【反核平和運動・原水協の声明と決議】
<2012年度運動方針>
核兵器全面禁止、非核平和の日本へ新たな飛躍をめざして奮闘しよう
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日本原水協第84回全国理事会決定(2012年2月4〜5日東京)
はじめに—第84回全国理事会の任務
この一年、日本原水協は2010年NPT再検討会議の到達点を踏まえ、新たなステップとして「核兵器全面禁止のアピール」署名を発足させたことをはじめ、被爆国の運動として内外でイニシアチブを発揮し、世論と運動を前進させるために奮闘してきた。また、3月11日の巨大地震と津波、史上最悪レベルの事故となった東電・福島第一原発の事故に直面し、全国的に被災者救援の行動に立ちあがるとともに、放射線被害の根絶、原発からの撤退と自然エネルギーへの転換を求める世論の構築にも積極的役割を果たしてきた。
情勢が激動し、世界各地で様々な分野の運動がひろがる中で2012年は、原水爆禁止の運動にとってもきわめて重要な年になろうとしている。
日本原水協は、新たな署名運動をはじめとする全国の草の根での取り組み、核兵器全面禁止をめざす国際的共同、核兵器禁止に役割を果たしうる非核平和の日本への転換、放射線被害を根絶する運動、原水協の組織的前進など、自らの活動を通じて2012年を新たな転換点とするよう全力を挙げなければならない。
そのために第84回全国理事会は、核兵器廃絶をめぐる世界政治と運動の到達点、現在の情勢の特徴と課題を明らかにし、核兵器全面禁止・廃絶、非核・平和の日本をめざす2012年度の運動方針を討議、決定する。また決算、予算を決定し、次期の運動の先頭に立つ役員を選出する。また、日本原水協の目的、事業にかかわって、会則の追加・補強について審議する。
I. 核兵器全面禁止へ−情勢と運動の到達点、課題
被爆67年を迎える2012年、核兵器をめぐる世界の大勢は、逆流や抵抗を含みながらも、核兵器全面禁止・廃絶の方向へと確実に流れている。
1. 核兵器廃絶の到達点—国際政治の動向から
国際政治では、2010年NPT再検討会議の合意の実行をめぐり、とりわけ核兵器禁止条約の交渉開始を最大の焦点に、大きく発展し続けている。
昨年の第66回国連総会は、NPT再検討会議での「核兵器のない世界の平和と安全の達成」「核保有国の自国の核兵器の完全廃絶の明確な約束」などを確認し、合意の実行を求める新アジェンダ連合の決議は169対6、核兵器条約の交渉開始を求めるマレーシア提案が130対26の大差で、中東非核兵器地帯の創設決議が無投票でそれぞれ採択された。この投票結果は、核兵器の廃絶がもはや逆転することのできない世界の大勢であることを改めて示すものである。
第一委員会の審議は、次の核不拡散条約(NPT)再検討会議(2015年)への準備プロセスの開始をにらんで、「核兵器のない世界の平和と安全を達成する」という合意の実行を求める新たな攻勢の場となった。
国連加盟国の3分の2ちかい118カ国を結集する非同盟運動は、5月にインドネシア・バリ島で閣僚会議を開き、合意した「核兵器全面廃絶に関する声明」に基づいて、核兵器の「開発、製造、取得、実験、貯蔵、譲渡、使用、使用脅迫」のすべてを禁止する、期限を切った核兵器廃絶の「段階的プログラム」を決める国際会議を速やかに開催するよう主張し、また、その実現を妨げる核抑止力論についても「核兵器の使用や核脅迫を正当化するもの」と厳しく批判して、すべての軍事・安全保障政策から核兵器の役割を一掃するよう強く迫った。
また、非同盟運動とは別に、NATO加盟国でもあるノルウェーは中立国オーストリアやメキシコなどとともに、核兵器禁止を実現させる立場から、交渉機能を失っているジュネーブの軍縮会議に代わり、国連の責任で三つの作業グループを設置し核兵器廃絶、非核兵器国への安全保障(消極的安全保障)、核分裂物質生産禁止条約(カットオフ条約)について、1年の猶予を置いて行動に移ることを提案した。
第一委員会の審議のさなか、国連当局が先のNPT再検討会議での合意に基づいて折衝し、2012年の中東非核兵器地帯化国際会議の開催地をフィンランドとし、フィンランド政府高官を開催の準備担当者と指名した。緊張が高まるイランの核開発問題は、あくまで平和的外交的に解決されるべきであり、武力の行使に断固反対する。中東非核兵器地帯の実現は、この地域の平和と安全にとどまらず、NPT合意の履行、「核兵器のない世界」の歴史的プロセスにとっても重要な意義がある。イスラエルの核保有を認める「二重基準」はその重大な障害であり、きびしく退けられなければならない。
こうした国際政治の変化を生み出す上で、被爆国日本の世論と運動が決定的な役割を果たしている。日本原水協は、第一委員会開会3日目の10月5日、全国から寄せられた102万9031筆の署名を目録とし、776名の首長署名(現物)とともに、会場で第一委員会議長と軍縮担当国連上級代表に提出した。第一委員会開会の冒頭、ドゥアルテ上級代表は、平和市長会議や日本原水協が取り組むこれらの署名について、世界を席巻する民主主義革命の流れが軍縮分野にも訪れている証拠として高く評価し、国連総会が世界最大の民主機関として、これに応えるよう促した。
また、潘基文事務総長もつづく国連創立記念日、10月24日に行った講演で、まもなく70億に達する人類の平和と安全のために「核兵器のない世界」の実現をよびかけ、それへの世界諸国民の支持の証として「数百万の人々の署名」を挙げた。
国連・諸国政府との共同を通じて、国際政治を動かしうるという、NPT再検討会議以来の流れは今日いっそう明確になっている。
2. 非核・平和の日本の実現をめざして
2012年を展望してのもう一つの重要な課題は、唯一の被爆国として、また平和憲法と「非核三原則」を持つ国として、核兵器全面禁止のイニシアチブをとる国へと日本を転換させていくことにある。
核兵器の禁止を求める強い国民世論を前に、2009年9月、鳩山首相(当時)は安保理特別会合で「非核三原則を堅持し、核兵器廃絶の先頭に立つ」と宣言した。だが、実際にはそれ以後、民主党政権は自らの宣言に逆行する態度を取り続けている。
日本政府が毎年、国連総会に提案している決議では、そのタイトルを「核兵器全面廃絶の新たな決意」から「核兵器全面廃絶の共同行動」に変えた。だが内容的には、相変わらず「核兵器全面禁止」の必要になんら言及せず、昨年の決議では国際的にも厳しく批判され続けてきた「究極的廃絶」論をまたぞろ復活させた。マレーシアなどの真に核兵器の廃絶につながる決議にはこれまで同様、アメリカに受け入れられるアプローチでないと棄権し、水を差す態度さえ取り続けている。
だが、アメリカの「核の傘」への依存を前提とする核兵器廃絶へのこうした姿勢は、国際紛争の解決手段としての武力による威嚇や武力行使を禁じたみずからの憲法の精神に反するばかりか、核兵器廃絶の世界の流れにも日本国民の非核平和の願いにも逆行するものでしかない。
日本がアメリカの「核抑止力」に依存する背景には、対米追随とともに、日本の平和と安全を軍事的な「抑止力」で担保しようとする考えがある。2003年8月、朝鮮半島の非核化をめぐる6者協議の発足を前に、日本政府は、たとえ北朝鮮が核兵器開発を放棄しても、アメリカは「核兵器の不使用を確約しない」よう求めた(同年8月22日、読売新聞)。この姿勢は、現在の民主党政権下でも変わっていない。2010年12月に出された新「防衛大綱」も、「核抑止力を中心とする米国の拡大抑止は不可欠であり、その信頼性の維持・強化のために米国と緊密に協力」すると明言している。自分の国は「核の傘」の下にいながら、他の国に「核の放棄」や「核兵器の廃絶」を求めても、説得力が持てないのは当然である。
いま国民の中には、沖縄・名護への普天間基地の移設、自民党政権当時の核持ち込みの密約の事実上の追認、日本の市場をアメリカの言いなりに開くTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉への参加、大企業への減税と国民への増税、消費税増税など、民主党政治の自民党化を目の当たりにし、被災者の立場に立った震災復興、原発からの撤退、TPP交渉参加反対、軍事費削減をはじめ、暮らしと命を守り、自主的で民主的な国の進路と核兵器のない平和で公正な世界を求める強い願いと行動が広がっている。
この間のとりくみを通じて、首長、議長、自治体関係者の「核兵器全面禁止のアピール」への賛同署名は1600人を超え、そのうち首長は780人(全首長の45%)に達している。被災地をはじめ全国の努力により、署名は約150万筆に到達した。北海道七飯町では町長を先頭に、町民過半数署名をめざす「核兵器をなくす会」が結成されるなどの経験も生まれている。
日本原水協は、広範な国民各層と対話を広げ、共同を強めながら、もっとも広範な国民各層の支持を得て広がり続けている新アピール署名を軸に、核兵器廃絶、非核・平和の日本のために大きく行動を広げ、また、放射線被害の根絶、原発からの撤退、自然エネルギーへの転換の運動との連帯を強めていく。
3. 「核抑止力」論の批判と克服は、反核平和運動の重要課題
核兵器の全面禁止を達成するうえで、「核抑止力」論を克服することは、決定的に重要な課題である。
核兵器廃絶を要求する強い国際世論を前に、核保有国は先のNPT再検討会議でも、「核兵器のない世界の平和と安全を達成する」ことを「目標」とし、「自国の核兵器の完全廃絶」を「明確な約束」として再確認することを受け入れた。
だが、一方で、軍備管理・軍縮にかかわる舞台では「核兵器のない世界」を口にしながらも、アメリカなど一部の核保有国は現実の軍事・安全保障戦略では、「テロリスト」や「拡散」の危険を口実に、「核抑止」「拡大抑止」など、核による威嚇の政策を引き続き追求している。
未臨界核実験や少量のプルトニウムを使った新たな形の核実験の強行、核兵器の維持・改良のためのインフラ整備、トライデント戦略原潜の更新、「ミサイル防衛」網の世界的な構築、核積載可能艦船の展開を続けている。
しかし、どのような口実を設けても、核兵器の保有や威嚇はそれ自体、国際紛争解決の手段としての武力の使用や威嚇を禁じた平和のルールに対する最悪の逆行であるばかりか、2011年世界大会「国際会議宣言」も指摘したように、それに対抗する側の核兵器の開発や増強を誘引せざるを得ない。この間の北朝鮮の核開発、最近のロシアによる新たな核弾頭配備の発表など、いずれも、「抑止力」の名による核脅迫の応酬の有害さを示すものである。
アメリカをはじめ世界の核保有国、軍事同盟諸国でも、いま、「核抑止力」論とそれに基づく核軍備の維持・近代化に対する強い批判が広がっている。核兵器廃絶の促進、核不拡散のどの角度からも「核抑止力」論を批判し、克服していくことは、とりわけ核保有国や「核の傘」への依存政策をとる国の運動にとって引き続き重要な課題である。
II. 2012年の活動計画
壊滅的な破壊と深刻な放射能汚染をもたらした東日本大震災と東電・福島第一原発事故からまもなく1年。この間、被災地支援と復興のための活動や放射線から人びとの安全をまもる活動がとりくまれ、国民のあいだに助け合いと新しい連帯の輪がひろがっている。この連帯の輪を力に、広島・長崎の被爆の実相と核兵器の非人道性、放射線被害の実態を広範な人びとのあいだに語りひろげ、核兵器廃絶の世論と運動を大きく発展させる。「核兵器全面禁止のアピール」署名を軸に、日本と世界の世論を結集し、核兵器全面禁止へと結実させていくために以下のとりくみに全力を挙げる。
1. 世界諸国民と連帯した核兵器全面禁止キャンペーンの推進
ことし4月30日から、次回NPT再検討会議第一回準備委員会がオーストリアの首都ウィーンで開催される。「核兵器のない世界」の合意を行動に移すよう主張する多くの国の政府が、会議に向けて行動を起こしており、また、平和市長会議が核兵器禁止条約の交渉開始の要求を確認し、世界各国でも、核軍縮、核兵器の撤去、核・軍事予算の削減など、さまざまな反核平和運動の取り組みが強まっている。
日本原水協は、「核兵器のない世界」の「達成」という合意を実行させるため、第一回準備委員会の開会に向けて、NPTのすべての締約国およびインド、パキスタン、北朝鮮、イスラエルの非締約国の政府・首脳に対し、核兵器全面禁止のアクションを直ちに起こすよう求める呼びかけを行う。
第一回準備委員会の開催期間中、国際平和ビューロー(IPB)や、オーストリアや周辺諸国の平和団体などとも協調し、またオーストリア政府の協賛も追求して、ウィーンで「原爆展」を開催する。
「原爆展」では、3・1ビキニデーをメドにいま日本被団協が作成している新しい被爆写真パネル(タイトル「ヒロシマ・ナガサキ 原爆と人間」)を展示し、内外での新たな普及の出発点とし、合わせて被爆体験の語り伝え、新アピール署名の普及に取り組む。
ウィーンでの「原爆展」に呼応して、47都道府県すべてで原爆展を開催し、さらに全市町村での原爆展に発展させる。それぞれの被爆者のみなさんを支え、原爆展の開催地ごとに、被爆体験継承の新たな取り組みの出発となるよう位置づける。
ウィーンでの原爆展、5月6日の国民平和大行進・東京—広島コースの出発に向けて、「核兵器全面禁止のアピール」署名の取り組みと、自治体、地域の諸団体などへの共同の取り組みの申し入れなど、「地域ぐるみ」の運動発展のための計画と取り組みを具体化する。
また、2012年度中のフィンランド開催が決まった「中東非核兵器地帯国際会議」に向けても、開催地のフィンランド、当該国のイスラエルやアラブ諸国の運動とも協調して、同様の取り組みを追求する。
2. 新アピール署名の飛躍を
4月のNPT再検討会議第一回準備委員会、秋の第67回国連総会(第一委員会)のそれぞれに代表団を派遣し、署名の提出(目録)を行う。
核兵器の全面禁止を実現させる署名という位置づけにふさわしい全国的な取り組みとするため、�@4月30日のNPT第一回準備委員会、�A8月の原水爆禁止2012年世界大会(ヒロシマ・ナガサキデー)、�B10月初め(第一月曜日は1日)、�C年末のそれぞれを節目として、署名の集約・発表を行う。
新アピール署名の目標は、国民の圧倒的多数の願いを形とし、国際政治に反映させることにあり、すべての地域で思想・信条を超えた協力と地域ぐるみ、住民ぐるみの運動に発展させることが成功のカギである。
この間の全国の経験に学び、平和市長会議加盟都市、非核宣言自治体をはじめ、公的機関への働きかけを重視する。NPT第一回準備委員会での提出をはじめ、節目ごとの機会を生かし、地域ごとに申し入れや協力した行動、宣伝などを計画し、取り組みを前進させる。
各界各分野の著名人の賛同を広げ、適切な形で発表・アピールを行う。各都道府県、地域ごとにも賛同者を組織し発表する。
毎月の6・9行動を全国的な統一行動として発展させる。毎月行われている6・9行動への加盟団体や世界大会に参加した代表・個人などの参加を増やし、また、青年、文化、宗教者など様々な階層、ジャンルの人びとの参加と協力によって、楽しくやりがいのある取り組みにし、また、これまで行われていないところでも、地域原水協や平和行進実行委員会のあるすべての地域で行動となるよう、意思統一と経験交流を強める。
行動の継続・発展のカギとして、3・1パンフや世界大会パンフ、原水協通信などを活用した学習会や討論、「署名推進交流会」をあらゆる機会に計画する。
3. 非核平和の日本をめざして
日本原水協は、核兵器廃絶の転換点とすべきこの年に、日本がその役割を果たす国とするために国民世論を高めるよう、全力を挙げる。
1)NPT再検討会議第一回準備委員会に向けて、世界各国政府への要請とともに、日本政府に対して要請行動を行う。平和市長会議加盟自治体をはじめ全国の自治体の協力も得て、要請内容を広く国民に知らせ、また、国際的にも日本国民の願いを代表するものとして広く普及する。
2)日本を「核の傘」から離脱させ、核兵器の日本持ち込みを許している核密約を破棄させ、「非核三原則」を厳密に実行させるためにも、「核兵器全面禁止のアピール」は核兵器廃絶と共通の国民的土台をつくり固めるものである。そのためにも、全国の自治体首長をはじめ、すべての市町村での住民ぐるみの署名のひろがりを創りだすことが重要である。
3)「核密約」の破棄と非核三原則の厳守・法制化、原子力空母「ジョージ・ワシントン」の母港化撤回をはじめ、核積載可能艦船の撤去と寄港拒否を要求する。
「核密約」の存在を完全に否定することができなくなった政府は、新たに「前ブッシュ大統領が戦術核兵器の撤去を発表したから」との理由で、核積載可能艦船の日本寄港を無条件に受け入れ続けている。だが、前ブッシュ大統領の発表とは、アメリカの都合次第で何の発表もなしにいつでも変えられるものであり、アメリカ自身、「いつでも再配備できる体制を維持する」ことを決めているものであり、現に米国は、個別の艦船について、核兵器の積載を「肯定も否定もしない」政策を適用し続けている。
日本原水協は、日本政府が核兵器の持ち込みを許さない日本の立場を国際的に通告・宣言し、非核「神戸方式」に学び、すべての核保有国の艦船の寄港に当たり、「非核の証明」の提出を求めるよう要求する。また、米海軍が朝鮮半島有事を想定し本州の日本海側と九州の港湾を重要視しているとの報道もある中で、該当地域をはじめ、すべての関連自治体に米艦船の寄港要請に対して同様の態度をとるよう働きかける。
核持ち込みの危険、海水の放射能汚染の危険などを住民に知らせ、住民の中に運動を広げる努力を強める。シンポジウム「東京湾の原子力空母—その危険性を検証する」(仮称)を開催する。
4)米国政府は、1月5日に発表した「国防戦略指針:米国の地球的な指導的役割を維持する—21世紀国防の優先課題」で、危機的な国家財政への対応として世界の軍事支出総額の半分を占めるアメリカの軍事費に一定の「調整」を行うことを認めざるを得なかったが、その中でも、「アジア・太平洋」は米国の将来がかかるところとして、重視し続け、同盟国にはいっそうの肩代わりを求める方向さえ打ち出している。
日本原水協は、「核の傘」の名による核脅迫や「ミサイル防衛」体制の増強、核持ち込みの危険にも直接結びついた日米同盟体制の「深化」に反対し、普天間基地の無条件撤去をはじめ、米軍基地・施設の縮小・撤去、自衛隊基地の共同使用反対などの運動に強く連帯する。
4. 3・1ビキニデー、国民平和大行進、2012年世界大会の成功へ
1)目前に迫った3・1ビキニデーを、2012年度原水爆禁止運動の全国的な決起の場として大きく成功させる。
ビキニデーパンフに基づく学習を力に、全国すべての地域で新アピール署名の取り組みを強化し、静岡・焼津に代表を送るよう全力を挙げて取り組む。ことしのビキニデーは全日程が平日に行われるが、学校の休みや代休など、様々な可能性を追求し、とりわくこれからを担う若い世代が参加できるよう、全国で努力を強める。
ビキニデーでは、アメリカ、グァム、韓国、マーシャルなどアジア・太平洋にかかわる運動代表との交流を深めるとともに、2012年世界大会をめざして日本原水協が取り組む諸分野での交流を発展させる。
2)原水爆禁止国民平和大行進は、3カ月に渡り全国で延べ10万人の人々が行動する、日本原水協が取り組む最大の全国行動であり、全国の自治体や地域社会ともっとも広い接点を持ち、核兵器廃絶の願いを世界大会に運ぶ重要な行動である。
2012年を核兵器全面禁止への新たな転換点にするということしの運動の位置づけにふさわしく、5月6日、東京〜広島コースの夢の島出発集会を重視し、成功させる。全国11の基幹コースと網の目行進を通じて、行進が全国1742(2012.1.1現在)のすべての自治体を通過し、自治体と住民に新アピール署名など、共同の取り組みを訴えられるよう今から準備を開始する。
すべてのところで昨年を上回る取り組みをめざすとともに、通過するそれぞれのところで住民の共感や参加を得られる行進となるよう、若者や多様なジャンル・階層の人々の参加と創造性の発揮を重視する。
行進ペナント、団扇、DVD「歩く」、ミニリーフ、マフラータオルなど、2012年版行進グッズを普及・活用する。
3)原水爆禁止2012年世界大会を、政府、公的機関、NGO、草の根運動の協力・共同の前進の場、世界の反核平和運動、核被害者、平和にかかわる広範な運動と個人の結集の場、日本の原水爆禁止運動の協力と結集の場として成功するよう、全力を挙げる。
国際政治の中で広がる「核兵器禁止」の流れを反映させ、また、とりわけ先のNPT・ニューヨーク行動でも見られた世界の草の根の運動の結集と核兵器全面禁止への共同行動の発展を重視する。世界大会への取り組みを通じ、すべての都道府県で原水爆禁止運動の新たな広がりと強固な基盤を築くよう、大会準備の取り組みを早くから開始する。
5. 被爆者援護・連帯
広島と長崎の被爆から67年目を迎える今も、被爆者は、みずからの体験を繰り返させまいとする核兵器廃絶、「ノーモア・ヒバクシャ」の強い願いを持っている。他方、被爆者を苦しめ続けてきた国の援護・補償は、原爆症認定問題で国が司法判断と国民的な批判を前に改善を約束した後も被爆者が納得する改善に至っていない。
日本原水協の基本目標の一つである「被爆者援護・連帯」の原点を重視し、被爆の実相を内外で次の世代に伝え、国家補償による被爆者援護を、との被爆者の要求をみずからの課題として推進する。
1)被爆者の体験と思いを伝える努力を支援し、ビキニデー、世界大会をはじめ、日常的にもそれぞれの団体、都道府県、地域で被爆者との結びつきを強め、被爆の実相普及の機会をつくる。8月6日、9日などを前にした原爆展や被爆体験を聞く集いなどの開催を自治体に働きかけ、被爆者の声と体験を地域に普及する努力をよびかける。
NPT第一回準備委員会を出発点に、新たに作成される新しい被爆写真パネルを内外に広く普及する。2012年世界大会に向けて世界に「贈る運動」を企画するとともに、全国すべての都道府県で被団協とともに自治体やこれまでも実績のある様々な団体に普及をはかる。
この10年、世界大会を前に取り組まれてきた青年たちの被爆者訪問の取り組みはとりわけ貴重であり、すべての都道府県で青年と被爆者を援助し、この取り組みを継続・発展させる。
また、「記憶遺産の継承」など、日本被団協などほかの団体が取り組んでいる様々な運動とも協力し、共同の事業として「被爆体験の継承」に取り組む。
2)国家補償に基づく被爆者援護法をという要求は、日本政府の開戦責任、被爆者を放置した責任、対米請求権を放棄した責任のすべてに照らして、被爆者の根源的な要求であり、その実現を強く支持する。
同時に、現行の「援護法」の下でも、政府は血の通った援護施策を拒否し続け、相次ぐ原爆症認定訴訟での敗北と認定行政改善の和解ののちにも、なお、多くの被爆者が機械的に認定を拒否される事例が後を絶たない。そればかりか、不当に認定却下処分を受けた被爆者が、大阪地裁での提訴をはじめとして、広島、熊本、札幌、名古屋、岡山でもこれに続き、現在59名が集団訴訟後も新規に提訴して、再び裁判で解決をせざるをえないような状況も生れている。現行の認定制度の問題の早急な解決のために、日本被団協とともに全力をあげる。
原水協は、海外に同様の仕打ちを受けている在外被爆者を含め、全国の被爆者とのつながりを強め、なお解決していない被爆者手帳の申請から「黒い雨」など放射性降下物による被害、原爆症認定などを含め、被爆者を援助するために、全国で体制を強化する。そのために、�@中央、地方で被団協や被爆者とのつながりを抜本的に強め、密にする、�A原水協に加盟する関係諸団体や医師、法律家、行政などとも話しあい、被爆者援護・連帯部を強化する、�B被団協と被爆者を支援する団体の活動を多面的に援助する被爆者・援護基金の創設など、具体的な方策の検討を開始する。援護連帯2000万募金を成功させる。
6. 放射線被害の根絶、原発からの撤退、自然エネルギーへの転換を
東電・福島第一原発事故は、国際原子力事象評価尺度のレベル7という史上最悪の事故となり、深刻な放射能汚染をもたらした。現在もなお進行中の福島第一原発の深刻な事故と膨大な放射能汚染は、改めて原子力が、兵器としてはもちろん、民生用エネルギーとしても国民の安全を犠牲にしかねない未完の技術であることを示している。
日本原水協は、日本をはじめ世界でひろがる原発からの撤退と自然エネルギーへの転換を要求する運動との連帯を発展させる。核兵器と原発の関係や放射線被害の実態について学び、ひろげる。
政府に対して、きめの細かい放射能測定と結果の公表、万全な除染など住民と環境への安全対策の徹底、被災者の救済と補償を要求する。また原発の再稼動、プルトニウム方式、高速増殖炉「もんじゅ」の運転再開、六ヶ所村の再処理工場の再開、MOX燃料の使用、計画中の14機の原発建設などすべてを中止すること、原発から撤退し、自然エネルギーの開発推進を要求する。日本の原発輸出に反対する。
当面、福島第一原発事故による被災地・被災者の救済と補償、復旧を求める運動を支援する。12月13日に結成された「原発をなくす全国連絡会」に参加し行動する。原子力や放射線被害に関わる多くの分野の研究者、専門家などの協力を得て、核兵器廃絶と日本の原子力政策・原発の問題点、放射線から国民を守ることなどをテーマに、シンポジウムや学習会などを企画する。(4月11日、東京)
7. 日本原水協の強化
核兵器のない世界の実現が国際政治の合意となり、いまやそれを実行させる世界的な草の根の世論と運動が求められているとき、日本原水協と世界大会には核兵器全面禁止を主唱し続けた運動として、それをリードし、促進する重要な役割が求められている。そのためにも、当面するビキニデー、原爆展、平和行進、世界大会など一つ一つの取り組みを通じて中央、都道府県、地域の原水協を拡大・強化することが決定的に重要である。
1)日本原水協、都道府県原水協の加盟団体を増やすための働きかけを強める。また、加盟団体の協力とともに、「個人は地域原水協を通じて参加する」との日本原水協の会則を生かし、署名、平和行進、世界大会への代表派遣の一つ一つを通じ、個人会員を増やし、地域原水協を拡大・強化する。加入をよびかける簡易なリーフ(団体・個人兼用)を作成する。若い世代を育てるための特別な努力を強める。
この一年で、7道府県で事務局長が交代し、若返りがはかられた。日本原水協の機関会議での経験交流とともに、ブロックでの交流を重視する。都道府県原水協のかなめとなる事務局の確立のために加盟団体の協力を得ながら体制強化をはかる。
2)日本原水協の情宣活動を強化する。「原水協通信」の紙面改善の努力とともに、当面、世界大会までに5000部を突破し、早期に6000部を目標に読者を増やす。また、この間改善を続けているホームページなど、インターネットを通じた内外への発信をさらに強化する。
3)日本原水協とともに、都道府県原水協の財政基盤を強化する。加盟団体の増加、地域原水協を再建・強化、個人役員・会員の強化などによる会費収入、世界大会代表の増加と原水協募金、パンフレットなど世界大会資材とちひろカレンダーの普及の取組強化など、一つ一つの取り組みを強め、また、平和行進などさまざまな取り組みで新たな資材を創出し、財政強化に結びつける。
2012年版「ちひろカレンダー」は、総数で12万2500本が普及された。岩手、宮城、福島の被災地へ贈る運動(1000本以上)をはじめ、新たな普及への全国的な努力が強められ、貴重な経験が作られた。この間の最大の教訓である、カレンダー普及の目標と計画の早期確立、通年での普及活動にとりくみ、抜本的な前進に転じる。
以上
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