核兵器も戦争もない世界へ いま核兵器の廃絶を!
国際情報資料(23)
はじめに
被爆60年、世界の反核運動は、運動を大きく前進させました。しかし、国際政治では大きな困難にぶつかりました。5月の核不拡散条約再検討会議と9月の国連サミットが、世界の人々の期待を裏切り、核兵器廃絶に至る合意を何一つ生み出せないまま終ったのです。その最大の原因は、とりわけ世界最大の核保有国であるアメリカが、自国の核兵器を棚上げしながら、核兵器廃絶の「明確な約束」を含め、いっさいの核軍縮努力を妨げたことにあります。
にもかかわらず、今年の国連第一委員会で、新アジェンダ連合と非同盟運動の決議は、核兵器廃絶の「明確な約束」を含め、1995年、2000年の合意は依然として有効であることを確認し、これを追求する構えを崩しませんでした。国連総会では、新アジェンダ連合の決議は賛成144対反対5と大差で採択され、核兵器廃絶にいたる交渉を求めるマレーシア決議(国際司法裁判所の勧告的意見の後追い決議)に、103カ国が賛成しました(反対29)。この結果は、逆流にもかかわらず、核兵器廃絶廃絶・核軍縮の流れが強固に存在していることを示しています。
さらに、このアメリカの横暴に歯止めをかけなければと、現在の核軍縮審議の停滞を打ち破ろうとする試みが行われました。アメリカの同盟国であるカナダ、ケニアも含め6カ国が第一委員会のもとに小委員会をつくり、核軍縮、ミサイル防衛、消極的安全保障の問題などを議論しようという提案でした。残念ながら、今回の提出は見送られましたが、この行動は、アメリカの足元の同盟国にもブッシュ政権の横暴への批判が広がっていることを物語っています。
今号の国際情報資料には、国連総会第一委員会の軍縮議論と決議の採択に関する基本情報はもとより、6カ国の決議案・声明や、ジャクリーン・カバソの「国連総会第一委員会に変化の兆し」と題する論文など、国連で真に起こったことは何かを理解するうえで、重要な資料を満載しています。
新アジェンダ連合の主要国、メキシコのルイス・アルフォンソ・デアルバ軍縮大使が、現在の停滞を打ち破るためには、核固執勢力を孤立させるような核兵器廃絶の圧倒的な多数派をつくる必要があると述べていますが、この点で、世界の反核平和運動の果たす役割は重要です。核兵器廃絶のグローバルなたたかいで先頭にたっているイギリス、フランス、カナダの反核運動の活動方針などを掲載しました。どの組織も、核兵器廃絶を第一義的な課題としてとりくむ決意です。
また、米軍再編の動き、ミサイル防衛、北朝鮮の核開発計画をめぐる六カ国協議など、今話題のトピックの資料を掲載しています。あわせて、インドのプラフル・ビドワイ氏の論文「世界的核軍縮を放棄したインド」は、アメリカの一貫した世界支配の戦略とかつて非同盟運動のリーダーであったインドの変遷を掘り下げた興味深い読み物です。
今号の編集・翻訳にあたって、高田愛さん、欠塚道子さん、黒田美喜さん、中村みずきさん、片岡文子さん、川原田真弓さん、小玉純一さんの協力を得ました。紙上をお借りして感謝申し上げます。
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