原水爆禁止2002年世界大会
国際会議

アジア太平洋キリスト者平和会議 事務局長
カラパラ・V・パウロス

NATO - 冷戦の再来か、それとも新帝国主義か

1. 広島と長崎で例年、開催されている世界大会および国際会議は、両都市への原爆投下の結果を議論するためだけの催しではありません。この国際的な催しは、世界中の平和のとりくみを強化するための、トレンドセッター、つまり方向付けを与える役割を果たしています。世界平和に対するいかなる脅威も、この世界大会に集う人々の関心事であるはずです。この短い文章の中で私は、核兵器のない世界をめざす私たちの行く手を阻むNATOについて述べますが、この懸念を共有することは、この場に集うすべての平和活動家にとって必須の義務であると思います。

2. NATOの領域を世界中に広げるという米国の決定は、世界平和への直接的な脅威です。平和を愛する世界中の人々がNATOとワルシャワ条約機構の解体を強く要求しているときに、欧州および全世界で真の安全保障体制を形成するのではなく、大規模な再軍備プログラムが進められています。

3. ベルリンの壁が崩壊したとき、米国は、共産主義の「危険」は永遠に除去され、冷戦は過去のものになったと人々に信じさせました。しかし、米国はその新たな可能性を利用して軍備プログラムを縮小し人類に平和を還元するのではなく、米国の覇権をいかにして世界中に拡大できるかを考えはじめたのです。

4. (サダム・フセインに対する)湾岸戦争の勝利を確固としたものとする中で、米国は新たな政策を開始しました。すなわち、他のすべての諸国に対して市場改革を強制し、それに従わない国に対しては軍事力を使うという脅しをかけたのです。これが、いわゆる「新世界秩序」の始まりです。

5. 国連によって監視されることになっているとしても、NATOは米国の「軍隊」にほかなりません。米国は、中欧および東欧に何十億ドルもかかる再軍備をさせるという危険な政策を開始しましたが、この地域は武器貿易の新たな市場になるでしょう。この再軍備の動きを正当化するため、旧ソ連に変わる新たな敵を「作り出す」必要が生じました。米国は、中国、およびかつては米国自身が共産主義を崩壊させるために利用したイスラム系の運動にこの役割を担わせることに成功しました。

6. これは、新旧のNATO加盟国の納税者に何十億という負担をかけることになるでしょう。NATOの拡大により、1989年以来、軍備の透明性を基礎としていたロシアと西欧諸国の関係が、再び軍事対立的なものになることは間違いありません。そのために、ロシアを中心とした新たな安全保障同盟が生まれ、冷戦の状況が再来しかねないことが非常に懸念されます。

7. NATOの新加盟国は財政とインフラが乏しく、熟練した技術者や通信システムも限られているため、NATOの拡大は、それらの諸国にとって非常に財政負担の大きいものになるでしょう。新加盟国での軍事支出は80%増加すると見られており、それによって、経済と社会の発展のため苦闘しているそれらの国々の予算に大きな重荷がのしかかることになります。

8. NATOの拡大は、その域外の諸国にも重大な脅威を与えるでしょう。実際に、真の社会科学者たちは、世界平和への最大の脅威は南北の分断であると考えています。不平等、環境破壊、一般人民の権力の喪失と貧困の進行により、南の国々はテロリズムや宗教的な原理主義と提携せざるを得なくなっています。つまり、NATOの拡大は、南北の格差を広げるだけでなく、欧州を要塞に変え、欧州以外の世界は危険の高い地域であるとみなすようにしてしまうのです。このように、NATOの拡大は、不安定さを助長することにしかなりません。NATOは軍事的装備はまったく不自由なく手に入るからです。

ノーモア・ヒロシマ— NATOを倒しましょう。