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反核平和運動・原水爆禁止世界大会

原水爆禁止2009年世界大会
国際会議

トマス・マグヌスン
国際平和ビューロー 会長

核兵器廃絶の時機到来

 この発言では、原水爆禁止世界大会に関連する3つのテーマを取上げます。
 第1のテーマは、広島・長崎および現在世界で起こっている戦争の民間人犠牲者です。
 第2のテーマは、軍縮がいかに開発や世界のニーズを満たすことに役立つか、いかに軍事費を福祉に転換できるか、そして核兵器にどれだけの経費が費やされているかです。
 第3のテーマは初めの2つと同じくらい重要で、どうやって私たちの共通の資源を強化して、来年春のNPT再検討会議に影響力を行使できるかです。

 まず、広島・長崎時代から、ガザ、カブール、(ソマリアの)モガディシュに至るまでの民間人の犠牲についてです。

 日本の原水爆禁止世界大会に参加するための航空券を予約した日、私はいくつかの新聞に掲載された、イスラエルのガザにたいする戦争に関するスクープ記事を読みました。これは1月18日の停戦から6か月後に発表されました。「沈黙を破る」というイスラエルの小さなグループが、あの戦争中、実際に何が行われていたのか勇気ある調査を行ったのです。イスラエル兵のインタビューにより、「沈黙を破る」は、民間のパレスチナ人が容赦なく殺されたことを証明しました。軍の命令は定式化されていました。「まず銃を撃て。民間人かどうかを確認するのはその後でいい」。

 このことは、64年前の広島・長崎への原爆投下を思い起こさせます。軍の行為は民間人に直接向けられました。彼らは罪のない普通の日本人で、日米の戦争当事者ではない都市住民で、爆撃実験の標的に選ばれた都市にたまたま住んでいた人達です。

 広島・長崎の犠牲者は、主に民間人でした。最近のガザの戦争も同様で、21日間の近代戦で1400人のパレスチナ人が殺されました。

 第2次世界大戦の時点から現代まで、民間人は軍事標的となってきました。

 現在進行中のアフガン戦争では、タリバン軍と、米国および同盟国の軍隊のあいだで民間人は板ばさみになっています。自爆やテロ行為は、たいてい多くの民間人が集まる場所を標的にしています。ソマリアの残虐な戦争でも、民間人が部族集団、民兵組織、宗教的熱狂者、政府の間で起こった、果てしない戦いの犠牲となりました。

 これらは、いわゆる通常兵器による戦争でした。広島と長崎への爆撃は、周知の通り核兵器によるものです。しかし、いずれも被害者は平和な生活を望んでいる罪もない人々なのです。

 この夏の初め、私は未だ戦争が終わっていない国、イラクを訪ねました。今回の訪問には、イラク北部にある、原爆の対人使用で有名になった広島・長崎のように、化学兵器使用の象徴として知られるようになったハラブジャという小さな町も含まれていました。

 ハラブジャは、1988年3月16日と17日に、サダム・フセインとイラク政府の爆撃機による攻撃を受けました。この攻撃で、小さな村のハラブジャでは、3千〜5千人が即死した上、7千〜1万人が負傷しました。攻撃は、ロケット弾とナパーム弾で開始され、次にヘリコプターからマスタード・ガスや神経ガスのサリンなどをつめた化学爆弾が投下され、まだ死んでない人たちを殺傷しました。

 ハラブジャの記念館に行けば、日常の仕事の最中に襲われ、その場で死んでいった労働者や、女性、老人、子供をかばう親たちなど、化学兵器で殺された人々の写真を見ることができます。ハラブジャの記念館の写真は、広島・長崎の平和祈念館を非常に思い起こさせます。

 ハラブジャ攻撃は、当然ながら人道にたいする犯罪として、また民間人虐殺として非難されるべきものです。そして今日では、生物兵器と化学兵器を禁止する国際条約が締結されています。

 私たちは、ここに、記憶を呼び起こし、行動するために集まりました。大量破壊兵器の最悪の形態である核兵器を禁止するために必要な議論は世界ですべて出尽くしました。
 
 戦争の犠牲者は民間人です。広島と長崎でそうだったように、ガザやアフガニスタン、ソマリア、イラクなど今日の近代戦でもそうであり、世界中の非常に多くの場所で私たちの連帯が必要とされています。

 私の第2のテーマは、開発のための軍縮と核兵器の経費です。

 国際平和ビューローは、開発のための軍縮、という特別プログラムにとりくんでいます。戦争や武器にかかる莫大な経費と、どうしたら、こうした資源が世界の食糧供給、開発促進、戦争リスク抑制、紛争解決支援などのより良い目的に利用できるかに焦点を当てた活動です。

 軍事費は、世界的経済危機の主な要因のひとつです。原水爆禁止世界大会にあわせて、国際平和ビューローは、「核兵器―その対価」という本を出版することにしています。

 核兵器は大量破壊の脅威となるだけでなく、莫大な経費負担を要します。実戦使用での爆風、火災、放射性降下物による被害のみならず、多大な財政的、道義的、政治的コストを核兵器国と核兵器が配備される国に課します。世界的経済危機に陥り、国際社会が気候変動やエネルギー資源の減少への対処法を模索しているというのに、これは、公金の正当な使い道なのでしょうか?

もちろん違います。そして「核兵器―その対価」の冊子は、核兵器反対の国際運動に新しい新鮮な議論をとりいれることをねらっています。

 第3の、そしてこの発言では最後となるテーマは、来年春のNPT再検討会議です。

 NPT再検討会議は、なぜ重要なのでしょうか。

 NPT再検討会議は、私たちにとって、私やみなさん、世界の平和運動や市民団体にとって、核廃絶の要求を地球規模に広める機会となる極めて重要なイベントだと考えます。

NPT再検討会議の議場には入れませんが、今から4月と5月までの期間とNPTの開始までに、宣伝し、私たちの意見を提示し、署名にサインし集め、会議を開き、新聞に意見を投稿し、各国代表全員に、大衆が核軍縮を要求していることを明確に伝える機会を与えてくれるのです。

 重要なのは今です。本日からNPT再検討会議の開始時まで、広島からニューヨークでの会議までの9か月間の行動です!

 昨年、広島市で原水爆禁止世界大会が開催されてから、核兵器廃絶に向かう真の段階に到達する展望は急速に変わりました。

 前回からの一番重要な変化は、もちろん、オバマ大統領が今年初めに有名なプラハの演説で語った通り、核兵器をなくすと実際に発言する大統領がワシントンに新しく誕生したことです。

 プラハで述べたように、世界最強の国の大統領がこう言うのを聞くのは非常にうれしいことです。「本日、私は、米国が核兵器のない世界の平和と安全を追求する決意であることを、信念を持って明言いたします」。

 「核兵器のない世界」とは、前任者のブッシュ大統領の古臭い演説と対照的なだけでなく、その言葉自体もなんと素晴らしい響きではありませんか。

 しかし私は、このような発言は、核兵器の数を削減する実質的段階につながるわけではないと見抜くだけの、十分な経験と知識をみなさんが持っていることを知っています。
 
もし私たち市民社会や世論が、賢明で行動を優先する指向の方法で対応すれば、そうなるかも知れません。しかし、核兵器は未だゼロには程遠く、核兵器廃絶にも遠く及びません。
 
 私たちのビジョン、つまり市民のビジョン、2009年8月の日本での原水爆禁止世界大会国際会議のビジョンを、今日から2010年4月と5月のNPT再検討会議開始時までの期間にできるだけの行動に焦点を当て、2010年に向けた私たちの行動計画と合わせて、間断なく打ち出すことが、やはり有効でしょう。

 この仕事をやり遂げるまでは休んでいる暇はありません!

 私たちはオバマ大統領のビジョンを歓迎する用意もありますが、オバマ大統領があの発言の意味を忘れないように常に確認し続けなければなりません。

 これは私の性格なのですが、善意の意志表明を聞くだけではもの足りず、本当の変革がおこるのを見るまでは懐疑的なのです。演説も結構ですが、変革が必要です。米国政権の政策が新しくなったという証拠を示してもらわなければなりません。

 オバマ大統領がプラハで提示したビジョンの最初の試験が、そのひと月後、モスクワで開かれたオバマ大統領とロシアのメドベージェフ大統領による会談でした。戦略兵器削減条約(START)の再スタートでした。

 オバマ大統領とメドベージェフ大統領の会談では、核兵器のない世界というビジョンを具現化するための初めの一歩がとられたでしょうか?
 いいえ、そのような兆候は見られませんでした。

 たしかに戦略核弾頭とミサイルの削減が合意されました。しかし、それは大幅削減ではなく、しかもゼロに向かうための一歩、核兵器のない世界というビジョンに向けた一歩という発言もありませんでした。

 オバマ大統領―今こそ変革の時です!

 オバマ大統領―今こそ、あなたがアメリカ合衆国の新しい大統領になるために選挙運動をしていた時から掲げていたスローガンを再び持ち出す時です。

 今こそ変革の時です。

 米国とロシアは、最大の核兵器国で、保有する核兵器を削減する最大の責任があります。核技術を持つ他のひと握りの国は、技術力の差はありますが、イギリスのトライデントやインドが最近、海軍艦船に搭載する決定をしたことに見られるように、核保有維持の姿勢を継続し、核技術を改良するという点では共通しています。

 核兵器国の一部は不拡散条約の加盟国ですが、非加盟国もあります。北朝鮮は、独特の問題を提示しています。北朝鮮は、世界で最も隠し事が多く、統制され、秘密主義な国のひとつです。国民への食糧供給やまともな開発など、国民の多くの基本的ニーズが満たされていないにもかかわらず、核技術の開発を優先させています。これはとても恐ろしいことです。

 しかし、隠された政治や秘密、市民が管理できない開発を言うなら、核政策についてはすべての大国、すべての核兵器国が「北朝鮮流」行動をとり、市民に影響力と情報を与えていないのです。

 モスクワでのオバマ・メドベージェフ会談では、核弾頭はそれほどの問題ではなく、わずかな数の削減にとどまりました。実際は、この会談は大量破壊兵器の維持についての会談だったのです。2人の大統領は、文明人を標榜しながら、2009年に実際に同席し、地球上のすべての生物を何度も殺せるだけの数の大量破壊兵器を維持し、備蓄し、使用に備えることに共に合意したのです。

これは許すことができません。

 生物兵器は禁止されました。
 化学兵器は禁止されました。
 地雷は禁止されました。
 クラスター爆弾も禁止されます。

 変革は可能です。

 今こそ核兵器を禁止する時が来たのです。

 

ヒラニャ・ラル・シュレスタ
ネパール・アジア・アフリカ人民連帯機構副議長/
元ネパール国会外交委員長・大使
ネパール

 まず初めに、主催者の方々に、世界大会へのご招待と、温かいおもてなしをいただいたことに感謝申し上げます。

 ネパール・アジア・アフリカ人民連帯機構(AAPSO)を代表し、原水爆禁止世界大会2009にご参加の各国代表の方々ならびに平和活動家のみなさんに、熱烈な平和のご挨拶をおくります。

 日本のみなさんは、核兵器の危険性を世界に知らせるために、一生懸命に取り組まれてきました。みなさんのその努力は、平和と友好のために働く世界中の人々に勇気を与えています。わたしたちは、核兵器のない世界という大義への支持と連帯の意を表明いたします。

 ネパールは、歴史的な第2次民主化運動が成功を遂げて以降、民主連邦共和国へと向かって進んでいます。武力による衝突は終わりました。わたしたちは、現在、和平プロセスを新憲法制定という理論的帰結へ導くという任務に取り組んでいます。また「暴力への崇拝」をうちやぶって平和の文化を構築するという課題に取り組んでいます。

 アジア地域において、ネパールは、3つの核保有国に挟まれています。中国・インド・パキスタンです。核戦争やチェルノブイリ原発事故のような核事故が起これば、ネパールは死の灰を浴び、未曾有の荒廃に襲われるでしょう。わたしたち、南アジア人民が望んでいるのは、この地域の非核化です。

 心配なのは、イランや北朝鮮といった比較的新しい国々もまた、核の道を歩みだしているということです。軍備の増強をはかるこれらの国々は、しばしば自衛や力の均衡について口にします。しかしながら、核の力とは恐怖の象徴でしかないのです。だからこそ、わたしたちは、完全な軍縮と、どの国も核兵器を保有せず、保有している国はそれを廃棄した、非核の世界を望んでいるのです。

 冷戦は、ソ連邦の崩壊と共に終結したと言われています。冷戦後、ワルシャワ条約機構という軍事同盟のひとつが解体されました。しかし、もうひとつの好戦的な軍事機構であったNATOはそのまま残るどころか、東方へとその勢力を拡大、新たな緊張を作り出しているのです。わたしたちが求めているのは、あらゆる軍事同盟の解消と軍事基地の撤去です。

 世界平和の維持において、国連がより効果的な役割を果たすよう求めます。そのためには、第2次世界大戦の遺物的イデオロギーである戦勝国と敗戦国というメンタリティを克服する必要があるでしょう。日本が国連安保理の常任理事国の一員になるよう推薦します。日本は核戦争の被害を受けた国だからこそ、その常任理事国入りは、64年前にヒロシマとナガサキで起こった悲劇を繰り返させないためにも理にかなっています。被爆者の切なる平和への願いに応えるものになるのではないでしょうか。

 ネパール・アジア・アフリカ人民連帯機構は、首相や著名人も主賓として出席するヒロシマ・デーを毎年開催しています。わたしたちは、草の根で学校レベルの教育キャンペーンを打ち出してきました。また、核攻撃とその悲惨さをうったえるヒロシマ・ナガサキ写真展なども開催してきました。ネパールの核兵器反対の世論は強大です。

 核兵器のない21世紀を築くために、より力強い運動を開始しましょう!2010年のNPT再検討会議を成功させましょう!ノーモアヒロシマ!ノーモアナガサキ!

 

ブルース・ギャグノン
宇宙の兵器と原子力に反対するグローバルネットワーク
アメリカ

 核廃絶への希望に立ちはだかる宇宙テクノロジー

 64年前、広島・長崎にアメリカが行った核爆撃を記憶によみがえらせるこの日、みなさんとご一緒できてうれしく思います。

 私たちのグローバルネットワークは、1992年、宇宙空間の核軍事化をやめさせる運動をつくりあげるために結成されました。

 「2020年へのビジョン」という重要な計画文書の中で、米国宇宙司令部は、「宇宙空間の支配とは、宇宙へのアクセス、宇宙媒体内での作戦の自由を保障する能力であり、他者に宇宙を利用させないようにする能力である」と述べ、アメリカが宇宙を「支配・統治」することをよびかけました。

 今日、地上戦を管制しているのは軍事衛星です。ペンタゴンが2003年、「衝撃と畏怖」作戦で、イラク侵略の初期攻撃に使用した兵器の70パーセントは、宇宙衛星によって目標物に打ち込まれました。

 アフガニスタンとパキスタンで、いま多くの市民を殺害している無人飛行機は、実は米国内の基地にあるコンピューター端末装置の前でパイロットが動かしているのです。瞬時にして、パイロットたちは無人飛行機に取り付けられたカメラからアフガニスタンの地上を見、衛星技術を利用して破壊力あるミサイルを発射することができるのです。

 「核を持たざる国々」は核攻撃をおそれているだけでなく、「ミサイル防衛」という楯で援護された剣であるアメリカの通常兵器による先制攻撃にも恐怖を感じています。悲しいことに、これら「持たざる」国々は、自分たちにとって唯一の効果的な対抗策は、核兵器を開発することだと考えているのです。

  今日、アメリカは世界中で、特にアジア・太平洋地域で、PAC3(訳注:地対空誘導弾パトリオット3)やTHAADミサイル(訳注:戦域高高度防衛ミサイルあるいは終末高高度防衛ミサイル)防衛計画を押し進めています。ペンタゴンは、ポーランドやチェコ共和国で「ミサイル防衛」配備を進めています。この「全領域支配」計画を進める上で役にたつ新世代型軍事衛星との通信を推進するため、いま多くの国々で、アメリカの宇宙戦争のためのレーダー設備が拡大され、グレードアップされています。

 現在、韓国と日本で実行されつつある米軍再編は、「敵意をもった攻撃的な」北朝鮮への封じ込め政策としての軍事拡大を正当化しつつ、中国を封じ込めるための地域的攻撃的戦略における主要な要素です。

 それを暴露するようなコメントを4月に米国防長官ロバート・ゲイツが述べています。彼は「より多くの艦船に弾道ミサイル防衛を設置するよう改造しているが、それは対中国政策に役立つだろう」と言ったのです。

この壊れやすい母なる地球上に存在している化石燃料という自然資源が、いま、なくなりつつあることを私たちはみんな知っています。多くの専門家たちは、もう石油資源の在庫はピークを過ぎ、石油への需要が高まっているその時に、坂を転げ落ちるように急速に減少していると言っています。

 ロシアの天然ガス埋蔵量は世界最大であり、またかなりの量の石油を供給しています。アメリカは最近ルーマニアとブルガリアに軍事基地を作り、まもなくアルバニアでも基地を増やそうとしています。NATOは、ラトビア、リトアニア、エストニアと、ロシアの国境近くまで東方へ拡大しつつあります。続いてグルジアとウクライナが、いま急速にグローバル化しているNATO軍事同盟の加盟国候補リストに並んでいます。

 かつてソ連の大統領だったミハイル・ゴルバチョフは、4月、ローマでの「核の危険を克服する」会議の開会式でのスピーチで、次のように指摘しました。「世界はいまグローバルな危機に陥っているが、それはこれまでに国際政治が経験したことのない試練である。・・・ロシアとアメリカが保有している核兵器の量は、いまなおその他の国々が保有する核兵器を全てあわせたものよりも多い。結局のところ、核の危険をなくすには核兵器の廃絶しかないのである。国際関係を非軍事的なものにし、軍事予算を削減し、新たな兵器の製造に終止符をうち、宇宙空間の軍事化を防ぐことに本気で取り組まない限り、核兵器のない世界についての話し合いはすべて一貫性のない美辞麗句にすぎなくなってしまうだろう」。

 アメリカとロシアが最近モスクワで行った核兵器に関する交渉の直前、オバマ政権の国家安全保障会議ロシア上級部長は、マスコミに対して次のように述べました。「われわれはロシアを必要としていない。NATOの拡張やミサイル防衛に関して、われわれがロシアに対して再確認したり、与えたり、取引きすることはない」。

 7月6日の米ロ首脳会談で生まれた暫定合意に基づき、2大国が保有している核については、少なくとも「とても控えめな」変化が、近いうちに期待できるようです。

 大きなチェスの盤上でアメリカがこうした軍事的動きをしているのを、中国がじっと座って見ているわけではありません。2007年、中国は、「対衛星」兵器能力があることを世界に示すために、弾道ミサイルを用いて、機能していない自国の衛星のひとつを破壊しました。これによって、宇宙塵が地球の軌道上を周回するという危険が大きくなりました。

 グローバルネットワークは、宇宙の問題に関する意識を高め運動をつくりあげるために、アメリカで、そして世界中で活動しています。それぞれの国で、アメリカの「ミサイル防衛」システムの配備に反対するグループを支援するため、がんばっています。

 アメリカでは、まだまだ多くの人が、オバマ大統領が変化をもたらしてくれるだろうという希望を持っています。しかし彼は、2010年のアメリカの軍事支出の5%増額を主張し、また、いまのところ米軍事帝国の抜本的縮小を支持していません。

 アメリカでは、兵器が国家最大の輸出産業となっており、軍事物資生産への経済的依存を強める地域社会が増えています。私たちの団体は、軍産複合体を、平和的で環境的にも持続可能な産業に転換することへ支持をよびかけています。

 世界の人々は核の悪夢が終わることを望んでいます。何よりも、世界の人々は、今日存在しているこのとてつもない偽善を終わらせたいと思っているのです。

 私たちは、核兵器といわゆる「ミサイル防衛」の攻撃的な本質との間にある恐ろしい関係を語らなければなりません。増大しつつある軍事同盟と通常軍の拡大が、核廃絶という私たちの願いを否定するものだということを認識しなければなりません。

 私は、2010年のNPT再検討会議の前に、世界のすべての平和勢力が、各地で核兵器とミサイル防衛に反対するいっせい週末行動を行おうというよびかけが、この追悼の日々の間に日本から発表されることを希望しています。その過程で、私たちは、社会進歩や気候変動防止のために同じように活動している多くのさまざまに異なる分野の運動も結集しなければなりません。それはまた、これらのすべての問題を結びつけると同時に、未来に向けた新しい変革のビジョンを提案するグローバルなよびかけの時になることでしょう。

 私たちグローバルネットワークの会員は、この重要な課題でみなさん1人ひとりとともに活動する覚悟です。ノーモア広島、ノーモア長崎、ノーモア被爆者。ノーモアミサイル防衛。ありがとうございました。

 

李俊揆(イ・ジュンキュ)
平和ネットワーク運営委員
韓国

「北朝鮮核問題」から見る「核のない世界」への課題

 私は、2003年に初めて広島に来て、2005年から日本原水協の原水爆禁止世界大会に参加しているので、広島・長崎と縁を結んでから9年目になります。皆さんの中には私より、はるかに長いあいだ原水爆禁止世界大会に参加している方々がおられると思います。しかしあえて、私が自分自身の話で始めるのは、今年のように緊急な課題が山積しており、それと同時にそれらの課題の解決への道がはっきりと見えて来た時が私の体験の中にはなかったからです。

北朝鮮の核問題とオバマの「プラハ演説」

 昨年まで核施設「無能力化(disabling)」や核プログラムの申告、検証問題協議、アメリカの「対北朝鮮テロ支援国家指定」解除まで進展した「北朝鮮の核問題」が、今年に入ってから急激に悪化し、5月25日、2度目の核実験強行に至りました。北朝鮮は、ウラン濃縮を通した核抑止力の増強を宣言しており、6者協議の再開は予測できない状態です。
そのような局面が「核のない世界」を訴えた4月5日のオバマ大統領のプラハ演説をひとつのきっかけにしているのは皮肉なことです。と言うのも、「核のない世界」という人類の最大課題がどれほど緊急であるかを示しているのです。もうひとつは、オバマ政権は「プラハ演説」をきっかけに、対北朝鮮強硬策を決行したとも言えるのです。オバマ大統領は演説で北朝鮮に対して、「ルールは拘束力を持つものでなければならない」、「違反は、罰せられなければならない」など強い口調で警告のメッセージを発信しています。実際にオバマ政権は対北朝鮮制裁の方向に踏み切ったのであります。「麻生‐李明博(イ・ミョンバク)の対北朝鮮強硬策連帯」に、アメリカが合流したかたちになったのです。
もちろん、北朝鮮はロケット(正確には、SLV: Satellite Launch Vehicle)の発射を「自制すべきであった」と思います。理由が何であれ、2度にわたった核実験は容認しがたい行動です。しかし振りかえってみると、北朝鮮が国際海事機関(IMO)に、ロケットの軌道や飛行禁止地域、漁業禁止地域などの関連事項を通報したり、以前とは違った行動を取ったのは事実です。

 昨年12月、膠着した検証問題協議への不満、日韓両政府の強硬な声による6者協議の難航、金正日(キム・ジョンイル)国防委員長の「健康問題」や「後継者問題(succession problem)」に関しての韓・米・日の高官などの発言への不満、オバマ政権の対北朝鮮政策の不明瞭さへの焦りを抱いていた北朝鮮が「人工衛星」発射に対しての米・日・韓や国連の制裁の動きに反発しているのが、今現在のひとつのポイントです。そのポイントを踏まえて、問題解決の方法を見つけることができると思います。

3つの誤りと3つの課題

 今現在の状況の中で、3つの誤りに注意を払うべきであります。その中で、現状打破の突破口、そして問題解決のための課題が見えてくると思います。

 ひとつは、「核の傘」や核武装を中心にしている「核抑止力の悪循環」であります。北朝鮮がいつから「核抑止力」を決意したのかは議論の余地がありますが、2005年核保有宣言、2006年と2009年の2回にわたる核実験を通して、核抑止力あるいはその増強でアメリカや関連諸国を攻め立てているのは確かです。それに対して、韓国と日本では「核の傘」の強化、それから核武装論まで出ています。アメリカはそれに応じています。

 しかし核兵器で戦争が抑止され、平和が守られるというのは根拠のない幻想にすぎないのです。恐怖でいっぱいの現実ですが、核兵器によって作り出されたマトリックスの中で恐怖に目をそらしながら生きていくことなのです。アメリカの前職高位官僚ら4人が「ウォールストリートジャーナル」に投稿した論文は、今日、核抑止はもう働かないという前提に立っています。

 しかし韓国と日本の政府が手を握ってアメリカの核兵器に頼り続けるというのです。今日必要なのは北朝鮮を「核兵器のない世界へ」という世界史の流れに引き入れることではないでしょうか。むしろ北朝鮮の核兵器放棄が軌道に乗れば、アメリカの「核の傘」から脱却すべきなのではないでしょうか。

 もうひとつは、制裁と軍事的対応の動きです。制裁と圧迫に基づいた対北朝鮮政策は核兵器やミサイル問題の解決ではなく問題を悪化するだけだということです。北朝鮮が2回にわたって核実験を強行した以上、ある程度の「規制(regulation)」はやむを得ないかもしれません。しかし最近の制裁論にはもう少し圧迫すれば、内部問題を抱えている北朝鮮が崩壊するであろうという思惑がひそんでいると見られます。それは災いを招く考え方です。今現在必要なのは形にこだわらず、対話と交渉の場を設けることなのです。

 最後に、現在の局面をきっかけに北朝鮮の内部問題が話題になっています。韓・日・米のマスコミはそのような状況を煽っています。現に北朝鮮は内部の問題を抱えています。2012年には「強盛大国の大きな扉を開く」というタイムテーブルによる焦りも見えます。しかし最近の後継者問題などをめぐった議論は、興味本位あるいはレジームチェンジ(Regime Change)の正当化に利用されているとも言えます。そのような外部環境は北朝鮮の「被包囲意識」を強める一方であり、核兵器への進みを刺激することです。

 我々は、「北朝鮮核問題」の歴史を冷静に分析すべきです。その意味は、北朝鮮核問題の解決を巡った歩みの成果と課題を重く受け止めることであり、さらには「北朝鮮核問題」が「何をするかわからない変な国」の問題ではなく、朝鮮半島と東アジアの歴史の文脈で捉えなければならないことなのです。我々が「北朝鮮核問題」の解決、その根本的な解決を朝鮮半島の平和体制構築、東アジアの冷戦構図の解体―朝米関係正常化、日朝関係正常化―から探さなければならない理由がそこにあります。

 

 

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