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原水爆禁止2004年世界大会

84日広島大会・開会総会

フセイン・ハニフ

マレーシア国連(ウィーン)常駐代表・大使

議長、来賓ならびに参加者のみなさん、

1. まず最初に原水爆禁止2004年世界大会実行委員会に、私を招待し発言の機会を与えてくださったことに心から感謝します。またこの機会に、市民社会、特にNGOが、この世界大会を主催するなど、核兵器廃絶をめざした私たちの共同の努力で果している敬意を表します。

2. 核軍縮の分野での前進が明らかに不足している時期に、この重要な会議に参加することは私にとって光栄です。この世界大会が、各国政府やNGOの代表に、世界から核兵器をなくす共通の努力において、国境を越えた世界的な連帯をさらに強化する道を与え続けることを私は熱望しています。世界大会は、また、59年前にあの悲劇的な出来事で亡くなられた方々、被害をうけた犠牲者の方々に敬意を表する機会をあたえてくれることからも重要です。あの経験は、私たちに、核兵器を完全になくすためにさらに努力し、たたかうという決意を新たにさせる、厳しい戒めになっています。私たちはこの崇高な目標を達成し、人類の安全と生存が保障されるまで、手をゆるめることはできません。

3. 冷戦が終わったにもかかわらず、私たちはこんにちもなお核兵器の存在から生じる人類の自滅の脅威に直面しています。大量破壊兵器、とくに核兵器の蓄積は、人類の未来を保護するというより、脅かしています。既存の核兵器だけでも全世界の人口を絶滅させるに十分以上にあります。長期化する核兵器の存在は国際的平和と安全保障を脅かし続けています。マレーシアが、核兵器の完全廃絶こそ、核戦争勃発とこの兵器の使用を阻止する最も効果的な保障であると強く信じているのもそのためです。

4. 過去数年間、核兵器廃絶達成にむけて、核軍縮の分野で十分な進展がみられないことは、マレーシアにとって重大な問題です。一部の核保有国からは、自国の核兵器削減のため二国間および一方的な行動をおこしたという報告がされました。しかし、私たちはいつでも発射できる状態で配備されている残存の核兵器は、依然としてかなりの数であり、人類にとって重大な脅威であると考えています。これに関して、マレーシアは核兵器保有国の自国の核兵器を完全になくすという明確な約束を含め、2000年のNPT再検討会議で合意された実践的な13の措置の完全履行を再度よびかけるものです。またマレーシアは2002年5月24日にロシア連邦とアメリカのあいだで戦略攻撃兵器の削減条約が調印されたことを歓迎するものです。しかし、この合意は、2000年のNPT再検討会議で核兵器保有国が約束した、核兵器の後戻りできない削減に代わるものでは決してありません。

5. マレーシアは2004年4月26日から5月7日までニューヨークで開催された2005年NPT再検討会議にむけた第3回準備委員会でなんら前進がみられなかったことに深く失望しています。私たち全員が知っているように、2000年NPT再検討会議から2005年再検討会議にたいして勧告をおこなうよう委任された第3回準備委員会は、実質的な問題は言うにおよばず、手続き問題についてさえも合意に至ることができませんでした。現在わが国が議長国をつとめる非同盟運動の加盟国が多くの努力をおこなったにもかかわらず、十分な前進がなかったのは、NPTに調印した非同盟運動諸国と核兵器保有国のあいだで、とくに核保有国を含むNPT加盟国が核軍縮に取組むという義務に関するNPT条約第6条の履行について、あいかわらず立場がことなっていたためでした。

6. マレーシアが第3回準備委員会の結果を深く憂慮しているのは、そこでまったく進展がなかったからだけではなく、核保有国が2000年NPT再検討会議で合意した約束や義務を、いまや反故にしようとしているためです。核軍縮につながる保有核兵器の完全廃絶を達成するという核保有国の明確な約束については、とくにそれが言えます。この約束によって核保有国は核兵器の系統的かつ段階的な削減のための13の実践的措置の実施に合意したのです。第3回準備委員会の議論で、一部の核保有国は繰り返し2000年NPT再検討会議についてのいかなる言及も退けました。このような一部の核保有国による約束の撤回を、NPT体制全体を危険にさらす可能性があるとして、マレーシアは重大な憂慮をもって見ています。さらに、準備委員会で核保有国がとった立場は、CTBTや軍縮会議の進展にも悪影響をおよぼすことから、核軍縮にとって重大な意味をもっています。9・11の出来事以降、核保有国、特にアメリカは核軍縮問題を無視して、核拡散や査察問題により注目を集めようとしているように思われます。

7. これにかんして、NPTで結ばれた基本的協定が、非核保有国から核兵器保有権を取上げる代わりとして、平和目的での原子力開発という基本的で不可譲の権利を保障するというものであったことを想起したいと思います。一方、核保有国には、早期の核軍拡競争停止と核軍縮に関する効果的措置と、厳密かつ実効的な国際管理のもとでの全面完全軍縮条約について誠意をもって交渉を続ける義務があります。したがって、私たちの考えでは、核拡散と核軍縮の問題は、同じくらい重要で、不可分に関連しています。どちらかがもう一方より重要であるのではないし、一方を他方の後回しにすべきではないし、片方を他方より厳しく施行するべきでもありません。世界から核兵器による惨事をなくすという私たちの繰返してきた目標を真剣に達成しようとするのであれば、両方の前線での進展が必要なのです。

8. 2005年NPT再検討会議第3回準備委員会で、核保有国がニューヨークの2000年NPT再検討会議へのいかなる言及も拒否したことは、あらゆる形態の核実験の禁止と究極的な核兵器廃絶をめざす包括的実験禁止条約(CTBT)も危うくなりました。なぜなら2000年NPT再検討会議で合意された13の実践的措置の第一番目が、CTBTの発効であるからです。一部の核保有国が2000年NPT再検討会議へのいかなる言及も拒否していることが、すでに十分な進展のないCTBT発効を、さらに遅らせることを私たちは極めて憂慮しています。このままだと、CTBTが発効するかどうかは不確実です。インド、パキスタン、北朝鮮はまだこれに調印していません。これまでに172のCTBT加盟国のうち、115カ国がこれを批准したことには励まされるものの、条約付録2にリストアップされている発効のために批准が必要な44カ国のうち11カ国はいまだに未批准です。これら未批准国には2つの核保有国、すなわち中国とアメリカが含まれています。

9. 心配なのはアメリカがこの条約を批准しないことを宣言し、実際2004年9月3日から9日までウィーンで開かれる第3回CTBT発効促進会議をボイコットしたことです。この会議をアメリカがボイコットするのはこれが2度目で、アメリカのCTBTにたいするやる気のない態度を反映しています。これにかんして、私はアメリカに指導的な役割を果し、いまの立場を見直すようよびかけています。なぜならマレーシアとしては、核保有国がCTBTを批准することが、付録2にリストアップされている残りの国々に批准を奨励すると考えるからです。同時に、条約の付録2にリストアップされている国にたいし、直ちに条約に調印あるいは批准することを呼びかけています。CTBTは調印受付を開始してからほぼ8年になりますが、それがいつ発効するかを示す兆候は全く見られません。マレーシアは、CTBTは核兵器拡散防止に意義ある貢献をすることで、国際平和と安全保障を前進させるものと考えています。また、より破壊力の大きな新しい核兵器の開発をストップさせ、それによって核軍縮プロセスを加速化するものです。

10. CTBT交渉の終わりに、核保有国は、この条約によって既存核兵器の改良や新型核兵器開発が阻止されることになるという保証を与えたことを想起したいと思います。しかし、ある核保有国は、最近の核政策の見直しにおいて、「バンカー・バスターズ」とよばれる低爆発力で地面を貫通する新世代核兵器を開発中であると述べたのです。この行動は明らかにCTBTの目標と目的に反し、これに違反するものです。この国が公表した、「先制攻撃」ドクトリンのもとで、疑わしい地下指令センターや、大量破壊兵器の地下貯蔵庫を破壊するために、この兵器を使用するという意思は、既存のNPT体制を弱体化するだけではなく、他の核保有国や非核保有国が、同じ兵器を開発する軍拡競争への参加することをうながすことになるかもしれません。マレーシアはCTBTが発効するまで、核爆発実験をおこなえる全ての国にたいし、核実験モラトリアムを厳守するように呼びかけるものです。

11. 2000年NPT再検討会議の13の実践的措置の4番目は、「軍縮会議において核軍縮を扱うよう委任された適当な機関を設置する必要性」の概要を述べています。マレーシアは軍縮会議を重視していますが、それは私たちがこの機関を、軍縮にかんする唯一の多国間交渉の場であると考えているからです。したがってマレーシアは、1998年以降、軍縮会議が作業計画についていまだに合意できていないことを深く懸念しています。作業計画がなければ、核軍縮をあつかう機関を軍縮会議内に設置するうえでの何の進展もないでしょう。軍縮会議の現在の行き詰まりは、この機関の信頼性を損ないつつありますが、これは核軍縮に関する特別委員会の設置にたいして一部の核保有国がかたくなな態度をとっているからです。2004年2月16日から3月14日まで軍縮会議議長国だったマレーシアは、各国代表団が作業計画について一致した合意にたっするよう最大限の努力をしました。しかし、各国代表団のあいだの実質的な意見の隔たりはあまりに大きく、これを埋めることはできませんでした。これにかんして、マレーシアは2003年2月にクアラルンプールで開かれた第13回非同盟運動サミットにおいて、各国首脳がおこなった、軍縮会議は最大の優先課題として、できるだけすみやかに特別軍縮委員会を設置せよという呼びかけを再度強調するものです。

12. マレーシアとしては、核兵器が完全になくなるまで、核保有国が非核保有国にたいし安全を約束する、不変で無条件かつ法的拘束力のある条約の締結にむけての努力が続けられるべきであると考えています。私たちの考えでは、核戦争を阻止するためには、核保有国がいかなるときにも、いかなる状況でも、核兵器を使用あるいは使用の脅しをしないと約束することが適切です。その約束を強化するため、マレーシアは核保有国に対して東南アジア非核兵器地帯にかんする条約であるバンコック条約の議定書に調印し、できるだけ早期に安全保障の国際条約を締結するようよびかけています。これまでのところ、バンコック条約とその議定書について東南アジア諸国連合(ASEAN)と合意に達したのは、核保有国のなかで中国だけです。私たちはこの動きを温かく歓迎するとともに、他の核保有国も同様の行動を起こすことを期待しています。

13. またマレーシアは、核分裂物質のカット・オフ条約交渉は、核兵器拡散と核戦争勃発を阻止するうえで、次の重要なステップであると考えます。マレーシアは核兵器および他の爆発装置用の核分裂物質の生産を禁止する非差別的、多国間、国際的および有効な検証可能な条約を求めるよびかけを支持しつつも、この条約の交渉には既存の核分裂物質も対象として含めるべきであると考えます。

14. マレーシアは国際司法裁判所(ICJ)が1996年7月8日にだした、核兵器使用および使用の脅迫の合法性にかんする勧告的意見を最重視しています。マレーシアはこのICJの判断が、核兵器を廃絶せよという権威ある法的なよびかけであることから、勧告的意見を核軍縮の分野における歴史的な断固とした判断であると考えます。厳密かつ実効的な管理のもとで、あらゆる面での核軍縮につながる交渉を誠実に続け、これを完了させるという義務が存在するとICJは全員一致で結論しました。マレーシアは、究極的な完全廃絶を目標にした、系統的かつ段階的な核兵器の削減こそが、世界の軍縮日程の最大の優先事項でなければならないと強く考えています。そのためマレーシアは、核軍縮にかんする決議58/56 ICJの核兵器使用および使用の脅迫の合法性にかんする勧告的意見のフォローアップにかんする決議58/46を共同で提出し、これら決議は2003年の第58回国連総会でそれぞれ112票と165票の過半数票を得て採択されました。残念なことに、この意見は核保有国からは無視され続けています。

15. マレーシアは非核兵器地帯の創出は核戦争阻止におけるもう一つの重要な軍縮措置であると強く確信しています。非核地帯創出は世界および各地域の平和を強化するだけでなく、核不拡散体制を強化し、核軍縮の目標実現に資するものです。マレーシアはバンコック条約加盟国として、ASEAN加盟国と密接に協力し、東南アジア非核兵器地帯を強化するために活動し続けています。私は、核兵器のない世界の実現のために、核保有国が非核兵器地帯にかんする条約に調印し、これを批准することの重要性を強調するものです。また、このような非核兵器地帯の存在しない地域、とくに中東、南アジア、北東アジアのような情勢不安定な地域において非核兵器地帯創出を促進する努力が強化されるべきです。

16. 過去数年間、核軍縮の分野での後退があったものの、私たちは落胆したり、やる気を失ってはいけません。逆に、私たちは、これらの後退をはげみにして、この分野での本当の前進を求めて努力を強化すべきです。

17. マレーシアは核軍縮問題での真の前進は、核保有国が自分たちの保有する核兵器を削減し、やがて廃絶するための具体的な措置をとらなければ実現できないと強く確信しています。また同時に、他の国が核兵器を獲得することを阻止するためにあらゆる努力が尽くされるべきです。

18. マレーシアは核軍縮の促進においてNGOがおこなってきた努力、とくに核兵器のおよぼす脅威を強調する努力を評価しています。マレーシアは、NGOはこの崇高な大義において不可欠なパートナーであると考えます。NGOおよび市民社会のメンバーは、軍縮の促進、とりわけ核兵器がおよぼし続けている脅威について注意を喚起するために重要な役割を果すことができます。私たちは軍縮プロセスに多くのNGOが参加していることが示している、市民社会の支持と貴重な役割に敬意を表するものです。また、私たちは、地球上からあのおぞましい兵器をなくすための崇高なたたかいに、日本のNGOが活発に参加していることを喜び、それに励まされています。

19. 私はマレーシアが、長引く核兵器の存在は国家の不安感を増大させていることから、国際平和と安全保障は抑止ドクトリンや戦略的優位性では実現できないと確信していることを強調するものです。核兵器を完全になくすことができなければ、国際緊張を悪化させるだけでなく、核兵器拡散の危険性も増すことになります。世界が核兵器を「保有する国」と「保有しない国」に二分されているかぎり、世界は核兵器の使用によって皆殺しにあう危険に脅かされ続けるでしょう。したがって、核兵器を使用させない絶対的な保障は、核兵器を完全に廃絶し、地上からなくしてしまうことです。政府代表と市民社会の代表が共同してたたかい、核のない世界という私たちの崇高な大義を実現しようではありませんか。

20. 個人的なことですが、初めて広島原爆資料館を見学し、広島と長崎の人々の受けた痛みや苦しみを目の当たりにした今、私は核兵器は抑止のための兵器などではなく、人類に大きな不幸と苦しみをもたらす兵器であると前より強く確信するようになりました。マレーシアは非同盟運動の現議長国として核兵器の使用および使用の脅迫を防ぐ唯一の絶対的な保証である核兵器完全廃絶をめざして共同するよう最大限の努力をするつもりです。私はNGOが私たちと力を合わせて、この崇高な目標を達成することを期待しています。

ありがとうございました。

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