牲の問題にとりくむこと。健康調査の支出を増やし、この研究の成果が人びとのために活かされるようにすること。

 5. 障害者がもつ固有の潜在能力を認識し、彼らの、政治・経済・社会・文化分野への全面参加と平等な役割を保証すること。彼らが固有に必要とするものをさらに認識し、それらに応え、彼らに能力をあたえるための包括的政策とプログラムを導入し、彼らが、貧困根絶において主要な役目を果たせるようにすること。「障害者の機会均等に関する国連規準」を適用するよう、すべての国に強く要請すること。

 6. 貧困状態にある女性、特に障害をもつ女性が必要とするものと彼らの努力をあつかう、マクロ経済政策と開発戦略を再検討・採択・継続すること。北京で開かれた「第四回世界女性会議」宣言で概要が示されているように、貧困の女性化問題にとりくむため、また貧困根絶における女性の主要な役割を認識するために、ジェンダーに基礎をおく方法論をつくること。

 7. 貧しい地域社会の生産能力を向上させるため、無償基本教育と技能養成を優先課題にした、「万人のための教育」をだれもが受けられるようにすること。私たちは、政府に対し、教育予算を増やすこと、技術的格差を縮めること、(男の子も、女の子も)すべての子どもが、教育は一生を通じたものであることを、家族・成人識字教育・年配者向けプログラムを通して認識する一方で、道徳的・精神的・平和・人権教育を確実に受けられるよう教育政策を改革すること。女の子に対しては、特別の配慮がされなくてはならない。また、高等教育は、経済力だけでなく、能力に応じても受けられるものでなくてはならない。

 8. 平等の達成を目的とする経済改革をすすめること。特に、経済成長を、人間の開発と社会正義の目標とむすびつけたマクロ経済政策を打ち立てること。貧困から脱しつつあるとはいえ、社会的な危険にさらされやすく、排除されやすい集団の貧困化を防ぐこと。法的最低賃金の支給と効果的な社会体制を含む労働基準法の改善をおこなうこと。貧困根絶のカギとなる戦略として、主要生産資源に対する人びとの統制手段を回復させること。

 9. 政府および市民社会一般の腐敗を根絶するための計画を導入・実行し、適切な政府、責任能力、民主主義、透明性を、国民道徳の基礎として促進すること。

 10. 通商および国防省庁の優先課題が、国際的に持続可能な発展のための政策と調和するように、包括的・総合的政策を導入すること。

 11. 商品と雇用をつくりだすために、土着の作物と伝統的な製造技能の活用を促進すること。

 12. 法的拘束力をもつ「貧困克服条約」案を、貧困状態に暮らす人たちとの効果的協議と協力によって起草し、その実行可能性を探求すること。

 13. その返済のために、基本的に必要なもののための財源が転用されることになる、憎むべき債務を含む発展途上国の債務を帳消しにすること。債務帳消しから生ずる財源の支出が、債務国内の貧困階層との協議により確実になされるよう、措置の改善をおこなうこと。国際金融機関に対し、これら機関が有する債権を100%帳消しにするよう指導し、規律と透明性を保証する独立仲裁人をたてた、債権国と債務国の利害を考量する仲裁手続きを確立する。

 14. 世界貿易機関(WTO)に対し、発展途上国に食料の輸入自由化の圧力をかけることでこれらの国の農村生活、雇用、自然資源、その土地固有の知識、食料生産、安全全般を脅かす農業協定を緊急に是正するよう求めること。

市民社会に対して
 1. 「社会開発世界サミット」で諸国政府がおこなった10項目の誓約すべてを、万人のため確実に現実とするように、政府を監視し圧力をかけること。貧困根絶をめざす国家戦略の作成と実行を手助けるための、また、貧しく、疎外された地域社会の参加を保証するための、私たち自身の責任を果たすこと。貧困層の利益に反して活動する組織を監視する仕組みをつくりだし、強化する。

 2. 地域社会の団体、教育者、科学者、研究者、自治体、企業、労組、NGOと、建設的な対話と計画作業をおこなううえでの、新しい関係と共同を築き、それぞれが力を最大に発揮できるようにすること。貧困による最大の被害を受けている人たち、意見を反映させる機会がもっとも少ない人たちに特別の注意を払うこと。貧しいものたちは、自分たち自身、家族、地域社会、共通の故郷に奉仕するために、自分自身の能力と力量を向上させるべく、自分たち自身を真の協力仲間としてとらえなくてはならないし、また、彼らには能力があたえられなくてはならない。

 3. 市民、政治、社会、経済、文化、すべての権利の普遍性、不可分性、相互依存性を確認した「世界人権宣言」の実行に向け、私たちの全力を尽くし、人間の尊厳をめざす世界的な運動に加わること。

 4. 一定水準の仕事につき、能力を形成し、参加するために必要な条件を改善すること。政府がおこなった誓約を検討する手助けをするよう、マスコミを激励すること。

 5. とくに南側諸国の若者と高齢者が特別に必要とするものに注意を払い、情報の入手、また貧困の根絶に欠かせないあらゆる形態の医療と教育を含む機会を彼らに提供すること。

 6. 高水準の青年失業率を低下させるために、地元、国、地域、国際レベルで、地球的規模で利害関係をもっている者たちに対して特別の行動をとること。

B. 平和、安全保障、軍縮

 国連と加盟国は平和を維持し人命を守る第一義的責任を果たしてこなかった。組織的な武装した暴力が世界で何百万の人々の命を奪っている。その95%は一般市民であり、さらにそれをうわまわる数の人々が平和の権利を奪われている。

 広島、長崎の被爆者と今世紀のその他の戦争被害者たちは、20世紀の過ちを21世紀に繰り返すなと、心をこめてわれわれに訴えてきた。しかし、殺りくは続いている。この10年間でも50以上の戦争で600万の人々が死んだ。一部に成功はあったが、これらの紛争のおおくは何十年も続き、何百万の死者を出した。暴力の循環は、暴力と勇者の美点を賛美する文化に始まり、おそらく家庭内暴力に顕著にあらわれる。

 55年にわたる努力にもかかわらず、いまなお地球のすべての生命を破壊できる核兵器の廃絶において決定的な進展はなされておらず、核兵器を保有する者の範囲は拡大している。主として商業的な理由から生物兵器禁止条約も十分な検証はなく、他方でそれらを生産するための知識はひろがっている。レイプも戦争の兵器として使われ続けている。宇宙は軍事化され、宇宙兵器の開発が激化している。現在、問題は、人類すべてを破壊できる兵器を自分たちが所有する権利をもっていると主張する、わずか8カ国の小グループに集中していることである。

 軍縮は平和への唯一の道ではない。それには真の人間の安全保障が伴わなければならない。平和のための対話にNGOを含めることが重要である。国際社会?老いも若きも含めた市民社会および諸国政府?は暴力の文化から平和の文化へと移行する資源と知識とをもっている。

 「戦争の惨害から将来の世代を救う」という国連憲章の第一義的使命を完遂し、国連憲章の基本である武力不行使の原則を適用すべき時がきている。力を合わせれば、市民社会と諸国政府は、武力紛争勃発の頻度を減らし、段階的に戦争の廃絶へとすすむことができる。

フォーラムが求めるもの:
国連に対して
1. 戦争廃止の方向へすすむという目標を実際的手段により遂行するため、国連事務局および関心ある政府、あるいは政府のグループは、第四回国連軍縮特別総会で討論すべき地球的軍縮の提案を作成すべきである。これは、市民社会諸団体、とりわけ青年団体などの広範な連合や関心ある政府などが推進するために作成されたプログラムのなかで、継続的な紛争予防の改善、平和維持、通常軍縮、核兵器廃絶などをつうじて、特に全世界的で武力による暴力のレベルを引き下げることをめざすものである。

 2. より効果的な紛争予防のため少なくとも50人の職業的に訓練された調停官の集団を創設し、紛争の警戒、調停、紛争解決などを援助する。

 3. 総会を通じ、国際的で非暴力、包括的なボランティア男女からなる常設平和軍創設を承認する。それは、早期警戒、紛争解決の促進、人権保護、死と破壊の防止をおこなうために紛争地域に展開するものである。

 4. 紛争予防と解決のため、先住民の法体系などみずからの紛争解決の仕組みをもつ法体系を活用する。

5. 地雷、子爆発体などの「非差別」兵器がいかなる軍、とりわけ国連の委任のもとで活動するいかなる部隊あるいは連合軍によっても使われることのないようにする。

 6. 安保理事会がより柔軟に紛争予防をはかれるよう援助するため、総会は開かれた紛争予防委員会を創設し、迅速な行動による紛争予防と早期警戒機能にあたるようにすべきである。総会は世界世論、市民社会、国連、各国政府などに潜在的紛争についてのバランスのとれた、時宜を得た情報をあたえ、可能な解決を促進すべきである。

 7. 国連憲章の基礎である民族主権と武力行使の禁止を尊重する。この原則を掘り崩してはならない。紛争の解決には、国連憲章第7章に即した軍事的措置がとられる前に、第6章にそってあらゆる平和的方法が試みられなければならない。国連総会は、人道的犯罪、戦争犯罪あるいはジェノサイドが犯される場合に強制行動をとるための基準を検討するための広範な委員会を設置すべきである。

 8. 国連の武器登録を拡大し、小火器・軽火器の製造・販売を明らかにすること。それには製造・取引者の具体的氏名を含めるべきである。

9. 政治問題局(UNDPA)のなかの、NGOとの継続的連絡の役割をもつ「平和教育ユニット」を再開すること。

 10. 安保理事会、事務総長および他の国連諸機関とともに活動する、独立した専門家から構成される人道委員会を設けること。この委員会の任務は、人道上の必要を評価し、武力紛争時の一般住民への保護的措置を勧告することである。

 11. ただちに出動できる警察・平和維持軍の創設。民間人、とりわけ女性とこどもへの注意と尊重を、彼らの訓練に含めるべきである。

 12. この分野での優れた功績に対し、年毎の青年平和賞を設けること。

各国政府に対して
 1. すべての核兵器を廃絶し禁止する、核不拡散条約の義務を迅速に完遂する。この目的のため、政府は2001年初頭までに、アナン事務総長が提案した核の危険除去の会議を開催すべきである。政府は新たな核兵器を研究・開発している研究機関の閉鎖、核兵器の警戒態勢解除、外国からの核兵器撤去などをただちに約束すべきである。

2. さきのNPT再検討会議に参加したほとんどすべての国々の政府とともに、フォーラムの参加者は、いずれの国であれ全国的ミサイル防衛の一方的配備は危険な不安定効果を生み、恒久的に高いレベルの核兵器を保持したり現存するレベルを引き上げる圧力をつくりだすものと考える。アジア、その他の地域での戦域防衛ミサイル配備は深刻な地域的不安定を引き起こすであろう。世界的なミサイル発射警戒システムのために、および長距離地対地ミサイルや長距離爆撃機の製造中止方法の見直し会議がすすむように、そうした計画は放棄されるべきである。

 3. 非核地帯のネットワークを、核保有国領土以外のすべての地域を含むところまで拡大し、このネットワークを、艦船が核兵器を積載していないことを証明しないならば入港を拒否する海事措置によって補完する。市民社会は、核兵器を統制するこれらの措置のすべてを精力的に促進すべきである。

 4. 軍隊の世界的規模の凍結と、主要兵器や小火器の生産・輸出の25%削減を提案し、そのために、通常戦力の世界的規模での削減の手始めとして、兵器輸出についての国際的行動規範を採択する。

 5. 対人地雷禁止のため、オタワ条約として知られている1997年の国際対人地雷協定を履行する。

 6. 国連に、世界的な力関係に新たな不均衡をつくりだす、新たなより進んだ兵器の技術開発を停止させる方途を考案するための委員会を創設する。軍縮会議(CD)もこの問題にかんする作業グループを設置するべきである。

 7. 国内紛争への対処を含め、小さいこどもから年齢の高い成人まで、就学前から大学、公教育外の社会教育にいたるまで、すべての年齢を網羅するあらゆるレベルでの平和教育を確立すること。平和と紛争回避の教育は、持続可能な平和への前進にとって不可欠である。各国政府によるこの責務の実施は、適切な条約により確実なものとされねばならない。

 8. 国際人道法を推進・遵守する努力を強め、戦争の方法、手段を制限し、非戦闘員、一般市民、人道にかかわる要員を保護すること。

 9. 国際社会?市民社会、政府、および国連?は、あらゆるジェノサイド、戦争犯罪、あるいはいかなる大規模な人権侵害も迅速に止めさせる責任をもっている。関与する者はすべて、人道的救援と軍事介入との混同をいかなるものであれ避けるようにすべきである。

 10. こどもの権利にかんする協定の選択的議定書の履行措置をただちに採択し、18歳未満のこどもたちが武力紛争に加わることを禁止すべきである。

市民社会に対して
 1. 暴力的紛争で障害者となり、負傷した人々、こどもたち、高齢者に対して、そしてもと戦闘員の社会復帰のために、特別の注意と支持をあたえること。紛争地帯の戦争に苦しむこどもたちの保護は、世界的キャンペーンとならなければならない。

2. 平和、安全保障、軍縮、人道的諸問題のために活動するすべてのNGOの、政治、軍事、経済的権力や制度に対する不偏性と自主性を維持すること。同時にNGOは、平等、正義、多様性を促進する大衆的な諸運動(労働運動、婦人運動、市民権運動など)と有機的に結びつくべきである。

 3. 人権と結びついた人道的諸原則を擁護し、人道的援助の分野を私企業に開かれた新たな市場へと変えようとするいっさいの試みを拒否すること。

C. グローバル化の挑戦に直面して:公平、正義、多様性

 「グローバル化」を定義する必要がある。一部の人にとってそれは、電子通信や輸送の新技術がもたらした、国境を越えて地球上のどんな遠隔地にもかつてない速度で情報、人、資金、商品を運ぶことを可能にする不可避的なプロセスである。それは私たちの世界をひとつの地球村へと変え、結果としてその全住民たちに、かつてない繁栄の可能性を開く政治・経済的変革をもたらすものである。

 ほとんどの人にとっては、グローバル化は、経済・軍事的強者による弱者への経済的、政治的、文化的支配のプロセスである。たとえば、世界のトップ200企業の総資産の合計は1960年代には世界の国内総生産(GDP)の16%を占めていた。これが1980年代のはじめには24%になり、1995年には34%にまで増加した。この過程では「もつもの」と「もたざるもの」の格差が拡大しただけでなく、貧困層は拡大し、ますますお多くの人が最貧レベルへ追いやられて市民社会は脅威にさらされ、諸国政府は従属化していった。現在のグローバル化のプロセスは必然的なものではない。それは、人間による決定の結果なのだ。参加者かつ恩恵を受ける者として人々が主人公となる民主的プロセスにつくりかえることは可能でありまたそうせねばならない。われわれすべての世代、特に未来の世代である若者は、そのような国境を越えた市民社会の確立を求める。その社会はすでに世界の舞台に登場しつつあり、様々な人、グループ、コミュニティー、組織のかつてない結びつきやネットワーク、交流、そして共同の行動が起こっている。われわれの前には、平和、公平、社会正義、民主主義、人権という共通の価値観を肯定する新しい意識が、世界中にあらわれつつある。

 先住民族は、現在のグローバル化と貿易の自由化のプロセスが、お多くの場合、祖先からの土地に対する権利を否定し、彼らの土地保有権の侵害をもたらしていることを深く懸念している。そのなかには土地と発展への彼らの精神的見方、彼らの伝統的知識や文化、政治、社会経済的システムの侵害も含まれている。

フォーラムが求めるもの:
国連に対して
 1. ブレトン・ウッズ体制の各機関と世界貿易機関(WTO)のすべてのレベルの決定機関の改革と民主化、およびそれらの機関を国連の機構に完全に統合し、経済社会委員会に対し説明責任を課すこと。

 2. 国連と関連専門機関により定められた労働、人権、持続可能な環境の国際的諸基準を尊重し、多国籍企業の行動を規制する法的拘束力ある枠組みをつくること。この規制のメカニズムには、多国籍企業の展開による直接の影響をこうむる労働者と地域社会の積極的な参加が含まれるべきである。それにより誤った活用を防ぎ、多国籍企業を民主的な市民の統制と地域を基礎にした社会経済システムに従わせることができる。

3. WTOの貿易関連知的所有権の適用から発展途上国を除外し、こうした権利を新たな交渉議題から外して今後そうした問題を取り上げないようにすること。

4. 多国籍企業と、その貿易が環境にあたえる否定的影響の増大を検討し、規制すること。企業が生命体を特許化しようとするのは倫理的に受け入れられない。

5. われわれの展望にかなうように、世界経済の民主的・政治的規制をめざすこと。

6. 先住民族の自決権を認めて法的に尊重し、彼らの言語、知識、教育制度、居住空間、知的財産と生物的安全への主権を認めること。

各国政府に対して
 1. グローバル化がもたらす共通の利益の面とともに、環境の持続可能性、文化の多様性と伝統を深刻に脅かしている側面を認識すること。

 2. きれいな水、食料、教育、医療その他人間に不可欠な共通の利益を、私的独占から除き、世界的に共通するものを守りひろげるという観点から、それらを調整すること。

 3. すべての人、特に若者に、グローバル化の力学と、消費と購買様式などの行動がいかに彼らと国の経済に影響をあたえ、グローバル化の否定的影響を永続させることになるかを教えること。資源集約的な消費の誘発を目的とした市場慣行を低減するための方法で、この教育を支援すること。

 4. 企業による先住民の権利の侵害に対し、立法化によって彼らの権利を守ること。

 5. 人権の基準、特に何人にも移動の自由があるという世界的な原則を尊重し、外へと中への両方の移民政策を発展させること。

 6. 公平、透明、責任、民主主義の原則に基づいて、世界的な金融機構を再構築することを真剣に約束すること。また、市民社会の諸組織の参加により、通貨政策を、たとえば時間を基礎にした代替的な通貨のように、人間の努力や生態系に有利になるようにすること。不公平税制やタックス・ヘイブン、資金洗浄の根絶に特別の注意を払い、トービン・タックス〔訳注:国境を越えた金融取引への課税〕のような新たな税制を導入し、地域的なおよび各国での資本規制をおこなうこと。国際金融機関が構造調整計画の否定的条件を撤廃するよう働きかけること。

 7. 国際的金融諸機関とWTOを改革してより大きな透明性と民主主義を保証し、市民社会との協議制度の確立を支援すること。国際的金融諸機関が、弱い立場の人に対して持続可能な開発のための資金を提供するようにすること。持続的な資金は、通貨投機の低減にも貢献しうる通貨移動への課税や、土地と天然資源の賃借価値への課税によって生み出すことも可能だろう。

 8. 巨大な企業体による教育制度の変質や支配を許し、政府・地方自治体の役割の低下させるような、子どもと若者の教育のグローバル化を止めるための努力をすること。

 9. 人体やその一部を商業的取引から排除すること。

市民社会に対して
 1. コミュニティー・ラジオ、電話、パソコンを含め、住民中心で独立した非商業的メディア機関を保証することにより、地域社会の自治と民主主義を支援すること。

 2. 文化的多様性を前提とし、尊重・保護・発展させながら、多極主義的で多文化的な観点によって定義されるグローバル化の概念の発展を支援すること。

 3. 世論の支持を喚起し、新しい科学的研究の結果も利用しつつ、国内外でグローバル化にかんする会議を断続的・積極的に組織すること。地域社会の構築と強化を奨励し、地域の懸念をこうした会議の場やその他の方法を通じて知らせること。

D. 人権

 新たな千年紀を前に、人権の達成は多くの挑戦によって脅威にさらされている。経済格差と貧困層のかつてない増大は、現存の世界経済秩序の結果であり、人権の最大かつもっとも不公正な侵害である。毎年、罪のない何百万の人が死に、悲惨さにあえいでいる。われわれは、武器として食料を利用することも含む最悪の人権侵害の例を、ますます頻発している武力紛争と内戦のなかに目撃している。加えて、そうした紛争では市民に大量・無差別破壊兵器の矛先が向けられている。われわれはまた、人種差別、ファシズム、排外主義、同性愛嫌悪、憎悪による犯罪、民族殺りく、ジェノサイドの再出現を目の前にしており、それらの影響がもっともおよぶのは、先住民族とその他の不利な立場におかれた人、政治の場で代表されていない人である。父権性の復活が女性が達成してきたものを浸食しようとしている。児童労働の最悪の形態が存続している。大規模で組織的人権侵害をおこなう者たちが罰せられていない。現在深く進行しているグローバル化のプロセスは、国際的に認められた人権、労働者の権利、環境基準をむしばんでいる。多国籍企業や国際的金融諸機関、市民社会の原理主義組織や犯罪シンジケートなどの非国家組織が、引き続き人権遵守の責任を免れている。暴力、軍事主義、武力紛争が増大している。独裁主義体制が増大、強化されている。そして、人権の擁護者たちは引き続き地球上のお多くの地域で、もっとも抑圧の標的とされている。

 世界人権宣言と人権諸規約・条約で構成されている国連の人権条約体制は、国連の三つの中心目的である、人権、開発、平和のひとつとして認められている。21世紀にわれわれは、この三つの分野すべてで同時に前進を築かなければならない。さもなければ、世界を重大な危険に陥れてしまうだろう。

1. 人権の不可分性、相互依存性、相互関連性
 すべての人権の不可分性、相互依存性、相互関連性は、理論的には繰り返し確認されてきた。しかし、実際には市民、政治的権利が経済、社会、文化的権利より優先され、しばしば二種類どちらの権利にも損害がおよんだ。

フォーラムは呼びかける:
国連に対して
 − 国連のもつ人権制度と実践を再検討し、両方の種類の権利に対するバランスある資金の配分を達成すること。また、経済、社会、文化的権利にかんする国際人権規約の選択議定書案交渉を速やかに締結すること。
 −先住民、少数民族、高齢者、障害者の権利のため拘束力ある国際的方策を速やかに採択すること。
各国政府に対して
 −一方の種類の権利を重視したことを理由にもう一方の権利を無視することを正当化しないこと。そうではなくすべての個人的・集団的人権が、持続的発展、投資、貿易の追求のなかで保護されるよう保証すること。

市民社会、特に人権団体に対して
 −人権の不可分性を全面的に認識すること。

2. 開発に対する人権
 国連加盟国はこれまで、いくつかの国連主催の世界会議において、開発の権利が人権と不可分であり、基本的な人間の自由の一部であることをコンセンサスで確認してきた。加えて、発展は少年少女たちの能力の実現のために不可欠である。しかし、様々な障害が、開発に対する権利の効果的な実現を妨げている。

フォーラムが求めるもの:
すべての政府、国連、市民社会に対して
 −もっとも緊急の問題のひとつとして、開発の権利の効果的実現のため適切な行動で協力する、そして先住民、不利な立場の人、代表されていない人を含むすべての人の基本的権利を満たすこと。そうした文脈において、貧しい国の債務をただちに帳消しすることは必須である。

3. 保留なしの全世界的な批准
 すでに完了した国際的交渉の結果である国際的な人権諸条約が全世界で批准されることが、人類に共通の人権基準を真にもたらすためには不可欠である。

 地域的および各国での人権擁護の立法措置は、国際的人権基準を強化し、補完するための不可欠な貢献をおこなうことができる。

フォーラムが求めるもの:
国連に対して
 −各国政府が人権条約を批准し、批准後その義務を遂行できるよう、技術的な協力を強化すること。
 −既存の人権措置と矛盾するいかなる国際的、地域的な条約も結ばれないよう保証すること。

各国政府に対して
 −この点についてすでに1993年のウィーン世界人権会議で誓約したことを実行し、保留事項の見直しと批准検討の国内プロセス開始のための具体的時間枠を設けること。

市民社会に対して
 −引き続き批准と保留事項の放棄のため各政府に圧力をかけ、またその重要性への世論の認識を高めること。

4. 国内的履行
 フォーラムは、国際的な人権条約を批准しながら、それを国内法に組み入れていない諸国の偽善性に懸念を表明する。さらに、国内法が存在する国でも、その履行は大幅に改善が必要である。

フォーラムは呼びかける:
国連機関に対して
 −各国政府が報告と履行の義務を含む条約の義務を確実に果たすようにし、必要なら技術的な協力もおこなうこと。
各国政府に対して
 −批准した人権条約を効果的に国内法へ組み入れ、履行すること。
 −少年少女の売春と、児童労働の最悪の形態を根絶すること。
市民社会に対して
 −不履行に注意を喚起し、障害とその克服策を明らかにすること。その際、市民社会団体は完全に保護されねばならない。

5. 人権基準の国際的履行
 フォーラムは、人権にかんする国際的施行におけるダブル・スタンダードや選択的実施が続いていることに憂慮を表明した。フォーラムは、特に国連の常任理事国およびその他の加盟国も同じく、国際的人権基準により忠実になる必要性を強調した。同時に多国籍企業と同様に、国際的貿易・金融・投資諸機関が、人権と労働者の権利に影響をあたえる政策や行為に完全に責任をもつことが重要である。

フォーラムは主張する:
国連に対して
 −多国籍企業に対する拘束力ある国際的行動規範に向けた交渉において、先導的な役割を再び果たすこと。
 −すべての国際諸組織が、国際的人権基準と中心的労働権を全面的に遵守するようにすること。
 −障害者の人権を促進・擁護するために、障害者の権利国際条約を提案し採択すること。
 −経済制裁を課すことを止めること。これは人から経済的、社会的、環境的な基本的権利を奪い、彼らの市民的、政治的権利のためのたたかいだけでなく生存のための闘争をもいっそう困難にしている。

各国政府に対して
 −上記のような国際的諸機関の行為による人権侵害から人々を実際に守るための国内政策や法律を採択し履行すること。
 −市民社会、特に人権擁護やその違反監視、是正のために活動している諸組織を抑圧せず支持すること。

市民社会に対して
 −人権擁護者たちへの保護義務に政府が敏感になるように働きかけること。

6. 女性・少女の権利促進と保護
 女性と少女に対するあらゆる形態の差別と暴力を終わらせるという目標も、未達成のままである。フォーラムは、女性の権利の普遍性と人権との不可分性を確認し、女性と少女に対するあらゆる形態の差別と暴力をなくすよう呼びかける。フォーラムはすべての女性と少女の人権が人権全体と一体不可分であり、ライフサイクルのすべての段階でそれが促進、実現されるべきことを認める。

 フォーラムは国連と各政府、市民社会が、指導層や経済、政策決定を含む社会のすべての面で、女性の平等の機会と完全参加を認め、保証するよう求める。

フォーラムは呼びかける:
国連に対して
 −ジェンダーの主流化(訳注:男女平等をはかる観点をあらゆる物事の中心に位置づけること)により、国連組織全体において女性が実際に指導的地位につき、ジェンダーの観点が国連のすべてのプログラムや政策に貫かれるよう保証すること。ジェンダー・トレーニングをおこなうこと。女性と少女の人権の擁護と促進のためのメカニズムを強化すること。

各国政府に対して
 −女性と少女の人権擁護のためにおこなった誓約を遂行する環境づくりのためによりお多くの資金を配分し、女性の政策決定機関への登用促進、すべての差別的法律の撤廃、女性と少女に対する暴力防止のための効果的法律の制定、女性の完全な多様性の保護、女性と少女の平等促進のための法律施行、男女別の統計データの収集、女性と少女の開発や教育、健康にかんする権利の保証などおこなうこと。

市民社会に対して
 −すべてのレベルにおいて女性を指導部に完全に組み入れ、その活動のすべてにジェンダーの観点をとり入れること。女性と少女の人権の促進と擁護に政府が責任をもつようにさせること。そして女性と少女に対する差別と暴力をなくす誓約の遂行状況を監視すること。

7. 人権の主張への認識促進と支援
 フォーラムの参加者は、人権の文化を築き、人が自らの権利を主張できるようにするうえで、人権教育のもつ重要性について繰り返し述べた。

フォーラムは主張する:
国連に対して
 −国連「人権教育の10年」(1995-2004)を意味のあるものにする効果的方策をとること。人種差別主義とのたたかいを前進させるため、「国連人種差別にかんする世界会議」において、人種差別の歴史的、経済的根源へ関心が集められるべきである。
 −高齢者の人権擁護にもっと焦点をあて、彼らの権利を完全に尊重し実現するための効果的施策を採択すること。
 −言論と活動の自由が厳しく制限されている論争中の領土や紛争地帯の人々の人権への関心を高めること。
 −各機関は、紛争地域の被害者のつくられた一般概念を都合よく利用すべきでない。それは彼らの人間性を侵害するからである。

各国政府に対して
 −市民社会の人権にかんする活動を妨げるすべての障害物を確実になくし、すべての人への人権教育を支持すること。

市民社会に対して
 −社会のすべての分野にわたり人権意識を促進する活動を継続、強化すること。

8. 人権の普遍的実現
 人権は、すべての人に実現されなければ真に普遍的なものにならない。すべての人とは、無視されたり排除されているグループ、危険にさらされているグループが含まれ、特に子どもや若者、高齢者、女性、少数民族、先住民、難民、国内で強制移住させられた人、移民、障害者、精神病患者、失業者、ホームレス、そして人種、宗教、階層、性、出生地、言語、年令、国籍、性的志向、その他の理由で差別されている人を含む。経済的搾取、文化的慣習その他の要因がひき続き、多数の様々なグループの人権実現を妨げている。

 国家間の経済発展の不平等は、発達した国々への強制的な移民を促進する。これら経済移民、特に不法移民とよばれる人は、受け入れ国の経済に重要な貢献をしていることも考慮されず、組織的な人権侵害を受けている。

 すべての形態の植民地を世界からなくすという目標は、いまだに達成されていない。自決権は普遍的に実現されているというにはほど遠く、特に占領地域に住む人々においてはそうである。

 さらに、殺りくの共犯者とならない権利という意味において、われわれは良心的兵役拒否者たちの権利を法的に完全に認めることを呼びかける。

フォーラムのもとめるもの:
国連に対して
 −すべての人の人権の完全な認知と尊重、そして実現を保証するため、現存する国際的人権制度の強化をはかること。そして自決権と軍事占領の終結を求めるすべての国連決議を遂行すること。
 −軍事占領下の人々の権利を守ること。
 −移民労働者とその家族への人権侵害の監視を強化すること。
 −公正で実効性のある国際刑事裁判所(ICC)を設立すること。

各国政府に対して
 −人権がいまだ実現されていない無視され続けている人々を救済するため、必要ならばアファーマティブ・アクション〔訳注:差別されてきた少数民族や女性の雇用・高等教育などを積極的に推進する計画〕を含むすべての方策をとること。ICC条約の調印と批准に向けて速やかに行動を始めること。
 −人権侵害の被害者への効果的な賠償と救済をおこない、その際、被害者に立証責任を負わせないようにすること。

市民社会に対して
 −すべての人の人権の承認と実現を促進する役割を強化すること。すべての国にICC条約を速やかに調印し批准するよう働きかけること。

E. 持続可能な開発と環境

 持続可能な開発とは、環境や開発に関する諸問題には、総合的方法でとりくむべきであるということを認めたものである。また、アジェンダ21は、地方自治体を含む社会の各階層の主要な集団が、持続可能な開発を実現する重要な担い手であることを認めた概念を促進した。

 リオの環境サミットから8年が経過したが、市民社会は、各国および国際機関の誓約の実施が遅れている、あるいは全く実施されていないことに不満感をもっている。リオの精神は、弱まっている。開発途上国に対して海外開発援助に国民総生産(GNP)の0.7%を割り当てるという先進国の誓約を果たした国は、非常に少ない。先進国から途上国への、環境的に健全な技術移転は、知的所有権の要求によって阻まれている。環境と開発とのバランスは、先進国政府の促進する環境的な配慮の方向へと傾いてきている。

 生産と消費の支配的なパターンがクローバル化され、生命を維持するエコシステムの環境破壊を激化させ、生物多様性の消失を招いている。ブルントラント委員会は、持続可能な開発を、経済、環境、社会の開発と対等な位置づけで検討するよう勧告している。現在、グローバル化は、社会開発と環境保存を犠牲にして、経済開発を優先させている。このような持続可能でない開発の影響は、伝統的知識や生物多様性の所有者や守り手、先住民、高齢者、農民、女性などを含む多くの人々を社会の外に追いやり、貧困化させている。グローバル化は、地域の持続性を組込んだものでなければならない。いくつかの市民社会組織(CSOs)と南北の一部諸国との共同の努力によって、生物の安全は生物多様性条約において中心的な位置づけがなされた。昨年末の生物安全性議定書の採択は、遺伝子組み換え生物体の国境を超えた移転を規制するための主要な前進である。

フォーラムが求めるもの:
国連に対して
1. 各国政府に対する国連の監視能力を強化し、アジェンダ21、リオの誓約、市民社会の開発に関する会議での誓約、コペンハーゲン宣言、生物多様性条約、気候変動防止条約などの遵守を各国政府に求めること。

2. 持続可能な開発と、その環境、人間の集団、社会開発に対する影響の、地球規模でのアセスメントを実施し、国連開発計画(UNDP)、国連貿易開発会議(UNCTAD)、およびその他の国連専門機関と市民社会組織のおこなった調査を活用すること。これらの調査や政策提案に基づいて、国連は、世界連帯基金を促進し、国際的な金融機関、貿易機関、企業などを規制し、これらがリオとコペンハーゲンで採択した諸原則や計画を遵守することを保証すること。

3. 地方自治体や、特に地域レベルで持続可能な開発実現に活発に参加している階層を含む主要な団体との、より強いパートナーシップとより幅広い協力関係をつくりあげること。また国連は、様々な国連専門機関の政策や計画を調整し、調和をはかることで、重複を避け、相乗効果をあげることを保証すべきである。

4. 国連の諸機関、特に国連教育計画、国連開発計画を奨励し、地方自治体に対し、総合的な開発政策や戦略を通して、地域社会において、アジェンダ21を実施するための助言をおこなう持続可能性促進センターの設置を積極的に支援すること。このセンターは、知識や経験を交流する国際ネットワークの一環となる。

5. 開発の障害となる差別を受けている先住民などをはじめとする集団のための、積極的な行動を支援すること。これら集団には、女性、青年、こども、高齢者、障害者、占領地住民、難民、少数民族、国内難民、移民などが含まれる。

6. 全世界で消滅の危機にある重要な環境的居住空間保護のためのグローバル人間居住空間保全基金を設立すること。この基金は、世界中の化石エネルギー(石油、天然ガス、石炭)生産に対して、わずかな使用料(0.5%〜1.0%)を課した収入からの、少なくとも年間50億ドルから100億ドルを財源とする。

7. 持続可能な人間開発を明確に優先するのに必要な改革を実施するために、国連としてどのような構造改革をすべきかを検討すること。

8. 国連環境計画(UNEP)と国際自然保護連盟(IUCN)に、海洋生物保護のための適切な法的な枠組みをつくるよう奨励する。

各国政府に対して
1. 調印した宣言、条約などを遵守、実施し、アジェンダ21を含む誓約を守ること。各国政府は以下を含む多国間環境協定の重要な議定書を批准すべきである。
−地球温暖化防止の枠組みを定めた協定(これは2002年までに批准すべきである)
−生物安全性議定書
−ODAに国民総生産の0.7%を割り当てるという援助国の協定

2. 自国の経済開発モデルが持続可能であるかを検討し、輸出中心、輸入依存型で負債によって運営されるモデルが、持続可能でない場合には、これらを退けるよう構造改革をおこなう努力をすること。

3. 持続可能でない開発が環境や社会に及ぼす悪影響を調査し、どのようにすればこれらを改善できるかを中心に検討すること。各国の開発計画は、水資源の保全、持続可能な農業、再生可能なエネルギー源の開発、および先住民、女性、農民などの持続可能な開発の知識と実践を支援し、軍事プロジェクトや持続可能でないインフラ整備事業などをなくすことなど、持続可能な開発を促進するべきである。

4. 青年が青年のために所有し、自らの手で運営、管理する持続可能な開発訓練センターの設置を支援すること。彼らに、青年、特に南の青年に、所有権をあたえ、あらゆるレベルのあらゆる場で、これらの過程に、完全なパートナーとして、リーダーとして関与することを支持すること。供与国政府および/または機関が共同出資し、CSD/NGO運営委員会によって運営されるグローバル青年基金の発展を奨励すること。

5. 国連総会において地球憲章を承認すること。

6. 各国の「持続可能な開発のための協議会(NSDCs)」など、あらゆる利害関係者が参加するメカニズムを設立・強化し、地球サミットの取決めの実施を促進すること。

7. 特に農民や女性などを対象としたマイクロ・クレジット(小口信用)機関の設置を奨励し、彼らが土地を利用したり、所有したりしやすくするような土地保有方式を利用することを促進すること。

8. 都市部および農村部における生活条件を向上させるという共通の目標をめざす地方公共団体と中央政府との対話を増やすこと。

9. 包括的で一貫した開発政策を採用し、地域社会が自給自足と地域の天然資源の管理を達成できるように努力し、土地利用管理と、資源集中型の無理な消費を削減する措置をつうじて、持続可能性を達成すること。

10. 国連に提出されている先住民権利宣言草案に表明されている、先住民の自決権および独自の原則や展望に基づいた権利を承認し、それを法的に制度化すること。

市民社会に対して
1. 各国政府や国際機関に持続可能な社会開発のアジェンダを遵守するよう要求し続けること。また市民社会は、各国政府がアジェンダ21とコペンハーゲン宣言を実施する方法を監視するべきである。

2. 生産と消費の持続可能な様式を発展させ、育てることに参加している市民社会の様々な分野の人々の参加と行動を拡大・強化すること。持続可能な社会開発の分野における市民社会の最善の実践にかんする情報・資料を共有化すること。

3. 市民社会組織と運動体のネットワークを強化すること。様々な部門?女性、先住民、農民など?における多様な展望や経験を広く普及し、地域、各国、国際の各レベルでの開発モデルの策定にとり入れるべきである。

4. いったん基本的なニーズが充足されれば、人間の発展は、量ではなく質の問題になるという認識を積極的に促進すること。人間の価値観の根本的な変化こそが、消費主義的文化を転換させる最良の方法である。

5. 持続可能な開発を創出する価値や行動の促進の道具として、地球憲章を採用・普及すること。

6. CSD/NGO運営委員会と国際オリンピック委員会(IOC)スポーツ・環境委員会との適切な連絡関係を保証し、IOCの「スポーツと環境のためのアジェンダ21」の国連システムにおける実施の調整をはかること。

7. 世界の市民が持続可能な開発を実施している市民社会組織の資金調達に参加できるメカニズムである、グローバル環境行動が提唱する「インターネット・グローバル環境基金」の概念を歓迎・支持すること。

F. 国連および国際機関の強化と民主化

 21世紀における国際社会の主要な課題のひとつに、世界レベルで国連が果たしている役割の大幅な強化がある。各国政府は、国連憲章の目的と使命の実現を再び誓約しなければならない。国連の完全性を固く擁護し、その役割の風化を阻止し、国際基準や国際法を適用し、実施する力のある国際機関をさらに強化し、増やすことによって、新しい政治的、経済的な秩序を形成していくことは、今後の重要な課題である。

国際社会は、国際機関の管理において、途上国の影響力が弱まる傾向が続いていることに特に注意しなければならない。このような傾向は、これら機関の信頼性や有効性を損なうだけである。

 国連をはじめとする国際機関の強化・民主化には、加盟国、地域組織、市民社会および青年や高齢者を含む全ての市民の広範な支持と関与が必要である。

フォーラムが求めるもの:
国連に対して
1. 国連総会の調整機関としての役割を強化し、国連憲章ですでに付与されている使命の遂行を保証すること。

2. 安全保障理事会をもっと世界を代表したものにすること。安保理の常任理事国制度には、変革を妨げ、変化する現状に対応できなくするという問題がある。したがって、国連は現行の常任理事国制度を段階的に廃止し、より柔軟で責任のある制度の確立に向けた作業を開始すべきである。安保理は、輪番制によって世界の各地域からあらたに選出される理事国によって、ただちに拡大されるべきである。

3. 拒否権行使を制限し、最終的には廃止すること。国連は拒否権の制限に向かわねばならない。そのひとつの方法として、国連憲章で拒否権発動を除外している「手続き事項に関する票決」の分野を拡大することがある。拒否権行使は、憲章第7章の平和問題のみに限定しなければならない。国連事務総長の選出などの問題についても、拒否権が行使されるのは認めることができない。拒否権の完全な廃止を、常任事理国制度廃止のひとつの段階として、追求すべきである。

4. 戦争勃発その他の人民の平和と安全保障への脅威を防止するために、武力行使を必要としない、より効果的な方法を開発すること。これには、戦争の原因や紛争防止の手段についての、より制度的で分析的なアプローチが必要である。そのひとつとして、特に安全保障理事会は、原料をはじめとする基本的資源をめぐる紛争防止のために、もっと行動すべきである。紛争防止・解決のための国連事務局の大幅な拡大、および紛争を発生させる社会的、経済的危機の軽減のために迅速に起動できる基金が必要である。

5. 国際司法裁判所(ICJ=世界法廷)をより効果的、総合的な国際司法制度の場とすること。世界法廷の強制的な権限を全ての国家に承認させること。自発的な遵守がない場合、安保理は、国際司法裁判所の判決および国連憲章第94条にある他の国際法による義務の履行を強制すべきである。

6. 国連総会に関係する国連の議会機関の設置を検討すること。検討すべきひとつの提案として、協議機関としての議会総会(Parliamentary Assembly)の設立がある。国連に設置される議会機関は、どのようなものであっても、選挙を経て選出されたメンバーで構成され、公開の民主的な方法で運営するべきである。

7. 常設の先住民フォーラムの設置を求めた人権委員会決議に従って行動すること。

8. 債権国と債務国との利害の調停、および債務帳消しで生じる資金がどのように使用されたかを監視するうえで、主要な役割を果たすこと。

9. 青年および青年組織を国連の全ての過程で積極的な参加者として、また対等のパートナーとして認め、支持すること。彼らの活動の独立性と完全性は、保護されなければならない。国連と各国政府は、青年組織が独自におこなっている取組みや努力を支援するよう求められている。

10. 国連人権高等弁務官などがおこなっている活動を、他の組織や機関もその政策のなかで考慮するように、国際機関や専門機関のあいだの情報交換や調整を強化すること。

11. 市民社会の代表が関与する国際的な会議や情報資料などを、英語、スペイン語、フランス語、アラビア語、ロシア語、中国語などの主要な国際言語に翻訳・通訳することを保証すること。

12. 発展途上国、東欧、先住民族のなかに本部を置くNGO代表者の参加を保証し、促進するための措置をとること。

13. 国連システム全体のNGO関係部門への資源を増やし、国連情報センターネットーワークを世界の人民の国連に対する支持を動員するための不可欠な資源として強化することで、国連と市民との接触を強化すること。

各国政府に対して
1. 国連の通常および平和維持予算を大幅に増額すること。国連は、資金と職員の大幅な増加がなければ、多くの緊急課題を遂行することができない。そのために、ただちに予算を二倍にすることも必要である。国連の予算に関する問題は、平和維持に深刻な悪影響を及ぼしてきた。さらに、国連専門機関の予算も、その活動を支持するために、増額すべきである。

2. 国連の分担金を期限までに、全額、無条件で納入すること。これまで国連のグローバル税と加盟費をめぐる議論は、ある一国の資金拠出停止の脅しによって抑えられてきた。この脅迫を拒否し、国連はこれまでの資金源に代わるこのような資金調達の可能性を強力に探求せねばならない。

3. 国連の代替歳入源の創出に努力すること。国連は専門家グループを設置し、必要となっている代替歳入源に関する政府間交渉を開始すべきである。この代替歳入源には、海洋の商業的利用料、航空機による空の利用料、電磁スペクトル利用料、外国為替取引料(トービン税など)、および燃料の炭素含有量税などが考えられる。

4. 国際刑事裁判所設立までに残された段階のすべてにおいて、およびこの法廷の運営手続きの全段階に、ジェンダーの観点を組込むことを、また特にこども、高齢者、障害者のニーズを考慮することを保証すること。

5. NGOの協議資格でのアクセスと参加の権利を拡大すること。各国政府はNGOの国連総会と主要委員会および関連諸機関へのアクセスと参加の権利を拡大するプロセスを完了すべきである。 

市民社会に対して
1. 「グローバル市民社会フォーラム」の設立と資金調達を支持し、このフォーラムが国連総会年次総会前の時期に、少なくとも二年ないし三年に一度会合をもてるようにすること。但し、このようなフォーラムは、民主的にガラス張りで運営され、市民社会の全構成部分および世界の全地域を真に代表していることが条件である。


国連ミレニアム・フォーラム
(2000年5月22日〜26日、ニューヨーク)

開会総会の発言

ミレニアム・フォーラム基調報告
国連事務総長 コフィ・アナン



 国連に皆さんを歓迎できて嬉しい。また、ジュネーヴ、ナイロビ、ウイーン、ブエノスアイレス、シカゴなどでこの映像を見ておられる皆さん、インターネットで見ている皆さんにも心よりご挨拶申し上げる。

 今朝、この総会議場にこのようにたくさんの皆さんを迎えていることが、皆さんが国連や各国政府と協力して、より良い世界をめざして頑張ってこられた何よりの生きた証拠である。

 皆さんは、その名のもとに国連憲章が書かれている「われら人民」の考えを実践されているだけでなく、21世紀には「ピープル・パワー」があれば、世界のあらゆる人々のために国連憲章を役立たせることができるという希望をわれわれにあたえている。

 最近、一部で、NGOは悪い評判をとっている。NGOが闘争的、さらにいえばなんでも反対主義の組織であり、混乱させ、破壊的ですらあり、反技術、反進歩の組織だという烙印が押される前から、すでにあのシアトルの抗議行動には暗雲がかかってしまっていた。

 このようなレッテルは、人権から環境問題、開発から軍縮問題まで、死活的に重要な諸課題にNGOが果たしている先駆的役割を見過ごしている。私たち国連の最近10年の世界会議において、多くの課題で先頭に立ってきたのは皆さん方であった。皆さんは、要求を訴え、行動してこられた。そして政府に要求実現を迫るとともに、政府の協力者として、実行部隊として働いてこられた。

 このNGOの革命は、政府より前にいち早く、皆さんが理解していたものによって可能になった。それは情報革命の道具をどのように自分たちに効果的に使うかということだった。情報伝達技術により、ほとんどあらゆる国境を越えて、交流できるようになったのだ。皆さんは、国境を越えた諸問題には、国境を越えた青写真が必要だということを理解していたのである。

 実際、NGOの革命とは、われわれの時代を定義づけることになった幸いな結果の一つである、グローバル化であると言える。しかしながら、この新しい手段をあたえてくれたグローバル化は、同時に深刻な不安をまきおこしている。

 私は、シアトルでそれを目の当たりにしてきた。世界貿易機構(WTO)の会議は抗議するにふさわしい場所ではなかったかもしれないが、抗議行動をした人たちは、この目まぐるしく変化する世界で、多くの人々が競争に負け、弱い立場にいること、そしてそのような人たちに援助の手をさしのべ、地域問題と世界の問題とが関連していることを説明する必要があるというメッセージを送った。

 21世紀の世界では、人々や国々が相互に連絡しあっているだけではなく、諸問題も相互に関連している。

 各NGOが個別の運動を推し進めるためにも、グローバルな行動が必要だと考えているのと同様に、皆さんの多くは、個別課題?それがどんなに大きなことであるにせよ?の枠を超えて、私たちが今日暮らしている、より大きく複雑な現実に向かって、地域と世界の結びつきに目を向けて考え始めている。

 私はまた、皆さんがどんな大義のためにたたかおうとも、グローバル化そのものに抗議するところに問題解決の道はないと信じている。貧しい人々は過度のグローバル化のゆえに貧しいのではなく、それがあまりにもなさすぎるから、グローバル化に参加できていない、排除されているからこそ貧しいのだと思っている。

 私は、われわれの時代の大きな試みは、グローバル化を、単なる市場拡大以上のものにすることだと思う。この壮大な変革を成功させるために、私たちは世界をより良く治めていくにはどうすればよいのか、しかも共同してより良く治めてゆくにはどうすべきなのかを学ばなければならない。私たちは世界の人々の声に耳を傾け、人々のニーズを充足するという視点をもって治めてゆくことを学ばなければならない。

 最近の経験から学ぶ教訓があるとすれば、それは何よりもグローバル化が勝者と敗者をつくりだしているからといって、対決では問題が解決しないということである。それは敗者のなかから勝者をつくりだし、勝者のなかから敗者をつくりだすことではない。
それは、誰も沈まず、われわれの時代の流れとともに私たちがともに泳ぐということを保証するということである。将来に向かう道は、国家と非国家組織の担い手が、協力してグローバル化の挑戦と影響に真剣に取組むことであると敢えて言いたい。

 一人一人の関心が、女性、あるいは教育問題の前進であれ、人道的援助、あるいは健康問題の前進であれ、その成功の前提はグローバル化の恩恵をさらに広範囲に広げることだ。皆さんの活動場所が、政策設定での場であれ、現場での活動であれ、先進国であれ、発展途上国であれ、グローバル経済から、世界のいくつかの地域が引き続き排除されていることは、その活動の成功の妨げとなるだろう。

 現在、何十億人もの人々が、社会の枠外に追いやられている。この人々がこの新しいグローバル社会の一員にならない限り、皆さんの手は彼らに届かず、彼らを援助することも、彼らの力を結集することもできないだろう。

 しかし、私たちには、世界の人々に新しい機会をあたえる力量が十分にある。私たちは今こそその意志を結集しなければならない。

 皆さんは、私が国連加盟各国に対し、9月のミレニアム・サミットに集まった時に、このことを最優先議題とするよう、すでに要請したことを、おそらく知っていると思う。

 私がサミットに先立って、加盟国に提出した「ミレニアム報告書」をもうすでに読まれたかもしれない。そのなかには「欠乏からの解放」「恐怖からの解放」「持続するわれわれの未来」「国連の再生」というような項を立てた、行動計画が描いてある。今日は皆さんにNGOがリーダーにもパートナーにもなってくれるようお願いしたい。必要ならば、皆さんの理想に政府が追いつくように啓発し、リードしてほしい。それが適切である国では、政府に協力して、その目標達成のためにともに働いてほしい。

 なぜならば、私の報告は各国政府に挑戦を挑んでいるものの、皆さん全員に向けた報告でもあるからだ。これが、あの報告書の「われら人民」というタイトルのゆえんである。そして、皆さんの組織の選出役員に、この行動計画に取組むよう要請することをお願いすると同時に、このミレニアム報告の目標が達成されるよう支援してほしい。皆さんは、すでに新しい国際行動規範を、各国政府が定め、受け入れるよう促進することに輝かしい成功を収めてきた。今こそ、私たちはこの規範を実行させなけばならない。

 皆さんができることはたくさんある。いくつか例をあげてみよう。

 皆さんは何十億という人々を、グローバル経済に参加させ、貧困から脱出させる支援をするため、国際レベルで活動することができる。各国政府は自国の市場を、貧しい国の生産物に開放するカギを握っている。彼らは債務の足かせをはずすカギももっているし、それによって、貧しい国で開発のための資源を解放するカギももっている。各国政府はまた、政府間開発援助(ODA)の減少に対処することも、開発援助を一層効果的に目的を絞って振向けることもできる。
 
 これらの3つの極めて重要な問題に関して、皆さんが引き続き主張してゆくことで、世界の貧しい人々に代わって、各国政府に正しい選択をさせることができるだろう。そして、それを実行するパートナーとして働いてゆくことで、それらの政策選択が人々の日常生活に実際の影響をもつことを確実にすることができる。

 私が昨年提案した「グローバル・コンパクト(地球規模の契約)」を支持することもできる。これは企業に対し労働基準、人権、環境の分野で、中核となる一連の価値基準を法制化するよう求めたものである。

 このとりくみは、広範な経済団体、労働団体およびNGOの賛同を得ている。この夏までに、この「グローバル・コンパクト」を日常的に実践するのに賛成した経済界指導者のリストの第一次分を発表する予定である。

 この「グローバル・コンパクト」によって、すべての政府以外の関係者が共通の目標を中心に結集し、各国政府が、調印はしたものの、実際には例外なく一様に実施されるには程遠い、普遍的価値基準の実施を推し進めることが可能になる。

 「グローバル・コンパクト」を支持することで、世界市場に、今まで欠落していたもの?社会的、環境的な支柱?をあたえる手助けができるだろう。弱肉強食のジャングルではなく、社会的、環境的権利や人権が全員に適用される機会均等の場としての、市場を創造する手助けができるだろう。

 皆さんは私たちが、「デジタル・デバイド」、即ち現在の情報技術の恩恵から、世界の多くの地域全体を排除している溝に、橋を架ける援助もできる。人類の半分がコンピュータを使うどころか、電話をかけたり受けたりしたことさえない。アフリカ人では、インターネットを使ったことのある人は1%に満たない。

 このことは、何十億人という人々が、開発ための重要な手段を奪われているだけでなく、それを変えていこうとするNGOのネットワークからも取り残されているということを意味する。この何十億の人々は、皆さん方の構成員であるだけではなく、技術革新の恩恵を受ける権利があたえられれば、皆さんの大義を推し進める力になりうる人々でもある。
彼らをグローバルネットワークに参加させるために、皆さんは、私がミレニアム報告で発表した「デジタル・ブリッジ・イニシアチブ」の一つ、たとえばUNITeS(国連情報技術サービス)などに加わることもできる。

 このハイテク・ボランティア連合は、発展途上国の人々に情報技術利用の機会をあたえ、使用法を訓練し、南北でさらなるデジタル部隊の創設を刺激してゆくことになるだろう。私たちは、現在、UNITeSを支援するために、外部の資金源、設備、コンピュータに精通している人材を探している。すでに、そのように効果的に情報技術を駆使している皆さんは、他の人々にこの技術を伝える適任者である。

 皆さんは、さまざまな技術を使って、私の報告の最優先課題の一つである、少女の教育を始める国連との共同の仕事に加わることができる。調査につぐ調査が示しているように、少女の教育ほど有効な社会的・経済的・保健政策はない。私たちのこのとりくみが成功するためには、皆さんの専門的知識、エネルギー、広範な行動が必要である。多くのNGOがすでに、各国レベルで少女の教育には注目すべき貢献をしているし、今年、皆さんは、世界的な基本的学校教育のための連合組織を独自に始めている。

 確かに、同じ考えをもつNGO間のこのような世界的連合体は、すでに負債国の救済や国際刑事裁判所などの課題で、大きな成果をあげているが、このような連合体形式は、今後進むべき方向として、より広範囲でより持続的なものになるだろう。このようなNGOの連合によって、NGOが政府に対処する際、そして国連内で私たちと対処する際の有効な力になる。また、それによって皆さんの能力と行動範囲を広げることが可能となる。私は、それによって、皆さんが、将来多くの広範な課題について、真の市民社会にしかできない活動をすることを望んでいる。このような問題の一つに小火器の不正売買がある。

 この近代兵器のもたらす惨禍は、単に安全の問題だけではない。それは人権や開発や良い統治に対する威嚇でもある。来年、国連は小火器と軽量兵器の不正貿易に関する第一回会議を召集する。それに市民社会が招待され、十二分に参加できることを期待している。
 NGOの連合体は、皆さん方が、若者のあいだにHIV/AIDSが広がるのを止め、逆転させるというわれわれの決めた目標に向かって、私たちとともに働くことを促進することができる。

 私は、この伝染病に冒されている男女やこどもに代わって、皆さんが声をあげ、自覚と防止のメッセージを広げ続け、政府と国際機関に対し、透明性と説明責任を要求してくれることを期待している。私は、一部の国に見られる、この伝染病をめぐる沈黙の陰謀を打ち破るよう、世界中の指導者たちに努力をうながしている。私は、沈黙は死を意味するということを彼らに力説してきた。

 皆さんには、各国政府に対し、国際条約や協定に調印し、批准するよう圧力をかけることによって、多国間の規範を強化し、法的制度を確立するための全世界的なキャンペーンで引き続き成功を積み上げてほしい。条約が批准されたら、今度は条約のもつ諸規範を実施させる手助けをしてほしい。

 国連が誕生して以降、500以上の多国間条約が締結された。それらは、全部まとめて、より良い世界のための包括的法的枠組みを形成している。

 ミレニアム・サミットでは、事務総長として私がその受託者であるいかなる条約や協定にも、各国政府が署名を追加できる特別の設備を準備する。このサミットに先立って、私は各国に書簡を送り、この機会を利用するように勧めた。これらの条約には、世界の諸国民の関心と夢が表明されており、人々の日常生活を改善する可能性が書かれてある。ここでも、私は皆さんが得意としている行動を期待している。即ち、それは国家の理性とは国民の声に応えることだと要求することによっ


て、政府を行動に移らせることである。

 この複雑な時代の諸要求に応えるためには、どんな言葉で使うにしても、共通しているのは、一人ひとりの要求を集団行動にすることで、その要求の声が大きくなるということである。対決よりはコンセンサスを大切にして取組むことにより、より密接に関わってゆくことができる。あえて競争するより、同盟をつくりだす方が、資源を効果的に共同で蓄えることになる。個々の利益を超えて、共通の利益に目を向けることによって、各地域と世界とを結ぶことで、さらに広範な変化をつくりだすことができる。

 固く団結した強い声で、グローバル化が世界中の人々のために機能するようにわれわれに力をかしてほしい。連帯のグローバル化を実施するために働いてほしい。

 これこそが、私のミレニアム報告で各国政府に実施を要請していることである。そして、それはミレニアム報告が実現することを期待していることでもある。それもまた、今日、私たちがこの会議場で見ている、グローバルな「ピープル・パワー」の約束の実現なのである。なぜなら、満員の部屋のたった一人だけの努力でも多数派を形成することができるとしたら、皆さん方が新しい超大国となることは確実だからである。私自身も、国際社会における私たちの他のパートナーに対し、皆さんの発言には必ず注意深く耳を傾けるように働きかけるつもりだ。

 ご清聴に感謝する。ここに来てくれてありがとう。何よりも、このミレニアムの年、われわれの国連誕生から55年後の年を、「われら人民」の考えが、共通の土壌を見出す機会となる年にしていただいたことに感謝する。皆さんの討議の成果が聞けるのを楽しみにしている。

国際平和ビューロー(IPB)

会長 マイブリット・テオリーン



 ギリシャ神話のイカロスは、発明家のダイダロスとノクラトウスという名の奴隷の息子である。ダイダロスとイカロスはクレタのミノス王によって、迷路に幽閉された。ミノス王は陸と海からの脱出ルートをコントロールしていたが、空からの脱出は防ぐことができなかった。これを知っていたダイダロスは、発明家としての能力を発揮して、自分とイカロスのために翼を作った。彼は、蝋とひもを用いてさまざまな長さの棒に羽根をつけ、鳥の翼に似たものを作ったのである。

 翼が出来上がると、ダイダロスはイカロスに、中くらいの高さで飛ぶように注意した。高く飛び過ぎると、太陽が蝋を溶かしてしまうし、低すぎると海水が羽根を濡らしてしまうからである。

 こうしてクレタ島を脱出すると、イカロスは空を飛んでいるうちに有頂天になった。そして父親の忠告を無視して、だんだん高く舞い上がっていった。太陽の熱は翼をつなぎとめていた蝋を溶かし、イカロスは海に落ちて溺れてしまったのである。

 この物語は私たちに何を教えているのだろうか。

 市民社会とは、様々な社会を一つにまとめている蝋である。蝋を無視して、経済的、あるいは軍事的な権力だけに目を向けていると、目標を達成できないばかりか、前よりずっと悪い状態に陥ってしまう可能性が大きい。平和は、全ての主要な担い手が参加しなければ、恒久的なものにはならない。

 国連は、より良い世界の希求において、各国政府、市民社会、民間部門を一つに結集する力をもった唯一の国際機関である。したがって、強力で民主的な国連は、21世紀に人類が直面する多くの課題を達成する前提条件である。

 国家は法律に基づいて建設されるべきである。このことは国際社会についても言える。国連憲章は、私たちが築く国際社会の土台である。したがって国連憲章が、強大な国の国益によって破壊されるのは、非常に重大なことである。

 世界平和の責任は国連にあり、またあらねばならない。武力行使の決定権は国連のみに認められるものでなくてはならない。そして、全ての国はそれを尊重しなければならない。武力行使の禁止こそ、国連憲章の核心であり、これは強制的に実施されねばならない。唯一の超大国は、別の超大国によってではなく、強力で、正常に機能する国連によってのみ均衡を保たれなければならない。

 国連は強化されねばならず、弱体化されてはならない。

 私たちの国連に対する態度は、国連がこれまでおこなってきた、そして現在おこなっている重要で積極的な活動を全て認識したうえでの、批判的な連帯でなければならない。市民団体は、国連の推進者として今後も中心的役割を果たすだろう。オロフ・パルメ前スウェーデン首相の言葉を借りれば、「私たちは攻撃的に考えなければならない。私たちは過去の失望によって、疲れ果てることがあってはならない。重要なのは将来、国連に何が可能なのかということだ」ということである。

 国連が、世界的な民主的組織として、その潜在能力を発揮しなければならない重要分野は4つある。それは平和・軍縮、貧困、人権、民主主義の分野である。

 第一の分野は、平和である。国連は平和の希求から誕生した。「われら、国連の人民は、戦争の惨禍から将来の世代を救うことを決意し」と、国連憲章に書かれている。
これこそが国連の最大の責務である。しかし、この責務を回避してきた政府がいかに多いことか。これらの政府は平和を支持すると主張しているが、平和維持には参加せず、そしておそらくもっと重大なことには、国益のためになる場合には、国連を無視さえするのである。

 安全保障理事会は、シエラレオネでおこなわれている残虐行為への非難の声を高めているが、平和維持で国連への支持を求められると、ルワンダやスレブレニツァの時と同じように、大国は沈黙してしまう。
 
 武力行使の禁止は国連憲章の基本である。あらゆる紛争の解決には、非暴力的な方法が優先されなければならない。国連の旗の下でおこなわれたアメリカ主導の対イラク攻撃は、何がなんでも武力行使を急ぎ、国連の平和維持の役割から遠ざかっていく国の、見事なまでの見本を示した。

 さらに重大なのは、主要な大国が、自国の利益を追求して、国連を完全に除外することである。このような事態は冷戦時代に常に起きていたが、東西の壁の崩壊後、私たちは皆、主要大国が国際法を尊重するだろうと期待した。最近のNATOによるコソボとチェチェンの爆撃は、そうではないことを、あまりに明らかに示した。NATOはそれに輪をかけるように、百万人の難民を出し、インフラを破壊し、住民を傷つけ、分断するという戦争の膨大な被害への対策を、国連に押し付けたのである。そして、今日、アメリカは2001年7月をもって、コソボの平和維持軍から撤退することを検討している。

 核兵器は冷戦の兵器である。冷戦は終ったが、核兵器は残った。核兵器は依然として、地球の平和と安全、全人類の生存、そして地上の生命に対する重大な脅威であり続けている。これは、核兵器保有国が、NPT条約第6条の定める核軍縮を真摯に実行するという義務の履行を拒んでいることに現れている。今こそ、全ての国家が、核兵器の製造、使用、使用の威嚇を禁止し、核兵器廃棄の検証と実施を定める核兵器条約を交渉し、締結する時が来ている。私はこのフォーラムがこの要求を支持すると確信している。

 キャンベラ委員会の提案を受けた新アジェンダ連合の決議は、核保有国に対し、核戦争の危険を減らし、完全な核軍縮に向けた交渉を開始するために、直ちに具体的な措置をとるように求めている。

 最大の大国であるアメリカは、核兵器廃絶こそが目標であるとした先の誓約を果たさなければならない。そしてABM条約を遵守し、CTBTを批准し、START IIIの交渉を始めるとともに、あらゆる形態の新型核兵器開発も中止しなければならない。

 国連には市民社会を組込む潜在的な力があるにもかかわらず、平和の努力においてはなかなかそれができなかった。したがって、私は、南アフリカ、グアテマラ、カンボジア、グルジアなどで、和平プロセスに市民社会を参画させようとした、最近の国連の和平と再建の努力を歓迎する。

 ハーグ平和アピールに見られるような、市民社会自身の独自の努力も同じくらい重要である。昨年、数百の市民社会組織がハーグで会議を開き、人類が直面する最重要課題のいくつかを検討した。ハーグ・アピールの最大の目標は、「戦争の惨禍から将来の世代を救う」という国連の最大の目標達成の条件を作ることであった。

 ハーグ・アピール参加組織は、全ての学校での平和教育および女性を全ての交渉に参加させることを含めた、暴力の文化から平和の文化へ移行するための50の段階から成る計画を発表した。また、戦争の廃止、核兵器廃絶、国連および全世界での男女平等実現の要求を打ち出した。

 市民社会が平和のために果たす役割が、より重視される必要があるのは明白である。優先課題の決定や平和のとりくみにおいて、もっと市民社会の意見を聞かねばならない。国連は加盟国に対し、任意組織を基礎とした、危機や紛争地帯で活動する、訓練された有能な民間平和部隊の設立を勧告すべきである。

 これと同様に重要なのは、国連が全ての平和・軍縮努力で女性の意見を尊重することを保証することである。女性の紛争における経験は、男性の経験とは異なっている。また、平和構築のプロセスや要因についての、女性の視点やニーズも、男性とは異なる。人類の50%の意見が無視されれば、持続可能な平和に必要な重要な要素が欠落する、あるいは見過ごされてしまう恐れがある。

 第二の分野は、貧困である。貧困根絶のたたかいに女性を参加させることも、重要である。世界は、開発のプロセスに、女性のグループや組織をはじめとする市民社会の他の部分も、もっと参加させなければならない。国連は、市民社会のもつこの潜在的な力を発揮させるうえで、重要な役割を果たさなければならない。

 債務軽減の要求は、全世界の市民社会グループから出てきたものである。債務帳消しは必要であり、直ちに実行されるべきである。債務は貧困諸国にとって耐えがたい重荷である。債務帳消しの基本は、貧困根絶にあるべきである。市民社会のパワーは、タンザニアをはじめとする貧困諸国に対する最近の債務帳消しなどをつうじて見ることができる。

 第三の分野は人権である。国連は国際的人権の監視人および人類に対する犯罪の訴追者としての役割を自ら引き受けてきた。私たちは、政治的権利だけでなく経済的、社会的権利をも含むものに拡大して、人権を捉えなければならない。国連は、人々から基本的な経済的、社会的権利を奪い、市民的権利や政治的権利を勝ち取るたたかいをさらに困難にする経済制裁を控えなければならない。

 今日、私たちはイラクに対する経済制裁の悲惨な結果を見ている。セルビア国民も同じ運命になるのだろうか。市民社会は、独裁的支配を受けている諸国の人民に代わって発言する重要な責任がある。そして、国連はその声に耳を傾ける責任がある。同様に重要なことは、市民社会が、ルワンダや旧ユーゴスラビアにおけるレイプや性的暴力の被害者となった女性に代わってしたように、身体的な暴力の犠牲者に代わって発言する時、国連はこれに耳を傾けなければならないということである。国連は、二度と再び、証人の保護や精神的外傷に対するカウンセリングを怠るようなことがあってはならない。

 市民社会は長い間国際刑事裁判所の設立を要求し、これを達成した。しかし、このたたかいは終ったというには程遠い。市民社会は各国政府がローマ条約に調印し、全ての国がこの条約を批准するよう要求し続けなければならない。これが実現してこそ、戦争犯罪者は世界のどこにも隠れられなくなるのである。また、国連は名実ともに人権の世界的な擁護者となれるのである。

 第四の分野は民主主義である。国連は「われら、国連の人民」の名において設立された。これは全ての人民と全ての国家の平等な権利を支持するという認識に基づく決定であった。その後の情勢の展開によって、各国で、また諸国間での格差が拡大した。世界の権力の再配分は、国際協力の前提条件である。国際関係の民主化はかつてないほど必要となっている。

 加盟国は、国連の諸機関において、自らが加盟した諸決定を尊重し、適用し、これに最後まで従う努力をしなければならない。国連システムの民主主義の不足は、特に拒否権や安全保障理事会の構成などに関して、これを是正しなければならない。

 そして全ての加盟国は、期限までに、無条件で、分担金を納入しなければならない。国連がその任務実行の資金を欠いている時に、アメリカが17億ドル以上も分担金を収めていないことは、認められない。金融取引に対する課税であるトービン税、あるいは空輸税な
 どのような、一定の国際的な課税制度を確立しなければならない。
おそらく最も重要なのは、国連と市民との関係の強化であろう。政府間の総会の他に、市民会議を設置するのは、時期尚早かもしれない。しかし、NGOにたいして認めている協議資格制度を、少なくとも総会にも拡大すべきである。

 今日、ここに集まっている私たちの多くが、国際的法秩序としての国連に、壮大な展望をもっている。しかし、成功するためには、イカロスの例に学ばなければならない。私たちは、市民社会の活発な参加こそが、国連を効果的なものにするし、しなければならないということを忘れてはならない。

 政府は翼をあたえてくれる。しかし市民社会という蝋がなければ、国連は決してもてる力を十分に発揮することはできないのである。


第三世界ネットワーク

理事長 マーティン・コー



 私たちは、前世紀から引き継がれた深刻な危機に直面しながら、新しい世紀の始めに集っている。数年前、「歴史の終わり」、すべての国と国民が自由市場、自由主義的民主主義という単一の目標を受け入れることで、思想の対立や物理的紛争が終わると予言した人がいた。

 しかし、冷戦の終焉は普遍的な繁栄も兄弟愛ももたらさなかった。貧困はより根深くなって残り、国と国、階級と階級、男女間の不平等、また、先住民と彼らの資源を植民地化したい者との間の不平等は広がっている。平和と安全の代わりに、紛争と不安がある。そのなかには世界的な圧力の結果で生じた紛争もあり、また不公正と貧困の結果生じたものもある。自然環境の危機もあり、地球と人間の生存そのものが危ぶまれている。原子力、有害化学薬品、遺伝子工学のように、科学技術が道を誤るという危険もある。医療分野では、科学者は抗生物質時代の終わりを予言している。病気を運ぶバクテリアやウィルスが、濫用された抗生物質にうち勝って、新しい疫病の脅威をあたえているからである。

 私たちの時代はまた、グローバル化の広がりにも定義づけられている。この現象には、異なったとりくみ方がある。不可避であり基本的に良いことだ、それに適応して利益を上げることだけを学べばよいという者もある。また、その代償を懸念して、脱落した敗者を救済する何らかのセイフティ・ネットの必要性を提唱する者もいる。真実は、グローバル化の本質とは、大企業と金融機関がより大きな力をもつため、他の会社を乗っ取り、より大きく成長して、より多くの利潤を得るための強い動きであるということだ。世界中で、特に発展途上国で、市場への完全に自由な参入を妨げている各国の障害を取り壊すため、彼らは、金持ちの自国政府に圧力をかけてきた。

 発展途上国の経済は植民地主義時代に痛めつけられた。そのため独立の最初の段階では、これら諸国の政府の多くは、脆弱な国内経済や国内の企業、銀行、農場を後押しする制度を確立した。国内の経済や企業に対し積極的優遇策をとり、外国の大企業による略奪から保護した。これらの大企業は今や、発展途上国の企業や農場を吸収し、自らの独占を広げるため、障害物を取り除こうとしている。こうして私たちは今、貿易、金融、投資の自由化を目の当たりにしている。しかし、大企業やその政府は、自由化によって損をしそうな分野では、自ら保護主義を実践している。たとえば、高い知的所有権基準の全世界への押し付けがそうである。大企業による技術の独占を作り、技術移転を妨げる点で、これは保護主義である。

 今日すすめられているグローバル化は、「一種のアパルトヘイト」である。これはILOのフアン・ソマヴィア事務局長がたった今、彼のスピーチのなかで述べた表現である。グローバル化を「利益をうまく共有し」、「疎外」されたものを助けるという面だけで語ることは、誤解を招き、真の問題を回避することになる。これは、グローバル化は利潤だけを生むという仮定に立っている。しかし、誰かが他の者よりも多くの利益を得ているのだ。実際には、グローバル化はある者には利益を、他の者には損失を生む。さらに悪いことに、利益を生みだすと同じプロセスで、損失を生みだすのである。したがって、勝利者の利益とは、敗者を犠牲にしたものなのである。

 グローバル化は「再植民地化」と呼んでもよいプロセスである。これはサンズ・ブレティン紙のラガヴァン氏がガット(GATT)についての著書「ウルグアイ・ラウンドと南」を書いた時に新しく用いた表現である。新しい形の植民地主義が機能している。人々が奴隷制やアパルトヘイトとたたかった時、奴隷制やアパルトヘイトや植民地主義の利益をうまく共有する見地からものを言ったことはなかった。彼らは奴隷制、アパルトヘイト、植民地主義の制度そのものとたたかった。だから、私たちは、単にグローバル化の利益をうまく共有することだけを語ることはできない。私たちは、今日あるグローバル化の制度とたたかわなければならないのである。

 問題のかなめは、世界における権力と富の不平等な分配である。私たちはこのことを認識すべきであり、この問題を回避してはならない。権力と富をもつ者はそれをもち続け、それを保護することを望む。かくして私たちは、彼らが他人に対して説教することと、自分たち自身の権力と富の独占維持のため守っていることとの間に存在する二重基準を見る。地雷を禁止する運動は成功した。これは人民の運動の勝利である。しかし、核兵器保有国は依然として核兵器を禁止することを拒んでいる。透明性と民主主義を国家レベルで実現するためには、多くの議論があり、たくさんの条件付けがあった。そして私たちNGOもそれぞれの国で、この運動の一部を担ってきた。しかし、主要国は、国際レベルでの民主化を拒んでいる。国際レベルでは、地球的な決定は、主にG8、OECD、ブレトン・ウッズ機関やWTOでなされる。市民団体は言うまでもなく、十分な数の小国の参加もない。より貧しい国には、経済を自由化するように、金持ちの国から大きな圧力がかけられる一方で、先進諸国は自分たちの科学技術の特許に固執し、生物種までも特許化して独占し、発展途上国からの労働力に門戸を閉ざすなどの保護主義を実践している。

 このフォーラムでの中心的な問題の一つは、どのようにして国連の影響力を再活性化させるかということである。実は、私たちが知っているように、国連は効果的でなかったり、無力だから権限を奪われてきたのではなく、透明性が高く、民主的すぎ、決定がすべての国の参加でおこなわれるからこそ、その権限を奪われてしまったのである。安全保障理事会だけは例外である。発展途上国は国連に対し非常に大きな影響力をもっているが、それは決定が1国1票制に基づいているからだ。そのため大国は、1990年代の初期に、国連を改革し、その仕組みを変えることを決め、経済・社会問題に関する国連の権限を、自分たちがコントロールできる機関であるIMF、世界銀行、WTOに移譲した。IMFと世界銀行の決定は、1ドル1票制に基づいている。WTOの意思決定システムは、悪名高い「グリーンルーム(密室)交渉プロセス」を含め、重要な局面になると大部分の発展途上国を排除してきた。

 よって、私たちには世界的機関を民主化し、そこに人民の権利を注入することが必要である。これを実現するためには、大国が国際機関と国際関係に対する支配をゆるめることに同意しなければならない。彼らは、人民の運動と市民社会が、これが自分たちの願いだということを知らしめないかぎり、これに同意しないだろう。

 私たちは民間部門、金融機関、市場、多国籍企業などにおける民主化と透明性を必要としている。吸収・合併を通じた富の集中や、金融投機を通して小国の富を破壊する彼らの能力について、私たちの懸念を声高く表明する必要がある。

 金融システムと制度を変えることが必要である。ワシントンやチェンマイでの抗議行動は、IMFや世界銀行などの金融機関が押し付けた政策によって甚大な損害を受けたことに、今や人々が気づいていることを示した。これら機関の統治システムは変わらなければならないし、その役割も政策も変わらなければならない。あるいは、これらの機関の役割を、特別な、狭い小さい範囲に限定することを含めた、金融システムの変革がなければならない。

 私たちは、多国間貿易システムの改革を必要としている。どんな犠牲を払ってでも自由化をすすめようとするWTOの運営原則は、誤った方向へ導くものであり、混乱を引き起こしている。その協定の多くは不備であり変更されるべきである。たとえば、農業協定で発展途上国に輸入自由化を導入することは、何百万人もの農村の人々の暮らしを脅かし、食料安全保障を脅かす。発展途上国の国内消費用食料生産は、輸入自由化と国内助成に関する協定の義務から除外するべきである。 知的財産に関するTRIPS協定(知的所有権協定)は、医薬品の価格を上昇させ、技術移転を妨げ、生物種の略奪行為を助長させるだろう。多くのNGOは、自由化をさらに促進することを建前とするこの貿易機関において、知的所有権協定の入る余地はない、科学技術に保護主義はいらないと結論づけている。さらに、投資、競争、政府調達のような新たな問題を持ち込むことに対し、モラトリアム(猶予期間)があるべきで、さもなければ、それはさらに、未だ改革できていないWTOに、途方もない権限をさらに付与することになり、破壊的な結果をもたらすことになるだろう。

 国連はもっと力をもつことが必要だ。もちろん、国連も、特に意思決定の仕組みと安全保障理事会のシステムを改革すべきである。「われら人民」に奉仕するために、もっと能率的、効果的であるべきである。またアメリカは、国連に分担金を完納すべきであり、国連をさらに骨抜きにする改革を、分担金支払いの条件にしてはならない。なぜなら、これは脅しの戦術だからである。これらがおこなわれてはじめて、私たちは国連が改革できると認識している。富める国は、国連への分担金支払いを止めることがあってはならない。主要国が、政策づくりと経済・社会問題解決のプログラムにおいて、正当な役割に戻ることに合意してはじめて、国連は再び権限をもつことができる。もちろん、世界銀行、IMF、WTOには、果たすべき重要な役割がある。しかし、これらの役割とは、正しい政策を推進するのにふさわしいものでなければならない。現行のような過大な役割は、適度な規模と機能にまで縮小しなければならない。これらの機関から(そしてG8やOECDのような金持ち国家の排他的な機構から)国連へと、権限と権威を移し戻さなければならない。

 私たち人民は、不平等や紛争によって分断された世界に直面している。私たちは外交官や官僚たちの美辞麗句以上のことをしなければならない。耳に優しい言葉や慎重な言葉を使うのが彼らの仕事かもしれないが、市民社会の私たちは、そのような慎重で、丁重な言葉を使うことを期待されていないのである。私たちは、貧困と紛争と富の不平等の源泉を見極め、それを取り除くために努力しなければならない。

 そうしながら、私たちはまず、何年も、何世紀ものあいだ、社会闘争の先頭に立ってきた人民の英雄や戦士たちに報い、敬意を払わなければならない。奴隷制、封建制、植民地主義の巨大な圧制をくつがえすためにたたかった人々。一般民衆と貧しい人々、小さな農場主や小農民、工場の労働者、失業者やホームレスの人々に権利をあたえるためにたたかった人々。よい自然環境という国民の権利の確立ためにたたかった人々や、有害物質廃棄場に反対してたたかった地域共同体、森や川の破壊に反対してたたかう先住民やその支持者たち。土地の汚染に抵抗する農場主たち。核や化学物質の汚染に反対し、遺伝子工学や生物学的汚染に反対するなど、科学技術の安全で民主的な活用のためにたたかう人々。農地改革と土地の権利のために、人並みの賃金と労働条件という労働者の権利のために、スラムや公有地や造林地に住む貧困者のために、自分の生活を賭してたたかっている人々。外交官や国連内の人々を含め、外交の最前線でとりでを守り、形勢を転換するために最善を尽くしている、各国や国際機関の官僚の人々。

 私たちは何世紀にもわたる、これら戦士や勇敢な闘士たちの精神や教訓を身につけ、それを21世紀という現代のたたかいに引き継ぐこと、そして革新的で効果的な方法を用いて人民に奉仕することを誓う。そして、そうすることで、私たちは世界と私たち自身にも奉仕する。私たち人民は、生き延びて、社会的に公正で、生態学的に持続可能なより良い世界を、そしてその結果としての平和で安全な世界をつくりだすことができる。国連事務総長が今朝、私たちに、国連の活動に仲間として加わるように呼びかけたように、私たちも国連と政府に対し、私たちの仲間になるよう呼びかける。しかし、国連があってもなくても、私たち人民は、より良い世界を実現するという私たちの使命を実行しなければならないのである。



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