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原水爆禁止世界大会

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アンゲラ・ケイン国連軍縮問題担当上級代表のメッセージ

原水爆禁止2013年世界大会
アンゲラ・ケイン 国連軍縮問題担当上級特別代表

《核兵器のない平和で公正な世界――国連憲章の重要性》

 私は、2013年原水爆禁止世界大会―長崎で皆さんと参加できることに深く感謝します。田上富久市長をはじめ、核廃絶を支持し、この分野に貢献している多くの皆さんとご一緒できるのは大変うれしいことです。また招待下さった共同代表の高草木博さんや大会準備にあたられた皆さんにも心から感謝申し上げます。
 核兵器のない世界実現に長年貢献し、毎年、世界大会に関わってきた全てのみなさんに感謝いたします。個人、団体の各レベルで、みなさんは核廃絶の重要性を世論に訴え続けてこられました。

 みなさんは、自分の時間とエネルギーをついやして、長崎を最後の被爆地とするために奮闘されています。それは被爆者と家族の方々の願いでもあります。出版、集会、署名など、みなさんが取り組んできた活動は、多くの国の同じような活動を励ましてきました。しかも、みなさんは自分の地位や富、世間の注目、名声などのためではなく、なすべき当然のこととしてそれに取り組んでこられました。一部の人のためではなく、すべての人のためです。だからこそ潘基文(パンギムン)事務総長は核兵器のない世界は「最高の地球的公益」だと述べたのです。

 みなさんの仕事は重要です。私自身も含め、核軍縮を進めようとする誰もが、障害や後退を経験すると、絶望に浸りたくなります。核軍縮の目標を支持すると公言しながら、核抑止力や核攻撃で脅し、核弾頭や運搬手段を現代化し、事務総長が提案した核兵器禁止条約や相互に強めあう複数の協定の枠組の交渉を拒否する政策をすすめるという、一貫性の欠如に私たちは苦しめられています。
 みなさんがいら立つのも当然ですが、しかし絶望する必要はありません。なぜなら数年以内、あるいはもっと早い時期に重要な前進が見られるという希望を抱く根拠があるからです。

 核兵器のない世界にむかって私たちがこれまで歩んできた長い道のりを考えてみてください。1980年代半ばには世界の核兵器は7万6000発ほどでした。今日の推計では2万発を切っています。この着実な減少は、老朽化した兵器の退役だけではない何かを示しています。それは、核兵器は容認できないという認識が人々の間で広がり、核保有国内でさえも核兵器の軍事的価値への疑念が強まっている表れなのです。世界はこの兵器の本質を見抜きつつあります。倫理的に許されず、軍事的に使用不能で、財政的にも技術的にも資源の浪費であり、社会と経済の発展の障害だという本質です。


 だからこそみなさんは、賢明にも大会のテーマを「核兵器のない平和で公正な世界を」にされたのです。核兵器が配備され続け、安全保障の「究極の保障」として正当化され、瞬時に使用できる態勢にあるもとで、どうして世界が平和でありうるでしょう? 核兵器の存在と核抑止力論は、他国への拡散をもたらし、世界の平和と安全を危うくします。この兵器を非国家主体の手に渡してはならないことを私たちみんなが理解しています。しかし、皆が恐れている核テロを防止する手段として、検証を伴い、後戻りできず、透明で、普遍的で、拘束力のある核兵器の廃絶以上のものはないことは、あまり認識されていません。

 核廃絶は長期的なビジョンや目標としては望ましいが、その実現には様々な条件が満たされなければならないとの主張を耳にします。世界平和が先だとか、あらゆる武力紛争の危険をなくそうとか、あらゆる地域紛争を解決しようとか、テロの危険をゼロにしようとか。もちろんこれらは崇高な目標です。しかしこれらの主張を、単独あるいは組み合わせて、核兵器禁止・廃絶の取り決めを無限に先延ばしする口実に利用させてはなりません。

 この意味で、核廃絶への前進は、何かの結果であるにとどまらず、それをはるかに超える結果を生むことができます。それは国際の平和と安全を大幅に強化する要因にもなります。その前進は、強力な信頼醸成措置に役立ちます。戦略核をめぐる競争の分野では間違いなくそうです。もし核軍備が劇的に削減され、もし近代化計画が棚上げないし中止され、もし核兵器予算が削減され、もし核廃絶の実施機関が作られ、関連する法律が制定されれば、これらがまとまって核軍拡競争に対する極めて効果的な解毒薬となるでしょう。同じことは地域情勢についても言えます。とりわけ核兵器関連のプログラムの存在が新たな不安定性や不確実性を作り出し、核兵器がいつか再び使用される新たな危険が生まれている中東や南アジア、北東アジアでは特にそうです。

 理想の世界では、理性と説得力ある論理があれば核兵器のない世界を実現することができます。しかし私たちの世界はそれとはかけ離れた世界です。今日、核兵器が存続しているのは、あれこれの存続の理屈があるからだけではありません。核兵器を支える巨大なネットワークがあるからなのです。巨額の核兵器予算、大規模な研究所や契約企業からの政治的支援、その他、核兵器永続化にともなう利権があるからです。特殊な利権をもつ集団にとって、国際平和と安全への脅威は、解決すべき問題というより、むしろ核兵器を維持し拡大しなければいけない理由なのです。

 この核兵器支援インフラの存在のしるしは、核兵器保有国のすべてで明白に現れています。しかし幸い、これらの利権集団は、核兵器に関しては、つねに公共政策を押し付けているわけでもなければ、国民の議論の範囲を制限しているわけでもありません。

 これは特に国連で明白に現れています。国連本部でも加盟国の発言や活動においても、国連は60年以上核軍縮に取り組んできたというきわめて深い認識が示されています。しかし今日強調したいのは、核軍縮は国連の唯一の目標ではないし、その他の大切な目標と完全に切り離して追求する目標でもないということです。

 たとえば、私たちは核および大量破壊兵器の完全廃絶を目指してきましたが、同時に通常兵器の制限・削減にも取り組んでいます。その理由は明らかです。ある日、目を覚ますと核兵器が消滅していたとしても、私たちはなお、通常兵器による不安や格差に対処しなければなりません。私たちが核兵器廃絶を目指すのは、核軍拡競争を通常兵器による戦争で置き換えるためではありません。

 野放しの通常兵器競争の影響についての認識の深まりが、ついに今年、武器貿易条約交渉の成功へとつながりました。通常兵器の分野にも法の支配を持ち込んだ歴史的快挙でした。大量破壊兵器廃絶と通常兵器管理とを同時に追求することで、国連は核兵器のなくなった後の世界での平和と安全の強化にも取り組んでいるのです。私たちは核廃絶が安全を犠牲にして実現するとは考えません。核廃絶実現の可能性が最大になるのは、国や市民が核兵器のなくなった世界でこそ安心と安全が大いに高まることに気付いた時です。

 これは単に大量破壊兵器廃絶と通常兵器の管理を追求することのみを意味しません。だからこそ私たちは、国連憲章の重要目標、とりわけ武力の行使と威嚇の禁止、国際紛争の平和的手段による解決の義務の遵守にも努力しています。

 さらに国連は、生活条件、社会・経済発展の可能性の改善に取り組み、国連憲章の前文がのべているように「正義と条約その他の国際法の源泉から生ずる義務の尊重とを維持することができる条件」を確立するために努力しています。

 ここで国連の憲章体制の様々な構成部分を強調するのは、軍縮がこの体制にどれだけ不可欠な要素かを理解する助けになるからです。この体制の下で、軍縮の達成、通常兵器管理の進展、武力行使の威嚇の一掃、紛争の平和解決、社会経済発展の促進、正義と法の支配の強化などは、それぞれ同じ制度の独立した部分として、相互に補強しあっています。だから同時並行で進めなければなりません。これが国連憲章が機能するやり方です。これらいくつもの課題に取り組むうえでこれ以上うまく機能する体制を設計した人はまだだれもいません。これらの課題は力の均衡や同盟間の競争、核抑止力、際限なく増え続ける軍事費などに依拠して達成することができないことは明らかです。

 現在は2013年ですが、今、皆さんにお伝えしたい最大のメッセージは、未来を見る前にまず過去を振り返るのが有益だということです。私たちの目の前には素晴らしい将来の設計図である国連憲章があります。この国連憲章は、今日ここにお集まりの方々や文字通り全世界の市民の皆さんが強く支持している目標を達成するための建設的な指針です。
 
 軍縮、軍備管理、平和、発展、正義、法の支配―これらは、私たちをより安全で、より繁栄した世界へと導く道標です。それはまさに2013年原水爆禁止世界大会のテーマが意味するものです。
 皆さんが軍縮の取り組みを続けるにあたって、ぜひ有名な1955年の「ラッセル・アインシュタイン宣言」の一節を思い起こすよう呼びかけます。宣言の起草者たちは軍縮への感動的訴えのなかで、こう力説しています。「私たちは、人間から人間へ、訴える。――あなた方の人間性を思い出し、そしてその他のことは忘れよ、と」。

 その数年後、日本の偉大なノーベル文学賞受賞者大江健三郎氏はこう書きました。「広島の闇に潜む最も恐るべき怪物は、まさに人間が人間的でなくなってしまう可能性である。」

 核軍縮支持者の多くが核兵器使用の人道的影響に再び注目したのは偶然ではないかもしれません。これはNPT条約締約国の会議や、国連軍縮機関のいくつかの会議でも明らかです。これは世界大会の参加者全員におなじみのテーマです。

 私は、今日、核兵器廃絶の課題の本質を正しく判断されていた皆さんをたたえたいと思います。核兵器は私たちの基本的な人間性とは相いれないのです。この力強いメッセージが、私に核軍縮の将来にたいする希望を与えてくれます。そして私は、この同じメッセージが皆さんの大義をめざす将来の努力を励ますであろうことを期待しています。


 
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