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原水協(原水爆禁止日本協議会)
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ビキニデー

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2015年3・1ビキニデー日本原水協集会・国際交流会議
ジョゼフ・ガーソン「平和と地球:核兵器廃絶の風雨」

アメリカフレンズ奉仕委員会
ジョゼフ・ガーソン

 いまなお全容が解明されていない広島・長崎への原爆投下という犯罪から70年、そして、この原爆の1000倍を超える爆発力のビキニ水爆実験から61年となる今年は、過去を振り返り考える機会です。意図的であれ偶発的であれ、爆発すれば生き地獄を作り出し、地球上の全生物を壊滅させる核兵器を廃絶しようとする私たちの決意を強めさせてくれる年であり、ブラボー実験被害者を悼み、いのちと人類生存のために決意を新たにする時です。

 私は30年にわたって静岡、焼津、広島、長崎、東京を何度も訪れる機会を得て、日本と世界の核兵器廃絶を目指す運動にささやかながら貢献できたことを光栄に思います。みなさんから学んだことを活かして、アメリカで人々の意識を高め、反核・平和、正義、自由を求める運動を構築してきました。ここ日本で私は、類まれなる勇気と不屈さを持つ素晴らしい被爆者の方々に出会いました。大石又七さん、渡辺千恵子さん、山口仙二さん、谷口稜曄さん、そして私の親しい友人でもある嘉屋重順子さんなどです。また、日本の核兵器廃絶運動、反基地・平和運動の友人たちから学び、彼らの勇気と不屈さを自分のものにしようと努力してきました。ですので、まず初めに、私は心から日本のみなさんにお礼を申し上げたいと思います。ありがとうございます。

 今日は辛いこともお話しせねばならないので、その前にまず、私たちが収めた勝利の話から始めましょう。それは人々の運動が勝利できるだけでなく実際に勝利することを確信させてくれます。日本の平和運動と国際的な支援も得て、それまで顔を隠してきた被爆者たちが国連の会議場や国連総会の壇上から訴え、何度もノーベル平和賞に推薦されるほどの力強い世界の声となりました。大気圏核実験は近隣だけでなく数千マイルも離れた風下地域の住民にも「死の灰」を降らせましたが、私たちの運動で禁止されました。1980年代、米ソ間の軍拡競争により人類は全滅の瀬戸際に立たされましたが、反核運動はこれを一時的にせよ凍結させました。そして運動は冷戦の終結に大きな役割を果たしました。また、神戸、ボストン、ニューヨーク、サンフランシスコなどの都市では、港が核基地にされるのを食い止めました。それ以来私たちは、政治的には安全でも実は人類絶滅につながる軍備管理にのみ焦点を当てた核兵器をめぐる国際的論争を、世界の核兵器の完全廃絶をいつどのように達成すべきかに焦点を当てたものへと、変えてきました。

 友人のみなさん、私たちは今再び、危険な時代に生き、たたかっています。核戦争と気候変動の危険が切迫していることを警告する「アトミック・サイエンティスツ」誌の「終末時計」の針は最近、午前0時3分前まで進められました。私たちは、世界全ての核保有国の間での新たな核軍拡競争に直面しています。最も危険なのは米ロ間の新たな対立であり、NATOとEUが扇動したウクライナの将来をめぐる争いの中で核兵器が使われる可能性があります。最近の研究では、例えばインドとパキスタンの間で、50発から100発の核兵器が使われる比較的小規模な核戦争が勃発すれば、全地球的な寒冷化と飢饉により、北半球で20億人が死に至ることが明らかになっています。

 いわゆる安全保障国家の強大で邪悪で鈍感な権力―日本の安倍政権や核保有国のことですが―、これに立ち向かう私たちにとって、究極の希望は何でしょうか?もちろん、核兵器も基地もない世界という展望です。これが可能であり、真の人間の安全保障の土台となることを私たちは知っています。そして、私たちが積み重ねてきた勝利の歴史もそうです。また、人類の生存を求める人々の本能的な願いもそうでしょう。

 私は、運動が重ねてきた勝利から希望を見出しています。公民権運動、ベトナム反戦・平和運動などです。この数十年の間に、私は高校生の頃読んだイタリアの反ファシスト小説の中身をより深く理解できるようになりました。「パンと葡萄酒」という小説で、イグナチオ・シローネはこう書いています。

「プロパガンダの地においては…自分の頭でものを考えようとする人間は誰であれ、公の秩序を危うくする…誰か1人が『NO!』と言い、隣の人の耳に『NO!』と囁き、あるいは夜のうちに『NO!』と壁に書けば、それだけで公の秩序は脅かされる」
「そしてもし彼らがその人を逮捕し、殺害すれば…」   
「『NO!』と言う人間を殺すというのは危うい行為だ…死体であっても、もちろん特定の死体にしかできないだろうが、『NO!NO!NO!』としつこく粘り強く言い続けることが可能だからだ。そうなれば、どうやって死体を黙らせることができるだろうか?」

 日本と世界中に今でも響きわたる久保山愛吉さんの最後の言葉の力を考えてみてください。「原水爆の犠牲者は私を最後にしてほしい。」あるいは、渡辺千恵子さん、山口仙二さんをはじめ多くの被爆者の言葉を。

 友人のみなさん、1995年のNPT再検討会議議長を務めたジャヤンタ・ダナパラ氏、そして前国連軍縮問題担当上級代表で今は原水協の良き友人となったセルジオ・ドゥアルテ氏は、最近発表した論文の中で、多くの国々が「条約の一体性と信頼性が危険にさらされていることを懸念している」と警告しています。彼らは、核兵器完全廃絶のために誠実な交渉を義務づけ、「国際の平和と安全の要」である核不拡散条約に、現在「大きな影」がかかっていると述べています。核保有国の中に2000年再検討会議で合意された13項目の措置を否定する国があり、2010年行動計画の64のステップが履行されず、特に「2010年の中東に関する勧告の確固とした進展が欠けていることと、国際情勢の悪化」がその理由です。

 彼らが懸念するのももっともです。NATOが国境近くにまで拡大していることに脅威を感じるロシアのプーチン大統領は、通常兵器とハイテク兵器で劣勢にあるため、ますます核兵器への依存を強めています。最近オバマ政権が「核兵器のない世界のために努力する」との約束を再確認したこととは裏腹に、アメリカは少なくとも1兆ドルを費やして向こう30年間に核兵器と運搬システムを近代化する予定です。とりわけ東アジアでの緊張は21世紀に大国間の戦争を引き起こしかねない状況です。そして私たちの中で、印パ間の紛争や、イスラエルの傲慢な態度、あるいはテロリストの脅威を抑え込む自信がある人はいるでしょうか?エリック・シュロッサーが述べているように、これまで本当に多数の核兵器事故が発生してきたことを見ると、人類がまだ生存しているのは、熟慮した政策決定の結果ではなく、単に運が良かっただけだと言えるでしょう。

 これらの現実が示しているのは、私たちができる限り強大な影響力を4月のNPT再検討会議に及ぼすことがいかに重要か、ということです。そしてこの機会を、核兵器廃絶、平和、正義、そして長期的に持続可能な環境を求める私たちの運動を構築するためのまたとないチャンスとして活用すべきだということです。

 権力の殿堂の内側と外側の両方で、私たちが人々を激励し立ち上がらせて要求の声を上げ、展望と決意を表明することが重要です。外交官たち、一般市民、そして世界の報道機関を巻き込んで、核兵器のない世界を望む世界人民の希望と期待を、私たちが提出する数百万の署名と、世界の至るところで私たちの存在を通して、はっきりと示すことです。

 日本社会が70年前に終わったはずの15年戦争の遺産とたたかう一方で、アメリカの私たちは、ブッシュとチェイニーが2001年9月11日の犯罪に乗じて開始した14年間にわたる戦争の只中にあります。それ以来アメリカの運動は高齢化しました。ジョージ・オーウェルの「1984年」にたがわず、現在の若い世代は、無視されがちな、帝国の周辺部でおこなわれている戦争を、自らの生活の中で常に意識しながら育ってきました。彼らの多くにとって戦争と核兵器の存在は、潮の満ち干きや季節の移り変わりと同じように、日常であり自然なものとなっています。

 だからこそ私たちは、NPT再検討会議に向けた「平和と地球の動員」で、私たちの運動の新たな土台を構築し、新たな活力を作り出そうと呼びかけているのです。州ごとに、そして全国レベルで、新たな運動の枠組みが作られつつあり、伝統的なネットワークは再活性化され、フェイスブックやツイッターなどのテクノロジーを使ったソーシャルメディア(実のところ私自身もよくわかっていないのですが)である「ファクト・カウントダウン〔Fact Countdown〕」を通じて、私たちは将来の世代によびかけ、運動に招き入れようとしています。彼らのエネルギーなしに勝利はあり得ません。私たちの集団的な力を広げ、強めるために、もっと共通の課題で共同する横断的な運動を作り上げて、経済、社会、人種的正義の問題や、気候変動問題にとりくむ運動家たちと手をつなぎ、協力を強めようとしています。

 全てのみなさんにこの行動に参加していただきたいと思います。「核のない平和で公正で持続可能な世界をめざす国際平和地球会議」は、ニューヨークの伝統あるクーパーユニオン大学で開催されます。奴隷制廃止運動家のフレデリック・ダグラスやリンカーン大統領ほか、人間の安全保障と正義のたたかいに重要な役割を果たした人々が演説した同じ講堂の演壇から、会議に出席するスピーカーたちが語りかけることになります。私たちは平和集会を開き、被爆者を先頭に国連まで行進し、数百万に上る署名を提出します。宗教界の指導者たちは、核兵器廃絶を祈る全宗派礼拝を開きます。核兵器廃絶を目指す「世界平和の波」同時刻行動を開始します。行動はタイムゾーンごとに世界を一周するでしょう。核保有国の国連代表部前ではデモや要請行動がおこなわれ、国連ビルの中でもロビー活動がおこなわれるでしょう。原水協代表団員の多くは、ボストンからサンフランシスコまで全米各地を訪問して、草の根の活動家や地方組織の人々に出会い、激励し、勇気づけてくれるでしょう。

 友人のみなさん、私たちの努力がすでに影響力を発揮しつつあるのは心強いことです。2、3週間ほど前、私は国連のアンゲラ・ケイン軍縮問題上級代表の事務室の政治担当官に電話し、国際平和会議では被爆者の谷口稜曄さんとサーロー節子さんが演説します、と伝えました。すると彼女はただちに、「その2人はノーベル平和賞に推薦されていますよね」と答えたのです。私たちの分析や行動、決意は、すでに権力の場にも反響をよびつつあります。

 組織活動をする中で、私たちはまたNPT再検討会議終了後にも目をすえて、長期的な運動も展望しています。NPT会議に影響を与えるために必要なあらゆる組織化の努力、署名運動、学習フォーラム、マスコミのインタビューや投稿、ソーシャルメディアを使ったキャンペーン、口コミやネットワーク作りは、将来に向けた人間関係、技能、地方組織と国際組織の構築と発展に大いに役に立つでしょう。そして、ビキニ水爆実験後に起こった署名運動が第1回原水爆禁止世界大会開催につながったように、原水協は、核兵器のない世界の実現に向けた運動の導きの光であり、原動力となってくれるでしょう。

 最後に私は、1人の奴隷廃止運動家と現代の核兵器廃絶運動の間の、ささやかな橋渡しの役割を果たしたいと思います。アメリカで奴隷制廃止運動を構築するのに大きな政治的・思想的役割を果たしたフレデリック・ダグラスは、「権力というものは、要求がなければ決して譲歩しない。これまでもそうであり、これからも譲歩しないだろう」と述べました。彼はこうも言っています。「たたかいなくして進歩はあり得ない。自由には賛成と公言しながら運動することには眉をひそめるなど、地を耕さずに収穫を得ようとするようなものだ。雷や稲妻のない雨だけを欲し、荒れ狂うことのない大洋を望むようなものだ」

 友人のみなさん、私たちと全ての将来の世代のために、ニューヨークへ、そして核兵器のない世界へ向かって前進しましょう。


 
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